間章・彼女達の戦場(3)
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……
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――火の精霊組Side
「…カッ!やぁ~れやれだぁ~ね。」
「どうされましたか姉上?予想以上に数が多くて、嫌気でもさしましたか?」
空に開いた穴から飛び出す邪蟲や蟲人達の輪郭が、肉眼でハッキリ見える程、至近距離にやって来た火の姉妹達は、周囲を完全に取り囲まれているというのにも関わらず、まるで世間話でもする様な気軽さで会話を続ける。
「カッ!嫌気なんざ、とぉ~の昔に枯れ果てたってぇ~の。こぉ~れだけ、悪趣味な顔が並んでるとよぉ~不気味を通り超してぇ~悪趣味ってぇ~もんだろぉ~がよ。」
「ハハッ、成る程確かに。」
前方にて彼女達と対峙するのは、当然蟲蟲蟲。それは右を向こうと、左を向こうと、上も下も後ろも例外なく蟲人ばかり。
ちょっとしたホラー映画に、出てきそうなその光景に、しかし火の精霊達は臆した様子も無く悠然と構える。そんな彼女達の様子に、恐らく苛立ちを覚えたのだろう、四方八方から殺意が向けられる。
「カッ!カカッ!!良いね良いねぇ~殺る気になってくれて、俺も嬉しぃ~ぜぇ?」
そう言った負の感情を、真っ正面から受けて心底楽しそうに、そのギザギザに尖った凶悪な歯を、剥き出しにしながら快活に笑う。その様子を隣で見ているルージュは、疲れた表情でため息を吐くのだった。
「解っていると思いますが、やり過ぎないで下さいよ姉上。」
「わぁ~ってる、わぁ~ってるよぉ~!」
「…その様子は、全然解っていませんよね?」
「だぁ~いじょうぶだってばよぉ~!カッカカッ!!」
ルージュの小言に対し、あっけらかんと応えるククリ。そんな長姉の反応に、何処か諦めた雰囲気で再びため息を吐く。
そうこうしている間にも、彼女達を取り囲んでいく蟲人の数はどんどん増えていき、やがて外から彼女達を目視で確認する事が、出来無くなってしまう位の包囲網が出来上がる。だと言うのに彼女達は、それがまるで見えないと言わんばかりに、全く意に介した様子が無かった。
敵にそんな反応を示されては、取り囲んでいる方としては面白くないのが当然だ。取り囲んでいる蟲人達は、更に殺気立って飛びかかる瞬間を、今か今かと待ち侘びている様子だった。
「カッ!行儀の良ぃ~奴等だぁ~な。とっとと掛かってくればぁ~楽にしてやるってぇ~のによぉ~」
「油断は大敵ですよ姉上。」
「カカッ!それを~俺に言うかよぉ~何ならルージュ、おまえが半分受け持つかぁ~?」
「いえ、遠慮しておきますよ。不完全燃焼の姉上の相手の方が大変そうですし。」
「カッ!おまえも言う様~になったよなぁ~?」
そんな風に相変わらず身内話に花を咲かせていると、包囲網の中から1体の蟲人が彼女達の前に進み出てくる。他の者とは明らかに大きさが違うその個体は、どうやら彼女達を取り囲むこの群れの隊長格らしい。
それを察して、ルージュは顔を引き締めその蟲人を睨み付ける。一方のククリは、チンピラさながら。挑発する様に軽薄な笑みを浮かべる。
その蟲人を静かに2人を見据えて、静かに右側上腕を動かし彼女達を指し示す。
「…Gak.r!!」
「「Uarw.Ll!!!」」
その隊長格の号令らしき鳴き声と共に、堰を切ったかの様に蟲人達が彼女達に向かって押し寄せていく。しかし、その光景を前にしても、彼女達は一向に動こうとしない。
「カッ!ぬりぃ~ぜ!!」
何故ならば、動く必要さえ無いからだ。ククリの呟きと共に、その身体に収まりきらない鱗粉の様に舞う微精霊達が、ザワザワと騒ぎ出したかと思うと、赤色だったそれらが明るいオレンジ色にまで変化し、火の粉の様な物放出し始める。
変化はそれだけでは無く、彼女の着る金色の甲冑が発光し始め、鎧の隙間から熱気が噴き出す。更に紅蓮の髪は毛先から発火し、吐き出した熱気の吐息の中には炎と火の粉が混じる。
周囲の温度はどんどんと上がっていき、やがて彼女を包み込む様にして、周囲に炎の渦が奔る。その姿は、紛う事無き炎の魔人。
「カッ!カカッ!!」
――ゴオオオオッ!
