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301 武田の危機と松姫の涙(左近のターン)

 

 武田勝頼の長篠城へ向けての出陣の知らせを受け事態は風雲急となった。


「ワラワは兄上の元へ帰るのは嫌じゃ」


 左近は、小癇癪を起した子供をなだめるように、膝を着き目線を合わせて教え諭すように言葉を選びながら話した。


「松姫様、お気持ちはわかります。姫様は、事が収まりましたら命に替えましても、信忠公の元へお連れします。今は、風雲急の事態なれば、お気持ちを穏やかに事が収まるまで、武田家の本拠地 躑躅ヶ崎館でお待ち下され」


「左近よ、そなたも私を騙すのか」


「左近は、人を騙すようなことは致しません。左近は、今の事態で姫様の御身を慮れば、これが最善の策だと思っての行動でございます」


「左近、お主も兄上と同じじゃ、女を野望の道具としか考えて居らん」


「そんなことはございませぬ」


「ならば、ワラワをこんな城に閉じ込めず一緒に連れて行け」


「それは、出来ませぬ。これから、某は若殿(勝頼のこと)と、山県殿を追わねばなりませぬ」


「それは好都合ではないか、そこにワラワも同席すれば、ワラワと信忠様の恋路を邪魔する兄上に一言言ってやれる」


 左近は、静かに首を振って、


「姫様、此度ばかりはそのような我儘は通りませぬ。いざ長篠で戦となれば、多くの武田の者が命を落としまする。某はその中で山県殿を救わねばなりませぬ。戦の混乱の中でとても姫様をお護りせきませぬ」


 松姫は、目を細めて、


「左近、お主はいつから占い師になった。戦もまだ始まって居らぬのに、お前は、すでに戦の勝敗を知っておるようではないか。しかも、その口振りでは武田が負ける」


「いえ、姫様、そのようなことはございません。某はただ、一早く師である山県殿の元へ馳せ参じたい一念がそのような言動を生みました申し訳ござらぬ」


 松姫は、返って左近を説得するように目をしっかりと見つめて、懇々と教え諭すように言葉を継いだ。


「左近、よいか。ワラワの味方はお前と昌景だけなのだ。昌景の一大事に血気にはやるお前を簡単に行かせては戦場で流れ弾にでも当たって命を落とさぬともかぎらぬ。お主は勇士ゆへに己が命も簡単に的に出来る性格じゃ。左近、それではいずれ大事な戦場、大事な局面で命を落とすことになるぞ。ワラワはそれが心配なのじゃ」


 痛いところを突かれた。左近は前世、関ケ原の戦いにおいて、鬼神の如き左近の槍働きで優勢の東軍を押し戻したが、それを恐れた家康の指示で銃弾に倒れることとなる。そこから始まる数奇なやり直し人生が現在なのだが、松姫はそのことを知ってか知らずか左近の一番の失敗を的確に突いた。


「すまぬ左近、厳しいことを申した。お主はその心ねが澄んでおるから、他の者へも申せぬ言葉をつい発してしまう。許せ左近」


「いえ、そのようなことは」


「左近、お主がどうして未来を見通せるかはわからぬが、左近と昌景はワラワに必ず必要な人間なのだ。長篠の戦で、昌景がどうなるかは、ワラワは占い師ではないのでわからぬが、ワラワには長篠でお主まで命を失うような気がしてならぬのだ」


「姫様、某にそこまで御心を砕いて下されて居りましたか」


「よいな、左近。死んではならぬぞ、そして必ず昌景を守るのだ。それだけ約束してくれれば、ワラワは素直に躑躅ヶ崎館でお主の帰りを待つとしよう」





 甲斐武田 信玄の父信虎がここ躑躅ヶ崎館へ1519年に居を移してから、信玄、勝頼の時代の現在1575まで敵に侵略を許したことがない。


 甲府盆地の北面に位置し、南には相川扇状地が広がり、北には今井信元などが守る獅子吼城などの山城要害がそびえる。東西には藤川と相川が流れ、天然の堀として、水運も栄える。


 館の規模は、館の中心部は方形居舘と呼ばれる四角い建物で、京の都の将軍邸 花の御所を模していた。居舘の周囲には水堀 土塁が巡らされ虎口や土橋が設けられていた。


 方形居舘の内部には、評定をする大広間や主の御殿がある。北面には、ご隠居曲輪や無銘曲輪があり、一族や人質、ここに織田家から戻された松姫も暮らしていた。


 勝頼の出陣した後の守りは、武田信玄の弟 信繁の嫡男 信豊が留守居役を預かった。信豊は、第四次川中島の戦いでの父の死後家督を継いだ。勝頼の親族衆としては、姉婿の穴山信君と並ぶ最側近だ。信豊は武勇にも優れ信玄の駿河攻略戦では蒲原城を奪取する働きを見せた。つづく西上作戦においては信濃国高遠城に在番し織田信長の進出を牽制した。官職は父信繁も名乗った佐馬助の唐名「典厩」を名乗った。


