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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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異世界うるるん滞在記~子連れJKが、みかんのはこを装備した~(2)

 まぁそんな訳で、現在シフォンが待機している山の崖に、オヒメと銀星も一緒に待機しているの。2人の主な役割は、回復しきってない彼女の護衛兼、監視のサポート兼、相談役みたいな?


 シフォンと銀星が話し合って、今回の作戦に有益な魔法器の選定を行い、作成が完了次第オヒメに眷属化してもらうって形ね。バージナルの監視は、その時手の空いてる人が担当してるみたい。


 …ぼっちじゃ無いって、良いな~


 なんて事を思いつつ、岩陰で待機する事暫く――


『――ママ!』

「ん、どうしたの?」


 不意にオヒメの声が耳元に響いて、直ぐに反応を返す。またぞろバージナルの監視に飽きて、お喋りしたく成ったのかしら?


『あのね、あのね!銀ちゃんが新しい子を眷属にしたら、ママに報告しなさいって!』


 と思いきや、どうやら新たな魔法器を眷属化し終えたらしい。


「そう、解ったわ。連絡してくれてありがとう。」

『えへへ~♪』


 オヒメの報告を受け直ぐ様お礼を告げると、通信越しでも解る位嬉しそうな反応が返ってくる。それを聞いて思わず口元を緩めつつ、早速眷属の召喚を試みる事にした。


 あの銀星が、わざわざ報告しろって告げた位だ。きっとその眷属も、潜入時とかに役立つ物の筈だろうからね。


 そう考え、あたしが眷属化した覚えの無い中から、一番最新のオリジナル眷属を召喚する。直後、あたしの手元に現れたソレは…


「…仮面?」


 と言っても、オヒメが気に入って以来ずっと頭に付けてる狐面と、大分趣が違う洋風な物だった。顔全体を完全に隠す造りじゃ無く、鼻から上の目元部分を隠すタイプ。


 造り自体シンプルで、多少飾り彫りされてるけど装飾の類いは一切無し。元の材質がミスリルだから、こっちの世界で作られた物で確かみたいね。


 しっかしこういう仮面って、あたしん中の勝手なイメージだけど、某有名ロボアニメのラス敵とかが、好んで着けてそうな感じかしら?


 なんて言っておいて、あたしってばそっち系あんま見ないんだけども。兄さん達がよく見てたから、話にはついて行けるけどね!


 そんなオタ感想はさておき。今重要なのは、この仮面にどんな魔法が付与されているかよね。


 そう考えるが早いか、手にした仮面に意識を向けてその情報を読み取る。そうして判明した、この眷属の能力は『印象操作』


 見た者を見たままに捉えられなくして、人の記憶に残り難くするという、そう言った類いの効果みたい。だから敢えて、仮面を付与対象にしたってんなら、なかなか洒落が効いてる粋な計らいだわね。


 しかし、成る程ね。身バレを防ぎつつ聞き込みするには、まさに打って付けな能力って訳ね。


 となれば、これも潜入組の分用意した方が良さそうね。ミリアは仮面のまま複製するとして…


 一部の兵士に顔バレしてるリンダは、バージナル兵の鎧着込ませようと思ってたから、兜にでも付与させとこうかした。それからジョンとエイミーは、奴隷の格好で装飾品着けてたら逆に怪しいから、服に能力付与するのが妥当ね。


 そうなると、能力付与分の魔力量が、結構上がっちゃうんだけど…この場合は、まぁしょうが無いか。


『あ、そうだママ!あと銀ちゃんがね、必要そうな子達の作成が終わりましたって。』


 そう思って、早速複製品(レプリカ)達の作成に取りかかると同時、再びオヒメから通信が入る。


「そう、解ったわ。教えてくれてありがとうね。銀星とシフォンにも、ありがとうとご苦労様って伝えてくれる?」

『はぁ~い!』


 作業を進めながら先程の言葉に返事を返すと、途端に元気の良い明るい声が耳元に響く。やれやれ、元気なのは結構なんだけどね~


 あたしとしては、直接本人達を労いたいのよね。だって今回1番苦労してるのって、間違いなくシフォンな訳だし。


 だから、通信リングをシフォンに返して欲しいんだけど…その気になったら、直接あたしの居る場所に飛んでこれるからって、子精霊の分用意しなかったの失敗だったかな?