「Gi!?」
「oGy!!」
炎に包まれたククリが両手を広げると、炎は周囲の酸素をどんどん取り込んでその勢いを増していく。それは球体の様にルージュもろとも包み込むと、その炎に触れた蟲人が一瞬で炎に包まれて、悲鳴の様な鳴き声を上げる。
それでも蟲人達は止まず、前に居る同胞を炎に押し込んでも、ククリ達に対し向かって行こうとする。しかしその行為はかえって逆効果で、押し込めば押し込むほど、炎の燃料が増えていくので、結果的には火の手はどんどん大きくなっていくからだ。
それでもやはり、蟲人達は止まらない。何故ならば、彼等にとって火の精霊達は、最優先で仕留めるべき厄介な敵だからである。
神代戦争の際、蟲人達を最も多く屠ったと言われているのは、地の精霊王ガイアースと、次いで風の精霊王シルフィードだとされている。だがこれは、あくまでも個人で為した討伐数でしか無い。
ならば種族単位で見た場合、最も多くの蟲人を葬った種族は何処かというと、それがイフリータ率いる火の精霊の姉妹達なのだ。更に討伐数だけで無く、被った被害さえも彼女達は一番軽微だった。
地の精霊が、邪神に対する憎しみの余り、神代戦争やその後の掃討戦で敵を深追いし、ほとんどの精霊達を失ってしまったのは有名な話だが、他にも多くの精霊達がその当時に犠牲となっていた。風の精霊達で言えば、戦列に参加したイザベラ以外は戦死しているし、海上では最強の強さを発揮する水の精霊達でさえ、全く犠牲者が出なかった訳が無い。
しかし、火の精霊達に関して言えば、神代戦争から今に至る迄、幾度となく繰り返されてきた邪神との戦争において、ただの1人として犠牲者を出した事が無いのだ。当時から今に続く精霊達の系譜において、風の高位精霊は3名、水の高位精霊が6名なのに対し、火の高位精霊はなんと10名存在している。
高位以下の精霊達の数も、大体同じ様な比率となっている。他と比べて、明らかに群を抜いているのは言うまでも無いだろう。
物理攻撃に特化した、蟲人達の天敵が優姫――ヴァルキリー・オリジンであるのなら、『現象』に特化した蟲人の天敵が、イフリータ・オリジン率いる姉妹達なのである。
「カッ!ムゥ~ダムダァ~」
炎に飛び込んで火達磨となる蟲人達の様を、口の端をつり上げた笑みで観察する。炎自体は魔力によって作り出されているが、『火の燃えるメカニズム』も、その炎によって生まれる熱も、魔力の影響の外側なので、一度火が着いてしまえば魔力障壁など関係ないのだ。
だからだろう、自分達の存在を脅かしうる存在として、蟲人達は戦場で炎の精霊を見かけたら、真っ先に倒すべき存在として判断し、必ずそこに集まっていくのだ。それはさながら、夜の灯火に群がる虫の様に。
「さぁ~て。数も減ってきた事だぁ~し、そろそろ始めるとしようかねぇ~」
それまで、ただ蟲人達が焼かれる様を、意地の悪そうな笑みを浮かべてみていたククリが、不意に両手で拳握り、それを打ち付けながら言う。その様子を隣に立つルージュは、横目で確認して三度ため息を吐く。
「言っても聞かないので止めませんが、周囲の被害を考えて行動して下さいね。」
「わぁ~ってるってぇ~!たぁ~く、心配性だなぁ~ルージュは。」
やる気を出した所に、間髪入れず妹に小言を言われた所為か、あからさまに拗ねた様子で唇を尖らせてククリは言う。それに対し、苦笑を浮かべたルージュは、しかしすぐに真顔に戻って1歩引くと、腰を曲げてお辞儀をする。
「では姉上、ご武運を。」
「おぉ~う、そっちもよろしくなぁ~」
ククリに対しそう告げて、ルージュはお辞儀したまま一度精霊界へと姿を隠した。1人、炎の繭の中に残ったククリは、ストレッチでもするかのように、身体を動かしていく。
「さぁ~て、邪魔な下位兵共はぁ~だぁ~いぶ数を減らした事だしよぉ~ここからが本番だよなぁ~」
そう言いながら、腰を低く落として、握り拳を腰溜めに引いて構える。そして――
「行くぜえええぇぇぇーーーっ!!」
「Gi?!」ドカッ!
