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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
二章 激突!武田vs徳川 三方ヶ原の戦い
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84二俣城の化け物(カケルのターン)

 二俣城を取り囲む武田家は、およそ、二七〇〇〇、そのうち、総攻めの総大将に任命された武田勝頼は、一〇〇〇〇の兵で、堅牢な二俣城を力攻めしている。


 二つの川に挟まれた丘陵の上に立つ二俣城は天然の要害である。攻め口も北東の大手門一つのみ、門の前には深い空堀が囲み橋が一本架かるのみである。


 守将の中根正照、副将の青木貞治は、勝頼の烈火の如く攻め寄せる攻撃を、わずか、十分の一の一二〇〇の兵でよく防ぎ守っている。


「じきに、家康公が、織田信長殿の援軍を引き連れ駆けつけるぞ。皆の者、それまで、この城で、耐えて、耐えて、耐え忍ぶのじゃ!」



 十月十八日に始まった二俣城攻めも、かれこれ、二週間、時は、十一月へ移った。


 はじめは、五つの支城をわずか一日でたいらげた武田勝頼も、この頃になるとさすがにジレて来た。


「ええい、勝資! あんな小城一つに幾日費やしておるのだ。さっさと、兵を動員して、一揉みにせぬか!」


「はっ、勝頼様の申すことはごもっとも、なれど、あの城には一人厄介な化け物が居り申す」


「化け物とな?! 」


「はい、化け物でございます」


「詳しく申せ」


「はっ! 化け物と申すは、二俣城の副将、青木貞治にござります」


「青木貞治?! 聞かぬ名じゃな」


「その青木貞治めは、あの一言坂の戦いで、あの山県昌景めの赤備えを跳ね返した、本多忠勝めの精鋭部隊におった者のようです」


「ほう、本多隊の者か……」


「城主の中根正照の知恵と、副将、青木貞治めの勇猛が相重なって、今や、あの二人は鬼神の活躍。もはや、一筋縄ではまいりません」


「一筋縄では参らぬと申すか」


「はい、我らが、橋を渡って突撃すると、逆に、開門して、その橋の中央に、青木貞治が仁王立ちになって奮戦し、我ら武田の兵を悉く、追い返す始末、もはや、我らに手はございません。ここは、一度、馬場美濃守、内藤修理殿に御出座願ってお知恵を拝借するのも兵法かと思われまする」


 それを聞いた勝頼は、顔を真っ赤にして、手にしていた酒の入った盃を地面に叩きつけた。


「何を申す勝資、ここで、いまさら四天王の助けを借りれば、手柄は、このワシの手からこぼれ落ちるではないか、ワシは、兄、義信のようにはならん。あべこべに、四天王、父、信玄の武勇を喰ろうてやる」


「しかし、このままでは……」


「ええい、つべこべ申すな! 勝資、お主は、一日でも早うあの城を落とすのじゃ」




 二俣城を睨む天竜川の切り立った丘の上に、ゆるいゆるりと、行軍してきた赤の騎馬軍団がある。


 その先頭に、誰より小さい小男がある。


 武田家最強、赤備えの騎馬隊を率いる山県昌景である。


「山県殿、井伊谷攻めの嶋左近隊が合流致しました」


「そうか、いますぐ、左近をここへ」



 攻勢を強めても、強めても、一向に落城の気配の見えない二俣城攻城戦の様子に、山県昌景は焦る様子がない。むしろ、武田の後継者、勝頼のお手並み拝見を決め込んでいる。それは、総攻めから外された四天王の馬場美濃守春信しかり、内藤修理亮昌豊しかり、総大将の武田信玄しかりである。


 老練な彼らは、この戦によって知恵と、武勇と、勇気と、若い世代の成長を見守っているのだ。


 しかし、そろそろ勝頼の独断専行はさすがにいただけない。


 そう、総大将の武田信玄には成長を見守りつつ後継者である息子、勝頼の成長を見守る時間の余裕がないのである。


 信玄の死期は近いのである。


 信玄は、側近を呼びなにやら耳打ちした。


「山県殿へ城攻めに加われと?! 」


 信玄は、言葉もなく静かに頷いた。




「山県のオジサン、ハロー! 」


 天竜川沿いの丘の上の山県昌景の元に、アホの時生カケルこと、嶋左近が、先鋒隊を引き連れ戻って来た。


「うむ、左近、井伊谷の首尾はいかがであったな?」


「う~ん、次郎法師って、おばさんがいて、一戦も交えず攻略できちゃった」


「ほう、一戦も交えず、どのように次郎法師、いや、女城主、井伊直虎と交渉したのじゃ?」


「う~ん、難しい話は、広瀬景房のおじさんに任せちゃったけど、一言でいうなら、城は明け渡すから、井伊の撤退を見逃してほしい、いずれこの借りは必ず返すって約束してくれたよ」


「ほう、井伊に約束を取り付けたとな?」


 すると、カケルはゴソゴソと胸から、文を取り出して、山県昌景に渡した。


「ほう、これは井伊との盟約を結ぶ血判状ではないか」


「そう、習字の先生のつかう朱色の墨で書いてるから、オレ、なんか間違えて約束しちゃったかなって思ったんだけど。そんなので良かったのかな?」


「おお、これは井伊と武田、いや、この山県昌景。いいや、お主、嶋左近との血の盟約じゃ。これぞ一生の宝ぞ」


「ええ、その紙そんなすごい事なの?」


「ああ、あの井伊の女城主の約束は必ず果たすと近隣でも有名じゃ。井伊家はあやつの信用によって、今川家から、徳川家へ移っても重宝されておるのじゃ。見事じゃ、左近よ」


「そんなもんかな、たまたま、たまたま、偶然の結果だよ」


「うむ、それならば、お主には天運が味方しておるのじゃ。お主は、いずれ、ワシをも超える天下を動かす侍大将になるやも知れぬな。わはっはっは~」


 と、そこへ、伝令が走って来た。


「なんじゃ? 」


「はっ、山県殿に御館様から伝令でございます」


 山県昌景は、伝令から文を受け取ると、パサリと開いて目を通した。


「わかった」


 と、一言、伝令へ伝えると、赤備え全軍に向かってこう言い放った。


「皆の者、御館様からの命令じゃ。これより二俣城攻略に、赤の軍団動くぞ!! 」



 つづく


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