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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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子連れJK異世界旅~異世界の果てまでイッテQ~(4)

 まぁそんなこんなで、銀星を胸に抱きかかえながら、オヒメ達を見送った街道沿いに戻って来た。まだまだド深夜真っ最中で人っ子1人居ないから、大手を振って精霊の力を顕現出来そうだ。


「それで、何をするつもりなんですかマスター?」

「ちょっとした実験に協力して欲しいんだけど――」


 スヤスヤ寝てる夜天の傍に、寄り添うように居た所を説明無しにかっさらってきた銀星と、髪の中から風華にも出てきて貰い、能力検証に協力して欲しい旨を伝える。そうは言っても、2人にはちょっと離れた場所で、待機して貰うだけなんだけどね。


 検証したい事は、オヒメ以外の眷属も同様に、離れた場所からしっかり存在を認識出来るのかと、そこに向かってちゃんと移動出来るか。それと、ついでに精霊間テレパシーの有効範囲が、どの程度かって言うその2点だ。


 移動中のオヒメの存在を、精霊界から確認する事が出来たけど、それは単純に彼女が、眷属の中で特に強力な力を持っているからって可能性があるからね。中位精霊・下位精霊の2人の事も、離れた地点からちゃんと認識可能か調べないと。


 仮に認識出来無くなったとして、どの位の距離が離れると認識出来無いのかとか、彼女達のように肉体を持っていない、オリジナル眷属達の存在を感知出来るのか、複製品(レプリカ)複製品(コピー)はどうかもね。


 もしも眷属達が『ポータル』の代わりが勤まるとしても、流石にオヒメ達を何処かの街とかに置き去りになんて出来無いもの。理想はオリジナル眷属以下の複製品を、いろんな街に配置して活用するってのが現実的だわ。


 ここまで来る間に、それなりに眷属増やしてきたのは良いんだけど、正直その殆ど活躍の場が在りそうに無い物ばっかなんだもん。特にこっちの世界製武器なんて、風の谷で回収したは良いけれど、その殆どが地球製の複製品(レプリカ)にも劣る代物ばっかなんだから。


 そう言った代物の活用法なんかも、暇見て考えていたのよね~だって、活用出来なきゃあたし、廃品回収業者とそう変わんないよ?


 だから、今回の事でそう言った日の目を見なさそうな武器達にも、活用の場が出来るんじゃ無いかとちょっと期待してたり。折角回収して疑似精霊にしたのに、出番無しじゃその内恨まれて、勿体ないお化けになりそうだしね。


 と言う事で、胸に抱えた銀星をその場に降ろして、適当なロングソードを召喚。それを今立っている場所に置いたら、ロングソードの複製品を2つ(レプリカとコピー)作成。


 オリジナルを基点に、200m間隔ぐらい離して地面に置いたら、そこから更に200m位の間隔空けた両サイドに、銀星と風華を向かわせる。


『じゃぁ2人共、そこで暫く待機しててね。』

『解りましたマスター。』

『う、うん…』


 彼女達にテレパシーでそう伝えた後、街道を西に向かって歩き始める。原始的だけど、このままテレパシーで話しながら進んで会話が途切れたら、それがテレパシーの有効範囲と言う事に成る。


 人気の無い夜の街道を、2人とテレパシーでやり取りしながらテクテク歩いていく。するとある瞬間に、何の前触れも無くブツリと会話が途切れてしまう地点に辿り着いた。


 その瞬間、直ぐさまその場で振り返り、辿ってきた道の先へと視線を向ける。あたしの歩幅と歩数から計算して、移動した距離は約600mと言った位だ。


 あたしが歩き始めたのが、オリジナルのロングソードを置いた地点で、そこから2人には左右に400m位離れて貰ってるから…計算すると銀星達との直線距離は、ざっくり700m位と言った所かしらね。


『マ、ママ!?もうそっち行っても良い!?』


 頭の中で計算式を思い浮かべ、不慣れな暗算に脳のカロリー消費していたその時、突然風華の声が復活して頭の中に響き渡ってくる。聞こえた感じからして、どうやらあたしの声が聞こえなくなって、我慢成らなくなったらしい。


 待機してってお願いした時も何だか不安そうにしてたし、渋々あたしから離れて行く時だって、何度もチラチラこっち見てたからね。大丈夫かなって心配になったけど、やっぱ無理か~


