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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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子連れJK異世界旅~洋上の異世界クルーズ~(6)

 突然言葉を切ると、驚きに目を見開きあたしの背後を凝視し出す明陽さん。それとほぼ同時に、慌てた様子のエイミーが、その名を呼ぶのが聞こえて内心でぎくりとする。


「オヒメ!?どうした――」


 2人の様子から、彼女の身に何かが起きたのだと直感したあたしは、直ぐさま慌てて振り返る。そこには――


「――の…?」


 ――今更見間違う筈も無い、あたしや妹の小さい頃にそっくりな、幼い姿をした少女がそこにちょこんと座っていた。けれど、普段と違う部分がただ1つ。


 その身体から、青みがかった銀色の光――いや、あれはヴァルキリーの微精霊か――を発していた。


「わぁ~!」


 微精霊が身体からあふれ出しているにも関わらず、当の本人はと言えば、驚くと言うよりも何故か嬉しそうに、顔を綻ばせてその様子を眺めていた。


「ちょ、何これ!?一体どうしたの!?」

「えへへっ!大丈夫だよママ!!」

「大丈夫ってあんた…」


 オヒメの身体に起きた突然の変化に、慌ててその身体を持ち上げて尋ねる。そんなあたしに対し彼女は、満面の笑みを浮かべて、あっけらかんとした様子で返事を返してくる。


 こっちは突然の事に気が動転してるって言うのに、まったく暢気というか何と言うか…ともあれ、その様子を見る限りでは、身体に不調をきたしたとか、そういった緊急性を要するような事態では無いらしい。


「こ、これは…あの時と同じ現象?」

「エイミー、何か心当たりがあるの?」

「え、えぇ…」


 不意に聞こえてきた呟きに、あたしはその声の先へと視線を向ける。すると彼女は、未だ驚きに目を丸くさせながらも、あたしの問い掛けに頷きながら応える。


「優姫がガイアース様と闘った際、ウィンディーネ様とトパーズさん達の力を、取り込んだじゃないですか。」

「え?うん。」

「色は違いますが、あの時もオヒメちゃんの身体が、今の様に光り輝いていたんですよ。それに昨日も…」

「昨日も?」

「えぇ。オヒメちゃんが言うには、優姫がシルフィード様の力を受け取ったからだって…」


 あたしは直接目撃していなかったけれど、どうやら過去2回同じ様な現象が起こっていたらしい。そしてその2回ともが、他属性の精霊達の力を受け取った際に起きていた。


 その直後、決まって彼女の身体が大きく成長していた。つまりこれは、オヒメが成長する兆候――


「――けど、だとしたら何で急にこのタイミングで?」

「多分ですけど…」


 その光景に目を奪われながらも、ふと口をついて出ていた疑問の言葉に、思い当たる節が在るのだろうアクアから返事が返ってくる。その言葉を耳にし、視線をそちらへと向ける。


「さっきのバイク…でしたっけ?あれを眷属にした事によって、優姫さんの精霊としての位階が、高位に達したんだと思います。」


 あたしが視線を向けると同時、考えを纏めながらと言った様子で、自分の考えを語り出すアクア。そう語りつつ彼女も、少なからずオヒメの身に起きた現象に困惑している様子だった。


「あれで?」

「えぇ恐らくは。昨日優姫さんがシルフィード様の力を取り込んだ時点で、ギリギリ高位に届いていなかったんだと思います。精霊王様達の力は、精霊種を含む私達眷属の質は勿論ですけど、その人数によっても大きく左右されるんです。」

「つまり、あたしの力が成長したから、オヒメもまた成長したって言う事?」

「はい。そもそも姫華ちゃんは、精霊ヴァルキリーの中でも第一位――カーラ姉様やククリ様、イザベラ様と同じで、いずれは精霊王様の代行者と成る精霊ですからね。ヴァルキリーの加護も他の子達より強い筈ですし、更にイフリータ様の加護まで貰っているから、成長するスピードも著しいんだと思います。」


 つまり、あたしが最高位の精霊王にまで辿り着いたのなら、その時オヒメは――


 アクアの考えを聞き終えると同時、脳裏に一抹の不安が過って、顔を顰めながらオヒメへと視線を戻す。アクアの推察が正しければ、ヴァルキリーの位階が最高位へと達した時、オヒメも他の第一位精霊達と同じく、更に成長を遂げて高位へと至るという事に成る。


 その時が訪れても、あの屈託無い無邪気な笑顔は、変わらずそのままなのだろうか…


「「「ッ!」」」


 そう思った直後、まるで図ったかの様に、オヒメの身体を覆い尽くしていた微精霊達が、その身体の内側へと取り込まれ始める。それに併せて、眩くその身体が光ったかと思うと、彼女の四肢が徐々に成長し始め、あたし達は固唾を呑んでその様子を見守る。


 ジワジワと言うより、ニョキニョキと手足が伸びていく光景は、昨日も目にしたアッコちゃんも顔負けの変身シーン。昨日と違う点は、『ラミパス』と例のお呪いを唱えても、もう幼児の姿には戻れないと言う事か…


 今まで、抱き上げてようやくあたしと同じ目線だったのに、今やしなやかに伸びた自身の足で、しっかりと床を踏みしめている。その事実に、少なからずショックを受けて、思わずその身体を掴む手を離し1歩身を引いてしまう。


 やがて、彼女の身体から発せられていた光が収まると――


「ママッ!!」ぴょんっ!

