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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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異世界うるるん滞在記~子連れJKが、みかんのはこを装備した~(1)

『――優姫さん、聞こえておりますか?』


 夜の帳が降りた荒野の一角。巨大な岩陰に背中を預け、満天の星空を1人見上げて満喫していると、不意にシフォンの声が耳元で響く。


 けど、今あたしの居る場所に彼女の姿は無く、他の仲間達の姿も無い。だだっ広い荒廃した荒野で、ぼっちナゥなあたしです(ぇ


 …ミステラレタワケジャナイヨ?


「えぇ。ちゃんと聞こえてるわよシフォン。」


 星空を見上げたままあたしは、徐に指に填めたリング状の眷属を口元に寄せると、そこへ向かって話しかけ…


 って、そうだ。ついうっかり携帯のノリで語りかけちゃった。


 マイクとかスピーカーがこのリングに内蔵されてる訳じゃ無いんだから、近づけなくても通じるんだったわ。染みついた習慣って、おっそろしいわぁ~


 まぁそれはそれとして。もう既にお気付きでしょうが、一応…


 今あたしが話しかけたリングこそが、前回もったいぶって紹介してた例のブツ。こと、長距離念話の魔法器を眷属化した代物でござ~い!


 差し当たって通信リングと命名。眷属化して直ぐメンバー分の複製(レプリカ)も作成したわ。


 その性能なんだけど、詳しく検証する暇が無いので、有効範囲がどの位かってのは不明。ただ、精霊界と現実世界との通信は可能だったのよね~


 と言う事は、今までの事から考えると、精霊界介せばこの惑星全土をカバー出来る筈。だとしたら、めっちゃ優秀や~ん。


 その他、実際に使用して解った事だけど…複製品(レプリカ)版通信リングは、受信に際して消費される魔力は、複製品(レプリカ)を構成する部分から消費されるのに対し、発信の際は所持者が魔力を込めないといけない。


 その込める量って言うのも、シフォン曰くそんな大した量じゃ無いみたいな。本家本元の長距離念話魔道具と比べて、5分の1程度らしい。


 ただその本家魔道具の場合は、距離によって消費される魔力量が変動するから、あくまで目安らしいけど。ちなオリジナルの場合は、受信・送信共に魔力負担は無しね。


 これだけ聞くと、ばりめっちゃ優秀や~んって思うんだけど…デメリットというか、欠点もあるのよね~


 と言うのもこの通信リング、個別に送信相手選べないのよ。だから、このリングを身に着けた状態で誰かが発言送信したら、身に着けてる全員に受信されちゃう。


 しかもオン・オフ不可。内緒話なんて出来ましぇ~ん。


 作成した複製品(レプリカ)に追加で魔力払えば、その辺の機能ももしかすると改善されるかも?まぁでも、致命的なデメリットって訳じゃ無いので、とりあえずそのまま使用してるって感じかな。


 ってか、なんとなくなんだけど、据え置きの親機と子機の関係ぽいなぁ~って、チラッと思ったのよね。オリジナル在りきで、複製品(レプリカ)達が繋がってるみたいな。


 そう考えると、個別送信出来ないのは勿論、通信距離や消費魔力の少なさも納得出来るのよね。だとしたら、オリジナル眷属同士じゃなきゃ、個別通信出来ないんじゃね?


 まぁだとしても、現状オリジナルはあたしが使ってる1個しかないので、その辺りの検証はその内出来たらなぁ~って感じかしらね。


 さておき――


「――バージナルの様子はどう?何か目立った変化でもあった?」


 そう言ってあたしは、星空を見上げるのを止めると、岩陰から少しだけ顔を除かせ向こう側を伺う。その先に、あたし達の目的地であるバージナルがある。


 正確には、都市まるごと覆い隠す様に聳える巨大な外壁と、その外壁に劣らない馬鹿みたいに大っきい門扉だ。でかいでかいとは聞いてたけど、いやぁ~…


 ここ、進撃の〇人のロケ地ですかね?


