306未来の数学者カケルと月光の対決(カケルのターン)
「左近殿、お主は未来から来たというが、未来ではどのような世界になっているのだ?」
「未来では……」
カケルは、秀満の質問に答えることに苦労した。彼は、自分が来た未来が本当に正しい歴史なのか、それとも別の可能性なのか、分からなくなっていた。彼は、自分が知っていることをできるだけ選んで言った。
「未来では、この国は日本と呼ばれています。日本は世界の中で一つの国です。日本は他の国と交流や貿易をしています。日本は科学や技術や文化や芸術などで発展しています。日本は民主主義という政治体制を採用しています。日本は平和で豊かで自由な国です」
「ほう、それは素晴らしいことだ。しかし、そのような世界になるためには、どのような過程を経たのだ?」
「過程ですか……」
カケルは、秀満の質問に答えることに困った。彼は、自分が知っている歴史をできるだけ簡単に言った。
「過程というと……この時代から数百年後に、この国は幕末という時代になります。幕末では、外国からやってきた船や人々がこの国に影響を与えます。幕末では、幕府という政権が崩壊し、明治維新という革命が起こります。明治維新では、天皇という存在が権力を取り戻し、日本という国名が定められます。明治維新では、日本は西洋の文化や制度や技術を積極的に取り入れます。明治維新では、日本は近代化という変化を遂げます」
「ふむ、それは興味深いことだ。しかし、その後はどうなったのだ?」
「その後ですか……」
カケルは、秀満の質問に答えることに躊躇した。彼は、自分が知っている歴史が秀満にとって不快なものである可能性があった。彼は、自分が言うことで歴史が変わってしまうかもしれないという不安もあった。彼は、自分が知っていることをできるだけ控えめに言った。
「その後というと……日本は世界に目を向けます。日本は他の国と戦争をします。日本は勝ったり負けたりします。日本は大きくなったり小さくなったりします。日本は苦しみました。日本は立ち直りました。日本は学びました。日本は成長しました」
「そうか……それで今の世界になったのか」
秀満は、カケルの言葉に感心した。
「左近殿、お主の言うことが全て真実だとしたら、それは驚くべきことだ。しかし、私にはそれが信じられない。私にはお主の言うことが全て嘘だと思える。私にはお主が信長様の手先であり、私を騙そうとしていると思える」
秀満は、カケルに疑いの目を向けた。
「秀満さん、俺は嘘をついていません。俺は信長さんの命令で朝廷に行きました。朝廷の近衛先久さんから、蘭奢待の切り取りを許可する代わりに、大原の荘園の税収の改善を命じられました。大原には、古くから朝廷より派遣された地頭の岸川家があります。岸川家は、大原の実質的な支配者の立場を利用して地侍化し、本来朝廷に収める税収を中抜きして己の懐に入れるのが常態化し、かえって、「なぜ楽をする朝廷を食わせねばならぬのだ」と、住民に重税を課して私腹を肥やす。俺はそれを止めるために戦ったのです」
カケルは、秀満に自分の目的や信長への忠誠を伝えようとした。
「なるほど……それがお主の言い分か」
秀満は、カケルの言葉に興味を持った。
「しかし、それが本当だとしても、私はそれに賛成できない。私は信長様がこの国を滅ぼすことを知っている。私は信長様に反旗を翻すことを決意した。私は天下分け目の戦いと呼ばれる本能寺の変を起こすつもりだ。そのために必要なのが、月光殿が持ってきた未来の知識だ。月光殿は未来からタイムスリップしてきた人物である。彼は歴史学者であり、この時代に詳しい。彼は私に歴史の流れや信長様の弱点や戦略を教えてくれた。彼のおかげで明智家は多くの戦闘に勝利し、勢力を拡大してきた。」
秀満は、カケルに自分の野望や月光への信頼を語った。
「秀満さん……」
カケルは、秀満の言葉に驚いた。
「左近殿、お主も未来から来たというが、お主は何も貢献できない。お主はただ、歴史を乱すだけだ。お主にはこの時代に居場所がない。お主は帰るべきだ」
秀満は、カケルに最後通告した。
「帰るべきだ……」
カケルは、秀満の言葉に動揺した。彼は、
(どうすればいいんだ?俺はこの人たちの言うことがわからない。俺はこの時代に何をすべきなんだ?俺はどこへ行けばいいんだ?)
