異世界うるるん滞在記~子連れJKが、肩をぐるんぐるん回してアップ始めました~(7)
「ま、まぁまぁ。少し落ち着きましょうよ、ね?銀星ちゃん。」
『ハッ⁉︎す、すみませんエイミー‼︎私ったら…つい本音が出てしまいました。』
先の発言に対し、どうリアクションを返して良いか困っていると、見兼ねたらしいエイミーが横合いから話に加わる。それで我に返ったのか、銀星が慌ただしげにそんな事を言ってくる。
そっかぁ〜ついうっかりなら仕方ないわよn…
あの銀星が『敢えて』じゃなく『つい』で本音漏らすって…相当お疲れみたいで心配だわね…
まぁ、あたし達ん中で一番気苦労が大きいのって間違いなく銀星だから、当然っちゃ当然なのよね〜
元々そのつもりだったけど。色々な件にケリが付いたら、銀星の事たくさん労ってあげなくっちゃだわ――
「それよりも銀星ちゃん。私からも確認なんだけれど、良いかしら?」
『あ、はい。何なりと聞いて下さい。』
――てな事を1人心ん中で強く決意してる間も、話し合いは続いていたり。いちいち話の腰を折っちゃって、ほんとサーセン。
「昨日も確認した事なんだけれど…潜入して調査を進めていく内、商品としてバージナル国に連れ込まれた方々を発見した場合、アジトの崩落に巻き込まれないよう救出するじゃない?」
『えぇ。それで良いんですよね、マスター?』
「勿論!」
不意にそう尋ねられ、自然とみんなの視線が集まるのを自覚する。しかしてそれに臆する事なくあたしは、頷きながら二つ返事で即答する。
今の会話がどういう事かって平たく言うと…ただでさえ、バージナル国内にあるっていう犯罪組織を壊滅させる事が、本来の目的から逸れてるってのに、この上更に余計なリスクを背負おうって言う事ですね。
いやぁ〜本当、物好きな連中ですよねぇ〜アッハハ〜
…さておき。どうしてそんな話になったかっていう説明だけ、手短にさせてください。
先日、シフォン達がメアリー達を乗せた犯罪組織の馬車を襲撃し、結果として連中の手にバージナルへと卸す予定だった商品が渡る事は無くなった。でもだからって、他の商品を抱えていないっていう確証が、得られた訳じゃないじゃない?
例えば、ルアナ大陸に上陸出来る港って、あたし達が利用したリク港だけじゃない?なら当然、アス港側から運ばれて来る荷物が在って然るべきよね。
とすれば、或いはメアリー達と同時期に運ばれてきた人達だって、居てもおかしくないわよね。実際、現役冒険者であるシフォン達曰く、治安の悪い地域では四六時中、そう言った目的での人攫いが横行してるって話だしね。
だし、仮にそんな不運に見舞われた人達が、ここ数日居なかったとしても。過去に大勢居たのは、紛れもない事実だ。
なら、どうしたって考えてしまう――そう言った不運な人達の中には、或いは何らかの理由で出荷されずに売れ残ってしまっている人達が、今も囚われているんじゃないか…ってね。
人気の在る無しなのか、或いは生まれ持った身体の所為か、はたまたたまたまか――
それはさながら、ペットショップの片隅で、誰にも見向きされずにどんどんと歳を重ねていき、やがて誰にも気付かれずにいつの間にか消えていく、犬猫みたいに――
考えただけでも、胸糞の悪くなる話よね。けど、そんな気分になる反面、僅かだけども救いも確かにあるのよ。
それが何かって事なんだけど…アジト内に残っている奴隷の人達って、当然ながら出荷前な訳じゃない?
って事は、バージナル国内から連れ出すのに一番厄介な奴隷魔術が、まだ施されていない可能性が高い。つまりメアリーを救出するのに一役買ってくれた、メアリさんバァートンさんと同じ状態って訳よ。
んじゃもう、更に人数増えたって一緒だし、その人達も救出して保護しうって――白状します。あたしが言い出しました。
テヘペロ☆
だってだってぇ〜そもその組織に捕まってる奴隷の人達って、正規のルートと全く関係無いんでしょ?
ならもう、誰に気を使う必要も無し。好き勝手やっても無問題じゃね?(ぇ
っていう訳なんだけど…だからって別に、この世界に根差した奴隷制に異を唱えたいとか、喧嘩売ろうとかそう言う訳じゃないのよ?
