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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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異世界うるるん滞在記~子連れJKが、新大陸にやって来た~(4)

 まぁ、それはさてをきとして…


「こんな感じでツッコまれつつ、提案させていただきます本命C案。ギルドの船で普通に入国。」

「何の捻りも無いねぇ…」

「と言いますか、結局一周しただけですわよね?」


 すかさず返ってきた手厳しい意見に、思わず苦笑を漏らし肩を竦めて見せる。まぁね、これだけ引っ張って結局それかよって、突っ込みたい気持ちはよくわかる。


 何を隠そう、正にあたしがそう思ってるからね!


「確かにそう思われても仕方ない提案よね。けどそういう感想は、内容を最後まで聞いてからにしてほしいわ。」


 よく解るけども、こうしてわざわざ勿体ぶって提案する以上、その詳細は前述の2つ以上だと自信を持って言えるものだ。それが通じたのか、今し方呆れ顔でツッコミを入れていた筈2人も、既に聞く姿勢をとっていた。


「今更説明するまでもないと思うけど、あたしの――と言うより、精霊王の固有能力である精霊界を利用すれば、わざわざ大人数で移動する必要は無いわ。それこそ、あたし1人で船に乗り込んで移動出来れば、それだけでみんな一緒に移動した事になる、とんでも能力だからね。」

「確かに、規格外の能力ですわよね。間接的とはいえ、最高位である空間魔術を再現出来るんですから。」

「最初に提案した2つの案ってのも、その能力があってこそってのは、アタイでも解るよ。」


 詳細を説明する前に、合流してまだ間もない仲間達に向けての前置きとして、精霊界の能力がどう言ったものかの簡単なおさらいを口にする。そして、返えってきたそれぞれの反応を聞き、無言で頷いてみせる。


「けどね優姫、あんた1人でルアナ行きの船に乗る事は不可能だよ?あんたの持ってるギルド証だと、銀以上の冒険者の同伴が必要さね。」


 その直後、リンダが訝しがりながらそんな事を聞いてくる。物の例えで1人って言っただけなんだったけど、まさか本気にしてないよね?


「…リンダ。いくら何でもその位の事、事前にエイミーから伺っていますわよ。」

「そ、そうかい?すまねぇ、話の腰を折っちまった」


 …おんやぁ?まさか本気で思ってたのかい??


 ともあれ、リンダが今し方口にした情報は、シフォンの指摘通り勿論事前に把握済みだ。何時起きるともしれない蟲人達の苛烈な侵略に備え、不可侵エリア手前に設営された前線基地は、何時だって人手不足だ。


 有事の際には、それこそ猫の手も借りたい程だろう。よく『戦争の勝敗は、平時に際しての備え如何で決まる。』なんて言う位だし、余剰戦力が多いに越した事は無いわよね。


 けどだからって、実力の伴わない物や若手の冒険者を大量に投入しても、そのほとんどが蟲人の侵攻で虐殺されるのは、火を見るよりも明らかだ。単なる力不足で自分が犠牲になるならまだマシだけど、巻き添えで高位の実力者に被害が出る可能性だってある。


 その為ギルドでは、基本的に銅Ⅰ等級以下の冒険者が、ルアナ大陸に渡航するのを原則禁止にしていた。もしも基準を満たしていない者が、それでもルアナに渡る場合は、リンダが指摘した通り銀等級以上の者が、お守り役として同伴する必要があるのだ。


 割と厳しめな渡航制限だけど、それを設けるを得ない事情もあるみたい。そもそも、自ら進んで危険と隣り合わせの生業を選んだ者達こそ、この世界の冒険者達なのだ。


 そんな者達が、手っ取り早く名を上げたり稼いだりするのに、ルアナの前線程打って付けの場所は、この世界広しと言えど他に無い。何より、彼等の最終到達点の1つである金等級に上がる為には、ルアナの前線で戦果を上げる事も必要なんだから。


 そう言った事情に加えて、生来の怖い物知らず共と来れば、猫がチュ○ルにまっしぐらするが如く、ルアナを目指したくなるだろう。身の程を弁えない、お調子者なんかは特にね。


 そう言った無意味な犠牲と、必然的に発生するだろう2次被害を、未然に防ぐ為の制限措置って事みたいね。まぁ、その所為で人手不足にも陥ってんだけど、足手纏いに足引っ張られるのとどっちがマシかって聞かれたら、あたしでも前者が良いって即答するわ。


 ネトゲのマナーでもあるじゃん?仲良かろうと寄生厨、駄目。絶対。


 野良で遭遇するとかなら、もう当たり屋みたいなもんと割り切って、完無視するのが正解だけどね。けど、ど~~~してもエンドコンテンツクリアしたいからって、フレに何度付き合わされた事か…


