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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
一章 疾風! 西上作戦開始!
61/399

61負けるな、鬼乃貴!(現代、左近のターン)チェック済み

「ただいまの一番ですが、審議の結果、同体とみなして取り直しでございます」


 会場はどよめいた。魂と魂のぶつかり合いともいえる因縁の対決が取り直しとなったのだ。


「こんなに熱い戦いテレビでは感じなかったわ。世紀の取り組みをもう一番だなんてタダで招待されてホントにラッキーだったわね」


 清美が感嘆の声を漏らした。



 そんな、清美と時生家の面々が土俵に心を奪われている一方で、すっと、怪しいサングラスの男が立ち上がった。




 白雷と鬼乃貴は、再び土俵で睨みあう。


 互いに、一瞬の勝負へ向けて、感情を張り詰める。


 時間は一杯、さあ、行司が、軍配を返した。


「はっけよいのこった!」



 バチン!


 白雷と鬼乃貴が肉体と肉体をぶつけて、火花が起こった。


「真っ暗だ。照明が落ちたのか?」


 世紀の大一番を境に照明が落ち、観客は口々に動揺をつぶやく。



 ピピッピピ!


 左近の耳に、異様な電子音が聞えて来た。


 バチン!


「電源が戻ったか。エッ!」


 灯りの戻った会場には、観客の姿はなくなっていた。土俵に白雷と鬼乃貴、まるで、左近と母、清美とアンドロイドのリーゼルが取り残されたようだ。


「いや、もう一人いる」


 真っすぐに、左近をサングラスの男がこちらを見ている。


「まぶしい!」


 左近の目に、サングラスの男のフレームから、ライフルに使われような獲物に狙いを定める赤外線ポインターが飛んできた。


「あぶないわ!」


 リーゼルが叫んだ。


「wo--------!」


 呻きと共に、土俵の白雷と鬼乃貴が頭を押さえて倒れこんだ。


「これはどういうこと?」


 清美は信じられないといった表情で目を丸くした。


「これはどういうことじゃリーゼルよ?」


 リーゼルは、サングラスの男を指差して、至極当然とでも言う、ように冷静に分析して答える。


「あいつの仕業よ。詳細はデータがないからわからないけれど、おそらく、ワタシたちを何らかのテクノロジーでもう一つの平行世界へ時空を飛ばしたようだわ」



 次の瞬間、必死で頭を押さえて抵抗していた土俵の鬼乃貴が、スクッと立ち上がり真っすぐこちらを見定めて土俵を下りてズンズン向かって来た。


「どこへ行くのだ鬼乃貴よ。まだ、勝負はついておらんぞ」


 狂うに精神力で抵抗している白雷が、鬼乃貴の右腕を掴んで呼び止めた。


 ブン!


 鬼乃貴が白雷の掴んだ腕を振るうと、巨体の白雷が投げ飛ばされた。


 ゴキッ!


 鬼乃貴の右肩から、鈍い音がした。


 転がった白雷がブランっと垂れ下がった鬼乃貴の右腕を見て、


「鬼乃貴よ脱臼しておるではないか、どうしたのだ!」


 鬼乃貴は白雷の静止も聞かずズンズン左近たちへ向かってくる。


 リーゼルが冷静に、


「脳波を乗っ取られているわ」


「こないだお主がママ上と、清香にした脳波コントロールとか申すものか」


 リーゼルはサングラスの男を指差して、


「あいつは、必要な人だけ連れてマーキングして、環境ごと平行世界へ環境転移させるほど強力な力をもってる。ワタシとは違って個人の力で作られたアンドロイドじゃないわ、もっと、国家のような大きな力が背後にあるんじゃないかと思うわ」


「どういうことだリーゼルよ。お主の申すことが壮大すぎてワシにはさっぱり理解できぬぞ」


「そうね簡単に言うと、左近、あなたを現代に転送したのはワタシ、でも、何らかの方法でそれを知った誰かが、都合が悪いから消そうとしてるのね」


「それは一体誰だ?」


「わからない。わかっていることは今は逃げることね」


 ブンッ!


 左近が気付いたら、すでに、鬼乃貴が目の前にいて、いきなり、脱臼した腕を振り回してきた。


「あぶない!」


 間一髪!


 左近は身をかがめてギリギリのところでかわした。


「リーゼルよママ上を連れて先に逃げるのだ。それまで、ワシが、何とか時間を稼ぐうえ」


「左近、今、あなたは嶋左近であっても精神的なものだけが嶋左近なの、でも、肉体は普通の高校生、時生カケル、今のあなたじゃ鬼乃貴と戦うなんてムリよ」


「分かっておるよ。でも、任せておけ。さあ、行くのだ」


 左近は清美とリーゼルを逃がすと、


「♪鬼さんこちら、手の鳴る方へ♪」


 鬼乃貴から、距離をとって、プリンと尻を突き出し、ペンペンペンと、叩いて見せた。


 鬼乃貴は、突然身を屈めて視界から消えた左近に向かっては来ない。首を左右に振り、壊れたロボットのような仕草を見せる。


 それを見たサングラスの男が、左近を目で追ってレーザーポインターを定める。


 すると、鬼乃貴は、向きをかえ再び左近を、視界へ捉えてから追い始めた。


 左近は、サッカーの試合にでて活躍できるカケルの足に自信がある。


(よし、カケル殿の足ならこのまま逃げ切れるぞ)


 バサリ!


 巨体で動きの遅い鬼乃貴を引き離しにかかる左近であったが、そこへ立ち塞がるように、サングラスの男が現れた。


 サングラスの男はいきなり左近の腕を掴んで投げ飛ばす。宙を舞い叩き伏せられる左近。


 そこへ、挟み撃ちのように鬼乃貴が追いつく。


 万事休す!


 鬼乃貴が左近目掛けて振り下ろした腕を白雷が掴んだ。


「鬼乃貴よ、待つのだ。お主は日本伝統の相撲道を体現する漢であろう。オレはお前の師匠、貴乃富士の引退試合で相撲の心、日本人の魂を伝えてくれと頼まれた。そして、これから相撲を通して、オレが貴乃富士の弟子のお前に伝承するのだ。鬼よ、相撲の鬼、鬼乃貴よ、心を強く持て、そして、自分と戦うのだ」


 白雷の魂の叫びを聞いた鬼乃貴が再び頭を押さえて苦しみだした。


「ううう……ううう……」


 それを見たサングラスの男が鬼乃貴の頭へ向かってレーザーポインターの明かりを強力に調整した。


「うわああああああーーーーーー!」


 鬼乃貴が、藻掻き、苦しみだした。


 鬼乃貴は、それでも白雷の言葉に従って、自分に打ち勝とうと、もがき苦しみながら、サングラスの男へヨロヨロと近づいて腕を掴んだ。


 セイヤー!



 ビビッ、ビビッ――。


 左近の目の前がデジタルテレビが電波障害を受けて、細切れの画像のブロックで情報が受信されたかと思うと、次の瞬間――。


「わーーー!」


 と、いう歓声と拍手に包まれた白雷と、土俵に転がる鬼乃貴の姿がそこにはあった。



 一章左近のターン ー了ー

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