この世界における奴隷制の成り立ちやバージナルの経緯を聞いて、必要に迫られてなるべくしてなった制度だってのは理解してるし、ある程度は仕方のない事だとも思ってる。
でもだからって、頭で解った風を装い斜に構えて、これ見よがしに達観してお利口さんを演じたく無いってだけの話。そんな奴になる位だったらあたしは、偽善者と後ろ指指される方が百倍マシよ。
だからこれは、単純にあたしの自己満足――と言うか、ここ迄きたらもういっそ、趣味と公言した方がいいかもだわね〜
その趣味に、みんなを巻き込んじゃってるのは、本当に心苦しいんだけれども。さておき――
「――昨日は準備とかもあってバタバタしてたし、詳しく話を進める時間もなかったから、方針だけ決めただけでしょう?」
『えぇ、そうでしたね。』
「だからみんなが揃って、落ち着いて話が出来る今の内に、詳しく詳細を決めておいた方が良いと思うの。」
『確かにそうですわね。どうします、銀星さん?』
『そうですね…』
エイミーの提案に対し、リングの向こう側にいる2人のそんなやりとりが聞こえてくる。その伝わってくる雰囲気からして、あたしが思うよりもずっと深刻そうだった。
こりゃ、余計な口を挟まずに、2人の意見が返ってくるまで待つのが、無難かなぁ〜と、何となく思っていると――
「――んなの、見つけたらすぐに助け出しちまえば良いんじゃ無いかい?」
『…この脳筋娘は、簡単に言ってくれますわね。』
何とも軽い調子でリンダが、唐突に横合いから口を挟んで会議に乱入。すかさずシフォンの呆れ声が、リング越しに返ってくる。
ってかシフォン、何だかめっちゃ不機嫌そう…こりゃ銀星に負けず劣らず、お疲れみたいね…(←その原因の癖して白々しく言ってみた
『良いですか?人目を忍んで潜入し、調査するだけでも相当な厄介だと言うのに、目に付いたからと言っていちいち救出していては、発見されるリスクを上げる様なものではありませんか。』
「いや、そうかもだけどさぁ…」
『それに、本来の目的で在る御二人の居場所の特定や、貴女方の突入準備が整っているならばいざ知らず、不十分な状態で下手に助け出してごらんなさい。運よく事が運んで、エイミー達も発見されずに撤収出来ても、後に残るは空っぽの奴隷部屋ですわよ。この意味が、脳筋娘の貴女に解って?』
「うっ…」
それまで憮然とした態度で、話を聞いていたリンダだけれど…かなり強い口調でシフォンに捲し立てられ、流石に怯んで言葉に詰まったご様子。
「け、けどさ!じゃぁ調査を終えて撤収した後、場合によっちゃまた潜入するってこったろう?」
しかしここで、リンダの悪い癖である負けん気発動。止せばいいのに、巻き返しを図って反論する。
「んなの二度手間だしそれこそ発見されるリスクが上がるってもんさね⁉︎」
その勢いのまま彼女は、一息に自分の意見を口にする。口にし終えると同時、やっちまったみたいな顔してるし…
まぁ、それは放っておくとして…この彼女の意見に対し、果たしてシフォンの口からどんな暴言――もとい、反論がされるかガクブルしながら見守っていると…
『えぇ、そうですわね…』
一抹の不安を他所に返ってきた反応は、思っていたのとは正反対の、驚くほどに静かで冷静な呟きだった。一瞬あれ?って思うもすぐに納得。
きっと負けん気発動したリンダに対して、シフォンが大人になって対応したんだろうと、そんな風に解釈するあたし。しかしてその直後――
『――だ・か・ら!落ち着いて話せる今の内に詳しく作戦を練ろうと、そうエイミーが言ってるんでしょうが‼︎お判りかしら⁉︎』
「うぐっ…」
堰を切ったかの如く強い口調でシフォンが、リンダに対し責めるように反論し出した。どうやら先程の反応は、マジで嵐の前の静けさだった模様…
「シ、シフォン…何もそんな強く言わなくても…」
『そ、そうですわね。余りにも考えなしに、簡単に言うものですからついカッとなってしまいましたわ…』
「わ、悪かったよ大将…」
ここで、見るに見兼ねたエイミーが2人の間に割って入り、言い争いに終止符が打たれる。いやはや全く…
みんなお疲れね…(←その原因、以下略
 