 ん~でもオヒメの場合、その気だったら自分で自分の分造れる訳だし…まぁもう色々今更よね。


 そんな事を考え軽くため息。と、その時――


『――え?あ、うん解った。ママ!銀ちゃん達が変わってって言うから変わるね!』

「え?あぁ、うん。」


 あたしの思いが届いたのか、不意にそんなあっけらかんとしたオヒメの台詞が、通信リング越しから響く。


『変わりましたわ、シフォンです。』

『マスター聞こえますか?』

「えぇ、もちろん。」


 それから待つ事一瞬。次いでリング越しに聞こえてきた2人の声に、見える筈無いと解っているのに、思わず頷きながら答える。


「2人ともご苦労様、色々大変だったでしょう?特にシフォンなんて、まだ回復しきってないって言うのに、無理なお願いしちゃってごめんね。」


 そして続け様に、早速2人に感謝の意を述べる。


 きっと何か用があって、わざわざオヒメと交代したんだろうなって、解ってはいたんだけどね。けどやっぱ、ちゃんと筋を通さないと申し訳ないし


『いえ、協力すると決めましたのは(わたくし)ですし、この位構いませんわよ。』

「ありがとう。銀星もありがとうね、色々知恵を絞ってくれて。」

『いえ、マスターの為でしたらこの位、なんて事ありませんよ。私は、私の出来る事を遣っているに過ぎませんから。』

『そうですわね、銀星さんの仰る通りですわ。正直今の私には、この程度ぐらいでしか、貴女方のお役に立てそうにありませんし。』


 通話リングの向こう側で口々にそう言って謙遜する2人に対し、あたしは思わず苦笑を浮かべると、複製品(レプリカ)作成の手を休め姿勢を整える。


「そんな事無いわよ。十分過ぎる位よ、本当にありがとう。」


 そしてありったけの感謝の気持ちと共に、深々と頭を下げつつ謝意を口にする。


 勿論、2人から今のあたしが見えていない事は解ってる。けどこういうのって、気持ちは当然として態度で示す事も大事だかんね。


『…面と向かって言われるよりも、なんだか照れくさいですわね。』

「そりゃそうでしょうよ。面と向かって言うなら、最初にまずおちゃらけてから言うと思うわ。」


 虚空に向かって、頭を下げ続ける事暫く。不意に、シフォンの呟く声が耳に届く。


 而してその声が届くや否や、頭を上げたあたしが何時もの調子に戻って一言。その直後、通話リング越しにシフォンの笑い声が、微かに漏れ聞こえてくる。


 返ってきたその反応に、思わず得意げとなって鼻を鳴らした。


『…全く。本当に貴女という人は、つかみ所が無いというか何と言うか。』


 それを聞いてだろう。呆れつつも何処か楽しげな、そんな雰囲気を感じさせるシフォンの言葉が後に続く。


 しかし、あたしがそう感じたのも一瞬。次の瞬間には、目に見えずと彼女の表情が引き締まったのを気配で感じ取る。


『折角お礼を述べてくださって、水を差すようで何ですが…』


 続け様に、真剣な口調のシフォンにそう前置きを告げられて、自然とあたしの表情も引き締まっていく。どうやら彼女達の用向きは、おちゃらけて聞ける内容じゃ無いらしい。


『まだ準備が整った段階から、その言葉を継げるには些か早計ですわよ?どうせなら、全てを終えてから改めて聞きたいですわね。』

「それってつまり?」

『はい、マスター。バージナル内部が、慌ただしくなってきました。』


 直後、銀星にそう告げられたあたしは、直ぐさま岩陰からそっと顔を出して、久しぶりに向こう側の様子を伺う。すると、さっき顔を出して確認した時と打って変わり、目に見えた慌ただしさを目の当たりにする。


「…こっちでも確認したわ。見回りの兵士達が、軍門の外に集まりつつあるみたいね。」


 その様子を確認するや、直ぐさま岩陰に頭を引っ込めつつ、通信リングに向かって告げる。あの様子から見て、軍門が開くのも時間の問題って所ね。


『こちらで確認出来る軍門前の広場ですが、集結した兵士達がきちんと列を成していますし、何時でも行軍可能と言った感じですわ。』

「そう…なら後は、指揮官である島津将軍が登場したら、いよいよって感じかしら?」

『そうですわね。しかし実際に軍門が開かれるのは、将軍と一緒にバージナル王が現れて、出兵する兵士達への激励の言葉があってからに成ると思いますわ。』

「あぁ。そういう風習って、異世界でもちゃんと在るのね。」


 等と会話を交わしつつ、潜入に向けての準備を済ましていく。と言っても、そんな大した事する訳じゃ無いんだけどね。


 とりあえず、造りかけの複製品(レプリカ)達、オリジナルと共に精霊界へと送還。同時に着ている服を、リク港で眷属化したバージナル兵の前身鎧にチェンジ!


