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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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間章・「フハハハハッ!再び吾輩颯爽登場!!そしてここから先の物語は、そう吾h――(ブツン」あ、すいません。横を通り過ぎるだけですんで

「颯爽登場!吾輩で在る!!」キリッ☆


 ………


「…高笑い止めたと思ったら、急に何デスか?何処向いて誰に宣言してるデス?」

「フハハハハッ!画面の向こうの人達で在る!!」

「はぁ?」


 …そう言う発言は、本当に止めて頂きたい。


「なんと!?主人公のメタ発言は寛容なのにであるか!?差別である!!」

「え、今なんて?」


 本当に止めろ!


「フハハハハッ!怒られてしまったのである!!」

「今日はほんと、ずっとネジがぶっ飛んでるデスね…」


 海の上に次々と水柱を作りながら、海上を疾走するレオンの肩に腰掛けた状態のキサラは、そう呟いて前方を鋭く睨み付ける。その視線の先には、変わり果てた姿で泳ぎ続けるベファゴと、その横を併走する様に進む帆船の影があった。


「ようやく追い着いたのは良いデスが…レオン、誰が闘ってるか解るデスか?」

「うむ!スメラギ嬢とユズリハ嬢のようであるな!!声が聞こえたのである!!」


 彼女の問い掛けに対しレオンは、事も無げにそう返す。流石地獄耳、遠く離れていたにも関わらず、その声をはっきりと聞き分けていたらしい。


 一方、その問いを口にしたキサラはと言うと、その名を聞いた途端、まるで苦虫でも噛みつぶしたかの様に、渋い表情を作って視線を前方から背けた。


「よりにもよってあのお2人デスか。ぜってぇ~後でスメラギさんに、嫌味言われるデスね…」

「フハハハハッ!間違い無く言われるであるな!!」

「笑い事じゃねぇ~デスよ!!あの人いっつもネチネチ、ネチネチと…そんで都合悪くなると幼児退行するんデスから。」

「相変わらずキサラ嬢は、スメラギ嬢が苦手であるなぁ!」

「新参の癖して、態度でか過ぎなんデスよあの人。おまけに押しも強くて、厚かましいし…」

「キサラ嬢、普段引き籠もりな所為で人見知りであるからな!他人と仲良くなるのに時間が掛かるのである!」

「ちょっ!?何故にそんな説明口調デスか!?誰に対しての解説デス!!」

「無論――」


 止めろっちゅうに!


「――何でも無いのであ~る!これ以上続けたら、作中から消されかねないのであ~る!!」

「??訳わかんねぇデス…」

「フハハハハッ!」


 ………


「それよりもキサラ嬢、どうやら『金色の精霊姫』エイミー・スローネ嬢もご一緒の様であるぞ?」


 一頻り笑い終えた後、急に素に戻ったレオンが、唐突にその名を口にする。そしてその名を聞いた途端、今度はパッと顔を綻ばせて、前方に見える帆船に熱い視線を向けるキサラ。


「隠居した筈のあの女が居るって事は、もしかして師匠もいらっしゃるデスか!?」

「あ、いや、シフォン嬢は居らぬ様であるな…」


 とそれを聞いた途端、キサラの目が死んだ魚の様に濁り、明らかにやる気を無くしてしまう。


「…レオン、回れ右するデスよ。私帰って寝るデス。」

「何と!?この期に及んでであるか!?」

「そんな行きたきゃおめぇ~だけ行けやデス。」

「なんと余所余所しい!冒険者時代の仲間と聞いていたが!?」

()デスよ。私から師匠を奪ったあのドロボウ猫が、あの船乗船してるって思うだけで、ついうっかり超常魔術ぶっ放しそうになるデス。」

「それもう、うっかりの範疇超えて悪意しか残ってないのであるが!?」

「大丈夫デスよ。腐ってもあの女、師匠のパートナーだったんデスから。クッソ忌々しくも私の魔術、キッチリ防ぐデスから。」

「その言い方だと、実際にぶっ放した事あるのでは無いか!?」

エク(エクストリーム)エク(エクスプロージョン)を。」

「半径1キロ圏内蒸発させかねん魔術仲間にぶっ放すって、どう言う状況であるか!?全然大丈夫では無いのであるが!!キサラ嬢、シフォン嬢の事に成ると、急に陰キャになるであるな!!」

