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384『抜け駆けの代償(カケルのターン)』

「南無阿弥陀仏……、南無阿弥陀仏……」


 新堀城では朝から筒居の襲撃に備えて、城に籠る門徒が一心に念仏を唱え戦意を高揚させている。


 ギーッ!


 新堀城の表門が開き中から、昨夜、幻空こと千利休と下間頼廉と開城について話し合い、城に籠る頼廉以下、本願寺坊官・門徒および五箇荘の町人に至るまで、開放する約定を独断で結んだカケル(嶋左近)は相棒の菅沼大膳とともに出て来た。


 ヌルッ!


 昨晩、雨が降ったのか足元はぬかるんでいる。


 大膳が、カケルに尋ねた。


「左近、お主、その様子では、ずいぶん相手に都合がよい約定を勝手にあの糞坊主くそぼうずと結んだようだな」


「うん、オレは、出来ることならこれ以上、無益に死人が出る戦を早く終わらせたいんだ」


 大膳は、渋い顔して、


「しかしだな、戦には駆け引きがあってだな。先頃、織田の大殿は本願寺の鉄砲を食らい致命傷は逃れたが動けぬというぞ、信長の威を借る大和守護・原田直政も対面がある簡単には首を縦には振るまい。第一、あの優柔不断な筒井の殿様と生真面目な家老・森好之と松倉右近、曲者の殿さまの叔父・慈明寺順国とその一派はまたぞろ、どんな手前勝手なことを言い出すかわからぬぞ!」


「まあ、いいじゃん。その時はその時、臨機応変りんきおうへん当たって砕けろ、それでも筒井の殿さまを説得して見せるよ」


 と、カケルは自信を見せ、不安がる大膳を置いて筒井の陣へ先を急いだ。



 ――筒井家本陣。


 新堀城を攻めあぐねる筒井軍は、順慶が、忠義にはやり信長の意向通りに強硬な武断派になった家老の好之、右近と、利休に買収されこれまでのらりくらりと城攻めに消極的だった順国一派の、十市藤政、布施左京之介の間で城攻めの打開策もなく、信長の意を受ける大和守護・原田直政の一門衆で遣いのばん安弘やすひろから強攻きょうこうの命を受け頭を抱えていた。


「新堀城から、大男が二人出て来たぞ!」


 と、先陣の足軽が声を上げた。


「おい、あれはご家老の嶋左近殿ではないか、一体どうして、左近殿が敵の城から……」


 カケルが新堀城から出て来た情報はすぐに、大将の順慶の元へ届けられた。


「なに? 左近が新堀城からでてきた? 左京之介、なにか聞いておるか?」


 順慶は、北面の陣を左近とともに固める左京之介に問うた。


 左京之介は、昨夜、新堀城の裏手の今池に船を出し、会合衆の意を受け、人目を忍んで新堀城に物資を運び入れる役目を果たしていたところを、叔父・仁十郎を奪還すべく城に忍び込もうとしたカケルと大膳、都築義平に取り押さえられ本願寺との裏取引の尻尾を掴まれたところだ。まさか、たった二人で城へ忍び込んで生きて帰ってくるとは思っていなかったので、自分の不手際を主の順国にも伝えず口をつぐんでいた。


 左京之介は、そっぽを向いて、


「知りませぬ。あの左近めは勝手な抜け駆けを好むところがあって、某も連携して軍を動かしたかったのでござるがうまく運びませんでした。おそらく、左近は、また、勝手になにか働いたのではございませんでしょうか」


 と、カケルが抜け駆けしたことにでっち上げた。


 順国は、左京之介の言葉になにか引っかかることがあったのか、左京之介を問いただすように、


「左京之介、真か?」


 と、問うた。


 左京之介は、順国には向き合って「真にございます」と答えたが、目は泳いでいる。


 順国は、左京之介になにかしくじりがあったことは見抜いたが、まあ、よいわと腹にしまって飲み込んだ。



 直政の遣いの安弘が、いぶかるように話を聞いていて、順慶を問いただした。


「大殿(信長のこと)は、新堀城を強行してでも早く落城させよとの仰せだ。もちろん、直政殿も同意。それが、筒井の者が敵の城から出てくるとは、まさか、敵と気脈を通じておるのではあるまいな!」


