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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第三章 精霊編
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必殺技を考えよう!(身体は剣で出来てません(2)

 その言葉に呼応して、両手に持った姉妹双剣に変化が起きる。右手に持った銀星の刀身が青く光ったかと思うと、その瞬間周囲の温度がぐっと下がり、辺りに氷の結晶が現れた。


 一方、左手に持った夜天はと言うと、その刀身に揺らめくような黄色い光が現れ、それに吸い寄せられるかのように、地面から大小様々な石が舞い上がり、それらが集まって大きな塊になっていく。周囲に現れた氷と岩石は、あたしを中心に規模をどんどん広げ、やがて邪蟲達の行く手を阻む壁となった。


 水と土、ガイアースとの試練を超えて、姉妹双剣が精霊化すると同時に、それぞれ異なる属性を得ていた。その力を解放すると同時に、同属性の力を更に上乗せして効果を高め、等倍以上の力を発現させる。


 これが、ヴァルキリー・オリジンの新たな権能『属性付与』と『属性武具作成』だ。


 属性付与も属性武具も、ゲームではお馴染みだと思うけれど、この2つは似ているようで実は違う。属性付与って言うのは、武器や防具に任意のタイミングで属性を付与する事だ。


 属性付与の最大の利点は、何と言っても相手によって属性を切り替えられる事よね。欠点と言えば、魔法を付与する訳だから、元となった武器の性能に属性分の威力が、ただ上乗せされるだけという事と、その都度魔力を消費して付与しないといけないという事かしら。


 上乗せされるだけだから、ただの数打ちの剣に属性付与を施しても、たかが知れてるのよね~使い勝手も余り良くないし。


 実際、剣と魔法が未だに主流のこの世界には、元々属性付与の魔法は存在している。けれどそれは、あくまでも魔法使いの領分で、剣士の様な前衛職で使える人は少なく、2人以上のパーティーを前提にしているから、能力として完成されているとは言いづらい。


 魔法を使える前衛職も居るには居るけど、こと属性魔法が使える人となると、その数は更に少なくなるそうだ。だって、魔法が使えるんだったら、微妙な属性付与の魔法を覚えるよりも、高威力の属性攻撃魔法で火力ブッパした方が効率が良いのは当たり前だもの。


 そう言った理由から属性付与の魔法は、日の目を見る機会が少ないのが、この世界での常識だったりする。普通の武器以上、属性武具以下じゃ当たり前よね。


 その最大の欠点とも言える、魔法の使えない剣士でも、あたしが眷属化した武器を手にすれば、使用者の任意のタイミングで、各属性を付与出来るとしたらどうだろう?この世界の軍事事情が、根底から覆りかねないのは明白だ。


 ただの数打ちの様な剣でさえ、眷属にすると自動修復の能力が備わる上、性能も多少向上する。更に、今まで魔法使いが別途必要だった、属性付与まで出来るようになったら、それはもうちょっとした魔剣と遜色ない。


 そんな代物が、あたしが触れただけで量産出来るんだから、この世界の軍需産業は閉店ガラガラ待った無しに成るでしょうね。その能力は、複製された武器にも適用されるんだから、ただでさえこの世界の武器よりも性能の高い異世界製の武器を、量産なんかしたら疫病神確定ね。


 けどまぁ、そんな代物が広く支給されれば、今後邪神軍の侵攻があった際に犠牲になる兵士の数もきっと減るでしょうね。武器の性能差が、必ずしも戦争の勝敗に直結する訳じゃ無いけれど、戦争の在り方を変える事ぐらいは出来るんだから。


 そうなる未来を、時の精霊クロノス・オリジンは、武具の精霊ヴァルキリー・オリジンに成して欲しいと、きっと一番に願っている事なんでしょうね。見た事無い奴に踊らされるのは癪だけれども、多少は協力しても良いかなとも思えてくる。


 あたしは善人じゃ無いけれど、周囲の人達の影響もあって悪人には成りきれないからね~あたし自身は英雄だとかに憧れては居ないけれど、一番上の兄を始め英雄に憧れた人達に憧れている身としては、彼等に恥じるような事はしたくないのよ。


 まぁ、それは良いとして、話を戻して新しいもう1つの権能『属性武具作成』について。


 これは属性付与とは根本的に違うのよね~状況に応じて様々な属性を付与する付与魔法と違って、武具自体に属性が予め備え付いているのが属性武具、所謂魔剣・魔防具の類いを作成出来る権能なの。


