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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
二章 激突!武田vs徳川 三方ヶ原の戦い
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95信長と藤吉郎(現代、左近のターン)

 琵琶湖の西岸坂本からから対岸へ弁財船を走らせ、静かな近江海おうみうみ(琵琶湖のこと)にゆるりと揺られて半日、船は織田信長が待つ今浜へ着いた。


 今浜は、先頃から織田信長を裏切った妹婿、浅井長政から奪い取った前線基地だ。


 浅井長政は、古くからの同盟相手の越前、朝倉氏との義理を優先し、「織田は朝倉を攻めるときは、浅井と相談協議する」約束を信長に反故にされ、一方的に朝倉を攻めた。「いずれは、妹婿と言えども、いつ、切り捨てられるやもしれぬ」と、疑心暗鬼を深め裏切りに及んだ。


 越前(福井県)、朝倉義景を攻めるため、岐阜(岐阜県)を出た信長は、味方であった妹婿の浅井長政の領地、東近江を安全に抜け、越前へ出た。しかし、正面の朝倉と対峙した時、浅井長政は裏切ったのだ。


 こうなると、信長は正面に朝倉、背後に、浅井。一溜りもない。


 しかし、この窮地に信長の元へ、浅井長政へ嫁いだ信長の妹、お市から二口、布の両端を縛られた小豆の袋が届いた。


「お市からこんなものが届いたが……」


「これは、織田家を浅井長政が裏切ったことを知らせるお市様の謎かけにござりますぞ!」


「サル! こうしてはおれん、今すぐ、全軍撤退じゃ!」




 この撤退戦を最後に残って、退却する全軍を敵から守る壁役、殿軍しんがりを引き受けたのが、サルと呼ばれた男、木下藤吉郎こと、後の、豊臣秀吉である。


 全滅必死の殿軍をみごと務めあげ、生きて撤退した木下藤吉郎は、この功績が称えられ、ここ、浅井長政攻めの前線基地、今浜の城代に任じられた。


 態勢を立て直した織田信長は、ここ、今浜に入り浅井長政と対峙しているため、連日届く、武田信玄に攻められている同盟者、徳川家康の援軍依頼をほぼ黙殺している。


「正面の浅井長政だけでも厄介なのに、甲斐の信玄坊め、一番、嫌な機会を狙って出兵してきたものよ!」


 と、膝を打った。


 それでも信長は、この同時期に挟み撃ちにされては一溜りもない。正面の浅井長政を撃破して、遠江の長浜に家康を籠城させ時間稼ぎしている間に、駆けつければ、起死回生の一手となると目算している。


 これは、信長にとっても賭けだ、それに……。


「信玄坊は長くはあるまい」


 家臣の誰にも話してはいないが、信長には、武田信玄の命数を指折り数えている節がある。




「殿、坂本より明智日向守光秀殿の家臣、斎藤利三殿が、殿からのご依頼品を堺の商人より取り寄せ、運び込みました」


「きたか!」


「殿、何が届いたのでありますか?」


 謁見の間に控える藤吉郎が尋ねた。


 信長は身を乗り出して、


「サルよ、鉄砲じゃ」


「鉄砲なぞこの織田家にとっては何も珍しいことなどありませぬか」


「いいや、サルよ。ワシは、この日ノ本で手に入る鉄砲をすべて手に入れたのじゃ」


「すべてにございますか?! して、その数はいかほどで?」


「ざっと、三〇〇〇ちょうじゃ」


「三〇〇〇挺ですと!」


「そうじゃ、三〇〇〇じゃ」


 藤吉郎は目を丸くして指折り計算を始めた。


「え~っと、一挺が一〇貫(現在の値段でおよそ一二〇万円)それが、三〇〇〇! いくらじゃ、いくらになるのじゃ……三六〇〇〇〇〇〇〇〇貫!(およそ三六億円)織田家全軍六万がおよそ、戦を一年半出来る銭ではないですか、殿、そのような銭を、この戦続きでいる銭がいくらあっても足りない軍資金をどうやってかき集められたので?」


「堺、坂本、草津に代官所を置き、たっぷり税をかけ矢銭をぶんどってやったわ」


「しかし、それだけでは、まだ、足りないのでは?」


「そうじゃ、あとは、宗教じゃ。京都、奈良でふんぞりがえっておる坊主どもより、根こそぎ蓄えを捥ぎ取ってやったわ、フハハハハハ」


「ははあ、殿、まさしくあっぱれでございます。ワシのような農民上がりの者はよう知っております。豪商どもが、どうやって庶民から銭を搾り取って、ふんぞりがえっておるか、それに、鼻薬を嗅がせられた小領主どもが、いかに簡単に商人の手の平で転がされておるか、ワシは、百姓だで、ず~っと、踏みつけにされておりました」


「そうじゃ、お主のように、貧しい生まれから身を興した村井貞勝が、京都所司代に任じた折に、『豪商と、寺社とは、馴れ合いにならず厳しく接して矢銭を巻き上げねばなりませぬぞ!』 と申したでな。そんな、ことをすれば奴らの反発を食らうだろうと申すと貞勝めは、『殿、その憎まれ役わたくしめが、この一命にかけまして引き受けます。どうぞ、天下統一の暁には、貧しい者が、飢えて死ぬようなことがない天下を創造してくだされ!』と申しおったわ」


「ほう、此度の京都所司代、村井貞勝殿はそのように武骨なことを申される御仁でござりますか」


「いや、貞勝は、昔からソロバンは出来るが、槍働きはさっぱりじゃ。しかし、腹が誰より座っておる故、ワシは重宝しておる」


「さような、お方ですか、是非ともこのサルめも貞勝殿から領国経営というものを学んでみたくなりました」


「そうか、ならば、ワシに、良い案がある」


「それはどのような?」


「お主の家来の若いのを貞勝めに付けて実地で領国経営なる者を学ばせればよい。サルよ、お主もいずれ城代じゃのうて、一国一城の城主になるであろうからの」


「殿、それは、まことにござりますか!」


「うむ、期待せずにまて、ウハハハハ~」




 と、そこへ、


「明智家の斎藤利三のお越しにございます」


 と、知らせが入った。


つづく


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