 と、釘を刺した。


 順慶は、左近のことを信じている。左近に限ってそのような事は一切ないことも十分承知している。だが、強攻を進める直政の遣いの前では都合が悪く返事に窮した。


 そこを、左近竹馬の友の松倉右近が進み出る。


「左近に限ってそのようなことはございません」


 安弘は、疑い深い目を向けて、


「噂では、左近とやらは、ついこの間まで武田信玄の元に居ったとも聞く、武田は今や織田の宿敵の一つ、裏切ってもおかしくはあるまい!」


 と、断言する。


 すると、すかさず、筆頭家老の好之が釈明をする。


「お待ちくだされ、塙殿。左近の働きは筒井家あってのもの、武田へ行ったのもあの当時は、筒井はまだ織田家の与力となっておりませなんだ。松永久秀と相対していた我らは生き残るため、武田ともよしみを通じていただけにございます。左近は決して!」


 必死で弁解する右近と好之の熱意に動かされた安弘が不承不承に、疑いをひっこめると、順国がポツリと呟いた。


「どうだか……のう藤政」


 順国に話をふられた藤政は、大きく頷いて、


「左様にございますな。嶋左近は、左京之介が申したように、勝手が過ぎるところがありますゆへどこまで新尿したものか」


 と、煙のないところに火を焚きつける。


 また、安弘の眼の色が変わる。


 すかさず好之が、


「そのようなことは!」


 と、押しとどめる。


 安弘が、順慶に視線を移し、


「まあ、良いわ、とにかく嶋左近とやらが戻ってきたら、詳しく話をきこう」


 と、言って順慶の首筋に扇子をシュッととあてがった。


 つづく

どうも、こんばんは星川です。


只今、『note創作大賞2025』ミステリー部門に『#ジェントルおじさん』を公開しております。ぜひ、ご覧ください。

https://note.com/ryoji_hoshijawa/n/n37a1605875f4


直近は、小説現代新人賞の原稿を書き終え、見直しをしております。募集要項を確かめて書いたつもりが、レイアウト(縦・横)を間違えておりました。しかも、2回。

初めに書いたレイアウトが正しくて、確認のために募集要項を確認して、レイアウトを組み替えた。今は、季節が夏でございます。外は蒸し暑く、太陽はカンカン照り、私の頭は茹っております。


そうです、まともに募集要項が読めなかったのでございます。

2、3日、しっかり、頭を休めて、冷やして、エアコンを22度にして、改めて募集要項を確認しましたらば、縦横比の間違いに気がついた。

今月、頭から3度目の見直ししております。


ちなみに、原稿はWordを使っているんですけれど、40行ある内の文末に来ますと、なぜだか、1行残してページを勝手に返られたりします。くわしくはわかりませんが、行送りだか言う自動機能だそうで、それをなくすためにも見直しです。


さらに、ルビをフリますと、どうやら勝手に1行使う。募集要項のレイアウトは40行。39行になるとおそらくマズイわけです。ルビもなくしました。


もう一つ、文末に「……」や「——」などがくると、1文字開けて、改行。もう、ワード独自ルールがわかりません。


原稿の内容以外のところで悪戦苦闘しております。


もう、やんなっちゃう。


左近とカケルの執筆もしたい気持ちもあるのですが、そちらを優先していると、いよいよ、ストックは後1話。来週にはなくなります。


連載、途切れちゃうかもしれません。すみません。ごめんなさい。


と、言うところで、今日のあとがきはおしまいです。


☆5つ

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よろしくお願いします。それでは、また。

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