308 柿と猿(カケルのターン)
カケルが未来から来たことを認めた明智秀満は、岸川広家の裁きのこともある。その日は、大原の近くの寺に宿をとった。
そこで、秀満は、農民を代表する朝廷側のカケルと、岸川広家を今度は、論戦で戦わせ決着を付けさせることにした。
その夜――。
カケルの部屋には、寺の庭で取れた柿を囲んで、お虎、菅沼大膳、柳生美里、北庵月代、百姓を代表して楽造が集まった。
すると、楽造が、カケルの膝にすがりついて、
「左近の旦那、オラたち戦に勝ったではねぇか。それがどうして岸川と手打ちのようなことしなきゃならねぇんだ」
カケルは、難しい顔して、お虎に尋ねた。
「お虎さん、なんでなの?」
お虎は呆れた顔して、
「我らは確かに、岸川との戦には勝った。しかし、あ奴は、織田の援軍、明智を引き入れた。我らは明智には戦を仕掛けず話し合いをとった」
楽造が、疑問を投げかける。
「どうしてだよ。岸川をやっつけたのに、織田の明智がしゃしゃり出てくるんだい。そんなの卑怯じゃないか!」
菅沼大膳が応える。
「京の都、山城の国は、今や織田家の支配下だ。例え朝廷の領地 荘園のもめごとであっても領国内での争いを裁くのは織田ということになる。なかでも明智は西近江坂本に本拠地を置き比叡山延暦寺や京の都丹波篠山など畿内において室町幕府でいうところの管領のような立場にある。敗戦濃厚の岸川広家が頼るのもあながち間違いではない」
楽造は食い下がる。
「でもよ、ここ大原は帝の荘園だろう。それを織田が裁くっておかしいじゃねぇか」
柳生美里が答える。
「現在の帝や朝廷には権威はあれどそれを支える者がいません」
楽造は悔しそうに、
「ちくしょー、岸川の野郎のせいでお春の命を奪われ頼みの綱の朝廷もお飾りじゃどうしようもねぇ」
と楽造は背中を向けた。背中を向けた先に戦国時代の医者 北庵法印の娘で見習いで政治的な話には控えていた北庵月代が申し訳なさそうに座っていた。
「楽造様、わたしの医療の腕がもっとしっかりしていたならばお春さんを救えたかもしれない」
楽造は慌てて否定する。
「北庵先生、お春を殺したのはあんたじゃねぇ。殺したのは岸川広家の息子の翔馬だ。どこまでいっても岸川家の人間はオラたち百姓を苦しめる。やつら先祖代々の武士の出だって威張り散らしやがってオラたちが自分でこさえた米を軒並み奪いやがってしかもオラたちが生きるのに必要な食う分まで奪う。百姓をぼろ雑巾のように絞って絞って絞りぬいて最後の一滴まで搾り取ろうって魂胆なんだ。その岸川に援軍をよこした明智も百姓の苦労なんてしらねぇだろうよ」
黙って話を聞いていたカケルがなにかぼんやり思案を巡らせている。
「う~ん、、百姓の苦しさをわかる人間ねぇ……」
ウッキー!