 …あたしの趣味じゃないけど、ここは我慢しなきゃ。でも、可愛くないなぁ~嫌だなぁ~


 そう心の中で文句を垂れつつ、兜のフェイスシールドを下ろす。それで視界が一気に悪くなるかと思いきや、素の状態と全然変わらない事にちょっとびっくり。


 そういやジープで移動中とか、意識を車に向けると車外の光景が、ダイレクトに伝わってきてたわね。それと一緒で、兜越しの様子をダイレクトに見えてんのかな?


 まぁなにはともあれ、視界が良好なのに越した事は無いわよね。ちょっと変な感じだけども…


 さておき。衣装替えが済んだら、インビジブルマントの効果を発動し準備完了。


 ちゃんと姿が消えたのを確認して、のそっと立ち上がり岩陰を後に歩き出す。そしてこのまま、軍門へと近づいていき、見回りの兵士達に紛れられた所で透明化解除。


 後はそこで、軍門が開いて進軍が開始されるのを待つ。此処までは、特に問題なくこぎ着けそうね。


『――優姫さん。』


 今後の段取りを頭ん中でイメージしつつ、着実に軍門への道程を歩いていると、不意にシフォンの呼び掛けが耳に届く。声の様子からして、多少なりとも緊張しているのが伝わってくる。


「どうしたの?何か新しい動きでもあった?」

『えぇ。たった今、シマズ将軍とバージナル王が姿を現しましたわ。』

「そう、なら少し急がないとかしらね。」


 その報告を受けたあたしは、言うが早いか歩く速度を速める。なるべく軍門が開き始める前には、側に居て待機しておきたいからね。


 ただその為だけに、わざわざ荒野の中ぼっちで待機してたんだし。ここで出遅れちゃったら、それこそ目も当てられないからね。


 そう考えながら逸る気持ちを抑えつけ、なるべく慎重に歩を進める。程なく、道程もあと半分と成った所で、万全を期す為にエリアサイレントの腕輪を発動しようかと思案する。


 エリアサイレント発動すると、通信リングからの声は聞こえるんだけど、こっちからの発言が掻き消されちゃうからね。使い所がちょっと難しいのよ。


『――これで聞こえるのかい?おぉ~い優姫!アタイだよ!!』

「リンダ?」


 等と考えていたちょうどその時、精霊界で待機している筈のリンダから通信が入り、直ぐさま応答する。


『大分慌ただしくなってきたって言うのに、急に横やり入れちまって、すまないねぇ。』

「謝る必要なんて無いわよ、急な用件なんでしょ?それで、どうしたの?」

『いやさ。それが今し方――あ~…なんて言ったかねぇ風華?』


 あたしが用件を尋ねると、何故だかリンダの返答が詰まる。そして、恐らく風華に彼女が尋ねたんだろうその直後――


『――夜天だよぉ~もぉ~ちゃんと名前覚えて欲しいなぁ~』


 通信リング越しに、暫く振りに聞く特徴あるその間延び声。紛う事無く、夜天の声で間違いなかった。


「夜天!」

『やっほぉ~マスタ~戻ったよぉ~』


 彼女の突然の帰還に、嬉しさの余り思わず声を上げてその名を呼ぶ。直後に返ってきた、そのあっけらかんとした間延び声を聞いた瞬間、全身の力がふと緩むのを自覚する。


 多少なりとも緊張している自覚はがあったけど、どうやら自分が自覚してた以上に、余計な力が入っていたらしい。それが、正しくこのタイミングで抜けるなんてね…


 夜天ってば、もしかしたら幸運の女神様か何かの化身じゃないかしらね?もし狙って遣ってたとしたら、間違いなくマジモンよね~


『夜天!随分遅かったじゃ無い!』

『ぶぅ~そんな怒鳴らないでよ、銀~こっちだって色々大変だったんだよぉ~』

「そうみたいね、お疲れ様。けどごめんね、今その報告を詳しく聞いてる余裕が無いのよ。」

『うん~風ちゃんから聞いたよぉ~ギリギリになっちゃってごめんね、マスタ~』

『とにかく、夜天が戻ったんなら直ぐにエイミー達を呼び戻さないとですよね。すぐに姫華を向かわせますね、マスター』

「うんお願い。それと、これからあたし返事返せそうに無いから、後の事任せるわね。」

『解りましたわ。何かありましたら、逐一報告しますわね。』

「えぇ、お願いね。」


 最後にそう言って会話を締めくくったあたしは、エリアサイレンスの腕輪を発動する。軍門までの距離は、およそ400メートルと言った所かしら。


 もう目と鼻の先と言っても、過言じゃ無い距離まで辿り着いた。ここから先は、より一層慎重にならないといけない。


 けどそうは思っても、誰かさんのお陰で変に気負いしてない上、体調だってバッチリだし、これ以上無いってコンディションなのよね~良い感じだわ。

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