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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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子連れJK異世界旅~異世界怪魚列伝〜(1)

 う~み~は~広い~な~おっき~い~なぁ~と。


 ――コォー…シュコォー…


 降り注ぐ太陽!(目深にフード被ってるけど)肌を撫でる潮風!(露出してるの両手ぐらいなもんだけど)鼻腔をくすぐる清涼感あるの空気!!(要するに無味無臭)


 ――コォー、シュコォー…コォーシュコォー…


 船首に陣取り、船首像のイヌ科っぽい意匠と同じ目線で、何も遮る物の無いスカイブルー(な筈)の景色を望んでヨーソロー!!時は正しく、大航海時代って感じだね!!


 ――コォーシュコー、コォー…シュコォー


 いやぁ~天気も良いし、恰好のクルージング日和って感じだね!海に来ると、なんでかいつもテンション上がっちゃうのよね~


 これがバカンスの真っ最中だったら、更にテンションアゲ⤴アゲ⤴だってのにね。それが化け物退治だってんだから、異世界ってほんと理不尽だわ。


 ――コォー、シュコー、コォー、シュコー


 いやぁ~、しっかし水着が無いのがほんと残念だわ。うちの子達やエイミーに着せて、それをじっくり堪能したかったわぁ~


 あ、勿論あたしは見る専ですよ?間違ってビキニなんて着たら、あたしの周りだけボディービル女子の部が、突然開催されちゃうからね!!


 それに、見栄張ってパットを大量投入した挙げ句、何かの拍子にズレてストーンとビキニトップが落ちるオチしか思い浮かばんのよ。水着着るなら、せめて…せめてB位に見える様にはしたいのよ!!


 シッテルカイ?バストサイズってAが1番下じゃ、ナインダヨ…(白目


 ――シュコォーシュコォー、コォー…シュコー…


 え、さっきから聞こえるこの音は何かって?あたしの呼吸音ですが、何か問題でもあるでしょうか??


「優姫。」

「待たせたのぉ。」


 不意に、背後から呼びかけられて、その場で身体毎くるりと振り返る。そうして視線を向けた先には、あたしの元へと向かって列を成してやって来る、みんなの姿があった。


「ママッ!」


 あたしが振り返るとほぼ同時、みんなの中に混じっていたオヒメが、パッと表情を輝かせたかと思うと、その中から小走りに飛び出して、そのままの勢いであたしの身体に抱き着いてくる。それを無言で受け入れると、人知れず苦笑を浮かべてその頭を優しく撫でる。


「えへへっ!」


 猫の様にすり寄ってくるオヒメの頭を撫でたまま、少し遅れてやって来たエイミー達へと顔を向ける。


『おかえり。どうでした?』コォーシュコー…


 あたしがくぐもった声でそう聞くと、エイミーは毎度おなじみの困った表情を浮かべ、アクアと明陽さんは呆れた表情を浮かべる。そんな彼女達の表情を、やや暗い視界の中で見ながら、これ見よがしに首を傾げてすっとぼける。


 おやおやみんなどうしたというのかな?(棒読み


「…御主、いつまでそれ被っとんじゃ?」

「まさか、ずっとそのままで居るつもりじゃ在りませんよね?」

「優姫、流石にそれはちょっとどうかと…」


 あたしがそんな風にすっとぼけていると、まるであたしがさっき口にした質問なんて、まるで聞こえなかったかの様に、3人が3人共ともあたしの外見についての文句を口にする。フゥ、やれやれ…どうやらロリババァさん達には、このハイセンスなアテクシの出で立ちが理解出来ないらしいわね。


『似合わない?』コォー、シュコー


 と言いつつ、カメラ目線ばりのキラッ☆ポーズ!


「いや、怖いわ!」

「可愛くないです!!」

「大分ノリノリですね…」


 そんなテンション高めなあたしのリアクションに対し、3人から返ってきた反応は、あまりにも冷ややかなものだった。そんな中…


「格好いい!!」

『そうでしょう、そうでしょう。』コォー…シュコォー


 そんな中で1人、目を輝かせながら、興奮気味に惜しみない賛辞を口にしたのは、言わずもがなうちの可愛い子のオヒメだ。ほらね?やっぱ100年以上生きてる人達には、この恰好の良さが解んないだけなのよ。


 だから気にしない。なんかオヒメの反応を見て、あたし達の事まとめて白い目で見てるけど気にしない。


 明陽さんなんか、まるで汚物でも見てる様な目で睥睨してるね!いやぁ~、盆暮れにある例のイベント参戦するのに、一般の人が多く居るって時間帯に、会場で着替えると混雑してて大変だろうからって、コスプレして電車乗り込んだら、きっとご高齢の人にこんな目で見られるんだろうなぁ~