「流石に故意じゃ無いデスからね?依頼の作戦で成り行き上です。それに昔の女(エイミー・スローネ)相手だから、ついうっかりでまだ思いとどまれますデス。これが今の女(リンダ=マクレス)だったら、もうぶっ放してるデスよ。」

「キサラ嬢の師匠愛が予想以上に重いのである!全然安心出来ないのであるが!?」


 ボケ担当のレオンが、終始ツッコミ役に徹するというのも珍しい。実は『怠惰』じゃ無く『嫉妬』なんじゃ無かろうかと、彼がそう思った瞬間だった。


 ともあれ、久々の登場だというのに、相も変わらずのっけから、わちゃわちゃとしたやり取りを続ける迷コンビ。しかし流石に、ベファゴとの距離が目と鼻の先に迄に近づき、海に打ち棄てられた巨大な尻尾の横を通り過ぎた途端、2人の雰囲気が一変した。


「…全部で6本デスか。これは、もう頭を潰さないと無理デスね。」

「うむ!その様であるな!!」ドクン


 激闘の痕跡である、海に打ち棄てられた尻尾の残骸を数えキサラが呟く。それにレオンが答えると同時、彼の右腕がビクンと一瞬大きく痙攣して、その内側から何かが脈動する様な鈍い音が聞こえてくる。


 直後、ベファゴの横を併走する帆船が急に舵を切り、怪物の側から離れていった。


「どうやらスメラギさんも、おめぇ~が奥の手を使う気だって、解ってる様デスね。」

「フハハハハッ!流石であるな!!」ドクン

「態度がでかい馬鹿犬デスね…解ってるデスか?あんたが最初っからその気だったら、こんな事態にはなり得なかったんデスからね?」

「迷惑を掛けて申し訳ないのである!」ドクン

「…本当にそう思ってるデスか?」

「うむ!だからこうして、不眠不休で走り続けてきたのである!!」ドクン

「体力お化けデスからね、レオンは。」

「フハハハハッ!四六時中婦女子のお尻を追いかけているであるからな!!」ドクン

「…誰も聞いてねぇ~デスよんな事。ほんと最低デスね。」

「であるから、ベファゴの尻尾を追いかけるのも、何ら苦では無かったのである!!」ドクン

「誰も上手い事言えだなんて言ってねぇ~デスよ…」


 会話の内容はこの際さておき、彼が喋る度にその右腕は、鈍い音を響かせて跳ねる様に痙攣するを繰り返す。その現象は、まるで心臓が脈打つかの如く、あたかもそれ自体が別の生き物に、取って代わられたかの様だった。


 ドクン、ドクン、ドクンと更に数回繰り返された頃、彼の右腕にある変化が起き始める。元より丸太の様に太い腕が、一回り二回りと更に大きくなり、毛むくじゃらで地肌も見えない筈なのに、はっきりと見て取れる程太い血管が浮かび上がる。


 ドクン、ドクン、ドクンと更に繰り返されると、パンパンに膨れ上がった腕の内側に、仄かな光が灯り始める。そうなった途端、それまで笑顔を絶やさなかったレオンの表情に、余りにも似付かわしくない苦悶の色が差し込んだ。


「…そろそろ、私も準備に向かうデス。セット、『レビテーション』」


 それを見て取ったキサラが、神妙な面持ちで急にそう呟くと、レオンの返事を待たずに待機魔術を起動する。直後、彼女の身体が七色に光ったかと思えば、肩に座る姿勢のままふわりと宙に浮かび上がった。


「折角ここまで追ってきたんデスから、レオンの手でキッチリ終わらせるデス。」

「美味しい所を持って行く様で、申し訳無いのである。特に優姫嬢にはな!」ドクン…

「誰デスかそれ…」

「フハハハハッ!」

「まぁ良いデス。とりあえずスメラギさん達は、んなちっちぇ~事気にしやしないデスよ、きっと。」

「背が低いのにな!!」ドクン…

「おまっ!?んなでっけぇ~声で言ったら…」


 ――聞こえたぞ犬っころ!!誰の背が小さいじゃゴラァ!!


「あ~ぁ、後でどうなっても知らねぇ~デスからね…」

「フハハハハッ!」


 その頃になると、レオンの右腕が痙攣する速度が遅くなり、逆に跳ねる振り幅は目に見えて激しく、脈打つ音も大きくなっていく。内側から発せられる光も、回数を重ねる毎に強くなっていくと同時に彼は、何かを堪えるかの様に拳を強く握りしめた。


 直後――


 ――ブシュウウウゥゥゥーーーッ!!