 とは言え、肝心な方の検証がまだなのよね。ん~…


『ごめんね(ふー)、後ほんのちょっとだけ我慢してくれる?これが済んだらすぐに呼び寄せるから。』

『う、うん…』


 彼女にテレパシーでそう語りかけてすぐ、意識を集中して眷属達の気配を探る。すると、まず真っ先に風華の存在を感知して、次にオリジナル眷属のロングソードの気配を感知する事が出来た。


 だけど銀星の気配はいまいち判然としない上、2人の間に置かれている複製品達(レプリカとコピー)に至っては、全く感知する事が出来なかった。これはなかなか興味深い検証結果と言って良いだろう。


 他の眷属達と違って複製品達(レプリカとコピー)は、混じりけ無しにあたしの魔力で出来てるから、もしかしたらこうなるんじゃ無いかなとは、ある程度予想出来ていたのよね。在る意味、自分で自分の魔力を感知するようなものだからね。


 だから、オヒメが作成した物だったら、また違った結果になっていたかも知れないわね。まぁそれはまた今度検証するとして、それよりも今考察すべき点は、2人の感じ方にかなりの差が生じた事についてだろう。


 基本的に中位精霊の銀星の方が、下位精霊の風華よりも、内包している魔力量が圧倒的に多い。その2人が同じ位離れているなら、普通に考えて魔力量の多い銀星の方を、強くはっきり感じ取る事が出来そうなものだ。


 けど実際は、テレパシーが届く範囲に来た風華を先に強く感じる事が出来て、届く範囲から外れた銀星の方を感じ取る事が難しいと言う結果になった。微妙な距離差でこんなに差が出るって言う事は、眷属の探知に魔力量は関係ないかも…?


『マ、ママ~まだぁ~?』

『ごめんね風!今呼ぶからね!?』


 思わず考え込みそうになった所で、今にも泣き出しそうな風華の声が頭に響いた。途端に思わずハッとなって、それまでの考えを中断し慌てて謝る。


「来なさい、風華!」カッ


 そして直ぐさま手を前方に翳し彼女を呼ぶと、次の瞬間目映い光が前方に現れる。その光が収まるよりも早く、現れたそれが素早く動いたかと思いきや、一瞬にしてあたしの髪の中へと入ってしまった。


 その様子を横目で確認しながら、思わず苦笑を浮かべため息を吐いた。手の掛かる子程可愛いってのは、間違い無くてあたしも認める所だけど、それにしたってこんな調子じゃ流石に不安だわ。


 そんな想いを抱きつつ、1人にさせてごめんねって気持ちと一緒に、風華が居る辺りを手で優しく撫でる。もうちょっと、あたしが突き放すべきなんでしょうけど、今すぐってのは流石にね~


 ともあれ気を取り直し、中断していた考えを再開する。寂しさに耐えてくれた風華のお陰で、色々な事が解ってきた。


 離れた眷属を認識するには、眷属の保有魔力よりも範囲の方が重要だという事が解った。その範囲が

約700m位として、探知出来るのがオリジナル眷属以上に限ると。


 そしてその範囲内が、テレパシーで子精霊達とやり取り出来る限界でもある。そう言えば、あたしが遠隔召喚出来る最大距離も、確かその位だった筈だ。


 それがあたしの感知範囲の限界だとすると、今この場でオヒメの存在を感じ取る事が出来無いんじゃ?と思い至り、早速意識を集中して試してみる。しかしてその結果は、その通り何も感じられなかった。


 となると…


『…銀星、1度精霊界に戻るけど、少しだけそのまま居てくれる?』

『はい、解りましたマスター。』


 テレパシーの届く範囲まで戻り、銀星に一言断ってから精霊界へ。戻ると同時に、再び意識を集中してみれば、オヒメの存在は勿論、銀星の事もはっきり認識する事が出来る様に成った。


 この事から推測するに、親である精霊王と子精霊達は、精霊界を通じて繋がっているんだろう。この繋がりを利用して、あの時銀星達があたしの元に来たんなら、それを逆に辿れば…


「わっ!?マ、マスター!?」


 そう考え銀星を強くイメージしながら、何時もの様に精霊界から現実世界へと渡る。するとその瞬間、銀星の驚きに満ちた声が辺りに響き渡った。


 見える景色も、さっきまであたしが立っていた場所とはまるで違うし、どうやら銀星目掛けて移動する事に成功したらしい。


「急に現れるからビックリしました。どうやら成功したみたいですね。」

「うん。2人共、付き合ってくれてありがとうね。」


 そう笑顔で答えながら、銀星の身体を持ち上げ胸に抱く。と同時に精霊界へと舞い戻り、放置したままのロングソードの気配を探り当てて、さっきの要領でそこを目指して現実世界へ。


