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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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異世界うるるん滞在記~子連れJKが、新大陸にやって来た~(11)

 ともあれこれ以上の深掘りは、ひとまず後回しにしておこう。それより今は…


「じゃぁ、街に居る奴隷の人達の中には、メアリー達の様な正規のルートから外れて連れてこられた人も居るって事ね?」

「うむ、確実に居るじゃろうな。」


 気持ちと思考を、同時に切り換えたあたしは、途中となっていた話の続きを切り出した。それに対し、明陽さんも即座に表情を引き締め、頷きながらハッキリとそう断言する。


 なる程、奴隷の事は奴隷に聞け…か。聞いて納得だけど、しかし胸くそが悪くなる話だわね。


「じゃが、仮に突き止めたとして、それでどうするつもりじゃ?」


 明陽さんの返事を受け、あたしがそんな事を考えていると、続けざま彼女からそんな質問を投げかけられる。


「Yes!私も優姫の意見に賛成です。ですが、幾ら作戦が上手くいって、バージナルの警備が手薄になるからって、街中で騒ぎを起こすのは得策じゃ無いんじゃ…」

「そうさねぇ。それに時間だって限られてるんだ。人手が惜しいこの状況じゃ、そっちまで手を回すのは、流石に厳しいんじゃないかい?」


 次いでミリア・リンダからも、あたしの考えに対し余り感触の宜しくない、否定的な意見が次々と上がる。確かに、あたし達の置かれている現状を考えると、彼女達がそう苦慮するのも仕方無い。


 けどあたしだって、何も感情に任せてただ我が儘を言ったつもりは無い。まだ漠然とだけど、ちゃんと考え在って提案したのだ。


 でなきゃ、難色を示すエイミー達に対し、あぁも大見得を切ったりなんてしないっての。


「あたしだって別に、札付きの悪党を真面目に相手しようだなんて、そんな殊勝な考え微塵も無いわ。そいつ等のアジトを特定して、そこにあたしの眷属さえ仕込んでおければ、ほぼそれで十分なのよ。」

「What?」

「どういう事だい?」


 先の質問に対しあたしは、さも当然とばかりの態度を殊更強調しつつ、事も無げにそう言って聞かせる。直後、怪訝そうな表情で聞き返してくる2人に向けて、口角を吊り上げニヤリとあくどい笑みを浮かべ――


「――2人を救出した後、設置した眷属目印に『流星雨(ミーティア)』撃ち込んじゃえば、一瞬で片が付くじゃない!」

「ホッ!怖い事を思い付くのぉ~」

「ちょ、優姫…それ周囲の無関係な建物にも被害出ますからね?」


 しれっと、恐ろしい事を口走るあたし。その発言に対し、間髪入れず明陽さんとエイミーの反応が、それぞれ返ってきた。


 この2人は、風の谷でその威力を目の当たりにしてるからね~幾らバージナルの上空に、幾重にも障壁が張られてるからって、『流星雨(ミーティア)』なら確実にぶち抜ける筈だもの。


 まぁそれはそれとして、2人と違って実際に目の当たりにした事の無い他のメンバー達は、一様に困惑気味に首を傾げている。デスヨネ~


 さっきも、しれっと会話の中に織り交ぜたんだけど、みんなの反応薄かったし説明省いたからね。アッハッハ~


 と言う訳で、恥ずかしながら『流星雨(ミーティア)』について口で説明。最初、ざっくり『刃物を成層圏から落下させるのん』って伝えたら、みんなに冷ややかな視線を向けられ、ドン引きされたの…


 ともあれ、これで共通の認識となった訳だけど、しかしその案について、みんなの反応は当然悪い。それもその筈、エイミーも言っているけど、そんな事したら周囲にどんな被害が出るか、解ったもんじゃ無いからね。


「…ま、流石にあたしも本気じゃ無いわよ。」


 そんな反応を一身に受け、自嘲気味に肩を竦めながらあたしは、みんなに対しそう呟いた。最初っから、冗談のつもりで提案しただけだからね~


 まぁ、白状して本音を言うと、半分位本気なんだけどね。人の命を商品として扱う様な外道な連中に、掛ける温情なんてさらさら無いし、確実に潰すならそれもアリって言う黒い衝動が、あたしの胸の内に確かに在る。


 けど、その衝動に駆られそんな事をしたら、それはもうただの狂人と変わらない。結果として、奴等と同じレベルの所まで、この身を堕とす事になるだろう。


 自分の信じた事の為とは言え、外道に墜ちる位なら地獄に落ちた方が、なんぼかマシだからね~それに何より、あたしが道を踏み外す所なんて、間違ってもオヒメ達に見せらんないじゃない?