 え?一体どんな恰好してんのかって??えっとねぇ、明陽さん達と同じ白装束の複製品(レプリカ)でしょ?それから、同じく複製品(レプリカ)にしたフード。


 ――コォー、シュコー、コォー…


 それからそれからぁ~後は、自分の顔を隠す為に作成した、例のガスマスクの複製品(レプリカ)が今回のアクセントかな☆←


 コーデのコンセプトは、『綺麗なベ○ダー』これでライトセイバー片手に構えて、インペリアル・マーチが、BGMとして流れてくれれば尚良し!(色々サーセン


 それはまぁ良いとして、一見ふざけている様に見えるこの恰好だ。3人の反応も当然だろう――譲羽さんだけ、ブレずに安定の無表情なのよね…


 けどその実、ふざけている様でおふざけは4割程度(?)。後は歴とした狙いがあって、あたしはこんな恰好をしているのだ。


 甲板に通じる階段を上る途中、このまま成長したオヒメを、人の目に触れさせて良いのかという考えがずっとあった。確かに明陽さんが口を出してそれとなく脅せば、きっとあの船長なら、何が起きても見なかった事にしてくれるし、部下達にも口外しない様に言ってくれるだろう。


 けれど、何時の時代も、何処の世界にも、例えどんな辺鄙な土地にだって、人の口にきっちり戸を立てる事は出来無い。上司が厳格な人物だとしても、その下に付いた部下全てが、綺麗に判を押した様な同じ性格になるなんて有り得ない。


 だからこそ、保険の意味も兼ねて、何かしらの対策はしておくべきなのだ。あたしの行動如何によっては、無闇に異世界人が召喚される様になる事態に陥るなんて脅されたんだから、慎重に慎重を過ぎる位がきっと丁度良いのだ。


 ならどうするかと考えた時に、『ならもういっそ、顔を隠してしまえば良いんじゃね?』と言う、閃きと言うには烏滸がましい、かなり安直な考えに思い至った。その考えに至る最大の要因となったのは、明陽さんの荷物の中に紛れていた、あの軍用防護マスクを発見したお陰だろう。


 口や鼻は当然、目の周り全て迄を覆う事の出来る、防塵・防毒処理の施されたフルフェイスマスク。最早神がかり的なタイミングを通り越し、ご都合主義の為せる業と言っても過言じゃ無いけれど、この際その辺の理不尽には目を瞑ろうじゃないか。


 大事なのは、顔を隠すのにこれ以上適した物は、現時点で他に無いと言う点のみだ。神の思し召しか、或いは悪魔の悪戯か知れないけれど、いずれにしろこうして都合良く便利な物が手に入ったんだから、それを活用しない手なんて無いだろう。


 34名もの人が働いているこのノーチス号だけど、幸いにもあたし達が乗船してから、顔をちゃんと合わせたのは数人だ。更に言うと、その人達があたしとオヒメの事を、しっかり気にとめている可能性さえ低いだろう。


 なんせこの船に乗り込んでから――もっと言えば、クローウェルズの港に着いてからずっと、周囲から嫌と言う程注目を集めてきたけれど、そのどれもが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 港に着いてからずっと、注目を集めていたのは、守護者である明陽さんと譲羽さん、そして『金色の精霊姫』の二つ名を持つエイミーが居たからこそだ。それに気付かず、注目集めてる事に良い気になってたら、それはもう自意識過剰のイタい女だってのよ。


 言うなればそれは、マジックで言う所のミスディレクションと一緒だ。3人も注目を集める人が居れば、人は自然とそちらにばかり視線が向いて、その他の注意力が疎かになる。


 舞台の上で脚光を浴びる人物にばかり、人は視線を向けるけれど、その光に依って浮き彫りとなった影には、まるで誰も気が付かないかの様。あたしやオヒメ、ついでにアクアも、脚光を浴びる3人の影に、図らずとも身を隠していたって訳。


 ま、要するに背景よ背景。モブA・B・Cとでもお呼び下さい。


 別にふて腐れてなんて居ないよ?経験上、人からは注目集めても、良かった事なんて今まで無かったからねぇ~それに、今回はそのお陰で、顔を隠す程度の対策で済むんだから。


 単にオヒメが成長した姿を見られた位なら、それはさして問題には成らない。なにせ不死だ不滅だなんて、異世界理不尽クオリティーで溢れるこの世界だ、人が急に伸び縮みしたって、魔法だ変身だ真の姿だって、言い訳出来る要素は沢山在る。


 なんせ、『あと1回、俺は弟よりも多く変身出来るんだ』って、ドヤ顔で宣言したら、『あぁ、フリー○様のお兄さんですね』で納得するじゃ無い?それと一緒一緒、行ける逝ける(ぇ


 けれどもし、異世界人であるあたしとセットで目撃されたら?全然何の関係も無い、赤の他人ですなんて言い逃れが、通用する訳が無いだろう。


 なので、周囲からモブ扱いされている今の内に、保険の意味でも顔を隠す事にしたと言う訳だ。それなら単に、口元を覆ってフード被れば良いと思うだろう。


 なのに、敢えてガスマスクなんて着けたのには、印象操作って理由もあるのよね。ここまで奇抜なもん着けて注目浴びれば、このマスクの方がより強い印象に残って、あたしのモブ顔なんて更に薄れそうじゃない?