――事もあろうに、炎の繭から飛び出し外に躍り出たかと思うと、群れを統率していた大きな個体に向かって殴りかかる。、
その蟲人は、顔面を思い切り殴られて後ろに吹き飛び、それを後方に控えていた蟲人達に受け止められた後、殴られた部分から発火して、受け止めた蟲人達もろとも火だるまになった。
「カッカカ!!さぁ来ぉい!来い来い来ぉ~い!!」
その光景を愉快そうに眺めつつ、周囲の蟲人に対し手招きして挑発する。無論、そんな事をすれば――
「IkZ!」
「「oOi!!」」
――群れの中から発せられた鳴き声を合図に、ククリに向かって一斉に押し寄せる。それを期待していたと言わんばかりに、ククリは口の両端を限界までつり上げて残忍に笑う。
「カッ!!来たぁ!来た来た来たぁ~!!」
その押し寄せてくる波に対し、馬鹿正直に正面から殴りかかっていくククリ。別に、牙触れたわけでも何でも無く、正しくこれが彼女の戦闘スタイルで間違い無い。
剣と魔法のこの世界に置いて、素手最強を唱える者達が居る。魔法の様な派手さも無ければ、技の冴えという華やかさも無い、磨き抜かれた肉体を武器に拳のみで闘う者達。
単純に考えて、武器を使用した方が効率的だし、魔法の攻撃を前に肉体1つで敵う筈も無い。にも関わらず、有史以来決して絶える事の無い、最も原始的な戦闘方法、徒手空拳。
素手オンリーという唯一不変の絶対ルール魅了された者達が、ここ異世界の地にも多く存在している。その筆頭とも言えるのが、彼女ククリ・イフリータなのだ。
「カッ!カカッ!!カカカッ!!!」
「gYO!!」
「uRO。g!!」
群がる蟲人を、嬉々とした表情で次々殴り飛ばして、その都度発火させて確実に息の根を止めていく。無論、蟲人達も一方的にやられている訳が無く、反撃しているのだが、それを物ともしないククリの姿は、正に軍神と言った所だろう。
そんな長姉の様子を、地上から見上げて守っているのはルージュだ。彼女も当然、闘う為にこの風の谷に来ているのだが、蟲人達と闘うよりも重要な任を実は負っているのだ。
「…やれやれ。やはり熱くなってきましたか。」
集団の中で1人戦い続けるククリを見守っていたルージュは、彼女の様子の変化にいち早く気が付いた。今尚、嬉々として敵を殴り飛ばし続けるククリだが、その周囲に幾筋のも炎が奔り始める。
その炎の筋は、どんどんと本数を増やしていき、やがて大きく渦を巻き始めて、彼女に群がる蟲人を全て呑み込む、巨大な炎の玉へと変貌する。それは、当初彼女が産み出した炎の結界の、3~4倍はあろうかと言う大きさにまで成った。
「カッ!!カカカッ!!」
ステゴロ最強を謳っておいて、結局最後は炎の力に頼っている――と言う訳では実は無い。今のククリに炎を操っている自覚は無く、興奮の余り能力が暴走状態になっているのだ。
当人の性格的な問題もあるのだが、ククリは精霊としての能力の制御が下手なのだ。普通精霊は、自分の身体を構築する微精霊を、意識しなくても制御出来る物なのだが、彼女の場合は意識しなければ制御出来無いのだ。