 なんとか攻略した~っと思ったら、『出来たら周回したい』とかのたわまれてたりしてね。出来たらじゃない、そこは遠慮してⅠ回で満足しときなさいよってね。


 そう言うのが煩わしくなって、火力ブッパなRPG系からは足を洗って、今はリズムゲーにのめり込んでるらしいですよ?一時期、某アプリゲー上位50位のランカーまで登り詰めた人がね…(誰の話かはお察し☆


 …何?あんまメタな発言するなって??え~、それは最近サービス開始したリズムゲーに、開始初日から課金した人に言って下さい。


 ってか、むしろ言ってやって下さい(ぁ


「シフォンの言う通り、その辺りの事情は、ちゃんと理解してるわ。」


 兎にも角にも、話を先に進めましょうか。2人のやり取りを前にあたしは、苦笑を浮かべ肩を竦めながら、リンダに対してそう答える。


「だからギルドの船に乗るのは、あたしと()()1()()――」

「「ッ!?」」

「わぁっ!?」


 更にそう言葉を続けながらあたしは、今身に着けている衣服に手を添える。その直後、瞬き程の僅かな時間に、自身の衣服を別の複製品(レプリカ)へと切り換えた。


 ついでに!銀星もあたしとお揃いでお色直しイエェーッ!!


「…マスター、遊ばないで下さい。」


 …怒られちゃった(´・ω・`)ショボーン


「どうなってんだい?こりゃ…」

「全く…今日はつくづく、貴女に驚かされてばかりですわね。」


 銀星の反応は、ひとまず横に置いといて…一瞬の出来事に、驚きの反応に見せる彼女達に対しあたしは、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。


 いやぁ~期待以上の反応だわ。これでこそ、早替わりで有名な歌舞伎の演者さんだって、舌を巻く程の早業(?)を、披露した甲斐があるってなものよね。


「…っと、その1人が誰かは、この恰好見てくれれば判るわよね?」


 一頻り3人の反応を楽しんだ後、態とらしく戯けた振りしてそう言いながら、その場でクルリと1回転してみせる。今、あたしが身に着けている衣服、それは――


「…なる程。優姫さんがユズリハ殿の変装をして、スメラギ殿と共に乗船すると言う訳ですわね。」

「そそ、そう言う事~」


 ――希望のスメラギ、そして正義のユズリハとして、この世界で活躍する守護者達が身に着けている白装束だ。ベファゴ戦の時、2人の関係者と思わせようとして眷属化していたのが、ここでも役に立つんだから、何でもお手つきしておくものよね~


 ともあれ、あたしと銀星のペアルック姿を前に、こちらの思惑を察したシフォンが、口角を吊り上げニヤリと笑いながら告げる。それにウィンクしながら答えた直後――


「ちょっと待てい!!」

「「えっ!?」」


 ――突然、横合いから大声で怒鳴られて、その場に居た一同ビックリしながら慌てて振り向く。声の主は、言わずもなが明陽さんである。


 それまで、ベッドの上でゴロゴロしながら、基本退屈そうにあたし達の会話を流し聞き、気まぐれで会話に参加していた明陽さん。しかし今の彼女は、ベッドから身を乗り出す様な姿勢で四つん這いになり、眉を吊り上げ怒りの形相をあたし達に向けている。


 あたし達…と言うよりも、シフォンに向けてと言った方が正確だろうか?


 ってか、え?なんで急に怒ってんのこの人??


「な、なんですの?」

「ス、スメラギ様?」

「ちょっ、どうしたのよ明陽さん??」

「どうしたもこうしたもあるか!!」


 怒りの形相を浮かべる明陽さんに対し、困惑しつつ恐る恐る話しかけるあたし達。それが怒れる彼女の逆鱗に触れたのか、今にも噛み付きそうな勢いで喚き散らす。


 直後に彼女は、ビシッとシフォンを指さし――


「何故儂じゃと決めつけるんじゃ!!」

「…は?」

「えっと…」


 ――と、突然のたまった。瞬間、何を言ってるのかすぐに理解出来ずに、みんなしてポカ~ン。


 あたし達のその反応が、彼女の逆鱗だけで無く更に尾まで踏んづけたらしく、怒りの形相を更に強めて、四つん這いの状態から飛び掛かる挙動を見せた明陽さん。四肢に力を込め、いざ跳び上がろうとした瞬間、しかし隣に居た譲羽さんに腕を掴まれ阻止される。


 そして、そのままのそりと起き上がった譲羽さんは、明陽さんを身体毎引き寄せると、目にも留まらぬ早業で彼女を羽交い締めにして見せた。その手際の良さたるは、かなり熟れて居る風だ。