開け広げた庭先から一匹の猿が柿を狙って舞い込んできた。
「おい、猿やめぬか」
菅沼大膳がいきなり襲ってきた猿に狼狽する。
お虎は腰の刀を鞘から引き抜くと寺で殺生せぬように追い払おうとする。
するとカケルが大声を発した。
「閃いた!」
お虎も菅沼大膳も美里も月代もその声に動きを止めた。
その隙に猿は柿を盗んで庭の木の上に逃げた。
「そうだ、猿だよ!」
菅沼大膳が不思議そうに尋ねた。
「猿がどうしたのだ」
「猿がいるんだよ」
「あの猿か、今すぐ木から叩き落して柿を取り返してやる!」
そういうと菅沼大膳は庭に出ると木の上の猿はもう柿を食らった後だった。足元に菅沼大膳をみると猿は痰を吐き捨てるように菅沼大膳めがけて柿の種を吹き飛ばした。
柿の種は菅沼大膳の額にあたった。
「おのれ、この猿、ワシをおちょくりおって叩き殺してやる!」
烈火のごとく怒り狂う菅沼大膳をカケルがもう一つ柿をつかんで庭へでるとほーいと木の上の猿に柿を放り投げた。
菅沼大膳は眼を剥いてカケルに尋ねた。
「おい、左近、ワシをおちょくる猿にもう一つ柿をやってどうするつもりだ」
カケルは笑って、
「あのお猿さんはね俺たちに閃きをくれたんだ」
お虎が手を打って叫んだ。
「そうか、猿というのは、羽柴秀吉さんのことだ!」
美里も月代も何かに気が付いて顔を見合わせ頷いているこの場で気づいていないのは楽造と菅沼大膳だけだ。
楽造が菅沼大膳の側によって、
「菅沼様、わかりますか?」
菅沼大膳は胸いっぱいに空気を吸い込んで胸の前で腕を組み自信満々にこういった。
「わからん!」
すると木の上から小さな礫がまた飛んできて菅沼大膳の額をコツン!と叩いた。
「この猿!今度こそ許さんぞ!猿……」
菅沼大膳はなにかに気が付き目を見開いた。
「お主たちもしや猿のことでワシを笑っておったのか」
カケルもお虎も美里も月代も薄ら笑みをうかべて頷いた。
楽造が菅沼大膳の袖にすがって、
「猿が此度の問題と何か関係がございますので?」
菅沼大膳はきまり悪そうに腕を組んだまま肩でカケルに聞けと楽造を追いやった。
すると楽造はカケルにすがって、
「左近様、猿はいったい?」
カケルは明るく答えた。
「楽造さん、猿というのは羽柴秀吉さんのことです。秀吉さんは織田信長の家臣で猿というあだ名で呼ばれている人物です。秀吉さんは明智光秀さんと出世競争をしています。秀吉さんは百姓の出身であり百姓の苦しみを理解してくれるかもしれません。もし秀吉さんに味方になってもらえれば岸川広家や明智光秀に対抗できる可能性が高まります。私はそのために秀吉さんに接触しようと考えているのです」
楽造は驚いて言った。
「左近様、それは危険ではありませんか。岸川広家や明智光秀は強力な武将です。彼らに敵対することは命がけです。それに秀吉さんは本当に百姓に味方してくれるという保証はありません。彼もまた自分の野望のために百姓を利用するかもしれません」
カケルは楽造の心配をぬぐい去るように言った。
「楽造さん、心配しなくても大丈夫ですよ。私は未来から来たんですから歴史の流れを知っています。羽柴秀吉は天下統一を成し遂げる偉大な人物です。彼は百姓から武将に上り詰めた努力家であり人望も厚いです。彼は百姓の苦しみをわかってくれる人です。私は彼に話を聞いてもらえば理解してくれると信じています」
楽造はカケルの言葉に感動したが同時に疑問も抱いた。
「左近様、未来から来たということはどういうことですか。私にはよくわかりません。未来というのはどんなところですか。左近様はどうして未来からここに来たのですか。そしてどうして秀吉さんに未来から来たことを明かすつもりなのですか。それは秀吉さんにとっても左近様にとっても危険ではありませんか」
カケルは楽造の質問に答えることに迷った。彼は未来から来たことを明智秀満にだけ話したが他の人には話していなかった。彼は未来から来たことを話すことで歴史に影響を与えることを恐れていた。しかし、彼は秀吉にだけは話したいと思っていた。彼は秀吉に自分の正体を知ってもらい信頼を得たいと思っていた。彼は秀吉さんが自分の話を信じてくれると確信していた。
カケルは楽造に笑顔で言った。
「楽造さん、私が未来から来たことは秘密です。私はあなたにもお虎さんにも菅沼大膳さんにも柳生美里さんにも北庵月代さんにも信頼していますがこのことは話せません。私が未来から来たことを話すのは秀吉さんだけです。私は秀吉さんにだけは話さなければならない理由があります。それは私が秀吉さんの悩み 子供ができるかどうかを知ってるからです」
カケルの言葉に部屋中が静まり返った。
「左近殿ちょっと、よいかな」
襖の向こうから女のような声がした。
「どうぞ」
襖を引き開いたのは明智家軍師 月光だった。
「月光さん、なにか私に用事ですか?」
「うむ、ここでははなせぬ。外へでて二人で話せぬか?」
つづく
「心が大事だと気づいた一年」
皆さん、こんにちは。星川です。
今日は大晦日ですね。今年もあと少しで終わります。
皆さんは、この一年をどう振り返りますか?