と思った。
そして、
(俺は……俺は……)
と言って涙を流した。
秀満は、カケルに同情して、彼にもう一つのチャンスを与えた。彼は、カケルに言った。
「左近殿、お主は本当に未来から来たのか?もしそうならば、お主は何か未来の知識を持っているはずだ。お主はそれを教えてくれないか?」
秀満は、カケルに期待した。
「未来の知識ですか……」
カケルは、秀満の言葉に思い出した。彼は、自分がこの時代に来る前に学んでいたことがあった。彼は、自分が学んでいたことを思い出そうとした。彼は、
「あった!」
と言って喜んだ。
彼が思い出したことは、
「これです!」
と言って説明した。
彼が説明したことは、
「数学!」
だった。
数学とは、数量や図形や論理などを扱う学問である。数学は、未来の世界で重要な役割を果たしている。数学は、科学や技術や文化や芸術などに応用されている。数学は、様々な定理や公式や記号や方法を持っている。
カケルは、自分が学んでいた数学を秀満に教えた。彼は、
「これが未来の知識です。これが数学です。これで色々なことができます」
と言って説明した。
秀満とその軍勢は興味深く聞いた。彼らは、
「なんだこれは?」
と言って驚いた。
カケルは、数学を使ってみせた。彼は、
「例えば、米の収穫から土地の価値を予測することができます。土地の価値というのは、その土地からどれだけの米が取れるかで決まります。土地から取れる米の量が多ければ多いほど、その土地の価値も高くなります。しかし、実際に収穫される米の量は、天候や災害や害虫などによって変わります。そこで数学を使って、収穫される米の量を予測する方法を作ることができます」
カケルは、板に図を描き始めた。
「まず、収穫される米の量 y と土地の面積 x の関係を考えます。y と x は直線的に関係していると仮定します。つまり y = ax + b という式が成り立ちます。ここで a は傾きと呼ばれるもので、土地の面積 x が1増えるごとに y がどれだけ増えるかを表します。b は切片と呼ばれるもので、土地の面積 x が0の時の y の値です。a と b の値は土地ごとに違いますが、平均的な値を求めることができます。例えば過去10年間の土地の面積 x と収穫量 y のデータから a と b を計算する方法があります」
カケルは、データを点にして図に描いた。
「このデータから a と b を求めるには、最小二乗法という方法があります。最小二乗法というのは、実際のデータと式の値の差の二乗の和を最小にするように a と b を決める方法です。これを計算すると、a の値は約0.8、b の値は約100になります。つまり y = 0.8x + 100 という式が収穫量を予測するのに適しているということです」
カケルは、式を図に書き加えた。
「この式を使えば、土地の面積 x を知っていれば収穫量 y を予測することができます。例えば土地の面積が1500平方メートルだったら、収穫量は y = 0.8 × 1500 + 100 = 1300 キログラムになります。逆に収穫量 y を知っていれば土地の面積 x を予測することもできます。例えば収穫量が1000キログラムだったら、土地の面積は x = (y - 100) / 0.8 = (1000 - 100) / 0.8 = 1125 平方メートルになります」
カケルは、例を図に書き加えた。
「もちろん、この式はあくまで予測であり、実際の収穫量とは異なる場合もあります。しかし、数学を使えば、平均的な傾向や妥当な範囲を知ることができます。これは農業だけでなく、他の分野でも役立ちます」
カケルは、数学の利用価値を説いた。
秀満はカケルの話す数学の効力がとにかくすごいことはわかったが、xとかy細かな説明はなにがなんだかわからなかった。しかしその軍勢は感心した。彼らは、
「すごい!」
と言って賞賛した。
カケルは、数学を教えてみせて喜んだ。彼は、
「これが未来の知識です。これが俺の証拠です」
と言って誇らしげに言った。
秀満は、カケルの言葉に納得した。彼は、
「左近殿、お主の言うことが本当だったようだ。お主は本当に未来から来た者だったのだな」
と言って感謝した。
つづく
皆さん、こんばんは星川です。
このエピソードでは、カケルが未来から来たことが、歴史人物明智秀満に開示します。
秀満は、疑います。なぜか、それは明智にも謎の人物がいるからです。
明知光秀は、織田信長の比叡山焼き討ち後の厄介ごとを全部背負わされます。
光秀の新しい領地坂本は、琵琶湖から比叡山への登り口になります。いわば玄関口ですね。その比叡山のふもとの町には、もちろん焼き討ちに合った家族が多く住んでいます。その恨みの矛先は、織田信長は間違いないのですが、直接的には明智光秀に向かいます。
光秀は、足利将軍義昭に仕えていたこともあり保守的なところもあります。光秀は、信長の命令がなければ公家の血筋を引くものも多い比叡山を焼き討ちなんて想像もしない人物です。そんな人間が、恨みを買う役目を負わされた。そら、光秀の不満は相当なものです。信長憎しです。
私は、その光秀の信長憎しの心に、未来のカケルたちを絡めて、光秀の野望というものに転化していこうと思い巡らせています。
来週も、カケルと左近の活躍をお楽しみに!
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それでは、また、来週に。