「わぁっ!?」ガシッ!!「とっ!」


 ――まるで空いてしまった距離を縮める様に、いつもの屈託無い笑顔を浮かべながら、何の迷いも無く飛び付いてくる少女の姿にまで成長したオヒメ。その身体をあたしは、反射的に受け止めていた。


「ママッ!ママッ!!見て見て!姫華大っきくなったよ!!」


 あたし含め周りのみんなが、少なからずこの状況に戸惑い、事態の整理が出来ていないというのに、そんな事知ったこっちゃ無いと言わんばかりに、天真爛漫にはしゃぐオヒメ。姿形は成長しても、中身はまるで変わっていない事に、思わずホッとしている自分が居た。


 やれやれ、ショックを受けたりホッとしたり、忙しないったらありゃしないわね…それもこれも全部――


「――全く、あんたって子は…」

「えへへ♪」


 呆れながらに苦笑しつつ、無邪気に笑う彼女の頭を優しく撫でる。もう彼女を抱き上げる事が出来無いのは、やはり少し寂しいけれど、たとえ外見が変わろうともオヒメはオヒメだ。


 だからきっと大丈夫。さっき頭を過った不安も、きっと通り越し苦労に終わる筈…今はそう信じる事にしよう。


 まぁそうは思っても、余りにも駆け足気味で成長するもんだから、いちいちこっちも不安に駆られてしまう。まぁでも、月並みな台詞だけれども、子共の成長を願い喜ばない親なんてきっと居ない。


 だから色々思う所はあるけれど、今はその全部飲み込んで、ただただオヒメの成長を――


「えへへ~」ポョン…


 ――性、徴…を………


「ぅ?ママ?」ポヨン、ポョン


 ………………………


 ガバッ!「きゃっ!?」

「ゆ、優姫!?どうしたんですか!?」


 何の脈絡も無く唐突に、腕の中に居る少女の両肩を掴むと、そのまま力任せに無理矢理引き剥がす。あたしの豹変っぷりに、驚いたオヒメが小さく黄色い悲鳴を上げ、それと同時にエイミーも声を上げる。


 けれどそんな声さえ、今はまるで耳に届かない。何故なら、視線の先にある理不尽な現実を、ただただ目を丸くして直視するので精一杯だったからだ。


 エロい・エロい・ラマ・サバクタニ…(色々サーセン


 視線の先、其処に在ったのは…女性としての確固たるシンボル(2つの丘)――


 ――ガシッ!!「ひゃあっ!?」

「ちょっ!?ゆ、優姫!!」


 その丘に向かって無意識に両手を伸ばすと、次の瞬間鷲づかみにしていた。そして、当たり前の様に手の平から伝わって来た、確かな存在感と柔らかさに、胸の内がキュッと締め付けられる様な錯覚を覚えた。


 次の瞬間――


「どうしてこうなったあああぁぁぁっ!!」モミモミモミモミ!!

「ひゃああああぁぁああぁぁああ!?」


 ――思わず、これでもかって言ういやらしい手つきで、オヒメのおぱ~いを揉みしだきながら、胸の奥底から湧き上がってくる言葉を、慟哭として吐き出した。その叫びに呼応するかの様に、オヒメの悲鳴が室内に響き渡る。


 どうしてそんな行動に出たかって?理由は言わなくても、きっともう解るよね?


 オヒメの身体が、すくすく元気に育ってくれました。それは良いの、色々思う所はあるけれど、それはあたし頑張って飲み込む!


 でもこれはダメ!絶対!!咀嚼したって飲み込めない!!泣いちゃうよ?あたし泣いちゃうよ??


 オヒメのお胸が、お胸が…あたしよりも大き…ッ!!なんッ…てッ


 何この地獄。嘆きの川(コキュートス)って異世界に在ったんだ。


 あ、もうダメ。ぴえん


「落ち着け!!」バシンッ!!

「痛ぇ!?」

「痴女か御主は!!」


 突如として後頭部を襲った激しい痛みに、それまで掴んでいたオヒメの胸を離し、その場に蹲って痛む部分を押さえつける。直後、頭上から響く明陽さんの言葉に、ようやくあたしは我に返った。


 痴女かって?返す言葉もありましぇ~ん。


 けどしゃ~ないじゃん!妹にカップ数で負けて、更にオヒメにまで負けたんだから!!


 胸囲じゃ勝ってんのにね。ケッ!!