 ま、それはそれとして…


「具体的にどうするかは、まぁ追々考えるとして。今回の潜入で、そいつ等のアジトを見つけ出して、どうにか眷属の設置までしておきたいのよ。」


 ただそれだけで良いのだと、敢えてその部分を強調しながら、自身の考えをみんなに告げる。本当に、物のついでで構わないのだ。


 ただアジトの場所さえ、突き止める事が出来れば良い。それさえ済ませてしまえば、後はヴァルキリーの権能を駆使して、如何様にでも対処出来るからね。


 それだけならば、本来の目的で在る救出作戦に、そこまで支障をきたしたりしないだろう。何とも安直だけど、そんな考えで出したあたしの提案に――


「――いえ、マスター。そこまでするんだったら、どうせですから両方一片に解決しましょう。」


 胸に抱いた銀星から、思ってもみなかった提案を突如されて、思わず肩がビクッとなった。お、おぉう…また銀星のターンか…


 目的を果たす為ならば、手段を選ばない彼女がそう宣言したからには、確実に遂行出来ると確信しての提案なんだろう。まさかまた、世界を巻き込みかねない内容なんじゃ無いよね?


 そう思うと、正直聞くのが怖い…けどこうして、折角あたしの為に考えてくれた訳だし、ちゃんと聞かなきゃ駄目よね。


 おし!覚悟完了!!ドンときんしゃいッ!!


「…それで銀星、どうするつもり?」


 さっき態度に表れちゃった反応に対し、咳払いで誤魔化しつつ――気持ちを切り替えたあたしは、視線を胸元の銀星へと移して、さも何事も無かったかの様に話を促す。


 …目が合った瞬間、彼女の表情がちょっとムッとなってたのは、きっと気の所為だったに違いない。


「…まぁ、そう難しい事じゃないんですが――」


 ともあれ銀星は、そんな風に前置きしつつ話を再開した。


「――先程、ミリアさんが懸念して仰った事が在るじゃ無いですか。」

「What?」


 その直後、突然彼女にそう言われたミリアが、驚いた様子で自分の事を指差しながら声を上げる。まさか自分が、話題に上るなんて思ってもみなかったんだろう。


 まぁそれはさておき。さっきのミリアの発言というと…


「…街中で騒ぎを起こすのは、不味いって話?」

「はい。」


 あたしが訝しがりながらそう尋ねると、直ぐさま頷きながら肯定して返す銀星。自信たっぷりに頷くその姿を目にし、彼女が提案しようとしている内容が、何となく想像出来てしまった。


 その想像が、正にその通りである事を、直後に銀星の口から聞かされる事となった。


「マスター達がバージナル城に潜入する少し前に、組織のアジトに敢えて襲撃を掛け、騒ぎを起こします。」


 まるで、それが当たり前かの様にあっさりと、事も無げにそう告げた銀星の発言を耳にし、誰も直ぐに反応出来なかった。余りに自然過ぎて、反応のしようがなかったというのもあるだろう。


 けどそれ以上に、ただでさえ人手が限られていて、そちらに回す余力が無いと話していた状況で、まさかの無茶振りされて、一瞬耳を疑ってしまったと言うのが正解だ。まさかとは思ったけど、やっぱりその案か…


 正直言って、あたしもその考えが無かった訳じゃない。けど、それを実践するとなると、現状でも余裕が無いと言うのに、更に幾つかの課題をクリアしないといけなくなる。


 まず第1に、バージナルを根城にする、犯罪組織の全容の解明は必須だ。どれだけの戦力が居て、どの位の規模なのか解らない事には、囮役としてそちらに割く人員の人数も、当然決められない。


 全貌把握とも成れば、それだけ時間だって掛かるし、アジトの数だって1つだけとは限らない。それだけならまだしも、まだ売られる前の奴隷の人達だって、アジト内で監禁されている可能性だってあるんだし、その辺の把握だってしなくちゃいけない。