 属性武具の利点は、属性付与と違ってかけ直しが必要ない事や、魔力が込められている武具だから、折れでもしない限りは効果が消えない事、込められた魔力に耐えうるだけの性能を持っているから、下手な武具でも強力だという事が上げられる。


 欠点らしい欠点は、込められた魔力によって性能に雲泥の差が付くくらいで、ほとんど無いと言っても良いかもしれない。他に強いて上げるとすると、属性付与と違って取り回しが効かない事、現存する数自体が少ない事、その所為で恐ろしく高価な事だろうけど、魔防具の性能を考えれば、欠点の内にも入らないでしょうね。


 そんな恐ろしく強力な魔防具を、作成する事が可能となったんだけど、それにはいくつかの条件が必要なのよね。まず前提として、眷属化した武器で無いといけない事は必須で、更に魔防具に耐えうるだけの性能を持った武器で無いと駄目みたい。


 具体的に言うと、もう1つの権能である『武具の潜在能力解放』で、特殊能力に目覚めた武具に限るみたいなのよ。なんで疑問形かって言うと、現状それを検証する事が出来ないからだ。


 どうしてかって言うと、その理由が『属性武具作成』を、簡単に行えない最大の理由でもある。武具に属性を与えるって言う事は、その属性の核となる魔力を対象の武具に埋め込む必要があるの。


 その核になり得るのが、あたしから生まれる微精霊だった。それもただの微精霊じゃ無く、オヒメの様に意思を持って成長する精霊の卵がね。


 少しややこしいんだけど、厳密に言うと夜天と銀星は、あたしから産まれた精霊って言う訳じゃない。当初この姉妹は、あたしの意思に反して勝手に眷属化するような、規格外な伝説級のインテリジェンスソードだった。


 つまり、この子達は精霊化を果たす以前から、()()()()()()持ち合わせていた。それがガイアースの試練の際に、ウィンディーネとトパーズ達の力を取り込んだあたしを通じて、水と土の微精霊を自ら望んで取り込んだ結果、属性武具に昇華した上に下位精霊としての身体も手に入れたみたいなのよ。


 本来の手順は、意思を持った微精霊に名前を与えると同時に、その子に依り代となる武具を与える事で、微精霊と武具を同時に強化する権能なのよ。だから、『属性武具作成』兼『インテリジェンスウェポン作成』と言っても差し支えないでしょうね。


 ともあれ、意思を持って産まれたか、意思がある故に自ら取り込んで成長したか、その違いはあるにしろ、核になり得る微精霊が居ない以上詳しい検証のしようが無いのよ。オヒメは中位まで既に成長しちゃってるから、その魔力量に耐えられる武具がそもそも手元に無いし、まだ解らない事だらけだから、どうなるか予想出来ない事はしたくないしね。


 しっかし、のっけからこの姉妹は規格外だったけど、ここまで来るといっそ清々しいわね。精霊化が進んで、あたしもだいぶチート臭くなってきたと思ったけど、この姉妹の方がガチチートだと思うのよね~


 こんな状況だって言うのに、話が紆余曲折しちゃうのはあたしの悪い癖ねっと。この新しい2つの権能なんだけど、この世界ではそこまで珍しい能力じゃ無いのよ。


 『属性付与』の魔法は、技能としては初歩の初歩だし、『属性武具作成』も武具の精霊ヴァルキリー・オリジンの専売特許という訳じゃ無く、高位の鍛冶職人には魔剣作成が出来る人も居るらしい。


 そうなってくると、権能としてはいまいち感が急に増してくるんだけど、ここから先が武具の精霊としての真骨頂。これまでは、魔剣の類いに補助魔法を掛ける事は危険視されてきた。


 何故かって言うと、魔剣には既に魔法の力が込められているからだ。その力は、元となった武器が耐えられるだけの魔力が、既に込められているから、そこに追加で魔力を込めてしまうと、魔法同士がぶつかり合ってしまう。


 元となった武器が、キャパオーバーになって壊れてしまうならまだ良いんだけど、魔剣の内側に込めた力がぶつかり合って、最悪の場合暴発してしまう可能性さえあるらしい。けれどあたしの権能は、その限りでは無いの。


 あたしが眷属化させた武具は、精霊達が身に付けている衣服や武器に、近い状態に存在自体が置き換えられているから、それ自体が魔力の塊と言っても良い。その魔力が、属性武具としての力の根源であり、同時に付与魔法発動の動力源でもあるの。


 同じ魔力源が発動の動力なんだから、競合する事も無いしキャパオーバーに成る心配も無い。異なる2つの属性の同時使用なんて事も出来るから、単純な属性の足し算の他、組み合わせによるかけ算なんかも可能だ。