身体を制御させるだけでそうなのだから、戦闘になると制御は更に難しくなる。人間で言う所の頭に血が登った状態になると、彼女は制御する事が億劫になって、握るべき手綱を簡単に離してしまうのだ。
結果、ククリの感情に煽られるように、彼女の炎が独りでに具現化されて暴走状態に陥るのだ。そうなると、敵味方関係なく近くに居る者を、全て焼き尽くしてしまう可能性があるので、ブチ切れたククリ・イフリータの側程、危険な戦場は無いと言うのが、この世界での常識だ。
そんな長姉の様子にルージュは、本日何度目かのため息を吐いてから、今やミニチュアの太陽とも言って良い、その火の玉に対し両手を翳す。ここまで来れば、彼女の役割がなんなのかもう解るだろう、ククリの能力が暴走し、周辺に甚大な被害が出ないように、外側から炎をコントロールする為だ。
シルフィードは、住処がボロボロになっても構わないと言っていたが、下手をしたらこの辺り一帯マグマの海に変貌しかねない。現に、小さな太陽となった炎から、一番近い岩山はドロドロに溶けてしまっている。
その性質上、ククリはイフリータから単身で戦地に赴く事を、固く禁じられている。ククリの能力を制御出来る者となると、自然と高位精霊に限られてくるので、基本的には常に2人1組で行動しているのだ。
しかし、ククリの性格がああな上、戦いよりもククリの尻拭いが目的である為、一緒に行動したがる者は少ない。そうなると必然的に、姉妹間の上下関係が物を言い、高位の中では末妹にあたるルージュが、今回かり出されたという訳だ。
「カカカッ!!」
外側から炎を制御しつつ、相変わらず高笑いを上げて、戦闘を心底楽しんでいる風のククリを見つめる。炎の中に囚われた蟲人達は、ほとんどが燃え尽きていて、既に数える程しか残っていない。
残っているのは、恐らく火耐性の強い個体だろう。いくら耐性が強くとも、燃えさかる高温の中で活動出来る者など、火の精霊以外で居よう筈も無い。もし居ようものなら、それは――
「…うん?」
不意にルージュは、何かに気が付いて首を傾げる。学習能力が無いのか、燃えさかる小太陽の周りには、先程と同じように蟲人達が群がり、その身を文字通り焦がしていた。
そんな中に1体だけ、炎に身を焼かれようとも、構わず炎の中を游ぐように移動する個体を見つける。
「あれはまさか…変異種か!!いけない姉――」
それに気が付き、ククリにその事を伝えようと口を開く。しかしその時には既に遅く、炎を游ぐ影はククリの背後にまで忍び寄ると、彼女の意識が他に逸れている事を確認して、炎の中から飛び出し襲いかかる。
「GaLL.W!?」
「カッ!いらっしゃぁ~い。」
かけ声と共に、背後から襲いかかる蟲人に、しかしククリは完璧に反応して拳を振りかぶる。ルージュに警告されるまでも無く、背後から忍び寄る蟲人の存在に、彼女は最初から気が付いていたのだ。
能力を制御するのが面倒で、暴走状態になっているだけで、我を忘れている訳ではない。まぁ、制御画面だからと暴走させている方が、我を忘れて暴走してしまっている状態よりも、ずっと質が悪いのは言うまでも無いが。
ともあれ、背後から襲いかかる蟲人の顔面を狙い、振り返り様に拳を放とうとしたその瞬間――
――ボッ!!
