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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第二章 訪問編
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いちからはじめるいせかいかんこう(のーまる?)(2)

 後はまぁ単純に、嫌がるあたしを半ば強引に連れ出して、現在に至る訳なんだけれど…あたしもだけど、ジョンキュンもたいがい巻き込まれ型よね。一緒になって連れてこられちゃってるんだから。


 そのジョンキュンは、さっきあたしが首を横に振ったもんだから、必要以上にオロオロしている所だった。か~わ~い~い~!


 と、現実逃避するのもその位にして、髪を纏め終えたあたしは、改めてリンダへと向き直る。見ると彼女は、準備体操を終えて、二の腕を組んで仁王立ちしていた。


 う~ん…勝てる気がしない。いや、冗談抜きで。


 そもそもの話、居合って技自体、手合わせしようと言われて、手加減出来るような技術じゃないのよね、実際。後の先の境地って、まず後出しで相手の技自体を、無効化するのが前提なのよね~でないと当然だけど、こっちが負けちゃう訳だし。


 かと言って、本気で居合をしようとなったら、今度は相手の命に関わってくる。単純な話、後の先の境地って言うのは、相手にわざと先に攻撃を仕掛けさせて、回避も防御も不可能な状況に追い込んだ所に、相手よりも早く一撃を与えるという、言うなれば究極の後出しじゃんけんだ。


 つまり逆を言えば、こちらも不退転の覚悟で挑まないといけないと言う事で、手加減なんて出来る余地が無いのよね。必勝と必殺の確信が無きゃ、とてもじゃないけどやらないわよ。


 今更だけど、居合って武術って括りだけれど、割と武道寄りなのよね~元は色々な流派で取り入れられていた、抜刀術がベースなんだけど、いくつもある技の中で、ただ1つの技のみに特化させて、個の境地を目指しているんだから。


 基本的に武術も武道も、相手が居るから研鑽を積んで昇華する事が出来る。武道であれば対戦相手だし、武術であればすなわち実戦…戦だ。


 だけど居合は、対個に対しては絶大な脅威になり得るけれど、対多数を相手にさせたら、勝てる見込みなんてほとんど無いのよね〜


 まぁ例外も居るけどね、ルッ◯〜ンの石川五○衛門とか。あれはもう例外中の例外ですよ、居合の達人て言うより、実戦戦闘の達人でしょあれ…


 それはさて置き、それを踏まえて、なぜ勝てる気がしないのかって言うと…居合で挑めば多分勝てる。けど、模擬戦で命のやりとりなんて、したくないのでしませんって単にそういう箏です。


 そうなると、剣道を主体に挑むしかないんだけど…多分だけど、あたしとリンダの技量差は、率直に言って、彼女の方が僅かに上だと思う。それは、身体能力や運否天賦(うんぷてんぷ)で簡単に覆せるレベルでしょうね。


 けどそれ以上に、純粋な実戦経験の差で、あたしは彼女の足元にも及ばないでしょうね。こればっかりは、身体能力や運なんかじゃ、簡単には覆せないわ。


 見てよ、あのリンダの表情や態度。多分30手前位なんでしょうけど、同じ女とは思えないくらい、筋骨隆々で羨ま…じゃなくて、自信に満ち溢れた立ち居振る舞いで、その若さで王者の風格を醸し出していた。


 ま、要するにお互いの得物同士での打ち合いじゃ、まるっきり勝ち目は見込めないって事。癪だけどね〜


 それに、彼女のあの巨大な戦斧は、多分だけど…


「ねぇ、ここまで来て何なんだけど、模擬戦を受ける変わりに、あたしからも1つ良いかしら?

「あん?何だい?」


 視線をリンダに向けたまま、軽く身体をほぐしつつ、あたしは彼女に、ある提案を持ちかけ様と口を開いた。


「この試合、お互い武器無しでって事で

「はぁ?それじゃあんたの技が見れないだろう

「それよそれ。あたしの技が見たいって言うけど、あたしの技は手加減なんて出来ないし、手加減しようものなら、自分がやられる様な技なのよ。見たいだけなら、その辺の木で実演してあげるって言ったでしょ

「それじゃ面白くないさね。対峙して、肌で感じてこそだって、あんただってそう思うだろう?

