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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第一章 召喚編

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やぁやぁ我こそは、異世界の剣道小町、テヘペロ☆なりぃ〜(1)

 ハイハイ!遡りますよ〜だいたい15分位前まで、バックトゥ○フューチャー‼︎なう(色々サーセン)


 という訳で、あたし達は今、アジト近くの森の中に身を隠して、盗賊団のアジトを伺っていた。まぁ、入り口の監視は、一緒に来てくれたエルフの男性2人に任せて、あたしとエイミーとジョンは、円陣を組んで地面を眺めていた。


「これが、あのアジトの俯瞰図(ふかんず)

「は、はい!

「ふ〜ん、やっぱり魔法って便利ね。」


 そう言ってあたしは、地面に描かれた地図を眺めて関心する。これはバードアイと言う、地形を上空から見る事の出来る魔法を、ジョンに使って描いて貰った。


 そこには、ほぼ真円の柵の中に、ここからでも見える物見櫓(ものみやぐら)と、5つの建物が描かれている。そして石ころを人に見立てて、至る所に配置して、人の動きを目視出来る様にしていた。


 それを見る限り、建物が建てられていない、拓けた場所にいくつもの石ころが集まっていた。恐らく先に出たエルフ達は、そこに捕まっているんだろう。


 ん〜、あとはまばらに見張りの人員が、配置されているだけの様ね。思った以上人数が少ないし、これは予想が当たったわね。


「ねぇ、正確な人数ってわかる?

「ちょっと待って下さい。えぇっと…長達は7人で乗り込んだみたいですね。人間達は、5、7…9、見える範囲で10人です。建物の中まではちょっと…

「十分よ、ありがとう。」


 ジョンの答えに、労いの言葉を伝えて、また地面に視線を戻して、状況を整理しながら、どう攻めるか考える。


 さてどう攻めた物かしらね。周りの囲いは3メートルはありそうだし、横から全員で攻めるのは難しいし…だからって、正面からなんてどう考えても愚策だし。


「一応聞くけど、あの柵飛び越えられる?

「そうですね…私は平気ですが…」


 あたしの質問に、エイミーはそう答えて、隣に座るジョンへと視線を向ける。すると、顔を横にブンブン振っていた。


 それを確認した後、視線を巡らせて、監視を続けている2人を見てみるけど、自信が無いのか2人とも手を横に振っていた。なにさ、か弱い女子(?)のエイミーが出来るのに、男性陣は意外と情けないわね〜


「仕方無いわね。じゃああたしが柵を越えて、側面から一気に突入するから、エイミーさんは、みんなを指揮して正面から突入して

「そんな!優姫さんにそんな危ない役をやらせる訳には…」


 あたしの言葉に、反論するエイミーを手で制して、それ以上を言わせない様にする。まぁ、エイミーの言い分はもっともだけど、あたしにはちゃんと考えがあるのだ。


「危ないのは十分承知よ。だけど、あたしじゃ他の人達を指揮出来ないし、いざって時に巻き込むかもしれ無いじゃない

「ですが、1番に狙われているのは、優姫さんなんですよ?1人で飛び込んでしまっては、優姫さんに敵が集中してしまいます

「だから、囮役には最適なんじゃない。あたしが敵の注意を引き付けるから、みんなを指揮して、背中から確実に倒して行って。」


 あたしが考えた作戦を、エイミーにざっくり伝えて聞かせるけど、彼女はまだ納得していない雰囲気だった。まぁそうよね〜巻き込んじゃってる側としたら、巻き込んだ人を、もっとも危険な位置に置くのに、普通は抵抗を感じるわよね。


 本当は、全員で屋根伝いに移動して、制空権を確保してから、連れて来たエルフ達に屋根から支援してもらって、あたしが近接で攻めるってのが、現状の戦力じゃ1番良いんだけどねぇ〜男性陣ほんと情け無いわぁ〜大事な事なので2回言いました。


 けど、今はとにかく時間が惜しい。相手はきっと、攻めて来たエルフ達を捕まえて、拍子抜けしているだろうし、何よりも油断している筈だ。この気に乗じて一気に攻めて、流れを掴んでしまえば、1番の不安材料である戦力差を埋める事も可能だろう。


「エイミーさん。自分に(おご)りが無い訳じゃないけど、あたしはこの中で1番身体能力に自信があるし、その身体能力を使いこなす技術もあるわ。だから、逃げ回る事に専念すれば、相手に捕まる様な事には決してならない

「しかし…

「約束するわ。無理はしないし、無理だと思ったら逃げ回る事に専念する。それでも心配なら、あなたがあたしを助け出して。ね?」


 エイミーを安心させ、納得させる様にそう言って、彼女の同意をジッと待つ。やがて、根負けしたように、エイミーは深くため息をひとつ吐いた。


「…わかりました。本当に無理だけはしないでくださいね?

