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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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子連れJK異世界旅~異世界の果てまでイッテQ~(2)

 だってそれが可能なら、例えばあたしが移動している間に、他の街に立ち寄ってシフォン達の痕跡が無いか、確認する事だって可能に成るからだ。これだけ人数が居るんだし、色々分担して事に当たれれば、その分効率がグンと上がるは当然だもんね。


 まぁ、地理が解んないから、最低1人一緒に行動して貰う事になるけど。それに、1人だとやっぱ寂しいし(←


 それはさておき、直接移動して自分自身がある種の『ポータル』に成るってデメリット位で、小難しい制御なんて不要。更に消費魔力も抑えられる上、リスクも無しに瞬間移動が使えるんだったら、活用しない手はないってもんだ。


 精霊の力に目覚めて以降、眷属にした物の召喚・送還は、今まで散々やってきたからね~もう息をする位自然に出来る自信があるわよ。


 ってかほんと、カントを出る前にその事に気が付いていれば、待ち合わせ場所にジープ残してあたしだけ先に出発とかも出来たのよね。まぁその場合、ミリアの死亡フラグへし折れ無いたろうけどね(ぇ


「Excuse me.」

「はい?」


 そんな不吉な事を考えていると、それまで聞き役に徹していたミリアが、不意に戸惑った表情を浮かべ声を掛けてくる。余りにもタイミングが良いので、考えている事がバレたかと思って内心ドッキドキ。


「まだ精霊についてよく解らないですが、それだと優姫1人に負担が掛かるんじゃ無いかしら?」


 次いで彼女にそう言われ、思わず肩を竦め自嘲気味に苦笑する。確かにあの言い方じゃ、まだよく解っていない彼女からすれば、まるであたしだけが1番大変な移動を、一手に引き受けるように聞こえただろう。


 勿論そんな自己犠牲みたいな事、進んで受け持つつもりは無いし、そんな『相談』なんてエイミーが許す筈が無い。だし、結局それだと数の優位を活かしきれなくて、距離を稼げないしね~


「オヒメ。」

「ん?何ママ!」


 ミリアの質問を受けたあたしは、手にしていた食器を地面に置いて、視線を隣に座るオヒメへと移し呼びかける。それに直ぐさま反応した彼女は、口の周りにパンの食べカスを着けながら、ニコニコ明るい笑顔をこちらへ向けてくる。


 その笑顔に笑みを返しながら、彼女の肩にポンと手を乗せ、ミリアへと視線を戻す。


「街を出る前に、この子があたしと同じ精霊だって教えましたよね。実はこの子、あたしとほぼ同じ事が出来るんです。ね、オヒメ?」

「うん!そうだよ!!」

「Oh!」


 あたしの言葉に促され、オヒメもミリアへ視線を移して元気よく頷いて答えると、途端に目を丸くして驚く彼女。


「I See.つまり優姫と姫華ちゃんが、交代で距離を稼いでみんなを眷属召喚?して運ぶって、そういう訳ですね?」

「えぇ、まぁそう言う事。」


 直後に彼女が、少し興奮気味に捲し立てるようにそう聞いてきたので、苦笑交じりに頷いて答えた。流石浩太さんの同僚ってだけ在って、反応の仕方が似てるわね~


 それは兎も角、眷属を召喚する事が出来るのは、何もあたしだけの特権という訳じゃ無い。これから先、精霊王の代わりに姉妹達を束ねる存在となるオヒメにも、あたしと同じ事が当然出来るのだ。


 それを利用し交互に運転すれば、予定よりも早くミッドガルって街に辿り着く事が出来る筈だ。当初は、休憩挟みながら2日位の予想だったけど、バイクなら林の中でも小回り効くし、車で進むよりかなり短縮出来るんじゃ無いかしら?


 それはまぁこれから確認するとして…次いであたしは、今のやり取りをクスクス笑いながら見ていたエイミーへと、徐に視線を向ける。


「それからエイミーにもお願いしたいんだけど、良いかな?」

「え、私もですか?」


 そのまま彼女に向かってそう告げると、まるで予想だにしていなかったのか、驚いた表情となってあたしを見つめてくる。自分に話を振られるなんて、思ってもいなかったんだろう。


 精霊術の使い手だからって、彼女があたし達の様に、突然眷属を召喚出来る様に成ったとか、そう言った事は勿論無い。けど、あたしと個人契約している彼女だからこそ、召喚出来る者があるのだ。


