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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第二章 訪問編
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いちからはじめるいせかいかんこう(のーまる?)(4)

 そう言ってあたしは、リンダの手があたしに届くギリギリ一歩手前で立ち止まると、右足を引いて半身になって、左腕を掲げて盾として構え、右手を腰だめに引いて構えた。


「あぁ、全くさね。」


 そう言うリンダは、それまでしていた腕組みを解いただけの自然体で構えて、油断なくあたしの動きを見極めようとしているんだろう、その表情は相変わらずの笑みを浮かべていたけれど、その目は真剣そのものだった。


 様子見って訳ね。なら、早速こっちから仕掛けてみますか。


「…シュッ!

「ッ!」スパーンッ!!


 思うが早いか、あたしは一瞬上体を動かして、腰だめにしていた右手を動かして、フェイントとしてみせた後、すぐさま切り替えて右のハイキックをリンダの顎先めがけて打ち込む。だけど、その一手は完璧に読まれていて、フェイントに全く反応しなかったリンダは、右手で易々とあたしのハイキックを受け止めて、そのまま足先を手で掴んで握る。


 ま~ね、初手なんて読んで当然、読まれて当然だからね。この位じゃ驚かないし、あたしもこうなる事は予測済みだ。


 多分リンダは、このまま掴んだあたしの足を、振り払うようにして、あたしの体勢を崩そうとする筈。だって、単にガードするだけだったら、わざわざ右手で左側から来る攻撃を受けるより、左手を上げてガードした方が早いし安全だからね。


 そうしなくて、わざわざワンテンポ遅れるような動作を取ったからには、それなりの理由があるって事だからね~ほら、予想通りリンダが、重心を少し落として左手を構えだしたし。振り払うようにして体勢を崩しつつ、左であたしの鳩尾(みぞおち)を狙おうって所かしらね。


 そう分析しつつ、あたしも次の行動に移る準備をする。さっきも思った通り、ある程度の経験を積んだ格闘家の攻防なんてものは、読んで当然、読まれて当然なのだ。


 それじゃ決着が着かないだろうと思うかもしれないけれど、だからこそ知略戦略を駆使して、いかに相手の行動と予測の裏を突けるかが、勝敗の鍵になってくるのよ。だから、当然あたしもリンダのこの行動は読んでいたし、だからこそわざと足を掴まえさせたと言っても良い訳よ。負け惜しみじゃ無いよ?


 予想通り、リンダが振り払うような動作をみせた瞬間、その動きに逆らうどころか、流れに身を任せるように、左足を蹴り上げ宙に浮くと、リンダに捕まれた足を逆に足場に利用して、空中で身体を捻ってそのまま半回転しつつ、左足の(かかと)で再びリンダの左顔面を狙う。


 彼女の左手は、既に攻撃態勢に入っていたから、再び左側を攻撃されたら対応出来ない筈。と、そう考えての行動だったんだけど、そう上手くいく訳も無く、彼女は上体を反らして、ギリギリの所であたしの踵を避ける。


 次はリンダの手番とばかり、彼女は上体を反らした状態のまま、構えた左拳を放って、がら空きになっているあたしの胴目掛けて反撃を仕掛けてくる。その姿勢からじゃ、視界も悪いし、威力も少し下がると思うんだけれど、それを差し引いても、がら空きになったあたしの胴を、見逃すよりかは反撃に移る方が良いと、判断したんでしょうね~当たればめっけもん程度に考えて。


 けど、その行動もあたしは読んでいた。そもそもあたしの左足での一撃は、彼女の上体を反らさせて、少しでも彼女の姿勢を不安定にしつつ、その視界を奪うのが目的だったのだから。


 まぁ、当たればめっけもん程度には、あたしも考えていましたが。


 あたしは、地面に両手をついて逆立ち状態になると、左足を振り抜いた勢いをそのまま加速させつつ、地面に着いた両手を巧みに操りつつ、身体を捻りながらしならせ、リンダの一撃を紙一重で避ける。と同時に、限界まで捻った身体を逆に回転させて、その勢いで右足を彼女の拘束から解放させた。