「ッ!?」
――炎の壁に風穴が空いたかと思うと、凄まじい風を伴った一条の矢が、ククリの顔面横すれすれを通り過ぎていった。それを視線で見送りった後、視線を元に戻すと、そこには胸から上が綺麗に消失した骸があるだけだった。
その骸は、力なく後方に倒れ込むと同時、それまで燃えなかったのが不思議な位に、一瞬にして炎に包まれ地面落下していった。
「…カッ!イザベラめ、よっけぇ~な事を…まぁ~ったくルージュと良い、心配性な奴等だぁ~ね。」
先程の攻撃の正体に当たりを付けたらしいククリが、ニヤリと快活な笑みを浮かべながら、誰にとも無く文句を口にする。そして、不意に構えを解いたかと思うと、ボリボリと頭をかき始め、周囲をグルリと一望する。
「カカッ!蟲共め、もぉ~少し根性を見せて欲しぃ~いもんだぜぇ~」
視線を巡らせた後、つまらなさそうにそう言うと、今や小太陽と言っても過言では無い炎の繭の規模が縮小し始める。繭の中の敵は元より、その繭に引き寄せられていた蟲人達も、今や数えられる程度までに減少していたからだ。
「カッ!俺が冷静かどぉ~か、いちいち攻撃して確かめんじゃねぇ~っての。まぁ~ったく、あの女も昔っから変わんねぇなぁ~」
「姉上!!ご無事ですか!?」
「あぁ~ん?俺が蟲人如きに後れを取る訳ねぇ~だろぉ~が。」
「いえそうでは無く!イザベラ様の矢が頬をかすめていったではありませんか!!」
「カッ!それこそ心配無用だぁ~よ。あいつが狙いをはずすとこなんざ、今まで見た事がねぇ~んだからよぉ~」
「なら良いのですが…」
小太陽が縮小した所に、慌てた様子のルージュが駆け寄り心配げに声を掛ける。そんな彼女に対してか、ククリは何処か呆れた様子でぶっきらぼうにそう答え、その答えに一応納得したらしいルージュは、安堵のため息を吐いた。
そしてひとしきり会話を終えた後、2人は再び集まりだした蟲人達に向き直る。当初の10分の1にも満たない数で、勝ち目が無いと解っているだろうに、それでも愚直に向かって来るのだから、どう考えても常軌を逸しているとしか思えない。
それでも奴等はそうする他無いのだ。それが宿命で、その為だけに存在し、それ以外の事を考えられないように作られているからだ。
「全く、しつこいですね。」
「カッ!今に始まった事でもねぇ~だろぉ~がよ。それよりもよぉ~ルージュ。」
「はい、何でしょうか?」
「見ているだけじゃぁ~つまらねぇ~だろぉ~?半分位、おまえも相手してやれよぉ~」
「は?いえ、ですが…」
「心配ねぇ~よぉ~誰かさんに警告された事だしなぁ~」
そう言って自分の頬――先程イザベラの矢が掠めた部分を指差しながら答える。
「人んちの庭で、好き勝手すんじゃねぇ~ってよ。まぁ~ったく、口より先に手が出るんだからよぉ~」
「ハハッ、成る程。そう言う意味も込められていたんですね。」
「なぁ~んで、そこで笑うんだよぉ~?」
返ってきたルージュの返答に、不満そうに唇を尖らせて詰め寄る。それを苦笑を浮かべながらあしらい、彼女は不敵な笑みを浮かべて蟲人達に向き直る。
「そう言う事でしたら、僭越ながら姉上の背中はこの私が、この身に誓って護るとお約束しましょう。」
そう言って右手を構えると、その場に炎が大きく灯り、やがて剣の形へと変貌を遂げる。
「カカッ!頼もしぃ~ねぇ~!おねぇ~ちゃんは嬉しぃ~ぜぇ?」
そんなルージュの隣で、戯けるようにそう言いながら、再び腰を低く落として拳を構える。程なくして、今度は火の精霊組の方が先に仕掛けた事により、それをゴング代わりにして第2ラウンドが幕を開けるのだった。
………
……
…
――10分後
結局ククリが熱く成り過ぎて、本日2度目の小太陽が昇りましたとさ、ちゃんちゃん。