「普通に眷属召喚するよりは、大分魔力消費しそうだけどさ。移動先であたしを召喚してくれれば、そこであたしがみんなを召喚出来るじゃ無い?」

「成る程…その手がありましたね、解りました。」


 ベファゴ戦でも使って見せた個人契約精霊召喚で、遠く離れた所からでもエイミーは、あたしを召喚することが出来るのだ。それを利用すれば、間接的にあたし達と同じ事が出来るようになる。


 問題は、エイミーがバイクの運転出来ないって事だけど、あたしと同じ魔力を共有しているから、バイクを動かす魔力には困らない。だから、運転は出来るミリアと組んで貰えれば、十分ローテーションに参加出来ると言う訳だ。


「しかし、召喚術を移動手段として応用するなんて事、よく思い付きましたね。」

「そうじゃな、魔術師ならまず思い付かん方法じゃろう。あやつ等頭固いしのぉ。」

「いやぁ~正直、ド素人の突拍子も無い発想ってだけですよ。」


 感心した様子の2人に対し、照れ隠しにはにかみながらそう答える。正直言って、車だけでこの先も移動してたら、こんな突拍子も無い発想出来無かった。


 運転して動かす乗り物って概念が、そもそも頭にあるからね。内側からだけじゃ無く、外側から見て初めて色々思い付けたってだけの事だ。


「さ、それよりもここからが本題の相談なんですけど…」


 謙遜もそこそこに、長い前置きを終えたあたしは、ようやくと言った感じで本題を切り出した。けどその前に…


「…確認だけど、今の提案に反対の人居る?」

「優姫やオヒメちゃんばかりに、負担が掛からないのであれば、私はそれで構いません。」

「私も異論在りません。」

「儂等もそれでええよ。のぉ?」コクッ

「No Problem.私は皆さんにお任せします。」


 あたしの問い掛けに対し、みんな直ぐさま納得した様子で、それぞれの反応を返してくる。しかし1人だけ、すぐに返事を返してこない事にふと気が付き、訝しがりながら視線を再びオヒメへと向ける。


「えっと…オヒメ?」

「む~…」


 見ると彼女は、何故だが急にムスッとした表情に成って、恨めしそうにあたしの方を睨んでいる。いや、あたしと言うよりむしろ…


「い~な~(ふぅ)ちゃんは。ずっとママと一緒に居られるんだから。」


 彼女の視線を追っていき、行き着く先に目を向けた直後、ぼそっと独り言のように呟き俯いた。するとその瞬間、あたしの髪の中に居る風華がピクリと反応するのが気配で伝わって来る。


 急に羨んだから何かと思えば、船で銀星達に加護を与えた時と同じく、妹に嫉妬したって言う訳か。見た目はともかく、中身はほんとに甘えんぼちゃんなんだから。


 けどまぁ、あたしも兄妹の多い家で育った口だから、その気持ちが何となく解る。あたしだって昔は、妹ばっかり構ってずるいって、よく両親に言って困らせてたらしいし。


 けど実際は、まだ妹の方が小さくて手が掛かるってだけで、あたしの両親は兄妹全員平等に接していたと、今にして思えばそう思う。ただ与える方は平等だったとしても、受け取る側の目線でそれぞれ見え方が少し変わって、ちょっとだけ隣が青く見えるってだけなのよね。


 それも全部ひっくるめて、この子達の想いとして受け止めてあげなくちゃね。ただしそれはそれ、これはこれだ。


「じゃぁ姫華は反対?」


 少し不満げな彼女の反応に対し、困り顔で笑いかけながらも、しかし普段のような愛称呼びじゃ無く、静かに低い口調でそう問い掛ける。たちまちハッとしたオヒメが顔を上げ、直ぐさまあたしの顔を真っ直ぐ見つめる。


「は、反対じゃ無いよ!?姫華もママの提案に賛成だよ!」

「そう、ありがとう。けど別に無理強いじゃないから、嫌なら嫌で断ってくれても良いのよ?」

「嫌じゃ無いよ!姫華ちゃんと出来るよ!?」


 直後、慌てた様子でそう言うオヒメに対しそう告げると、焦った様子で取り繕うように答えてくる。直接言った訳じゃ無いけれど、さっきの風華に対する態度を咎められていると、正しく理解したんだろう。


 勿論怒鳴り散らして怒るつもりなんて無いし、むしろそんな可愛らしい嫉妬心ならドンと来いだ。まぁそれはそれとしても、さっきのはあまり褒められた態度じゃ無かったから、しっかり注意するのも親の務めと言うものだ。