 その位出来てこその、武具の精霊としての権能なんだけれど、今はまだ火・水・土の3属性しか、扱えないのが現状なのよ。あたしが今まで受け取ってきた、精霊達の属性しかね。


 あたしが各地を巡って、精霊王達からその力の一部を受け取らないといけないのは、イリナスが弱体化している所為もあるけれど、この2つの権能を強化する為でもあるのよ。今後きっともの凄いチート能力になるとは思うけれど、現段階ではまだまだ中途半端な事しか出来ないのよね。


 だから、こんな段階で披露なんてしたくなかったんだけど、状況が状況だし仕方無いわね。フェアリー達には、手出しなんてさせる訳にはいかないんだからね!


「夜天!銀星!!魔法の制御は任せるから、派手な挨拶カマしてあげなさい!!」

『おっけ~!!』

『わかりましたマスター!!』


 迫ってきた邪蟲達を睨み付け、両手に持った姉妹に檄を飛ばす。その言葉に元気よく返事が返ってくると同時に、周囲に展開された岩石と氷の結晶に変化が現れる。


 身の丈程にまで成長した幾つもの岩石が、迫る邪蟲達の進路を塞ぐように動き始め、先頭集団と接触しそうになった瞬間、突然亀裂が走って大きな音とともに炸裂する。あたかも散弾のように飛び散る破片は、1つ1つが鋭利な凶器となって、邪蟲の群れに向かって飛散していった。


 高速で飛来していく岩の凶器は、堅い邪蟲の外郭を易々と貫き射落としていく。その攻撃に対応するように、それまで列を成して迫ってきていた邪蟲達が、上下左右に広がっていく。


 今度はそこに、氷の結晶がキラキラと煌めきながら嵐のように舞い上がり、氷の領域を作り出す。そしてその氷の領域に飛び込んだ邪蟲の一団は、目に見えて動きが遅くなっていた。


 それでも構わず進んでくる邪蟲の群れを見据え、何時もの様に深呼吸と共にスイッチを切り替え、見えない足場を蹴って群れに飛び込んでいく。集中力を高めていき、意識を全方位に展開しながら、両手に握った相棒達を振りかぶる。


「シュッ!!」


 邪蟲達の懐に飛び込み、剣の間合いに入った瞬間、浅く息を吐きながら、両手をクロスさせるように振り抜く。青と黄色の光が交錯しながら伸びていき、青い光の筋に触れた蟲が凍て付き、黄色い光の筋に触れた蟲が両断されていく。


『えいや~!ストーンバレットー』

『アイスニードル!』


 更に、畳み掛けるように夜天と銀星の魔法が発動し、土と氷の無数のトゲが、放射状に打ち出される。1つ1つの大きさは大したことないけれど、逃げ場の無い程に打ち出されたそれらが、動きの鈍くなった蟲達に襲いかかる。


 触れれば確実に凍て付く氷のトゲと、夜天の特殊能力で見た目以上に威力のある土のトゲ。どちらも必殺の威力があるというのに、邪蟲達は怯んだ様子も無く向かってくる。


 流石、知能が低いと言うだけあって、ただ進んでくる事しか頭に無いんだろう。銀星の張った氷の結界と、集中力を高めている今のあたしにとって、蟲達の動きは止まっているにも等しく、その攻撃を避ける事は容易い。


 だけど…


 いくら何でも数が多すぎるわね…このままじゃ、いずれこっちが疲弊してジリ貧だわ。


 いくら切り裂こうと、氷漬けにしようと、射殺そうとも、その数は一向に減る気配が無い。むしろ、空を覆う黒い蟲影は、その濃さを増しているような気さえしてくる。


 これだから、数に物を言わせた物量作戦は嫌なのよと、内心苦々しく舌打ちしながら、尚も迫る邪蟲達を視界に収める。


『マスタ~キリが無いよぉ~』

『泣き言言ってる暇は無いわよ夜天!気を引き締めなさい!!』


 泣き言を言う夜天に、それに活を入れる銀星の言葉が続く。彼女の檄は尤もだけれども、あたしも夜天の泣き言に同意したいのが本音だ。


 このままだと、いずれ魔力切れで全滅ね…エイミー達の安否も気になるし、何か打開策は…


 例えば、イフリータの『炎帝』の様な…或いは、ガイアースの『大地の怒り』の様な…


 この状況を、ひっくり返すだけの圧倒的な力があれば…

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