312左近と月光~明智家軍師との密約~重税からの解放と絆(カケルのターン)
「で、左近よ。月光とか申す明智の軍師との話し合いはどうなった?」
大原の荘園をめぐる岸川広家との戦いに勝利し、調停役にあらわれた明智光秀の婿養子 坂本城で城番をつとめる明智秀満の軍師 月光と密談を終え仲間の集まる部屋へ戻ってきたカケルは、話の落としどころをも考える百姓の楽造を始め、仲間のお虎、菅沼大膳、柳生美里、この時代の北庵月代と車座になって額をつき合わせた。
「月光さんは、俺たちの要求をほぼ飲んでくれた。大原の税は6公4民になり、6割の内、4割を朝廷に、残りの2割を織田に納税することになった」
楽造が、目を見開いて、
「岸川広家はどうなるんです。あんな好き勝手に暴政を敷いたあいつはおとがめなしですか、あいつの息子の翔馬は、縛られて苦しそうにしてるのをかわいそうに思って、縄を解いて飯を食わせてやろうと思ったんです。その優しいお春を、翔馬の野郎は恩知らずにも、お春を……お春を……ちくしょう!」
カケルは、お春を失い翔馬への怒りに震える楽造をなだめるように、
「楽造さん、岸川家はね。朝廷直属の地頭の地位から、織田家の家老明智家の家来になることに決まったよ。お春さんのことがあって、俺たちも岸川翔馬は許せないけど、みんなの願いが通じて、厳しい税の取り立てはなくなることに決まった。これで、俺たち筒井家の朝廷工作も、大原の税問題も一応の解決をみせることになった」
すると、お虎が、
「左近、やりおったな。これで、筒井家は朝廷工作に成功し、織田信長から突き付けられた蘭奢待の切り取りが許されることになったな」
菅沼大膳が、頭を突っ込んで、そうと決まれば、此度の大原の問題で、ワシには野盗10人が加わり所帯も増えた。はよう、筒井の殿さまに報告に上がり、ワシも家来を抱える頭になった。子分を養えるように、筒井の殿さまへ掛け合って子分を食わせるだけの知行を増額してもらわなければならぬのう」
国へ戻って出世の話をしていた侍の話を黙って聞いていた楽造がくるっと背中を向けて、悲しそうに言葉を吐き出した。
「左近の旦那、あんたたちは大和の国の侍だから、仕事が終われば大原を出て行ってしまう。しかし、主が岸川から、織田の家老明智に代わっただけで、あんたたちがいなくなってしまえば、何かの拍子に、明智の家来になった岸川がまたぞろ息を吹き返すかわからない。オラたち百姓は、死ぬまで侍にふみつけにされなくちゃならねぇか」
すると、お虎が、目を見開いて答えた。
「楽造、我らは、朝廷の命令で、ここに来た。役目が終われば帰らねばならぬ。大原の始末は、明智が上手くやってくれるだろう」
菅沼大膳がお虎に同調するように答えた。
「そうだぞ楽造、我らの働きで、岸川の支配と重税はなくなった。後は明智が何とかしてくれるだろう」
楽造、すねたように背中を向けたまま
「そんなの信用ならねぇ。だって、明智は比叡山焼き討ち、皆殺しを織田信長に進言したのは明智光秀ってもっぱらの評判だ。あんたたちがいなくなったら、ここはどうなるかわからねぇ」
すると、カケルが立ち上がって、楽造の前へ行き膝つき合わせて、なだめるように話し始めた。
「楽造さん、その心配はないよ。明智家の軍師月光さんが、大原のお百姓さんの暮らしは護ると約束してくれたよ。月光さんは、明智光秀さんの命令で岸川広家を家臣にしたんだって」
「月光、あの頭巾の侍か、あいつは顔も見せないからなんだか信用できないなぁ」
「大丈夫、月光さんなら信用できる」
お虎が、月光に対するカケルの物言いに疑問をもってたずねた。
「おい左近、お前はなぜ、顔も見せない怪しい軍師の月光を信用出来るのだ」
カケルは、答えた。
「月光さんは、俺が昔から知ってる人だったんだ」
菅沼大膳が、首をかしげて尋ねる。
「では、月光とやらの出生は大和の国であるのか」
「う~ん、確かに、大和の国だけど、ちょっと違うな」
黙って聞いていた、柳生美里が、話に加わる。
「では、柳生の里、甲賀の里、伊賀の里、のように剣士の家柄か、忍びの者なのですか」
「う~ん、それも違うな。月光さんは、俺の幼なじみなんだ」
黙って聞いていたこの時代の月代が尋ねる。
「左近様の幼なじみということは、元は平群の人間なのですか?」
「まあ、そう言うところかな、とにかく、月光さんは信用できる。おれが保証する。楽造さん、安心してください」
カケルの言葉を聞いて、楽造はかたくなに腕組みしていたが、なんとか言葉を絞り出すように
「おいらたちの恩人の左近さん、あんたがそこまで言うのなら信じよう」
と、応じた。
と、そこへ、朝廷交渉をしていた嶋家の外交僧の蜜猿が庭へ現れ膝をついた。
