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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
一章 疾風! 西上作戦開始!
35/398

35バカなカケルの自己紹介で飯抜きになる(戦国、カケルのターン)チェック済み

 作手亀山の里へ、明らかに図体のでかい三人組のおじさん、嶋左近清興ことカケルと、田峯城の赤鬼、青鬼の異名をとる菅沼父子の定忠と大膳、完璧に農夫に化けた小物、加藤段蔵こと鳶加藤が行く。


 頭には浅黄色あさぎいろのほっかむりをして、顔には泥を塗り、肩口にへかけて藁で作った羽織をかけ寒さを防ぎ、1個の果実の重量がスーパーのナスの倍ほどもある700gの天狗ナス野菜、通常の里いもより形が丸く、肉質が柔らかく粘り強いサトイモの八名丸やなまる自然薯じねんじょ通称、夢トロロを背に負って里へ入ってきた。


 作手亀山の里は、田峯城が武田に落城させられたの知らせをすでに受けているのか、里の入り口には槍をつがえた兵士が警戒している。


 カケルが向こうへ見える警備を指さして鳶加藤へこっそりと尋ねた。


「鳶加藤さん、あれ、武田家のスパイが作手亀山の里へ忍び込めないようにしている警備だよね」


「さようにござるな」


「あきらかにオレたち怪しいよね」


「さようにござるな」


「だよね。だって、大膳さんのむき出しの腕に槍だか刀だかでついた新しい傷見えてるもんね」


「さようにござるな」


「それにあれでしょこの奥三河じゃ菅沼父子有名なんでしょう。変装してるっていってもあの巨体を見ればすぐにばれちゃうでしょうよ」


「さようにござるな」


「オレたち、絶対素性がばれてまた捕まるパターンだよね?」


 と、カケルが言うと、返事もせずに、作手亀山の里の警備のもとへ鳶加藤が駆け出した。


「え?! 鳶加藤さん??」


 鳶加藤がなにをするかと思えば、カケルと、菅沼父子のもとへ警備の兵士を連れてきた。


 鳶加藤はカケルと菅沼父子を指さし、


「こやつらは武田の間者かんじゃ(スパイのこと)です、すぐに捕まえてくだされ!」


「え?」


「え?」


「え?」


 鳶加藤は、作手亀山の里への潜入がすぐにばれると踏んだが早いか、速攻で3人を売ったのだ。


 すぐさま、カケルと菅沼父子は捕らわれた。




 ――作手亀山の里の土牢。


 カケル、菅沼定忠と大膳、三人の大男が手を後ろ手で縛られ、月を睨んで仲良く並んでいる。


 苦虫を嚙み潰したようように奥歯をかみ砕かんばかりにギリギリと怒りを抑えきれない菅沼大膳が、カケルへ吐き捨てるように、


「ワシらはお主の従卒の裏切りでこのざまじゃ。戦場で死ぬるは名誉であるがこのままここで犬死では死んでもしにきれんわ」


 カケルは、叱られて大きな体を小さくシュンとさせ、


「ごめんね大膳さん、きっと、鳶加藤さん忍者だから深い考えがあってのことなんだと思うよ」


「ワシはどーも忍者は小ズルくて好きになれん。奴らは何を考えておるかわからん。すぐに裏切るし、形勢が変わればまたぞろ戻ってきおる」


 菅沼定忠が二人をとりなすように助け船をだす。


「まあまあそう申すな大膳よ。ワシらはこの嶋左近とその鳶加藤やら申す忍者にまんまとひっくり返されて、武田家へ仕えることになったのじゃ。これも戦国の世の習いとして受け入れよ」


「父上はそう申されますが……」


 と、大膳が不満を追撃しかけた時、「ぐ~っ!」っと腹の虫がなった。カケルの腹だ。


 大膳は、いつでもどこでも時と場所柄をわきまえないカケルの腹の虫に呆れて、


「まったく、嶋左近! お主は大物よ。田峯城に囚われて居るときもそうであった。まったく呆れた奴だ」


「ごめんよ大膳さん、オレの腹には時計があるのか時間が来ればしっかり時を刻むんだ。……ん? 味噌の香りだ」


 クンカクンカとカケルは鼻を鳴らした。


「ほら、これは味噌汁のにおいだよ。大膳さんも鼻を鳴らしてごらんよ」


「ワシは武士じゃ、そんな恥ずかしい真似はできぬ」


 されど、体は正直で、大膳の腹も「ぐ~っ」と鳴いた。


「ね、やっぱり、味噌汁のにおいでしょ?」


 と、カケルがキャッキャッと気色ばんでいると、土牢へ松明たいまつをもった獄卒について膳をもった二人の村娘がついてきた。獄卒は、冷淡に、


「ほれ、飯だ味わって食え!」


 運ばれて来たのは、2膳だった。村娘は、菅沼定忠と大膳の父子の前に膳を置いた。


 獄卒は、


「目的はわからぬが菅沼父子は奥三河の山家三方衆の者じゃて飯を用意しろとの仰せじゃ」


 カケルが、獄卒にすがるように、


「え? え? おじさんオレに飯は?」


「どこの馬の骨ともわからん名も無きお主にやる飯などないわ!」


「いやいやいや、オレはただいま絶賛売り出し中の天下に名高い武田家、赤備えの騎馬隊山県昌景が配下でその先鋒をつとめる嶋左近清興! だよ。(すがるように)だからご飯ちょうだいよ~」


「ぬぬぬ!」獄卒はこれは聞き捨てならんという顔をして、


「ほう、お主、名を武田家、山県昌景配下の嶋左近清興と申すか?」


 カケルはご飯にありつけるものと子犬のようにキラキラした瞳を獄卒へむけ、


「ワン!」いや、「うん!」と鳴いた。


 それを聞いた菅沼父子は、「あちゃ~」だめだこりゃっという顔をして頭を抱える勢いだ。


 獄卒は決然と、


「こやつらは武田の間者だと自白した。すぐさま村長むらおさ様へ使いをだしご判断を仰げ! ええい、何をグズグズしておる飯を下げぬか!」


 バカなカケルの自己紹介によって、哀れ菅沼父子と嶋左近ことカケルは武田の間者として囚われの身になり飯まで抜きになった。果たして、カケルは一度あることは二度ある逆境をくつがえせるのだろうか?




 つづく






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