「ショックなのは解るが、子供相手に何しとんじゃ…見てみい、すっかり怯えてしまったじゃろうが。」

「もぅ、本当ですよ…」


 その言葉に顔を上げると、明陽さんの言葉に同意するエイミーの背後に隠れて、ビクビクしながらこちらの様子を伺うオヒメとちょうど目が合った。その姿を目にし、バツの悪さから思わず肩を竦めて、小さく舌を出しつつ微苦笑する。


「ちょっとオイタが過ぎたみたいね…」

「ちょっと所じゃ在りませんよ!全く…」

「ご、ごめんって!!ちゃんと謝るから、オヒメ~許して、ねっ?」


 エイミーがお説教モードに入りそうだったので、慌ててあたしは立ち上がり、その後ろに隠れるオヒメに向かって、両手を合わせペコペコ平謝りを繰り返す。だけどまるで相手にされず、所か彼女は胸を押さえる仕草を見せて、更に身を隠してしまった。


 むぅ…て、手強い。いつも天真爛漫としてるのに、成長して急に恥じらいを覚えたのかしら?


「…自業自得です。」

「その通りでござ~い…」


 あたしとオヒメの間に挟まれて、そのやり取りを見ていたエイミーが、呆れた様子でため息を吐きながら一言。その言葉にあたしは、肩を落としながらそう返した。


「良かったのぉ、これでさっきの不安が解消されたろ?」


 それはきっと、さっきあたしが問題視した、オヒメの外見の変化についてだろう。確かにその言葉の通り、風華を手にする前から成長してしまった今となっては、そんな問題なんてもうどうでも良い。


 けど、このタイミングでニヤニヤしながら言うなんて、ほんと明陽さんってひねくれてるなぁ…


「マスター!!」

「…え、銀星?」


 そんなやり取りの後、突然背後から銀星の声が聞こえ、何事かと思い振り返る。今の今まで、彼女は夜天と一緒に精霊界に居た筈だ。


 なのに突然現れたと言う事は、まさか2人にもオヒメと同じ様な変化が現れたのか?そう思って振り返った目と鼻の先には、特に変化した様子の無い銀星の姿があった。


 にも関わらず、あたしはその姿を目にしてギョッとする。なんせあの銀星が、今にも泣きそうになって居る上、その彼女を取り押さえる様に抱き着く夜天が居たからだ。


「ちょ!ど、どうしたのよ2人共!!」

「ごめんマスタ~…銀の事、止められなかった~」

「止めるって…え?」


 2人を交互に見やりながらあたしが問うと、銀星に抱き着く夜天が、困った表情に成りながらそう返してくる。状況が今ひとつ飲み込めず、困惑気味に聞き返したその直後――


「――ずるいっ!!」

「へ?ず、ずるいって…何が??」


 まるで癇癪を起こした子供の様に、突然そう叫んだ銀星に対し、訳も解らず困惑気味に聞き返す。すると彼女は、涙目のままキッとある箇所を睨み付けた。


 その視線を追って行き着いた先には、未だエイミーの背後に隠れて、こちらの様子を伺うオヒメの姿があった。


「姫華ばっかり!大きくなってずるいですマスター!!」

「と言う訳なんだよ、マスタ~…」

「あぁ~…」


 な、成る程。要するに、()()()()()()()()()()()()()()と、そう言う事ですか…


 2人の言葉をそれぞれ聞きながら、苦笑しつつ内心で納得する。どうやら彼女達も、精霊界に居ながらオヒメの変化に気が付き、にも関わらず変化の無い事に、特に銀星の方が我慢成らなかったらしい。


 それを宥めようと夜天が頑張ったけど、止められなかったと…全く、あっちもこっちも大忙しね~


 けどま、負けん気が強くて、その上何かと対抗心の強い銀星らしいっちゃらしいか。それにしても…


「「なんで笑ってるんですか()!?マスタ()!!」」


 普段の様子からは、まるで想像つかない子供っぽい雰囲気の銀星と、意外と要所要所でお姉ちゃんしている夜天との、なんとも微笑ましいやり取りに、自然と笑みがこぼれる。それを目聡く見咎められ、息ピッタリに抗議の声を上げられた。


「ごめんごめん。けど、ずるいって言われてもね~」

「えぇ。そもそもオヒメちゃんは、イフリータ様から加護を授かっているから、他の精霊達よりも成長が早いのよ。」


 そう言いながら、助けを求める様にエイミーへと視線を向ける。あたしの視線に気付いた彼女は、何時もの困った様な微笑みを浮かべながら、子供っぽくむくれる銀星へ諭す様にそう告げる。


 オヒメが急成長した原因は、あたしの力が成長したのともう1つ、イフリータの加護も原因だと思われた。その加護が銀星に無い以上、こればっかりはどうしょうもない。


 それに、仮にオヒメが授かったイフリータの加護を、銀星に移せたとしてもそれでは多分意味が無い。水の属性が色濃く出ている彼女なんだから、ウィンディーネの加護で無ければ効果が無いだろう。


 理知的な銀星ならば、きっと納得してくれ筈。そう思っていたけれど…


「だったらマスターの加護をもっと私達に下さい!!」

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