「左近殿、大原の守備、明智家の月光とか申す者から、速足が来まして、左近様の工作が成功いたしたと話を受け、織田の大殿への蘭奢待の切り取りが朝廷よりお許しがでました。これで、筒井家は、大殿、大和守護原田直政からの無理難題をはねのけたことになりました。おめでとうございます。そのことで、筒井の殿さまは大いにお喜びになられ、左近様にスグに大和へ帰ることをお望みです」
「うん、わかった。蜜猿さん、早速の報告ありがとうだけど、出来るなら、その足で、スグに大和へ戻ると筒井の殿さまに報告に上がってくれないかな」
「招致いたしました。それでは、私は一足早く大和へかえります」
カケルは、蜜猿を先に行かせたあと、仲間の楽造、お虎、菅沼大膳、柳生美里、月代を呼び寄せて、台から僧坊酒を持ってこさせた。そして、みんなで乾杯して、しばしの宴を楽しんだ。
そのころ、大和の主、筒井順慶の元へ早馬が駆け込んできた。早馬は、石山本願寺攻めをしている織田家の明智光秀からの知らせを届けたのだ。
「筒井順慶様、大殿と大和守護 原田直政さまが敵に撃たれました。筒井順慶様には、スグに出陣して、織田家の全軍撤退の間の殿軍をつとめよとのことにございます!」
つづく
『アララの呪文』
女子高生が、白い何かを握ってトイレへ駆け込んだ。
どうも、こんばんは星川です。私は喫茶店で人間観察しながら、少年少女でもわかるようなかんたんな文章でユーモアのある文体で新人賞を目指して執筆しております。人の中で書いてますと、たまに、変わった人生模様が見えてきます。それが、今回の主役 女子高生です。
時は、2024年1月27日。私は無学の素人作家なので詳しく知りませんが、大学入試の共通テストも終わったのでしょうか、トイレへ駆け込んだのは、おそらく、バイトもなれ小遣いを安定してかせげるようになった高校三年生ではないかとみたてます。
しかし、この女子高生、ただのお花摘みではなさそうです。
ちょっと、長い。大きな花を摘んでいるのでしょうか。なかなか出てきません。トイレへ入った女子高生をとりあえず花子さん、なにやら友達が二人ついてきております。このともだちを、まるちゃんとたまちゃんといたしましょうか。
たまちゃんは、トイレの中の花子に「だいじょうぶ、だいじょうぶ」としきりに呼びかけ。まるちゃんは、怒ったように大きめの容器が入っていた箱を握りつぶしています。
興味があって、目を凝らしたのですが、私もまるちゃんの父ヒロシより年上のおじさん。ここのところド近眼に老眼が入って、よーくみえません。
と、そこへ、「♪パヤパパパヤヤあぶらかたぶらつるりんこ♪」容器の入った箱を握っているまるちゃんに電話がかかります。
私は、いつの時代だよとはおもいつつ、いや、最近は、古い歌もティックトックなどでみなおされてるからあると思います。と、聞き耳をたてた。
一応、電話のあいては男子のようです。とりあえずここでは太郎くんといたしましょう。
太郎くんのことばにまるちゃんはキレました。
「あんた、関係ないってどういうことだよ! 花子ちゃんの気持ちちゃんと考えなよ」
どうやら、太郎くんは、花子ちゃんの気持ちをふみつけているのでしょうか。まるちゃんはゆるせないようです。
ガチャ!
トイレから花子ちゃんから出てきました。手にはなにか体温計みたいなものを持っています。
はて、風邪を太郎くんにうつされたのかしらん? そら、太郎くんエチケットがワルいです。風邪ひきさんは彼女とのデートはひかえるなり、マスクはちゃんと付けましょう。
花子さんを心配するたまちゃんが聞きました。
「結果は?」
「反応なかった」
と、泣きながらたまちゃんに抱き着きます。
はて、なんの反応でしょうか? ここは病院でもないし、体温計らしきものをもって入ってたし熱でも測っていたのでしょうか。
「花子ちゃん、よかった~、これで一緒の学校いけるね」
うん、花子さんと、たまちゃんは同じ学校へ進学するのでしょうか、最近はコロナなどの過敏な風邪もありますし、受け入れる学校さんとしても他の学生さんへのえいきょうもあります。風邪ひきさんではなかなかむずかしいように思います。
まるちゃんが、抱き合う花子さんとたまちゃんを抱きかかえて、三人そろって泣き出した。
「よかった~」
と、三人して鳴いています。
なにが、よかったのかな? 熱はなかったのかしらん?、まあ、三人同じ学校へ行けるのかな。
「まるちゃん、たまちゃん、ホントにありがとう。二人はホントのともだち」
まるちゃんが、花子さんにいいました。
「花ちゃん、進学したら、太郎とはきっちり別れるんだよ」
「うん、まるちゃんわかった」
ふむ、なんのことやらさっぱり私にはわかりません。とりあえず風邪ではなかったのでしょう。まあ、素人推理のわたしにはわかりませんアララのラ♪。
あかんな、まだまだ、研究が必要な。
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それでは、また、来週にアドュ!