「えぇ、約束するわ。」


 彼女の言葉に、力強く頷いて答える。その表情から、本気であたしの事を心配している事が、ひしひしと伝わってきたからこそ、嘘偽りなく頷いて答えた。


「じゃぁ、急いで細かい所を詰めて行きましょう。相手が油断しているだろう、今を逃す手は無いわ

「えぇ、そうですね。ジョン、何か変化があれば、すぐに教えて下さいね

「は、はい!」


 あたしの言葉で、再び作戦会議が再開する。あたしとエイミーで、地面に描かれた地図に、木の枝で色々と書き加えていく。


「じゃああたしがこの塀から、屋根伝いにベルトハルト達が捕まっている広場まで、一気に駆け込むわ。問題は物見櫓(ものみやぐら)の見張りだけど

「2人居ますね…優姫さんに気づいたタイミングで、仕留めてしまってよろしいですか?

「えぇ、お願い。そのタイミングに合わせて、あたしが奴等の注意を引いて、見張りがやられた事に気付かせない様にしてみるから、エイミーさん達は正面の扉から堂々と侵入して来て。塀の周りの見張りに気を付けてね

「わかりました。それでは私達は、優姫さんの援護と、ベルトハルト達の救出を優先しますね

「えぇ、お願い。人質にされたら面倒だしね。建物の中がわからないのが不安だけど、まだ隠れて居たとしても、20人も居ない筈よ。」


 会話を続けながら、あたし達は立ち上がって、それぞれ準備に取り掛かる。と言っても、準備自体は里を出る前に済ませてきているので、装備を検める位だけどね。


 あたしは今、この世界に来た時と同じ、袴姿に足袋(たび)を履いて、左腰に九字兼定を差して、右腰にエルフの里で借りたロングソードを差していた。あと、皮製のベルトを肩口から斜めに掛けていて、そのベルトの表面には、刃渡り10cm位のナイフがいくつも鞘に納められていた。


 あたしは、右側に差したロングソードを、鞘から出して刃を確認していく。


 軽いわね。刃渡りは1m位あって兼定より長いし、幅も広いから使われている金属の量が多い筈なのに、重さは兼定より軽い気がするわね。やっぱり、この世界の物質の質量自体が軽いのかしらね。


「優姫さん!長達が何処かに連れて行かれそうになってます。」


 武器の点検を終えて鞘に戻した所で、ジョンが内部の変化を教えてくる。


 さて、そろそろ時間も余裕が無いわね。捕まったエルフ達が、どこかに連れて行かれたら、せっかく油断している相手も、多少気を引き締めるでしょうし。


 それに何より、相手は嫌がる捕虜を、どこかに連れて行くために、多少手こずっているだろう。下手を打てば捕虜をそのまま人質に取られてしまうリスクも在るけど、上手くいけば相手の動きを邪魔する位になる筈だ。


 それに何より、先走って色々やらかしてくれた連中だしね。多少あたし達の役にたってもらわないと困るのよ。


 成り行きでこんな事になったけど、あたしは別に神様でも仏様でも、ましてや単なる良い人でもない。利用できるものは、利用させてもらう。


「わかったわ、ありがとう。さぁ、それじゃ行きましょうか

「えぇ。あなた達、優姫さんが突入して、監視がそれに気がついた瞬間を狙ってください

「わかりました

「優姫さん!柵の周りを警戒している見張りが、死角に入るまで少し待って下さい!

「わかった、タイミングはジョンに任せるから教えて。頼りにしてるわ

「は、はい!」


 あたしがそう告げると、ジョンは緊張した面持ちで答えてくる。そんな彼に思わず苦笑して、その両肩にあたしは両手をそっと置いた。


「ヒャッ⁉︎

「馬鹿ね、そんなに肩に力が入ってちゃ、上手く行く事も行かなくなるわよ?リラックスリラックス

「で、出来ませんよ〜!

「そう?少しだけ緊張がほぐれたみたいだけどね?

「ウフフ。」


 情けなく泣き言を言う彼の肩から、顔を覗き込んでウインクを飛ばした。その光景を見て、楽しそうに微笑んでいるエイミーと目が合い、そちらにもウインク。


「さて、じゃあ任せるわよ

「は、はい。」

 少し緊張が解れたジョンに満足して、あたしは彼から離れると、敵のアジトに向き直って、スタンディングスタートの姿勢を取った。

「優姫さん…

「ん?