 周囲に見回りの兵達が居るから、距離を取って1キロ位離れてるんだけど…ここからでもハッキリと、その巨大さが解るからね。


 絶対あれ中に5~60m級居るって!塗り固められてるって!!って、思う位の大きさだわ。


 冗談はまぁさておき。ここから見えるあのでっかい門扉こそ、潜入を図ろうとしている例の軍門だった。


 あと数時間もしない内に、あの門が大きく開け放たれ進軍が開始されるはず。その瞬間に備えてあたしは、1人寂しくずっと此処で待ち構えているという訳よ。


 待ち続けて、かれこれ2時間ナゥ。そりゃ手持ち無沙汰で、柄にも無く星空鑑賞しちゃいますとも。


 通信リングのお陰で、特に風華とオヒメがしきりに連絡くれて、話し相手に困る事も無く寂しくなかったしね~


『そうですわね…軍門前の広場に、大分兵士達が集まりましたが、出兵にはまだ時間が掛かりそうですわね。』

「そう。」


 さておき。先の質問に対するシフォンの報告を受けたあたしは、岩陰に顔を引っ込め再び腰を落ち着ける。


 この分だと、まだもうちょい時間が掛かりそうね。ん~…


 寂しくないけど、手持ち無沙汰だと落ち着かないのよね。こういう時に検証とか出来れば良いんだけど、下手な事して見回りの兵士に見つかったら元も子もないしね~


 こういう時、つくづく元の世界が便利だったと、思い知らされるのよね~スマホ1つで、いろんな娯楽に一瞬でアクセス出来るんだからさ。


 まぁそれはそれとして。この場に居ないシフォンが、どうやってバージナルの様子を見ているかなんだけど。


 あたしの居る地点から、北北東におよそ20キロ進んだ先に小高い山があるわ。その山の中腹に、突き出すような形をした崖があるんだけど、そこからバージナルの街並みが一望出来るの。


 その場所に、監視役のシフォンが陣取ってると、そういう訳です。あたしがここで待機する前、彼女をその崖まで送り届けてきたんだけど、かなり見晴らし良くってね~


 街全体を俯瞰で見るには、正しく打って付けって場所だったわ。ちな、この場所教えてくれたの明陽さん。


 なんでも、むか~しバージナルでクーデターが起こったそうなんだけど。その際に反乱軍が、その崖から街を監視するのに利用していたとか、なんとか。


 そんな事に利用されてた前例が在るんなら、向こうが警戒しない筈無いじゃん?とも思ったんだけどね~


 監視小屋の類いは愚か、見回りもされていないらしい。正直、マジ?とも思ったんだけど…よくよく聞いたら、歴とした理由があったのよね。


 と言うのも、今シフォンが待機しているその山って、ルアナ大陸北部に広がるノーレフス連峰に連なる山の1つでね。平地から連峰の奥地に向かう事の出来る、数少ないルートの1つでもあるの。

 

 ノーレフス連峰と言えば、この世界の守護獣筆頭であり、最強にして最大戦力との呼び声高い、龍王・ミョルムの領域――と言ってもその山自体は、領域のギリギリ外らしいんだけどね。


 でもまぁ、人知を超えた龍種との境界線みたいな場所に、バージナルの都合で監視所作ったり、哨戒部隊を向かわせたりするのは余りにもリスクが高い。下手に刺激してお怒り買ったら、たまったもんじゃ無いからね。


 なもんだから、何の目的も無くその崖にバージナル兵が足を運ぶって事態は、まずあり得ないから安心なんだそう。まぁでも、街側から常に監視されてて、異常があったら即駆け付けて来るとも言われたんだけど…


 じゃぁ結局駄目じゃんって?ふっふっふっ…


 そこでご紹介致しまするわ、通信リングに次ぐ眷属化した魔法器第2弾!その名も『インビジブルマント』~(トゥットゥルゥ~


 こちらのマント!ズバリ、透明化の魔法『インビジブル』を込めさせていただきました!(深夜帯のショップチャンネルのノリ


 皆さん、1度位透明化したい…なんて、そんな願望を抱いた事が在るのでは無いでしょうか?


 こちらの商品、そんな皆様方の欲深い願望を叶えさせてくれる一品!そんな夢のような商品も、異世界には存在しているのです!!


 通常でしたらこちらの商品、魔道具としての市場価格は、なななんと!金貨200枚!!最低でも金貨200枚です!!


 しか~し!我がヴァルキリー商店の独自ルート(眷属化)を以てすれば、銀貨8枚で仕入れが可能!!


 ここだけの話仕入れ値の内訳は――オリハルコン製のマ(材料費)ントと、シフォンの労力(プライスレス)のみ!


 お金で買えない価値がある(しみじみ


 …え?急にテンションどうしたかって?


 夜のだだっ広い荒野ん中、何もする事無くて1人寂しく、体育座りで夜空を見上げ続けてご覧なさいよ。病むよ?