私は、この一年で一つの大きな気づきを得ました。それは、「心が大事」ということです。
人間関係で不快な思いをしたことは、誰にでもあると思います。私も、そういう経験があります。例えば、相手をディスる直接的な悪口を言う人、相手の心の内を気遣えない心無い一言を言う人、結果だけ見てあーだのこーだの言う評論家などです。
これらの人たちは、私の心を傷つけたり、不安にさせたり、怒らせたりしました。私は、どう対処すればいいのか、悩みました。
しかし、クリスマスに一つのきっかけがありました。それは、私の書いたネット小説に対するある人の言葉でした。
「ネット小説を書くなんてすばらしい”趣味”ですね」
この言葉を聞いたとき、私は怒りを覚えました。私は、ネット小説を書くことを趣味ではなく、本気でやっているのです。作品に誇りを持っているのです。
私は、”趣味”と言われて作品が軽く見られている。理解されていないと悲しく、無価値だと思われていると悔しくなりました。
でも、私は、ぐっとこらえて、ありがとうと返しました。悪意を持って言ったのではなく、ただ、褒めてくれようとしたのだと解釈を変えました。興味を持ってくれたことに感謝しました。何か感じてくれたことに喜びました。私は心のおきどころを、怒りや悲しみや悔しさではなく、敬意や感謝や喜びでかえすことにしました。
この出来事をきっかけに、私は「心が大事」ということに気づきました。私は、自分の心を大切にすること、相手の心に寄り添うこと、心の余裕を持つことを心がけるようになりました。
そうすると、不快にする人たちに対しても、以下のように対処できるようになりました。
相手の言葉に影響されず、自分の価値を自分で決めることができます。相手の心の中にある苦しみや不満を察して、同情することもできます。相手に幸せになってほしいと願います。
自分の言葉が相手の心にどう影響するかを考えるようになりました。相手の言葉は、心の状態を表しており、私の人間性を否定するものではありません。解釈次第で自分の人間性を高めるのに使えます。相手の言葉に傷ついたとしても、それを乗り越えることで成長できます。逆に、相手に自信を持ってほしいと励まします。
自分の作品に対する情熱や苦労や希望を忘れないようにします。作品に誇りを持つようになりました。評価に一喜一憂しないようにします。
相手の評価は、相手の視点や感性や知識を反映しており、私の作品の価値を決めるものではありません。自分の作品の価値を自分で決めることができます。相手に興味を持ってもらえたことに喜びます。
私は、”心が大事”だと学んだ一年でした。心が大事だと気づいたことで、自分の心も相手の心も大切にすることができるようになりました。心が大事だと気づいたことで、心も豊かにすることができるようになりました。心も幸せにすることができるようになりました。
皆さんも、心が大事だと気づいてみませんか?心が大事だと気づくと、人生が変わり、世界が変わり、未来が変わりますよ。
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それでは、今年一年、変わりなき応援ありがとうございました。新年もよろしくお願いします。