表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
196/398

間章・「フハハハハッ!再び吾輩のターn――」ステイ!ステイハウス!!「…(´・ω・` )」(2)

「やっぱそうなんデスね。」

「何故そう思う?」


 その反応を見て、不機嫌そうな表情はそのままに、何処か納得した様子のキサラが独りごちた。そこへ、変わらず意味深な笑みを浮かべた明陽が問い掛ける。


 その問い掛けを受けてキサラが、キッと鋭い眼差しで彼女を睨み付けた。


「あんま、私の『眼』を侮るんじゃねぇ~デスよ。エイミーさんの手前黙ってたデスが、あの異世界人の子と、エイミーさんが()()()()()()()()()()デス。スメラギさん、ソレについて何か知ってるデスよね?」


 確信に満ちた瞳で真っ直ぐに明陽を見据え、静かに凄みを効かせた声音でキサラが告げる。


「それだけじゃねぇ~デス。あの人達と一緒に居た、あの赤髪の精霊は何なんですか?火と風の力を併せ持った精霊だなんて、見た事も聞いた事もねぇ~デスよ。」


 間髪入れずキサラが、詰め寄りそうな勢いで捲し立てる。だというのに、しっかり周囲を気にして声のトーンを抑えている辺り、誰彼構わず聞かせて良いような内容で無いと、瞬時に判断したのだろう。


 それを目聡い明陽は、しっかりと見て取ったのだろう。キサラの様子を見て彼女は、口元を更に大きく広げ、浮かべていた笑みの彫りを深めた。


「流石は聡明なキサラ殿じゃな。それが先に聞きたかった質問かのぉ?」

「デスよ。おべっかなんて要らねぇ~デスから、とっととこっちの質問に答えろやデスよ。」


 彼女の態度が気に入らなかったのか、聞くや否やムッとした表情でキサラが告げる。それに対し明陽は、それまで浮かべていた笑みを苦笑に変えて、肩を竦めてため息を吐いて応じた。


 しかしそのやり取りの後、一拍置いたキサラが表情を引き締めると、空気を読んで彼女の居住まいも正される。


「…あの異世界人の子は、一体何者ですか?」

「あの娘、優姫は…」


 そうして問い掛けられたキサラの質問に、明陽が真面目に答えようとした直後――


「スメラギ嬢とユズリハ嬢の血縁者であろう?」


 ――…今まで尻尾迄丸めて小さくなっていたレオンが、いつの間にか復活して、懲りもせずまた横から割り込んでくる。直後、会話をしていた2人が押し黙ったかと思うと、次の瞬間殺意の籠もった視線を彼へと向けた。


「ぬ、ぬぅ…本気で怒らせてしまったようなのである…」


 …当たり前だよ。いい加減懲りろよ…


「ちょっと場を和ませようとしただけなのである!!」

「要らねぇ~デスよ、そんな気遣い…」

「儂等言うたよな?黙っとれと…言い付けも守れん駄犬めが…」

「もう息すんじゃねぇ~デスよ。ってか、バインドで雁字搦めにして、海の底に沈めたろか?デス。」

「それじゃすぐに拘束解くじゃろうから、儂の刀で腕と足を縫い合わそうかのぉ。」


 そう言う2人の目はマジだった。


「わ、解ったのである!ならもう会話に参加せぬから、吾輩も船室で待機してるのである!!」


 そう言った直後、彼女達の目に宿っていた殺意は消えたが、その変わりにまるで汚物でも見るような瞳で彼を睥睨する女性陣。


「何言っとんじゃ。」

「それこそ駄目に決まってるデスよ。」

「何と!?何故であるか!!」


 そう口に出して聞いた瞬間、2人同時にキッと鋭い眼差しとなり、険しい表情を彼へと向ける。


「わからんか戯けが!女ばかりの空間に貴様放り込める訳無かろうが、このスケコマシが!!」

「何と!!」

「デス!ましてや純真な精霊さん方が居るデスよ!?彼女達に変な影響与えたら、精霊王さん方がガチギレしかねねぇ~んデスから、おめぇ~はここで大人しくしてろやデス!!」