 そして第2に、囮役となるみんなの安全マージンの確保だ。これには、脱出経路の確保は勿論、綿密な作戦と徹底した打ち合わせが求められる。


 実践する上で、1番の要となるのが囮役だからね。安全に安全を重ねて、更に重ねる位じゃ無いと心配だもの。


 当初あたしは、行きがけの駄賃位の気持ちで、犯罪組織の根城を暴くつもりだったのよ。なのに、本命でも無いのに危険を伴う上、それで取り返しの付かない怪我でもされたんじゃ、悔いても悔やみきれないからね。


 けど、そっちを手厚くするとなると今度は、肝心な救出作戦の人員に影響が出てしまう。それが3番目にして、1番どうにかしなければならない課題だ。


 兎にも角にも、今のあたし達の人数じゃ手が足りず、余りにも現実的な作戦じゃなかった。だからあたしも、考えこそすれ口に出さなかった。


 明陽さん達の協力があれば、或いはそれも可能かも知れないと、恥知らずにもそんな事を考えてしまった。ユニコーン達を森から連れ出すだけで、協力としては充分過ぎるぐらいだし、それ以上を望むなんて事、厚かましいあたしにだって流石に出来無いわ。


「その騒ぎに乗じれば…」

「あ~…銀星?」


 だからもし、銀星が2人の事も頭数に入れて提案してるんだとしたら、流石に賛成出来ない。その思いから、尚も説明を続ける彼女の言葉を、その名を呼んであたし自ら遮った。


「はい。なんですか、マスター?」

「あたしもさ、その案は考えてみたんだ。けど…言い難いんだけど、この人数で二面作戦なんて、流石に厳しくない?」


 素直に呼びかけに応じ話を中断した銀星が、抱き抱えた胸の内からあたしの事を、キョトンとした表情で見上げてくる。そのつぶらな瞳を、申し訳なく思いながら見下ろして、言い辛い事を渋々口に出し聞かせる。


「規模がどの位かだって解らないんだし、そんな状態で、アジトの制圧に割く人員の相談するなんて…」

「あ、いえマスター――」


 そこまであたしが言葉を続けた直後、はたと気付いた様子であたしの言葉を遮り――


「――アジトの制圧に、人員を割り当てるつもりなんて在りませんよ?」


 ――またぞろこの子は、とんでもない事を口走りました。


 またもや誰も、直ぐにその発言に対し、反応出来なかった。けど今回は、ただ耳を疑った訳じゃなく、銀星が何を言ってるのかまるで理解出来ずに、みんな完全にフリーズ状態。


 それだけ彼女の発言は、突拍子も無く奇天烈極まりない事だった。


「…え?」

「何ですって?」

「What!?」

「おいおい、正気で言ってんのかい。」

「ホッ!またぞろ面白そうな事を、思い付いたようじゃなそのちびっ子は。」


 一瞬遅れで、銀星の言った言葉の内容を理解したあたし達から、混乱めいたどよめきが上がり始める。ってか、ちびっ子がちびっ子言うなや…←まだ混乱してる


「あの、マスター…先を説明しても良いですか?」

「え、えっ!?あっ!あぁ…は、はい!オネシャス!!」


 そのどよめきに対し、まるで意に介した様子も無く銀星は、ただ困った様子で苦笑しながら、あたしの許可を求めてくる。そんな彼女に向かって、みっともなくしどろもどろになりながら、慌てて頭を下げて返事を返すあたし。


 そんなあたしの反応を受け銀星は、一瞬目を丸くして驚いた後、困った様子ではにかんだ笑みを浮かべる。どうやら、あたしの危惧した事なんて、全て織り込み済みだったらしい。


 それなのにあたしったら…銀星さんの邪魔して、ほんとサーセンしたっ!みっともないなぁ~もう、これじゃマスター失格じゃ無い。


「えっと…じゃぁ、皆さん具体的な方法が気になってるようですし、前置きは無しにして、そちらを説明しますね――」


 ともあれ、そう前置きすると銀星は、その詳細な方法についてのプレゼンを開始した――


………

……


 引っ張り過ぎちゃってゴメン!以降、次章に続くよ!!

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