 と言うか、実際熟れてるんだろうなぁ~


 それにしても、良い笑顔で笑っていらっしゃる。あの笑顔を見に、明陽さんが何に対し怒っているのか、察しが付いているんだろう。


 まぁ何にせよ、明陽さんおちょくるの大好き譲羽さんが、あんな良い笑顔を見せるって言う事は…どうせ、くっだらない理由なんだろうな~


「何故其奴が、儂でなく譲羽の変装をすると決めつけおった!」


 あたしがそう思った次の瞬間、羽交い締めにされ思う様に動けない明陽さんが、拘束から逃れようとバタバタしながら怒鳴る。その様子を見て色々察したあたしは、途端に呆れ顔で彼女を見据える。


「えっ!?あっ!!そ、それは…」


 そして、同じく察したのだろうシフォンが、あからさまにしくじったと言いたげな表情で言い淀む。同時に、他のみんなも気付いたらしく、妙に気まずい空気が部屋の中に充満していく。


「なんじゃっ!?ハッキリ言わんかいワレェ!!御主等も!なんじゃいその表情!?」


 そんな空気を吹き飛ばすかの様に、明陽さんの怒声が部屋中に響き渡る。それにシフォンは勿論、他の誰1人として答えられない。


 その怒鳴り声に萎縮して、と言うのもあるんだろう。けどそれ以上に、明陽さんが何に対して急に怒り出し、そしてそれが彼女の1番のコンプレックスだという事を、みんなも知っているからだ。


 以前、帝都で明陽さん達の事をギルドで軽く調べた時も、その事に付いてしっかり明記されてたからね。そんな風に記載されるって言う事は、つまりそれだけあの見た目幼女の前で、その件を口に出すべきでは無いと言う事なのだろう。


 まぁ、誰にだってコンプレックスの1つや2つ、抱えてるもんだしそれについては仕方無い。とは言え、直接口に出した訳じゃ無く、暗に匂わせただけでこの反応っぷりって…


 ここまで敏感だと、流石に病気よね。こうなったらしゃ~ない、ここは血縁であるあたしが代表して、相手するしか無いわね。


 っと、その前に時間も時間だし、これ以上騒ぎになったら迷惑になるから、一旦部屋ごと精霊界に移動してっと…


「あのぉ~明陽さん?」

「あ゛ぁ゛?」


 精霊界に移動すると同時、恐る恐る怒れる似非幼女に話しかけるあたし。途端に返ってきた反応は、いかにも場末のチンピラって感じが半端なく、ガラが悪いったらありゃしない。


 しかしそのガラの悪いチンピラは、幸いな事に譲羽さんに拘束されてて怖さ半減。いざ――


「そんな怒んないで下さいよ。だってしょうがないじゃ無いですか?あたしと明陽さんの身長差、2倍位あるんだし。」

「ちょっ!?」

「ゆ、優姫!?なんて恐ろしい事を…」


 ――焚き火に油を注ぎましょう~


「何じゃと!この小娘ーッ!!2倍も無いわボケェッ!!」


 あたしのその台詞に、すかさず烈火の如き怒りを露わにし、拘束を逃れようと暴れ始める明陽さん。しかし、あたし以上に彼女との体格差がある譲羽さんの拘束は、その程度で簡単に解ける程甘くない。


「その位、身長に開きがあるって言葉の綾じゃ無いですか。誰がどう考えたって、あたしに明陽さんの変装は無理ですってば。靴を厚底にして、身長盛る事は出来ますけど、明陽さんの背丈まで縮むなんて事出来ませんって。」

「何じゃとワレェ!!その頭大槌でど突いて儂が縮めたるわい!!」

「落ち着いて下さいってば、今の状況オヒメに見られたら笑われちゃいますよ?」

「既に御主が笑っとろうがッ!」


 ――ナデナデ


「譲羽も頭撫でるでないわボケェ!!」


 あたしと譲羽さん、2人掛かりのおちょくりに、顔を真っ赤にして暴れる明陽さん。その一方で、あたし達のやり取りを遠巻きに、青ざめた様子で見守るみんなとの、この温度差と言ったらもうね。


「うぅ~…うるさいなぁ~もう。折角気持ちよく寝てたのにぃ~」


 その最中、ベッドの上でのそのそと起き上がった夜天が、マイペースにそんな事を言い放つ。この騒動の中、ようやく起きたんかい…


「…あんたのその図太さ、見習いたくないけど少し羨ましいわ。」


 そんな夜天に対し、抱きかかえた銀星が呟いたその一言に激しく同意。きっと夜天は、将来大物に成る事請け合いね。


……

………


 っとまぁ、そんなこんながありまして、冒頭の状況に繋がるという訳です。それはさておき、回想もうちょい続きます。

プロジェクトセカイ楽しいよ

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