 敢えて明陽さん達と、同じ服装にしたのもそう。そうする事によって、守護者の関係者みたいな印象を、周囲に植え付けるのが狙いだ。


 なんせこの白装束、防御力もしっかり考えられて作られているので、かなり厚手の生地で作られているので、身長もあるし――主に胸が(吐血――着痩せしがちなあたしが、こうして顔を覆い隠して着ると、一見したら男性の様に見えるだろう。そうなれば、あたしとオヒメの関係性だって、更に薄まるってなもんでしょう。


 オヒメが上位精霊にまで成長した時点で、彼女の素性を隠し通す事はまず無理だし、普通に親子や姉妹で通すのもかなり苦しい。であれば、それを前提として対処すれば良いだけの話だ。


 噂が広まるのを前提に考えた場合、『異世界人と瓜二つの精霊が存在する』と、『異世界人に懐いた精霊が存在する』では、断然後者の方がマシだからね。そう言った理由から、今後オヒメと並んで人前に出る時なんかは、顔を隠した方があたしも動きやすいのだ。


「御主の言い分は解るがのぉ、しかし…じゃからとて、それは流石にあんまりじゃろう?」


 だって言うのに、どうやら彼女達には、この姿がお気に召さないらしい。渋い顔を浮かべた明陽さんが、まるで品定めするかの様に、頭の天辺からつま先までを見やると、一応の理解は示しつつ非難の声を上げる。


『あんまりって何がです?』コォー、シュコー、コォー…


 そんな彼女に対しあたしは、首を傾げつつジェスチャーを交えて疑問を投げかける。こんなマスクしてたら、表情なんて読めないっていう、ささやかな配慮だ。


 そんな配慮が出来るんだったら、彼女が何を言いたいのか解るだろうって?勿論ですとも!!(爽やかな笑顔で


「すっとぼけるで無いわい!戯けか御主!?儂等と同じ恰好で、んな仮面ずっと着け取ったら、今度は儂等が変な目で見られるじゃろうが!!」

『キラッ☆』コォー、シュコー


 このまま『星間飛行』アカペラで熱唱しちゃおうかなぁ~


「嫌がらせか?嫌がらせじゃな!?嫌がらせじゃろう!!」

「なんでそんなにテンション高いんですか…」

「優姫、熱でもあるんじゃ無いですか?」


 おっと、遂に体調を心配され始めたか…しょうが無い、真面目に答えるか。


『まぁ白状すると、こんな綺麗な海見ちゃって、ちょっとテンション上がってるってのもあるけど…』シュコォー

「うわぁ~…」

「優姫…」

『いやでも真面目な話さ、人の印象上書きするって、この位インパクト無いと無理だから!』コフォー、コシューッ!


 いよいよエイミーにまで白い目で見られ始め、慌てて言い訳を口にする。人が受ける印象って、強烈になれば成る程、強く深く刻み込まれる物だからね。


 単に変装した位じゃ、逆にかえって怪しまれたりもするからね。どうせ怪しまれるなら、ここまで振り切れて悪目立ちした方が、良かったりもするのよ。


「それは解りますが…けれど、そうは言ってもですね…」


 あたしの力説を受けエイミーも、やはり一応の理解は示しつつ、相変わらずの困った表情で、背後を気にしてチラチラと視線を送る。彼女が気にして向ける視線先には、作業に追われつつも、こちらの様子を遠巻きに伺う船員さん達。


『大丈夫、あたし気にしない。』コォー、シュコー…


 彼女が何を気にしているのか、もちろん解った上でそう告げる。


「いや、御主が気にせんでも儂等が気になるわ!!」

「優姫さんって、ほんと神経図太いですよね…」

「優姫、流石に私も恥ずかしいです…」


 そんなあたしの態度に、批判的なそれぞれの反応が直後に返ってくる。けど動じない。


 こうなったら、どちらが折れるかの根比べだ。ヴァルキリーの名の下、『一刀を胸に』引かぬ折れぬ顧みぬ!!


 こんな所で決め台詞使うなって?サーセン


「…どうやら引かぬようじゃな、仕方在るまい。」


 動じないあたしを見て説得は無理と諦めたのか、不意に明陽さんが呟いたかと思うと、スッと片手を上げる。それを受けて、まるで会話に参加する事の無かった譲羽さんが、ずいっと一歩進み出る。


 うっ、ま、まさか…


「自分からその仮面を脱ぐか、無理矢理引き剥がされるか、どちらがお好みかえ?」


 そう告げて冷笑を浮かべる明陽さん。その恐ろしいまでに冷ややかな笑みからは、若干殺意が込められていた――


 ――自主規制なう。心地の良い音楽でも聴きながら、5分少々お待ちください――

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