「御武運を。」


 不意にエイミーに呼びかけられて、そちらへと振り向くと、それまで浮かべていた微笑みはなく、それどころか今まで見た事がない表情で、ただ一言告げてきた。


 あぁ、これが戦に赴く武人の表情か。素敵ね…あたしもいつか、こんな表情が出来るのかしらね。


 現代日本において、こんな表情が出来る人が、一体どれだけいるだろうか…気高く、そして美しい。あたしは不覚にも、ただただ見惚れてしまった。


「…大げさね、大丈夫よ。でも、ありがとう。」


 そんな風に思ってしまったあたしは、それを誤魔化す様に、笑いながらウインクをして返した。


「優姫さん、そろそろです

「わかったわ。」


 ジョンのその一言で、あたしは思考を一気に切り替えて、顔を引き締める。


 いよいよね…さぁ、始めましょうか。成り行きなんかじゃない、あたしの意思で始める闘いを。


「後少し…今です!」ドンッ!


 合図と同時に、あたしは一気に駆け出した。一瞬で塀の側まで来ると、勢いそのままジャンプして、塀の上を掴んで身体を持ち上げ、足を掛けてそのまま手近の建物の屋根に飛び移る。


 着地すると同時に、ちらっと物見櫓(ものみやぐら)に視線を移すと、そこに見える見張りは、明後日の方向を見張っているのが確認出来た。その事に少し胸を撫で下ろしつつ、再び駆け出した。


 一気に加速する視界に、やっぱり動体視力が追いついていない事に、軽く舌打ちしつつ、さっきまで見ていた俯瞰図(ふかんず)を頭の中で思い描き、自分が向かう先に目星をつける。


 う〜ん、動体視力は、早めにどうにかしないとなぁ〜。せっかく早く動けても、身体がそれに追いついてなければ、結局対応出来る速度でしか行動出来ないし。


 なんて事を考えながら、1軒2軒と建物の屋根を走り抜ける。3軒目には飛び移らず、一気に方向転換して、目的の場所に目掛けて高くジャンプした。


 うっし、ビンゴ!見張りの方は…


 そう考えて、後方に視線を向けると、ちょうどあたしに気がついた男の1人が、こっちに気がついて、矢に射抜かれた所だった。まぁここに来る時点で、覚悟はしていたので仕方無い。


 あたしがこの世界に来た時点で、もう戦いの火蓋は切って落とされて、無血で解決なんて出来ない、待った無しの状況だったんだ。それに、ここまで来て、人死には嫌だの、見たくないだの言ってもいられないし、言う位だったら、そもそもこんな所まで、のこのこやって来てもいない。


 人死にを見る覚悟は出来てるわ、大丈夫。人殺しの覚悟は無いけどね。


 そう自分に言い聞かせて、あたしは飛び出して着地しようとしている先、そこは広場の様になっていて、十数人のエルフと人間の集団が確認出来た。


 さてと。んじゃあいつらの気を引いて…


「…里に金と銀の冒険者が…これで貴様等…」


 と、ちょうどその時、風の音で聞き取りずらかったけど、ベルトハルトの声が聞こえた気がした。


 はっはっは!おやおや、これはこれは…


 ちょっと待てー‼︎あのクソジジィマジか!よりにもよってマジなのか‼︎


 そう心の中で憤慨して、軽いめまいを覚えた。よりにもよって、あの馬鹿は(以後あたしはあいつを馬鹿としか呼ばないのでシクヨロ☆)敵側に教えちゃならない情報を自分から漏らしてしまった。


 もうなんなのあの馬鹿。貴重な情報源は、ホイホイ殺すし、こっちにとって最大戦力で、かつ敵側が知り得ていない戦力を、負け惜しみかなんか知ら無いけど、自分からぶっちゃけるとか、もう本当に人の上に立てちゃいけない系でしょ!


 人殺しの覚悟は無いって、さっき言ったばっかだけど、もうあの馬鹿だけはこの手でいっそ()っちゃうか!って位、正直殺意をおぼえました。あんなん長じゃ、近い将来滅びるか、疎開して無くなるんじゃ無い?あの村。


「おまえ、馬鹿か?そんな情報…俺達が逃げ出す…」


 あまりの衝撃に、一瞬我を忘れかけていたけど、その言葉に一気に我に返ったあたしは…


「全くね‼︎」


 と、半ば本気で同意しつつ、大声で叫んで敵側の注意を集めた。同時に、さっき見た物見櫓(ものみやぐら)に、また視線を向けると、射抜かれた1人目が櫓から落ちて、2人目に矢が刺さっている所だった。


 あっぶな〜い。もうちょっとで作戦忘れる所だったわ。これで少しでもエイミー達の発見が遅れてくれれば上々ね。

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