「酷いのである!!言い掛かりにも程があるのである!!」

「うるさいわい!良いから儂等の目の届く所に座っとれ!!お座り!!」

「横暴である!!撤回を要求するのである!!」

「いっちょ前に権利主張してんじゃねぇ~デスよ、良いからステイ!ステイ!!」

「流石にあからさまな犬扱いはしないで欲しいのである!!」


 そう叫びながらも、しっかり四つん這いで座るレオンなのだった。


「してないのである!?捏造しないで欲しいのであるぞ天の声殿!!」


 某情報番組のナレーションの人みたいな呼び方しないで頂きたい。


「何処に向かって喋っとんじゃ彼奴は?」

「知らねぇ~デスってば。なんか幻覚でも見えてるんじゃねぇ~デスか?」


 そう言ってキサラは、軽くため息を吐いた後、明陽へと視線を戻した。


「いい加減話を戻すデスよ。んで結局、この馬鹿が言っていた事は本当なんデスか?」

「あぁ、そうじゃよ。あの娘は、向こう(元の世界)で儂等と同じ一族の出じゃ。ったく、この犬っころは…一体どうやってそれを知り得たんじゃ…」

「フハハハハッ!」


 キサラの問い掛けに対し、彼女に向き直った明陽が、やれやれと言った雰囲気で答える。直後、ジロリと横目でレオンを睨み付けると、何故だかふんぞり返って高らかに笑い出したのだった。


 それに反応したら負けだと解っているのだろう。2人共レオンからプイッと顔を背け、完無視する事にしたらしい。


「そんな人が、何でこっちに居るデス?偶然って訳じゃねぇ~デスよね。」

「それに関しては、今は言えぬ。」

「今は?何故デスか。」

「広まると、大問題になりかねん案件じゃからじゃ。御主等の事を信用しとらん訳では無いが、詳しい事を儂の口から喋る訳にもいかんのよ。」


 明陽の言葉を聞いた途端、キサラの眉間に深い皺が刻まれる。


「それは暗に、守護者である私ら相手に、圧力を掛けられる人物が関わってるって事デスか?」

「さぁ、どうじゃろうのぉ?」


 次いでキサラが口を突いたのは、半ば確信めいた問い掛けだった。その問いに対し明陽は、さも愉しげに意地の悪そうな笑みを浮かべ惚けて見せる。


「デスか。解ったデス。」


 その明陽の態度を前に、またぞろキサラが食って掛かるかと思いきや、何故かアッサリ引き下がった。それもその筈、一見惚けてはいるものの、彼女が浮かべたその表情が、如実に『その通りだ』と告げていたからだ。


 そしてそれだけではなく、簡単に首肯も出来無い様な相手が関与して居ると言う事さえ、明陽の思わせ振りな態度から、キサラは正確に読み取ったのだ。世界の守護を担う程の彼女達に、それ程の圧力を掛けられる人物となると、この世界に5()()と居ないだろう。


「確認デス。」

「ん?なんじゃ。」

()()()()()、あの2属性持ちの精霊さんの事も内緒ですか?」


 その問い掛けに明陽は、口の端を大きくつり上げ愉しそうに嗤う。キサラが、態々枕にそう付けて問い掛けたと言う事は――


「――そうじゃ。」

「…解ったデス。ならこの件に関しては、もう聞かねぇ~デスよ。」

「そうしてくれると、儂も助かるのぉ~」


 ため息交じりにキサラがそう言った直後、それまで見せていた意味深な態度を急に引っ込めた明陽が、突然ニコニコ顔となり彼女に語りかける。すると一瞬で苦虫を噛みつぶしたような表情となったキサラが、これ見よがしに舌打ちを打った。