 ――腕に太く浮き出た血管が突如裂け、そこからい堰を切ったかの様に勢いよく血を吹き上げる。レオンの超回復能力を持ってしても、その出血が止まる様子は無い。


 それもその筈、裂けて再生しまた裂けて再生するを、延々に繰り返しているのだから。それでも尚、彼の腕はドクンと脈打つ。


「…ま、周囲の被害なんぞ考えず、存分にぶっ放してくるデスよ。私が全部防いでやるデスから。」


 その光景を横目で見たキサラは、それ以上は見るに堪えないと言った様子で、レオンの右腕から目を背けならが告げる。


「うむ!頼りにしているのである相棒!!」ドクン…


 直後にレオンがそう告げて腕が激しく脈打つと、ブルブルと小刻みに震え出す。そろそろ限界が近づいているのか、彼から余裕の無さが伝わって来る。


 だと言うのに彼は、無理矢理にでも笑顔を作ってキサラに応える。その笑顔を、チラリと横目で見た彼女は、不機嫌そうに鼻を鳴らした。


「…私を誰だと思ってるデスか?任せろやデスよレオン。」


 そう答えた直後、ベファゴから離れていく帆船をキッと睨んだキサラは、レオンの身体から手を離すと、そちらに向かって飛翔し始めた。いつもの調子なら、相棒呼ばわりするなと言いそうな物だけれど、その痛々しい姿を前にしては、流石に軽口や冗談だっだとしても言えなかったのだろう。


 去って行くキサラを見送ると同時、レオンの腕がドクンと跳ねる。それがあたかも、試合の開始を告げたゴングかの様に、次の瞬間彼の表情からスッと笑顔が消える。


 そして、鬼気迫る表情で陸地を目指すベファゴを睨み付けると――


「決着を着けるのである!!」ドンッ!!


 ――言うが早いか、突如大きな水柱を作ってレオンは、海面を走る速度を加速させて、一気にベファゴとの距離を詰めていく。所かそのまま追い越して進路の前に出ると、直後に海の中かベファゴが顔を現した。


「キシャアアアァァァーッ!」


 海面に顔を現すと同時、威嚇する様な鳴き声をベファゴが発する。道を開けろと、邪魔をするなと、でなければ全力で排除すると、そう言いたげな雰囲気があった。


「フハハハハッ!吾輩が邪魔かベファゴよ!!ならば挑んでくるが良い!!」


 だからと言って、はいそうですかと道を譲るレオンでは無い。威嚇するベファゴに対し彼は、その称号の通り傲慢な態度で、高らかに笑い叫んで逆に威圧する。


 そんなレオンの言葉を、ちゃんと理解した訳では無いだろう。しかし敵だとちゃんと認識されたようで、ベファゴの首が持ち上げられていく。


「吾輩を見下ろそうというのか!?なんと不遜な!!トゥッ!!」バシャンッ!!


 直後にレオンはそう叫び、巨大な水飛沫を巻き上げながら、天を目指してジャンプする。その勢いは凄まじく、ベファゴが持ち上げようとする首の速度を一瞬で追い越し、あっという間に上空に躍り出てしまった。


「フハハハハッ!どうした海の王者よ!!吾輩の方が頭が高いのである!!」


 天高く飛び上がった彼は、下からせり上がってくるベファゴの頭を見下しながら、そちらに狙いを付けるように、上空で身体の向きを入れ替える。そして、今も破裂し続けている、パンパンに膨れ上がった右腕を、腰溜めに身構えた直後――


 ――ドクンッ!!ゴゴゴゴゴッ!!


 ――一際大きくその腕が脈打った瞬間、腕の中の光が爆発的にその光量を増していく。その光と小刻みに震える腕の動き、まるで呼応するかの様に大気が騒ぎ出す。


「ギシャアアアァァァーーーッ!!」


 上空で身構えたレオンに対し、何か感じる所があったのだろう。大口を開けたベファゴが、彼を一飲みにせんと飛びかかっていく。


「これぞ正真正銘、吾輩必殺の本気パンチ、改め――」


 それをレオンは、身構えた姿勢のまま冷静に見据え、拳を振り下ろすその瞬間をひたすら待ち続ける。程なく、ベファゴの大口が彼の身体を、飲み込まんとした瞬間――


「――『ルミナス・ライオット』!!」カッ!!


 ――世界が目映い光に包まれた。

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