 ただ、だからと言って安易に『お姉ちゃんなんだから』なんて、そんな簡単に片付ける気なんてあたしには無い。だってそれは、まるで我慢するのが当たり前みたいな考えを、オヒメにすり込ませるような感じがして嫌だったからだ。


 ともあれ、彼女の返事を受けたあたしは、安心させるように微笑んだ後、その頭にポンと手を置き優しく撫でる。


「うん、解ってるわよ。あたしもオヒメなら大丈夫だと思ったから、こうして相談を持ちかけたのよ。」


 そして何時もの口調に戻ったあたしがそう告げると、途端に安堵の表情を浮かべるオヒメ。そんな彼女に対しあたしは、直ぐさま真剣な表情となって向き直る。


「じゃ、何か言う事あるわよね?」


 そしてそのまま、あたしが静かに問い掛けると、オヒメがビクリと肩を震わせて安堵の表情を曇らせていく。ややあって彼女は、真剣な表情を浮かべるあたしから視線を横へとずらすと、不安そうな表情のまま一点をジッと見つめだした。


「…ごめんね、風ちゃん。」


 直後に一言、本当に申し訳なさそうな表情でオヒメが呟くのを聞いて、風が吹いた訳でも無いのにあたしの髪が僅かに揺らめいた。それを横目に確認し、口元を弛めてオヒメに向き直る。


「…気にしてないってさ。」

「良かった~…」


 無口なその子の代わってあたしがそう告げると、再び安堵の表情を浮かべたオヒメが情けない声を上げる。その様子を前にして、呆れ顔でため息を吐いた。


「これに懲りたら、もう少し考えなさいね?」

「うん…ママもごめんね。」


 そのまま安堵の表情を浮かべるオヒメに、一応釘を刺しておく。まぁ、その必要も無いと思うけどね。


 自分で何が悪かったのかしっかり反省して、その上でちゃんと謝れたんだ。それはきっと、あたしから怒られるよりも何倍も堪えただろうし、だからこそ教訓にも成った筈だ。


 ともあれあたしは、素直に謝罪の言葉を述べた彼女の頭を、再び優しく撫でて応える。これからもこんな事が沢山起きるんだろうけど、逆にそれが無性に嬉しくて堪らないと、そう感じて居る自分が居て――


「…何時まで2人の世界に浸っとるんじゃ、御主等は…」

「まぁまぁ、良いじゃ在りませんかスメラギ様。」

「Marvelous!種を超えた親子の絆ですね!」

「けどエイミーさん、これじゃ話が何時までも進みませんよ?」

「そうじゃそうじゃ。」


 ――外野が邪魔だなと感じて居るあたしが居た。あ~もううっさいな!もうちょっとうちの子、愛でさせなさいよ!!


 なんて、声を大にして言える筈もなく、ため息交じりにオヒメの頭から手を退かしたあたしは、気を取り直してみんなに向き直った。


「それじゃ、みんな賛成って事で話を進めますね。」


 そう前置きした後、みんなに2人1組で行動しようと提案する。あたしやオヒメは、単純に道が解らないし、エイミーは先にも述べた通りバイクの運転が出来無いからだ。


 それに不測の事態に備えてってのもあるし、1人で延々運転してると、気が緩むって言うのもあるしね。まぁその辺は、おまけみたいな理由だけど。


 ひとまず話し合った結果ローテーションの1巡目は、まず最初にあたしとアクア、その次にエイミー・ミリア組。んで最後オヒメの時に、明陽さんか譲羽さんのどちらかが同行するって事に成った。


 順番が来る迄には、どっちが同行するか決めるって話だけど、成るべく穏便に決めて頂きたいものね。結局最後まで話纏まんなかったし…


 ちなみに、そう言った意味ではアクアも負けていない。彼女的にはエイミーと一緒が良いらしく、あたしにバイクの操縦教わって、何巡目かにエイミーと一緒になろうと画策してるからね。


 それにアクアもあたし達と一緒で、ライン大陸なんて来た事無いから道知らないしね。まぁ夜の間は、街道走り続けるだけだから良いけどさ、そんなんでオヒメと一緒に行動させられないから、結局あたしが面倒見るしか無いって言うね。


 マジで釈然としない。当初の目的完璧に無視して、エイミーにべったり感丸出しだし、いい加減追い返そうかしら…

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