「いやいや、面白い面白くないの問題じゃ無いし。思わなくも無いけど、ただの手合わせで、いちいち命の遣り取りなんてしたくないし。それに…」


 そこで言葉を切って、あたしはリンダの相棒事、身の丈はあるだろう大きな戦斧を指差した。


「それ、この世界の武器じゃ無いでしょ

「おや、気付いてたのかい?

「ま~ね。」


 あたしの言葉に、少し驚いた様子のリンダに、あたしは思わず得意げに胸を張って答えてみせた。


 どうやら感じた通りだったみたいね。昨日この世界の武器をいくつか手にしてみたけど、見た目にしては軽く感じてたのよね~


 特に昨日使ったロングソードは、あたしが今手にしている兼定よりも、幅広で刃渡りも長くて肉厚で、明らかに使われているだろう金属量が多い筈なのに、兼定よりも若干軽かったのよね。軽くて頑丈な素材だって言うなら良いんだけど、昨日戦った盗賊団のリーダーの、ソニックブレイドとかいうオリジナルスキルで、簡単に斬られてたから、それは無いでしょうね。


 多分だけど、この世界の物質は、あたしが元居た世界よりも質量自体が軽いのか、密度が少ないのかの、どっちかなんでしょうね~打ち付けた時の金属音も、なんか軽い感じだったし。


 それに比べて、彼女の振るう武器は、少し触らせてもらったんだけど、あたしが想像した通りの重さだった(って言うか、両手でギリギリ持ち上げるのがやっとでした。)それに、この世界の武器とは明らかに存在感が違うのよね~


 だから、すぐにそれがこの世界の武器じゃ無いって言うのが解った。考えてみれば当然よね、あたしみたいに異世界から来た人間が、持ち込んだ武器や道具が、そのままこの世界に取り残されてしまうと言う事は、もちろん考えられるでしょうし。もしかしたら、スマホとかもあるかも?使えるかどうかは別だけど、電池が残ってれば写真くらいは撮れるでしょうね。


 それより、あたしが両手でギリギリ持ち上げられるかどうかの、文字通りの超重量級武器を、片手で軽々扱えるリンダの腕力は、この世界の人間のそれを超えてるように思うのよね~


「リンダさん、もしかしてあなた…

「あたいも異世界人じゃ無いかって?残念だけど、それは違うさね。」


 あたしの言葉を先回りして、リンダがそう答えると、傍らに突き立てられた戦斧を、笑みを浮かべながら視線を向けて、軽く小突いてみせる。


「確かに、こいつはこの世界の住人にゃ重すぎる武器さね。けど、あたいみたいに好き好んで、異世界の武器を使いたがる奴も居るんさね。そうした奴らは、大概スキルのエンチャントアビリティや、ストロングスを、常時発動しているんさね

「なるほどね~」


 彼女の説明に、あたしは納得して頷いた。この世界には、魔力を使って発動する、スキルなんて便利な力があるのよね~


 常時発動なんて、言うほど容易くは無いんでしょうけど、確かにそれなら、異世界人の身体能力に対抗できるし、スキル自体の練度も上がるでしょうね。それに、基礎体力の向上や、魔力とかの強化にも繋がりそうだし、一石四鳥位の効果は望めそうよね。


「ま、それはとにかくさ。その武器相手に斬った張ったなんてしたくないのよね~下手したら折れそうだし。一応家宝だからさ、万が一があったら、向こうでどやされちゃうのはあたしなのよ

「なんだい?叱られるのが怖いのかい?

「そりゃそうよ。うちのじいちゃんは、鬼や悪魔なんかより、よっぽど強いんだから

「なんだい、締まらないねぇ…

「まぁそう言わないでよ。正直な所、あたしもリンダさんとは、一度戦ってみたかったのよね~獲物無しでも、あなたなら十分出来るんでしょ?

「そりゃ…まぁねぇ。」


 あたしの言葉に、少し考えるそぶりを見せてから、リンダはそう呟くように答える。その答えを聞いて、あたしは不敵な笑みを浮かべてみせた。


「じゃぁ、あたしが素手が(こっちの方が)得意だって言ったら、どうする?」


 その言葉を聞いて、あからさまにリンダの表情が一変した。それはまるで、獲物を狙う獰猛な肉食獣の様な表情だった、まぁ怖い。

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