 切り替わった風景の先に、見覚えのある剣を見つけて1人頷く。オリジナル眷属相手にも、問題無く瞬間移動する事が出来た。


 これで今後の活動が、大分楽になるのは間違い無い。1度訪れた街に、オリジナル眷属置いておけば、瞬時に戻る事が出来るんだからね。


 それも、一般に知られている瞬間移動魔法よりも全然安全だし、制御も制約も掛からないという有能っぷり。まぁ、眷属盗まれない為の対策とか、色々考えないといけない事も在るけどね。


 まぁ実験自体は成功したんだし、そう言う細々としたのは後々でも良いだろう。またこの後3時間運転するんだし、今日はこの辺で切り上げて、交代する時間まで休憩する事にしよう。


 と言う訳で、後片付けをちゃちゃっと終わらせ精霊界へ。それから少し休憩した後、交代の時間になったので、アクアを連れてオヒメ達の元へ。


「わっ!?マ、ママ!?今呼びに行こうと思ったのに。」

「何じゃ御主、計ったように現れおって。」


 そして早速、今回の成果である瞬間移動を使い、すぐ目の前に現れてオヒメ達を驚かせてみる。けど、驚いてくれたのはオヒメ位で、明陽さん達の反応がいまいちでつまんな~い。


 それはさておき、オヒメ達が精霊界戻った所で、1巡目同様にアクアが前あたしが後ろで出発進行。2回目という事で、最初からフルスロットルで飛ばしていく。


 アクアに操縦教えるのは、はっきり言って2の次だからね。先を急ぐ以上、自力で覚えなさいよと。


 とは言え、バイクで乗り継ぎで距離を稼ぎ始めてから既に9時間。空もうっすら明るくなってきたような気がするし、そろそろ速度には気を付けた方が良いかもしんない。


 そんな感じで、街道の先を気にしながら走り続ける事2時間で、すっかり空は明るくなった。そろそろお腹も空いてきたし、あと1時間走ったらみんな呼んで朝食かなと、そう考えた所でふとある事に気が付いた。


 あれ?アクア、いつの間にか運転出来てね?


 どうやら、この子の執念甘く見ていた模様。まさか本当に、この短時間で覚えるなんて…


 まぁそれならそれで良いんだけどね。ともあれその後、あたしのサポート無くても、交代の時間までキッチリ運転しきったので、エイミーと組む事を許可した。


 どうせ3巡目は、道知らない者同士じゃ無理だからね。それまでに運転覚えられなきゃ、アクアは精霊界で待機ねって話になってたのよね。


 兎にも角にも、2巡目あたし達の順番を終えた所で、あた~らし~い~あ~さが来た!と言う事で、1度みんなを呼び出し朝食を摂る事に。


 今朝の朝食は、昨日の残り物のスープとサンドイッチだ。サンドイッチは、昨日の固いパンを薄切りにして、その間にムラクって言う、ザワークラフトっぽい味わいの葉野菜の漬物と、チーズとハムが挟んである。


 ただ切って挟むだけなのに、それさえ上手く出来無かったあたしは、火の番を言い付けられるという…


 なんかね?真っ直ぐ切ろうとしても上手く切れなくて、ボロボロになるんだよ?イラッとして、茜丸に切り換えて切ろうとしたら、エイミーにすっげぇ~怒られたの…


 ともあれ気を取り直し、みんなの手元に食事が行き渡ったら、手と手を合わせて――


「「「いただきます(Let’s eat.)。」」」


 食事の挨拶を終えた所で、早速サンドイッチにかぶりついた。するとまず先に、パン自体の強めな塩味が口の中に伝わり、遅れてムラクの酸味とチーズやハムのうま味が、折り重なるように広がっていく。


 パンを薄切りにした事で、味のバランスが丁度良いし、固さもムラクの水分で食べやすくなっている。ただ少し味が濃いのが難点で、一口食べる度スープを一口啜るでようやくちょうど良い感じだ。


「…それで、今どの辺り位まで来たの?」


 会話もそこそこに食べ進め、みんなが食べ終わったタイミングを見計らって、気になっていた事を問い掛ける。その問い掛けにいち早く反応したエイミーが、手荷物からライン大陸の地図を取りだし広げていく。

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