「態とらしいデスね。私を試すような事しといて…生意気デス!」

「はて?何の事じゃかわからんのぉ~」

「白々しいデスね、スメラギさんのそういうとこ、ほんと嫌いデス。」


 あからさまに惚ける明陽に対し、面と向かってそう言った後、拗ねたようにプイッと顔を背けるキサラ。それを見た彼女は、さも可笑しそうにクツクツと笑う。


「…まぁ、今打ち明けられぬ話は、ひとまず置いとくとしてじゃ。儂の頼み事の件、引き受けてくれるかのぉ?」


 一頻り笑い終わった頃、仕切り直しとばかりに明陽が、結局結論が保留となっていたその話題を、改めて2人に持ち掛ける。


「吾輩は、無論構わないのである故、キサラ嬢次第であるな。」


 直後にレオンがそう答えると、自ずと2人の視線がキサラへと向けられる。その視線を受けて彼女は、何やら険しい表情を浮かべ考え始める。


「そうですね…受けてやっても良いデス。」


 暫くの沈黙の後、考えが纏まったらしいキサラが、徐に重たい口を開いてそう告げる。そして――


「本当であるか!?」

「何で御主が真っ先に声上げて喜ぶんじゃい…」


 ――その言葉に真っ先に食い付いたのは、話を持ちかけた人物では無くレオンだった。遅れて本来喜ぶべきだろう明陽が、彼を半眼で睨みながら呆れたように呟いた。


 本当に、どんだけ金に困っているのだろうか…


「金は天下の回り物であるからな!在って困る事など無いのである!!」

「誰もそんな事、聞いとらんわい…」


 いちいちこちらに反応しなくて良いですから…


「ただ、1つハッキリさせろやデス。」

「ん?」


 レオンのふざけた言動に、まるで取り合わなかったキサラが呟やいた。


「スメラギさん達は、私らが代理を務めてる間、何処で何をするつもりですか?」

「何じゃ、またその質問かえ?」

「私らが知っておく必要は、十分にあると思うデスがね?仮にも守護者としての任務を、一時とは言え放棄するってんデスから。」


 真剣な表情で彼女にそう言われ、いよいよ観念したらしい明陽は、苦笑交じりにため息を吐いた。そして…


「…ルアナに向かう。」

「ルアナに…?何をしにデスか。」

「あの娘が――」

「奴隷として連れ去られた異世界人を助けに行くのである!」

「――じゃ。」


 なんかもう色々受け入れたらしい明陽が、横から割り込んできたレオンの言葉を、眉間をピクピクさせながら引き継いだ。


「それでスメラギさん達迄、一緒に向かうってんですか?」

「そうじゃ。さっきのやり取りで()()()んなら、あの娘の重要性も解る筈じゃろう?」

「それは…まぁそうですが…」

「ま、それを抜きにしてもじゃ。初めて会った親類とは言え、縁者の娘が未知の世界で頑張ろうとしておるんじゃ。多少手助けして肩を持つ位の事、別に構わんではないか。」

「スメラギさんって、意外と身内に甘いデスね。」

「ほっとけ。それに譲羽がどうしても着いて行くと、珍しく自分から言ってきてのぉ~」

「ふぅ~ん、あのユズリハさんがデスか…」


 そう呟いて彼女は、先程顔面をつかまれた事でも思い出したのか、急に青ざめた表情でぶるりと震える。けれどそれも一瞬、直ぐさま調子を取り戻すと、諦めた様子でため息を吐いた。


「解ったデスよ。ま、事情も事情のようデスし、私らも協力してやるデス。」

「そうか、すまんなキサラ殿。そう言ってもらえて助かるわい。」


 素っ気ない態度をするキサラの返事を聞いた明陽が、珍しく素直に感謝の言葉を口にする。その反応が予想外だったのか、僅かに頬を染めながらフンと鼻を鳴らす彼女。


「…こんな時ばっか、しおらしくするんじゃね~デスよ。普段厚かましい癖して…」


 照れたようにキサラがそう言った直後――


「おぉ、そうかの?では、()()()()()()()()もう1つお願いがあるんじゃがのぉ?」


 ――したり顔で底意地の悪い笑顔を浮かべた明陽が、不意にそう呟くと同時彼女に向かって一歩踏み出すと、逃がさない様にその手をがしりと掴まえる。その瞬間、キサラが青ざめた表情となったのは言うまでも無い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