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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
一章 疾風! 西上作戦開始!
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33めざせ作手亀山城! お次のミッションは大男3人組!(戦国、カケルのターン)チェック済み

 信濃路を下って三河田峯城へ入り岡崎街道を下ると武田の赤備え、山県昌景隊の目指す次の城、作手亀山城 (愛知県新城市作手清岳)がある。


 作手亀山城は標高五五〇メートルの作手盆地南東にある。土塁、曲輪、空堀を巡らせた山城で、三河徳川の信濃からの侵入を防ぐ第二の城だ。


 奥三河の山越の交通の要衝として人馬の往来激しい里である。


 城主は奥平定能おくだいら さだよしと言う。三十歳を半ばの男である。


 定能は、徳川家中では策士の異名をとっている。奥平家は父の貞勝の代から定能の代にかけて松平、今川、織田、今川、徳川と力のあるものに屈しては従い、また、力に屈して、手のひらを返しコロコロと主君を変えて生き残ってきた。小国の士である。


 ある時、今川を攻める徳川家康から兵站を任された定能は、万事抜かりなく、米、塩、味噌、刀、槍、弓、矢を揃えた。


 今川の抵抗が激しく徳川軍が押し戻されると、定能の荷駄隊が敵陣に取り残された。捕らえられた定能は言葉巧みに、今川氏真へ取り入って徳川を裏切った。


 再び、徳川が押し戻すと、定能は今度は今川から取り残され捕まった。


 家康に、裏切りを問われると。ぬけしゃあしゃと、「敵を欺くのはまず味方からと申してな、兵糧、物資を守るため、嘘も方便、今川へ下ったフリをして、徳川の物資をこのとおり守り抜いてございます」


 と、言ってのけた。


 家康が家来に申し付け、物資を調べさすと、今川へ下ったことで、却って、兵糧が増えて戻っていた。


 このことから家康は、定能の事を「策士」と呼んだが、兵站役としては役にたたないことから、


「あやつは智謀こそあるが、決断が遅くて使い物にならぬ」


 といって、以後、従軍の声はかからなくなったそうな。



 岡崎街道へ差し掛かった赤備えの山県昌景隊の先頭を、一際でかい巨馬、霧風に跨った大男嶋左近清興こと、現代からどういうわけか戦国時代の嶋左近と魂が入替わっちゃた高校生、時生カケルが、武田の忍、透波者の加藤段蔵ことその身軽さから通称、鳶加藤とびかとうと話しながら行く。


 その後ろへ控えしは、先の戦で武田へ降った田峯城城主のこれまた巨漢の菅沼親子、定忠と、大膳である。


いくら大将、山県昌景へ下ったとは言え、昨日までカケルを捕虜にして牢獄へ閉じ込め、イイ様にあしらい、踏みつけにしていた親子である。それが、あくる日には、当の嶋左近に城を落とされ、その寄騎へ組み入れられた。そだいどうして気持ちに忸怩じくじたるものがうごめいている。


 戦場でカケルに隙あらば、いつ背後から斬りかかり、いつ裏切るか知れたものでない。


(よくもまあ、山県のおじさんはオレに無茶なことばっかり押し付ける。まさにブラック上司だ……ブツブツ)


 そんなことを馬上のカケルが思って居ると、サササッと、後背の山県昌景から指令の文がカケルへ届けられた。



 ”左近よ、御主は作手の里へ先行して潜り込み領内の様子を調査して参れ、尚、その調査には、菅沼親子も同伴せよ ー山県昌景ー”


「マジかーーーーーー! 山県のおじさんのムチャぶりがまた来たよ! いや、百歩ゆずって敵の作手の里へ調査へ行くのはいいよ。でもさ、でもさ、菅沼親子って、この時代、いわゆる巨人のたぐいじゃん。いやさ、オレ嶋左近にしたって十分、巨人だから目立つのよ。それが三人も並んで歩いてたら、明らかに戦へ来ましたよって宣伝して歩いてるようなもんじゃん、ぜってーありえなくない?」


 と、カケルは鳶加藤にぼやいた。


 鳶加藤は一本抜けた白い歯を剥いて、カケルに親指を立てて無言でニッコリ微笑んだ。


「いやいやいや、行ってらっしゃい。グッジョブ! って、鳶加藤さんは連れてくよ。あんた居ないと、戦国時代、右も左もわからないからね。ああ、ちょっと、後ろへ行って菅沼親子に話があるって呼んできて」


 鳶加藤はサササと菅沼定忠の元へ赴くと、こそっと耳打ちした。定忠は、大膳へ顔を合わせると、頷いた。そして、親子揃ってカケルへ馬を並べかけた。



「ワシは行きとうない!」


 菅沼大膳がカケルの提案を突っぱねるように言った。


「いやいや、オレもお父さんもイヤイヤだから、大膳さんそこは大人なんだから仕事は仕事と割り切ってさあ」


「ワシはいやじゃ、たとえ武田へ降った敗軍の将とは云え、武士もののふは武士らしくあるべきだ」


「それはそのとおりだけど、オレたちこの時代でも有数の大男のトリオだから、甲冑つけて乗り込んだら明らかに巨人族襲来だからね」


 大膳はきっぱりと、


「お主は田峯へそうしたではないか」


「いやいやいや、あれはオレが無知過ぎただけだから、今思えば、死にに行ってるようなもんだからありえない」


「それでもワシは嫌なものは嫌じゃ!」


 と、大膳は言い切った。


 カケルは定忠に助け舟を求めて顔を向けた。


「大膳、我儘気随わがままきずいもそれぐらいに致せ、ワシらは武田へ降ったのじゃ、それ以上、お主が我を通すというのであれば(刀の束へ手をかけて)手打ちにしてくれる」


 それを見た大膳は、


「たとえ親父殿のおおせとあれどこの菅沼大膳、顔へ泥を塗り、蓼色たで色のほっかむりをかぶり、百姓へ化けて忍び込むなどやりとうない」


「大膳よ。それしか忍び込む策はないのじゃ。聞き分けよ」


「嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ! 絶対、嫌じゃ!」


「ええい! 子供のように駄々をこねるでない! 見苦しいぞ大膳!」



 カケルは思った。なんて、厄介なおっさん達を家来にしたのか、この先を思うと頭を抱えるしかなかた。


「山県のおじさんのいじわる!」



 赤備えの後方で、山県昌景はくしゃみをした。





 つづく

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