 過集中ん時は、どんだけぼっちでも気になんないんだけど、そうじゃないとぼっち耐性低いのよあたし…ちょこちょこオヒメや風華から、話し掛けられてるっても限界あんのよ。


 だからこう、何時にも増してフルスロットルで馬鹿な事考えて、なんとかバランス取ってる訳ですたい。まぁ、それはそれとして…


 そのマントを着用してれば、いくらバージナル側から監視されていたとしても、シフォンが発見される心配は、まず無いと言って良いでしょうね。


 まぁそれはそれとして、どうしてそのマントの制作者である彼女が、眷属に頼ってんのかって話よね?そもそも、インビジブル使える訳だし。


 その理由は、まぁ幾つかあるんだけども…まず、普通に魔法として行使した場合、その維持に掛かる魔力が割と高いそうなのよ。


 短いスパンで使用する分には問題ないんだけれど、今回は長丁場になりそうだからね~流石のシフォンでも、通常の運用じゃ1日と保たずに魔力が枯渇しかねない。


 しかもそれって、体調が万全って状態だったら話だからね。ルアナ撤退戦時の消耗が、完全に回復しきれていない今の彼女じゃ数時間と保たない筈だs…


 そんなシフォンの労力を、プライスレスと宣うあたしの鬼畜ッぷりたら無いわね~


 とまぁそういった事情から、彼女にこそインビジブルマントが必要って訳。因みに、シフォンが持ってるのがオリジナルで、今あたしが装着してる方が複製品(レプリカ)ね。


 ついでだから性能の違いも明記しておこうかしら。


 とりまオリジナルは、能力発動時に多少魔力を必要とするけど、効果持続中の魔力消費は一切無し。効果範囲は、装着者が触れている人や物まで対象となる。


 それから1回の発動で、持続する効果時間が2時間ちょい。それも効果が切れる前に、再発動が可能ときてる。


 つまり理論上、永続発動も可能っていうね。同じ効果が付与されてる魔道具でも、此処までの性能の物となると、伝説級のアーティファクトっぽいのよね~


 その一方で複製品(レプリカ)の性能だけど。効果持続中の魔力消費が無しって言うのと、効果範囲の部分はオリジナルと一緒。


 その一方で、能力発動時に必要な魔力量がちょっと多くなってるみたい。それと効果時間が40分と大分短くなっている上、効果が切れたら1時間のリチャージが必要。


 と言っても複製品(レプリカ)の場合、能力増強で更に魔力を注ぎ込めば、その辺の改善が出来るので改善が可能と。ただ、流石にオリジナルと同等とまではいかないけどね。


 けどまぁ、そのままでも十分過ぎる性能だし、今敢えてそれをする必要はないかな。と言うか、そんな事して大量に魔力消費するよりも、オリジナル増やした方が、コスパ的に良いからね~


 しかし今回は、流石にシフォンの魔力面もそうだし、何より時間的に余裕無いからまず無理だけども――とまぁ、急に話戻すけどシフォンにオリジナルの方持たせた理由が、正しくその点なのよね。


 今回の救出作戦における、最大のキーアイテムと言って過言じゃ無いのが、これら魔法器の眷属達。これから迎える筈の活躍の場たるや、徹頭徹尾余すところなく在ると言っても過言じゃ無いわ。


 だから、様々な用途に応じた色々な魔法器達が、この他にも複数必要になってくる。今あたしが手首に装着してる腕輪も、何を隠そうその内の1つ。


 この腕輪には、『エリアサイレント』と言う魔法が封じ込められている。効果は読んで字の如く、消音効果を持つ力場を発生させるという魔法。


 本来この魔法は、魔法戦における敵魔法使いの詠唱阻害や、指揮系統の妨害なんかで広く利用されてきた。その一方で、高い消音作用に目を付けた隠密系の職業が、気配遮断を目的として利用する事もあるという便利な魔法だ。


 この腕輪とインビジブルマントのコンボで、ルアナ大陸の移動もバイクで楽々出来たのよね。姿を消しつつ、バイクの騒音も完全遮断ってな具合にね。


 でも、実を言うとリク港出発時には、まだエリアサイレントの腕輪眷属化して無くてね~インビジブルマントだけ装着して、明陽さん達連れて無理矢理バイク移動開始したの。


 魔法器が手軽に作れるって説明したと思うけど、それはあくまで本家の魔道具を作成する手間暇に比べてっ話でね。付与する魔法の種類や、込める魔力量によっては、結構時間掛かったりするのよね。


 なもんだからこのエリアサイレントの腕輪も、あたし達の移動中に完成してね。それをオヒメに眷属化してもらって、それを召喚して途中から併用してたのよね~


 …なんでこんな話を今するかって?


 そりゃ~、今こうして居る間にも、シフォンが魔法器の生産を着々と行っているからですよ。


 そんな状態のシフォンが、他の事に魔力を割くなんて出来る訳無いやん?そんな彼女の労力、プライスレス(ひでぇ

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