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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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異世界うるるん滞在記~実録!子連れJK24時!!~(13)

 その行為が示す意図。それってつまり…


「夕映さんを、護衛している人達が居る可能性ね?」

「そういう事よ。」


 あたしの問い返しに対し、つまらなさそうに返事をして彼女は、そこでようやくタバコを口に咥えて火を点した。


「…フゥー、折角勿体ぶって教えてやろうと思ったのに、あっさり夕映の正体を見抜くんだもの。面白味が無くなっちまったよ。」


 そして、勢いよく紫煙を吐き出したかと思うと、こちらをジロリと見据えて文句を垂れる。んなこと言われてもなぁ~


 けどまぁ、なんかご立腹みたいだし、とりあえずテヘってして誤魔化しとこ。テヘ☆


「…おちょくってんのかい。」


 更にご立腹になっちったんz


「Hey.優姫?」

「うん?」

「さっきの女性が、General島津の血縁者だって言うのなら、身辺警護をする人が居ても可笑しくないよ?でも逆に考えて、それだけの要人を普通に働かせておくかしら。」

「もっともな意見だけど、その辺は当人の意思なんかもあるだろうから、一概には言い切れないんじゃない?実際に働いてる訳だし。」

「Uh-huh.」

「それに、今聞いた心当たりの二と三が、同勢力の人達だったとしたら、色々腑に落ちるし。」

「I See!彼女達を助けてくれたのは、General島津側の人かもって事ね。だから一緒に警護してくれてると。」

「或いは、元々着けていなかったけど、ファティマさん達に手を貸した事をきっかけに、護衛を付ける様になったか、ね。まぁ、どっちが先か後かなんて、今はどうでも良いか…」


 ミリアとの会話を、そう言って締めくくったあたしは、一旦考えを纏める為に思考を開始する。


 ミリアの言う通り、彼女達に手を貸したのは、島津将軍の仲間で間違いないでしょうね。リズリットさんの手当をするだけなら、中央から近い病院に運べば良いだけだもの。


 ただ、今感じている視線の持ち主が、そうである可能性は残念ながら低い。薄汚い欲望染みた物を感じるのよ。


 だから監視者に関しては、チェコロビッチの手の者って線が濃厚。なんだけど…


 あたしの潜入をあっさり看破した島津将軍が、この状況を予期していないとは到底思えない。だとしたら、そっち側の監視者が居ても良い筈なんだけど…


 あたしが感知出来る範囲よりも外で、チェコロビッチの監視者達を見張ってる?其処まで広くないから、あり得なくも無いけど…


 その場合、護衛者との距離が離れ過ぎてて、いざって時の対処が心配だし。それじゃまるで、彼女達を餌にしてるみたいじゃない。


 伝え聞いた限りだけど、島津将軍の人柄からしてそれも考えにくい。だし、それで得られるメリットが解らない。


 問題を起こさせてから取り押さえても、無罪放免なら意味が無いもの。それなら、見える範囲に護衛を置いた方が、相手への牽制や抑止に繋がるし…


 そもそも、抑止と牽制役なら夕映さんの方が効果的よね。多分、それも織り込み済みで、二人をこの病院に避難させてるわよね。


 考えにくいけど…それで十分と判断されて、そもそも護衛を付けていない?


 でもそれだと、ファティマさんが外で一人だった時に、襲われていてもおかしくない。病室で一人だった、リズリットさんも無事だし…


 そうすると、二人が目的じゃ無い?でも、この視線の感じは…


 鈍い痛みを感じながら、其処まで考えを纏めた次の瞬間――


「あら、皆さん。」


 ――不意に聞こえたその声と共に、それまで感じていた視線の向きがガラリと変わる。


 途端に理解した。護るべきは、二人だけで無く他にも居たのだと。


「まだお話しされていたんですね。」


 廊下の先。角を曲がって姿を現した夕映さんが、あたし達を見つけて声を掛ける。


 遅れて角から姿を現す、もう一人の女性。さっきも彼女と一緒だった看護師さんだ。


「あぁ、夕映さん。先程はどうもありがとうございました。」

「Good Job!検診はもう済んだの?」

「えぇ、今は巡回中です。」

「そうなんですね。お仕事ご苦労様です。」

「これはご丁寧に。ありがとうございます。」


 お辞儀しながら労いの言葉を口にするあたし。それに倣ってか、ペコッとお辞儀で返してくる夕映さん。


 何とも律儀な人だわね。島津将軍にそう教わったのかしら?


