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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
二章 激突!武田vs徳川 三方ヶ原の戦い
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69非情の采配(現代、左近のターン)

 突然、現実空間の一角ををカーテンのようなベールが包んで戦国時代のVR、仮想現実の世界へ空間転移された左近たちは、奈良県平群ならけんへぐりの椿井城へ立て籠もった。


 すると、向かいの信貴山から、1000人ほどの槍を持った雑兵が攻めかかってきた。


 同じ仮想現実を操れるアンドロイドのリーゼルは、すぐさま、左近の仲間たち、この場合はカケルの幼馴染みの右近、月代、清香、巫女、の四人をVRの世界に適した職業にジョブチェンジした。

 

 松倉右近は大剣操る剣術士、

 北庵月代は後方から前線の者を回復する僧侶、

 妹、清香は後方支援の弓術士、

 三輪巫女おおがみみこは後方から稲妻を落とす道術師、

 

 すべてを俯瞰するリーゼルは軍師だ。


 そして、時生カケルこと嶋左近清興は、真実の姿が能力に反映された”疾風怒濤”の異名をもつ総大将になった。




 前線で敵の雑兵を相手に大剣をブンブン旋風させる右翼の松倉右近、そして、左翼にカケルこと嶋左近が疾風の如く騎馬で馳せ参じて朱槍を振るう。


 向かい来る1000の雑兵をたった二人の強者が押し返している。


 ボ~ン、ボ~ン。戦場に大太鼓が打たれた。


 すると、神輿に担がれた厳めしい顔に深い傷を記した武将が現れた。


 左近は、一目見るなり右近へ向かって叫んだ。


「あの顔の深い傷、あやつは梟雄(残忍で勇猛な人物のこと)松永久秀じゃ。右近よ気をつけてかかるのじゃ」


 すると、松永久秀は、左近の不安が的中したように、右翼の松倉右近へ向かって雑兵を一気に投入する采配を振るった。久秀の采配で、左近へ向かっていた雑兵たちも押し寄せる流れをかえて、右近一人を目掛けて殺到した。


 右近は、押し寄せる雑兵に飲み込まれた。


「右近よ、今、助けにゆくぞ! なんとか持ちこたえてくれ!! 」


 そういって、左近が、馬腹蹴って救出へ向かう眼前で、松永久秀がさらなる采配を振るった。


「右翼へ向かって弓を射かけよ!」


「殿、今、右翼へ弓を射かけては、味方の兵を失うことになりますぞ!」


 と、嫡男の松永久通が進言した。


 久秀は、眉一つ動かさず凍ったような冷たい切れ長の目を向け、


「構わん射かけよ」


 と、言い放った。


 久秀の采配の非情の采配は、松倉右近のいる右翼へ向けて、敵味方関係なしに、弓の雨を降らせた。


 ブスリ!


 大振りの大剣にとって弓は天敵、しかも、雨あられの如く降りかかる弓など避けようがない。


 憐れ右近は弓で全身をハリネズミのようにして戦場から消えた。


 ”右近LOST”





 松永久秀は非情の策で、右近を消すために100の兵を失った。


 が、久秀は、更なる非情の策を打ち出す。


「死兵を前に」


 死兵、それは、死ぬこと必死で、敵目掛けて向かってくる兵のことである。


 松永久秀は、その死兵に刀や槍や弓ではなく手に、”起爆玉”、いわゆる爆弾を掴ませている。


 起爆玉を持った死兵は皆、口に着火の火筒を加えて向かってくる。


「左翼の嶋左近を火炎で一気に飲み込め!」


 松永久秀の放った死兵は、左近を飲み込まんばかりに法円に取り囲んだ。


 左近、絶体絶命!



 その時、椿井城の矢倉に登る道術師の三輪巫女が、杖を振るった。


 すると、天に黒雲が掛かり、稲妻が走った。


 ゴロゴロドン!


 稲光と共に戦場に雨が降り注ぐ。



 松永久秀は、顎をさすって、


「これでは死兵は使えぬか……」


 こうなれば戦場は左近の物、いくら雑兵が左近へ殺到しようと、一騎当千の嶋左近清興である旋風一線朱槍を振るって、雑兵を撃退してゆく。


 ヌルリ!


 駆け出す雑兵の一人が足を取られて、すっころんだ。


 それを見た松永久秀は、眉を上げた。


「再び、死兵を終結させよ!」


「何をおっしゃいます父上、この雨では死兵も火を使えますまい」


 松永久秀は、子の久通がゾッとするような蛇眼を向けて、


「起爆玉はやめじゃ、死兵には皆油の桶を背負わせよ」


「父上、死兵に油の桶を持たせてどうするのでございますか?」


「フッ、左近めを火の海に沈めてやるのよフフフフフ」



 油桶を背負った死兵は、左近目掛けて取り囲んだ。


 左近は槍を振るって寄せ付けない距離を作る。


 ジリッ!


 ジリッ!


 敵は死を恐れない死兵、左近との間合いを詰めてゆく。


「行け!」


 松永久秀が、更なる采配を振るった。


 今度の采配は凄惨である。


 久秀は、死兵の体に、そのまま油をぶっかけ火をつけた。


 うわああああーーーー!


 人が火だるまに焼けている。


「行け! 左近目掛けて突っ込むのだ」


 火だるまの死兵は左近目掛けて突っ込んでくる。さらに、左近を取り囲む死兵も油桶を割られて、足元に、油の泥濘ぬかるみができる。


 火だるまの死兵が、ついに息絶え転がった。


 ブワッ!


 足元の油溜まりに火が付いた。


 一気に炎は燃え広がり左近を法円に取り囲んだ。


 絶体絶命、左近は炎と煙に飲み込まれた。




「カケルくん!」


「お兄ちゃん!」


 椿井城の矢倉に登って、後方支援の女たちも動揺を隠せない。


「リーゼルちゃんこんなこと今すぐ終わらせて!なんとかして!」


 月代の叫びに、リーゼルは首を横に振るしかなかった。



 左近を取り囲んだ炎は蜷局を巻き、黒い煙で包んでゆく。


 もはや、左近の姿は炎に包まれた。



「これで、残すは、椿井城のみ、一気に飲み干すのだ。かかれ!!」


 松永久秀の非情の采配が振り下ろされた。




つづく





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