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368『新堀城での仁十郎奪還ミッション!(カケルのターン)』

 夜陰に紛れて今池を今井宗久からの荷を積み込んだ布施左京之介を船頭に、カケルと大膳、義平の三人が新堀城の荷上場に着いた。


 左京之介は、両手を重ねて手笛を作りフクロウの声のように、ホーホーホーと影笛を吹いた。


 すると舟寄ふなよせ松明たいまつを持った坊官が一人顔を出し、舟寄につづく階段を降りて来た。


 左京之介は、「南無なむ」と本願寺のお経の一部を呟いた。


 坊官は、「……阿弥陀仏あみだぶつ」と答え頷いた。


 合言葉が成立すると、坊官は、カケルたちを見て、怪訝な眼差しで左京之介を見た。


「こやつらは?」


 左京之介は、シラジラと「こ奴らは、「南無阿弥陀仏」本願寺に味方したいと言うゆえ連れて来た」と嘘をついた。


 坊官は、「出仕は?」とカケルから順番に聞いてきた。


 カケルは、心臓の鼓動が早く脈打つのを隠しながら、口から出まかせ「我らは大和国やまとこくの出身だが、筒井の殿様に愛想が尽きゆえ、そこで、本願寺にお味方したいと」簡潔に答えた。


 坊官は、カケルの言葉自体は嘘くさく感じたが、本願寺は「南無阿弥陀仏」を唱えるとどんな罪人であろうと殺生仕事の人間であろうと阿弥陀如来の働きで極楽浄土息が約束される宗派だ。来るもの拒まずが売りだ。


「わかった。お前たち荷を城へ運び入れろ!」


 と、命じて、三人と坊官は無条件に新堀城に入れた。


 役目を終えた左京之介は、「それでは、私はこれで……」とまた、小舟を長竹で池底をついて向こう岸へ帰って行った。

(ふん、嶋左近め、新堀城の城主・下間頼廉の眼力は騙せぬぞ、見つかって死ぬがいい)


 と、悪意のある微笑みを浮かべて去って行った。




 坊官に従って、火薬倉に積荷を運び込むと、小城の新堀城の蔵には、鉄砲を始め、火薬、硝石、鉛玉が山と積まれていた。


「これはスゴイ、いくら筒井が包囲してもこれだけの武器弾薬があれば、一年は籠城ができる」


 と、カケルは思わず本音を漏らした。


 坊官は、「ほう、そなた中々見立てが優れておるな。荷を運び入れたら、ご城主様の直接の面談がある。明日の朝、準備が整い次第、また、声を掛けるゆへ、今夜はどこぞの長屋で寒さをしのぎ明日に備えよ」


 と、言って新参者を対して疑いもせず解放してしまった。



 カケルと、大膳、義平の三人は、新堀城の人気のない倉裏に身を隠し小声で密談をする。


 カケルが、「今夜のうちに、仁十郎叔父さんを見つけだし、火薬庫に火をかけて脱出しよう」と提案した。


 大膳は、カケルと長い付き合いだ、カケルの理由も理屈もない閃き体質なのは知っている。二つ返事で「わかった」と了解した。


 義平は、本物の島左近には仕えていたが、姿形こそは同じでも慎重さに欠ける嶋左近カケルに疑問を呈した。


「殿、東樋口様を奪還し、火薬庫に火をかけるところまではわかりました。ですが、ここは石山本願寺・下間頼廉が守る城、その後の脱出は容易にござらぬのではありませぬか」


 カケルは、数々の戦場で直感的に危機を乗り越えて来た。彼の戦術は武田家『風林火山』の早きこと風の如く”風”の先鋒大将、山県昌景に実戦でそのやり口で常に変化する状況に迅速に対応することにある。


 しっかりと理屈や手段、段取りを積み上げて人に伝える法は知らない。その場、その場の閃きで困難を打開する速さと臨機応変さわばアドリブ尽くしの戦い方を義平はまだ知らない。


 義平は、眉をひそめた。「殿の閃きには感服しますが、脱出の道筋がまだ不明です。これをどう乗り越えるおつもりか?」


 カケルは、逆に論理立てて動きを決める義平の慎重さの理由がわからない。どう説明したものかと腕を組み首を傾けていると、大膳が言った。


「ほれ見ろ、左近。やはり、ワシとお虎でなければ、お主の脳裡の作戦は理解できぬではないだろう。だから、連れてくるなら義平殿でなくてお虎が良かったのだ」


 大膳の言葉に義平は、ムッとして、「大膳殿、それがしでは、殿の臣下は務まらぬとおっしゃりたいのですか!」と誇りを傷つけられたように感情的に言い返した。


 大膳は取り繕うように「そうは、言って居らん。ワシとお虎は、山県昌景殿と旅を共にし、左近と共にその戦い方を直に学んだ間柄なのだ。すっかり山県昌景兵法。いや、武田信玄の兵法を体得しておるのだ」宥めようとした。


 義平は、鼻を水を手で拭って、「某も多少の田舎兵法の心得もござれば、多少のお役に立てると思いあがっておりましたが、足手まといのようで申し訳ござらぬ」とねたようなことを言う。


 すると、カケルが微笑みながら、「義平さん、あなたはオレが嶋家を離れている間、仁十郎叔父さんとともに、あの松永久秀から椿井城を守った勇士だ。俺たちが呼吸で作戦を実行するのに慣れてなかったね。すみません」と、頭を下げた。


 義平は、主の佐近が頭を下げたのに押しとどめるよた。


「殿様、頭をお上げ下され、臣下の私が主の呼吸を知らぬのが不勉強なのでございます。殿の指示に素直に従います」


「うん、言葉足らずの主ですが頼みます。それでは、前に潜入した時は頼廉さんは夜明けとともにお勤めをはじめるから、夜明けまでに仁十郎叔父さんを見つけださなきゃならない。そして、火薬庫に火を放つ。大膳さん、よろしくおねがいします。義平さん信じてくれ、オレは必ず仲間を助ける!」


 大膳は大きく頷いて「うむ」と答え、義平は「承知いたしました」と答え、三人は四散し、新堀城に捕らわれてえ居る仁十郎を探しに出た。



 つづく

どうも、こんばんは星川です。


先年、家族に不幸があり、先日、49日も過ぎたので納骨してきました。


そこで、甥子の運転で墓まで車で向かいました。


小学生、中学生の頃、読書感想文を何度も書き直しさせたことを懐かしく思い出しました。


10回ほど書き直しさせると、甥っ子は疲れ切って、「うんこ」を題材に書きました。それでも、20代と若かった私は、それでも書けると、その題材で感想文を書いて見せ、甥っ子をシゴイタことが笑い話ででました。


その頃、一生懸命勉強したから、甥っ子は今は笑い話で、上場企業に勤める人間になりました。


甥っ子の彼女は、看護師さんとかで、さらにその親御さんはやはり上場企業の経営陣だとか。


「亮ちゃん、言った通りやったわ」


この星川さん、私は、底辺の物書きですが、師匠がすごくて、世の中の裏側を知っています。甥子たちにたまに話していたことを、昔は眉唾ぐらいで聞いていた話が、7並のトランプが捲れるように、彼女の父親の話と酷似していたことが分かったとビックリしておりました。


「ホンマのこと言とってんな」


「叔父さんは、いつも、本気やがな、ジョークは交えているけれど」


なんだか学び深く頼もしい甥っ子の成長を楽しむ納骨となりました。




それでは、皆さま、

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・いいね

・ポジティブな感想


など、よろしくお願いします。


それでは、また来週。

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