 そんな事を考えていると、ふと彼女の視線がファティマさんに向けられる。


「今日も病室に泊まっていかれますよね?」

「えぇ、そのつもりよ。」

「ではお夕飯と、寝具も後ほど運んでおきますね。」

「そこまでして貰うのも悪いし、寝具ぐらいは自分で運ぶよ。」

「そうですか?では、お話が終わったら声を掛けて下さい。リネン室に案内しますので。」

「えぇ、お願いするわ。」


 そう答えて、短くなったタバコを灰皿に押し込む彼女。その様子を夕映さんは、終始ニコニコ顔で眺めている。


 マジでタバコ注意されんのか…


「お二人はどうされますか?」


 なんて思っていると、そのニコニコ顔があたし達にまで向けられる。社交辞令か素で聞いてきてるのか、いまいち読み取れないわね…


「気を使って頂いて、ありがとうございます。けど、あたし達は大丈夫です。」

「あら、そうなんですか?」

「Yeah.私達、この後もまだ街を散策する予定なのよ。」

「散策ですか…けど、もうすぐ日も暮れてしまいますよ?」


 そう言って、窓の外を気にする夕映さん。その様子からして、どうやら社交辞令じゃなく、素で聞いてきたみたいね。


「はい。ですからこれから、酒場とかで色々話が聞けるかなって思ってて。昨日とか、どんちゃん騒ぎしてて、話を聞ける風でも無かったんで。」


 まぁ、あたしは見てないから知らんが。


「あぁ、昨日は確かにそうですね。」

「折角の申し出なのに、すみません…」

「いえ、そんな。こちらこそ、出過ぎた真似をしてすみませんでした。」


 そう言って、深々と頭を下げてくる彼女。でっち上げた言い訳だけども、納得してくれて何より。


「では、我々はそろそろ巡回に戻らせて頂きますね。」

「あ、はい。先程に引き続き、またお仕事の邪魔をしてしまって、すみませんでした。」

「とんでもありません。そもそも私の方から話し掛けた訳ですし、お気になさらずに。」

「Thanks!この後のお仕事も頑張ってね!」

「ありがとうございます。」

「仕事が落ち着いた頃に、そっちに行くからよろしくね。」

「承知しました、おまちしておりますね。」


 終始笑顔で対応してくれる夕映さん。最後にそう告げ踵を返すと、同僚の看護師さんと一緒に去って行く。


 その背中を、見えなくなるまで見送る。


「あの人、いい人ね。」

「Yeah.」

「えぇ、そうね。貴女達と同じで、見ていて危なっかしくなるよ。まぁ…父親が王様付きの騎士団隊長で、祖父が将軍様ってんだから、ちょっかいだそうって悪い男は、そうは居ないと思うけどさ。」

「…だと、良いんですけどね。」


 彼女の言葉に、眉間に皺を寄せながらそう答える。そして、軽くため息を吐き出すと共に、気持ちと思考を切り替えた。


「さっき夕映さんと話してましたけど、病室に泊まり込んでいるんですか?」

「えぇ。リズを連れ出して以来、宛がわれてた部屋に戻る訳にもいかないからね。」

「oh...大変ね。」

「別にそんな事も無いよ。元居た世界と比べりゃ、寝床は上等だし食うに困る事も無いからね。」

「Uh-huh.それなら良いのだけど、何か困っている事とか無い?」

「困ってる事?そうね…今の所は無いわね。」

「そうなんですか?例えばですけど、リズリットさんの容態が良くなったら、この国を出ると…?」


 深く考えもせず、思い付きで口に出したなんて事の無い提案話。けどそれは、ファティマさんの表情がみるみる深刻な物へと変わった為に、途中で切り上げざるを得なかった。


「それは…難しいだろうね。」

「why?どうしたのよ突然。」

「一体何が在るんですか?」


 あまりにも深刻そうにする余り、あたし達の反応も自然と強張り、図らずも問い詰める様な姿勢になってしまった。そして訪れる沈黙。


「…ファティマさん。」


 どれだけそうしていただろう。気が付けば、窓から見える風景はすっかり薄暗くなり、廊下に電灯の明かりが降り注ぐ。


 その頃になって、沈黙に耐えかねたあたしが声を掛ける。すると彼女は肩をピクリと震わせ、ゆっくりと顔を上げてこちらを見やる。


 その表情たるは、どうして良いか解らないといった様相。どうして良いのか解らないから、考えない様にしていたのに、と言いたげな有様だった。


「話して下さい。」

「知った所で、貴女達に出来る事なんか無いよ。」

「だとしても、一人で抱え込んでても、解決しません良い?」

「Yeah.それに、一人で思い悩むのは辛いだけよ。」


 拒絶を示す彼女に対し、それでも尚二人掛かりで手を差し伸べる。


 一瞬、何かを言いかけ、しかし直ぐに思い留まるファティマさん。思い悩む表情を浮かべて、視線を落とした。


 其処から更に一拍置いて――


「リズの背中にね、奴隷紋があるのよ。」


 ――その事実が明るみとなった。

良い所なんで、キリ良いところまでこっちに集中します

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