 グル眉のあの人よろしく!なブレイクダンスみたいな動きで、リンダを牽制しつつ、器用に腕でステップを踏みながら、狙いの位置取りにたどり着くと、それまでのリズミカルな動きを力任せに止めて、直立の逆立ち状態になる。そしてすかさず、逆立ちのまま屈伸するように腕と足を縮こまらせて、逆さの視界の中で狙いを研ぎ澄ませる。


 見ればリンダは、まだ上半身を反らしたまま、さっきあたしが繰り出した牽制の足技を防ごうと、両手でガードをしている所だった。その姿勢の位置からじゃ、彼女との体格差もあって、あたしの姿を完璧に補足する事が出来ない筈で、気配である程度バレているだろうけれど、正確な狙いまでは解らないはずだ。


 完全にリンダの死角に上手く潜り込む事が出来た。今までの攻防は、彼女との体格差も考慮して、相手の視界の死角に、あたしという存在をすっぽり収める為の布石に過ぎなかった。


 あたしの本命の一撃はこれからだ…あたしの姿を確認しようと、一度は体制を整える為にも、上体を起こすはず。その瞬間、がら空きになった顔面、出来れば顎先に、ドロップキックをお見舞いする事。


 あたしがなぜ必要以上に、彼女の顎先を狙っているのかには、ちゃんとした狙いがあった。単純に脳震盪(のうしんとう)を狙って、早々に決着を着けに攻めていた。


 基本的にあたし、戦闘スタイルが短期決戦型なのよね~小手先の技術で様子見はするけど、隙あらば大技で、一気に決着を着けたいタイプなのよね。リンダみたいな実力者なら、尚更早期決着が望ましいのよ。


 理由は単純で、実力者相手に、小手先の技術なんてまず通用しないし、そうなればこっちの手の内を晒すしか無い。晒して問題ない相手なら良いんだけど、実力者相手じゃ1度見せた手の内は、2度目から反応してくるし、3度目には反撃までしてくるからだ。


 つまり、一撃必殺は、1度目で決着が着けられなければ、それはもう一撃必殺なんてご大層な代物じゃなくなるって、そう言う箏なのよね~あたしは既に『軽業師並の曲芸戦法』って手の内を、既に見せてしまっている。だから、これ以上それを続けるって事は、それだけあたしの動きに対処出来る情報を、相手に垂れ流している事と同義って訳。


 そうなる前に、リンダがあたしの動きを、完全に把握する前に、決着を着けなきゃ、他の手の内を彼女に見せないといけなくなる。それはちょっと遠慮したいじゃない?物語は始まったばかりだしね!


 となれば、やっぱり脳震盪で相手を行動不能にするのが、一番手っ取り早いのよね~見事に鍛え抜かれた、彼女の筋肉の鎧には、打撃が通じにくいみたいだし。


 なんて考えながら、決定的瞬間を逃さないように、視線だけは絶えずリンダの上半身に向け続けていた。やがて、彼女の上体がゆっくりと動き出したのを見て、意を決して折りたたんだ腕と足を一気に解き放ち、この身体を一本の槍だと思い込み研ぎ澄ませる。


 屈伸させた肘を、一気の伸ばしながら、身体を捻って回転力を加え、折りたたんだ足を伸ばして、まるでおもちゃのバネのように空を貫くように、一本の槍と化したこの身体は宙を舞う。


 バキッ!!


 と同時に、足の裏に感じる確かな手応え。視線はそのまま、リンダを見据えていたけど、上体を起こそうとする彼女の顎が見えた瞬間、あたしの両足の裏が、狙い澄ませた通り、その顎を痛烈に殴打していた。


 勢い付いていたあたしの身体は、そのまま彼女の顎を蹴り上げながら、更に上空へと登っていく。当のリンダは、衝撃で吹き飛ばされ、背中から倒れ込んでいった。


 手応えあり!!けど…

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