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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
一章 疾風! 西上作戦開始!
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57雷電為右衛門(現代、左近のターン)チェック済み

 ――大阪難波(おおさかなんば)


 大阪の難波は通称、ミナミと呼ばれ、奈良から近鉄電車と、和歌山から南海電車、さらに南海を辿って関西国際空港をつなぐ大阪の南の玄関口である。


 ミナミは、キタ(大阪梅田界隈)にならぶ賑わいだ。


 キタは大阪の官庁関係、ビジネス商業ビル、百貨店が乱立する商業エリアであるのに対し、ミナミはいわゆるナニワ大阪、地方の人が想像するドキツい大阪弁の飛び交うエリアである。


 東京の賑わいに比べれば1/4だが、それでも日本を代表する主要都市である。ミナミの中心の大阪高島屋百貨店前の交差点は擦れ違う人の肩と肩がぶつかるほどの人混みだ。


 今日、そのミナミへ左近は奈良の田舎の平群から近鉄電車に揺られて、母、清美と、アメリカからのホームステイの留学生アンドロイドのリーゼルが、緑の車窓を抜け、生駒山のトンネルへ入った。


 生駒山を抜けるとそこは、緑の山野はなくなり、一気に町が開ける。


「現代とはたいした物。ワシと治部殿(石田三成のこと)が守った佐和山の城なぞそこらじゅうに散らばっておるわ」


「あら、カケル。大阪へ一緒に出るのは小学校の卒業式のブレザーを高島屋へ買いに行ったきりかしら懐かしいわね」


「そんな、ものであるかな。あっはっは~、おや?!」


 左近は車両の奥に、こちらの様子を伺っているやも知れぬ男の視線に気づいた。


 左近が、目を向けると男は視線を背け素知らぬふりをした。

(気のせいか……)


「次は、次は、終点なんばでございます」


 清美は、車両アナウンスを聞いてリーゼルの手を引いた。


「ほら、カケル、リーゼル降りるわよ」



 ――近鉄難波の地下街。


 近鉄電車の改札を出ると、そこには、大阪南ダンジョンが広がっている。近鉄電車からエスカレーターを上がるとスグに大阪メトロ(地下鉄)がある。そこから、東西南北に手を開いた指のように大阪南ダンジョンが張り巡らされている。


「どうしよう? とりあえず なんばパークスへでも行きますか」


 土地勘のない左近とリーゼルを引率する清美は、近鉄電車から御堂筋へ沿って日本有数の電気街のある日本橋へ向かって引率した。


 ――なんば高島屋交差点


 旧歌舞伎座から高島屋へ渡るスクランブル交差点。


 清美の引率で左近とリーゼルが差し掛かると、向こうに、チョンマゲ頭の恰幅のいい浴衣の3人の男が現れた。


 左近は3人組の中でも一際、背の高く恰幅のよい男を見つけるなり、


「おおっ、雷電為右衛門ではないか!お主もこちらの世界へ来ておったのかワシじゃ左近じゃ、治部殿のところの嶋左近じゃ」


 と、左近に突然声をかけられたチョンマゲ浴衣の男は狐につままれたような顔をして左近を見返した。


「おおっ、伝説の横綱、雷電為右衛門をご存じですか、若い学生さんにご存じいただけるとはありがたい。残念ながらワタシは、白雷為五郎はくらいためごろうともうします」


 左近は尚、食らいつこうとする。清美が、ちっちょと袖を引いて、申し訳なさそうに、頭を下げて、


「突然申し訳ございませんうちの息子が失礼して、横綱白雷関の活躍はテレビでかねがね」


 左近は横綱白雷の顔をまじまじと観察するように顔を近づけて、


「雷電為右衛門に瓜二つじゃがのう」


「ちがうわ左近、彼は現代を生きる横綱白雷関よ」


 と、冷静にデータに照らし合わせたリーゼルが言った。


 すると、横綱雷電が、


「そうだ君たち昼食は食べたかい?どうだろうこれから一緒に食べないかい?」


 力士との食事はきっとお金がかかるのではと財布を心配する清美を背に左近は二つ返事で、


「おお、つきあいもうそう」


 と応じた。


 ――大阪府立体育館


 大阪高島屋を南海電車の方へ5分ほど歩いて、右に折れると大相撲の興業が行われている大阪府立体育館がある。


 そのスグ隣に、一行の目的地のステーキ屋 イキナリ!ステーキがある。


 イキナリ!ステーキはカウンターへ立ちながら食べる立ち食いスタイルのステーキチェーンである。しかも格安で肉を提供している。


 肉は100、200、300とグラム単位で注文するスタイルだ。


「それじゃあ、腹ごなしにまずは1キロ持ってきてよ」


 と白雷は注文した。


 左近も、負けじと、


「それじゃあ、ワシも1キロ頼もうか」


 すかさず清美が、


「無理よカケル、いくらあなたが大食いでも力士の白雷関と同じ量を食べるなんて自殺行為。お母さんはなにがなんでも止めるわ」


 と、清美は自分の財布の中身を確かめる。


 左近と清美のやり取りを見ていた白雷が笑って、


「お母さん、せっかくだし息子さんに挑戦させてあげて下さい。お勘定はわたしがご馳走しますよ」


 と、助け船を出した。



 しばらくすると、焼けた鉄板からこぼれ落ちそうなステーキが運ばれて来た。


 白雷は慣れた手つきでテーブルにおかれたタレを焼けた鉄板へジュワッとかけた。


 ジュワジュワジュワと、鉄板から旨味が立ち上る。白雷はナイフとフォークで大切りに切り分け、口一杯に放り込む。


 白雷は「君もどうだい?」とでも進めるように、左近を促す。


 左近も白雷の真似をして口へ大切りの肉を貪り食う。


「旨い!」


「そうでしょう。たまらんでしょう」


 左近と白雷は一瞬で打ち解けた。


「どうぞ、お母さんたちも食べて下さい」


 と白雷はすすめる。


 清美もリーゼルもいつもより頑張って300グラムをほうばる。


「!?」


 笑いに包まれた白雷のテーブルから、こちらを伺い見る男の視線を左近は感じた。


「あれは確か来るときの電車で一緒だった男では……」


 左近が記憶を手繰りはじめると、「それじゃ行きますか」1キロのステーキをペロリとたいらげた白雷が声をかけた。


「そちらは外国人の留学生もいるようだし、このまま、大相撲でも見ていきませんか?」


 と、誘って店を出た。


 それをつけるように、左近の気になる男も後をついてきた。






 つづく

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