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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第二章 訪問編
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いちからはじめるいせかいかんこう(のーまる?)(5)

 倒れ込んでいくはずだった。だけど、そうならなかったのだ。


 なんとリンダは、あたしのキックが当たる瞬間、頭を後ろに下げて、わずかに威力を殺した上、某映画よろしく!並の姿勢で、倒れ込む身体を無理矢理支えていたのだ。地面に足を着けたまま、膝をほぼ90度に折り曲げて、背中は地面すれすれの所で止まっていた。


 これが俗に言うマトリ○クス避けか~実際やれる人が居るもんなのね、感心するわ~


 なんて、逆さの視界の中で、リンダの格好を眺めながら、悠長にそんな事を考えていた。とりあえず、反り返ったおっぱいが無性にエロいっす。


 とまぁ、それは置いといて、真面目に対処しましょうかね。なんでかって?だって、逆さになった視界の中で、バッチリリンダと視線があっちゃってるんだもん。


 リンダと視線が合った瞬間、彼女の太ももが一回りは大きくなったかと思うと、海老反りの上体を無理矢理起こして、宙に浮いた状態のあたしに迫る。頭突き狙いかと思ったけど、先に伸びた彼女の両腕から、あたしを拘束しようとしていると判断できた。


 彼女は見た目通りのパワーキャラだ、捕まったらひとたまりも無いのは明白で、なのにあたしは身動きの取れない空中で、さっきのドロップキックの勢いのまま絶賛浮上中。普通に考えたら、何の抵抗も出来ずに、リンダに捕まってあばばばってなもんだけど、こうなる事もちゃんと想定済みです(キラッ☆


 あたしは、リンダの迫る両手を見下ろしながら、空中で左足を外に開いて、右足を思い切り蹴り上げる。同時に常日頃から鍛えている腹筋と背筋を最大限に活かし、その場でくるりと一回転してみせた。流石にそれはリンダの予想外だったのか、驚きに目を見開いている表情が見えて、あたしは不適に笑ってみせた。


 ふっふっふ、甘いのですよ。こういう事が出来てこそ、あんな曲芸じみた動きが出来るってなもんなのよ。まぁ、元の世界じゃ流石に無理だったろうけどね~新体操とかやってたら別なんでしょうけど、流石にやった事無いしね。


 そう言った点では、この世界の環境に、早くも身体が慣れてきているって事なんでしょうね。若干だけど、動体視力も身体の動きに、ついてこれるようになったと感じるしね。


 それが良い事なのか悪い事なのかはさて置きとしても、以前あばばばば的状況なのは変わりなかった。単純に捕まれる位置が、腕か足かに変わっただけだしね~


 けどそれが、ピンチを回避する決定的一打でもある訳。なおも掴もうと迫る腕を、あたしはギリギリの所まで引きつけて、一気に足を折り曲げてそれを回避する。


 そしてそのまま、出来た足場であるリンダの腕を、そいや!と踏んづけて、後方に宙返りして、無事地面に降り立った。


「なにが素手(こっちの方)が得意だい。まるで曲芸師じゃないかい。」


 あたしが地面に足を着いたと同時に、リンダが腰に手を当てながら、呆れたような口振りでそう愚痴ってきた。だけど、実の所愚痴りたいのは、こっちの方なのよね~


「素手のが得意ってのは本当よ。ただ、素手で殴っても、効果が無いと判断したから、蹴り主体に切り替えただけだし。」


 そう言いなが立ち上がって、袴についた汚れを払いつつ、半眼になってリンダを見据えた。


「あなた、スキルバンバン使ってるでしょ。最後の一撃、普通だったら掠っただけでも脳が揺られて、脳震盪を起こしてる筈なのに、ピンピンしてるし。」


 そう言いながら、今の攻防で唯一捕まれた右足を見下ろす。足袋の上からなので、どうなっているのか解らないけど、わずかにジンジンとした痛みが、捕まれた部分から感じられた。


 あの時、無理矢理引き剥がしたけど、実際の所は、リンダが途中で自ら拘束を緩めてくれていたのよね。でなかったら、今頃足首の関節が脱臼してたと思う。


 そう感じさせるほど、あの時強く捕まれていた。多分、足袋を脱いだらくっきり手の痕が付いてるでしょうね。


 それに、ハイキックを右手で防がれた時、まるで鉄か何かが、芯に入っているんじゃ無いかって位、その手の平は固かった。それは、最後のドロップキックが、顎先に入った時にも感じたのよね。


 その事から考えても、リンダがいくつものスキルを、同時に発動している事は明らかだった。まぁ、始める前に、本人が自分で言ってたけどね、日常生活から常時発動してるって。


「当然さね。異世界人とこの世界の住人とじゃ、身体能力に大きな差があるんだ。スキルを使わにゃ、勝負にさえなりゃしないさね。まぁ、あたい位になれば、スキルなしでも、ちょっとやんちゃな異世界人位にゃ、負ける気はしないけどね、優姫が相手なら別さね

「優姫差別反対!あたしも他の異世界人と平等に扱ってよね

「ハハッ!そいつは出来ないねぇ。さっきの一撃だって、容赦が無かったじゃないか?あたいがスキルをしっかり使ってるって、ちゃんと解っていたから、あんな大技を躊躇無くやったんだろう?あんなの直撃でくらったら、あたいじゃ無きゃ死んでたさね

「そりゃあたしだって、ちゃんと相手は選ぶわよ。相手の力量位、あたしだって測れるんだから。それに…」


 そこで一度区切って、あたしは構えを整えて、再びリンダと対峙した。


「全然本気出してない癖して、よく言うわよ

「フフンッ、そりゃ、お互い様さね。あんただって本気じゃ無かっただろうに

「そんな事無いわよ?少なくとも、最後の一撃は本気だったわ

「ふん、そうかい。まぁ、そう言う箏にしておくさね。」


 そう言って、リンダもちゃんと構えを取って、あたしと対峙する。時間にして、ほんの1~2分位の攻防で、油断出来ないと判断したんでしょうね~ほんと買いかぶりも良い所だわ。


 さっきリンダに言って聞かせた言葉は、ほとんど真実と言って良かった。あたしの見立てでは、正攻法で真っ向からぶつかった場合、十中八九リンダに軍配が上がると思っている。


 それ位、あたしとリンダの間には、力の差と言うよりは、戦闘に関しての経験値に、開きがあると感じられた。それはリンダも感じている筈で、だからこそ隙が生まれるはずだと、考えていたのよね~


 この世界の住人は、あたしが元居た世界の住人に比べると、明らかに非力だ。だけど、それを補うスキルという技能が、しっかりと確立されていて、根付いている訳なんだけど、そのスキルってのが結構くせ者なんじゃ無いかと感じていた。


 そう感じた理由は、昨日あたしが相手をした、盗賊団のリーダーだ。有用なのは解っているけれど、どれだけ有用だったとしても、結局スキルなんて技能は、自分の身体能力を底上げする手段でしか無くて、自分が手塩に掛けて、鍛え磨き上げ育て上げた結果出来た訳じゃ無いと言う事だ。


 だって言うのに、昨日のあの男は、ちょっとあたしを追い込んだ位で、いい気になってベラベラ得意げに、異世界人を殺しただの何だのと語り出して、不愉快で仕方なかったわ。あ~今思い出しても腹が立つ。


 まぁ、それはあたし達異世界人にも、言える事なんでしょうけれどね。この世界は元の世界よりも、明らかに重力は軽いし、物の密度も軽いように感じるから、元の世界での自分の身体能力以上の力を発揮できるけれど、それって結局周りの環境が変化しただけで、自分自身が何か変化した訳でも、特別何かやった訳でも無いって事なのよね。


 なのに、それを自分の力だと思って過信して、結果慢心して手痛いしっぺ返しを喰らうと。まさに昨日のあたしだわね、アハハ~…はぁ。


 まぁ、何が言いたいかって言うと、それがリンダにも、当てはまるんじゃ無いかなと、そう思った訳なのよね。日常的にスキルを使っていれば、多少なりともスキルの恩恵を、過信していてもおかしくないし、相手が格下だと解っていれば尚更ね。


 けど結果は、多少なりとも慢心があったと思うけれど、それが致命的な隙と言える程じゃ無かった。って所かしらね~むしろ逆に、もうそんなの吹っ飛んじゃって、一分の隙も見当たんない始末だし~


 やっちまったなぁ~って感じよね、ホント。はぁ…

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