「松姫様、留守居役の武田信豊殿は相当に信用のおける人物です。あのお方ならば、松姫様を悪いようには致しませぬ」


 松姫は、目に涙を浮かべながら呟いた。


「わかった左近、お主の言うとおりにする。お主は必ず生きて帰って来るのだぞ。そして、昌景も無事に連れ帰るのだぞ。それがワラワの願いだ」


「姫様、某はその願い。必ず叶えまする。姫様はどうかご自愛くだされ」


 左近は、松姫の手を取って優しく握りしめた。松姫は、その手のぬくもりに心を落ち着かせた。


「左近お主はワラワの心の支えだ。お主がいなければワラワは生きている意味もない」


「姫様、某も同じ気持ちにございます。某も姫様のために生きております」


 二人はしばし見つめ合った。その間にも時は刻々と過ぎて行く。


「さて、某はこれで失礼します」


 左近は、松姫の手を放して立ち上がった。松姫もそれに続いて立ち上がった。


「左近、気を付けていってらっしゃい」


「松姫様、また会いましょう」


 左近は、松姫に一礼して、甲州街道を南に歩き出した。


「左近……無事でもどれよ……」


 松姫は、そう言って、袖で目元を隠した。



 つづく




皆さん、こんばんは星川です。

昨日、同じ師匠について物書きの修行をした友人と長電話した。


彼は、公開中の映画「ゴジラー1.0」を見てきたようだ。

彼は、おっとり刀の私とは違って、リアルタイムで一度映画を見ればハコ(プロット)をばらせる能力を持つ。(おっと、この先は、友人から聞いた感想及びネタバレが大だから、自分の目で確かめたい人は、ブラウザバック推奨。ネタバレOKの人は読んでね)


どうやら、今回のゴジラは、敗戦間近の特攻隊をのせた海上に襲来するゴジラの脅威からはじまるらしい。

ゴジラを目の前にした神木隆之介は自分の弱さでゴジラに機関銃を撃てずに、旗艦を沈められてしまう。


その後、運よく生きて帰っても、ゴジラに対峙できなかったことがトラウマになった神木君は、終戦後の暮らしもままならない。性格の優しい神木君は、浜辺美波と赤子と知り合い疑似家族のような関係になる。

家族を家族を食わせるため神木君は、地雷撃ちの仕事をはじめ食い扶持をえるようになる。

そこに、再びゴジラが襲来した。神木君は、爆弾を使ってゴジラを一旦は退けたかに思えたが、ゴジラは不死身で返り討ちに会う。


傷つき病院のベットのみになった神木君を、家計を支えるために浜辺美波が銀座へ働きにいくことに。

その銀座にゴジラが表れる。神木君は必死になって群衆の中、浜辺美波を探し当てるが、不運にも、ゴジラの吐いた炎であべこべに神木君を守って浜辺美波は犠牲になる。


ゴジラへの復讐心に燃える神木君、覚悟をきめて、弱い自分と、戦争の亡霊と戦うため、再び、特攻隊機を駆りごじらにたちむかう――。



みてないけど、友人の感想をまとめると、だいたいこんな流れか、なんか、友人曰く、有名どころの役者を起用してるが演技が大げさだったようだ。良かったのは唯一、軍艦の司令官だかの人。


まあ、理由を考えると、山崎貴監督だから、グリーンバックで撮影し、後で、VFXを挿入する。から、演技は役者の想像、想定によるものが大。しかも、友人曰く、芝居が、なんとなく脚本からはみ出して、役者に寄ったところがあるようだ。これは、脚本も、山崎監督だから、縛りがない。


たぶん、監督は、欲しい絵が取れたら少々、はみ出てもOKしたあのではないかという友人の推理だ。


友人の感想をいちいち聞いて納得の解説だった。


友人は、一度で、そこまで読み取ったが、果たして、星川にそれができるのかは、また、別の問題。

映画二時間疲れっけど、公開中に、一度確認しに行かねばなるまいて。


話しの閉めに、友人が忠告をくれた。

「今回のゴジラは、ゴジラ二スタのための作品で、初見には厳しいかもよ」


まじか、映画館に行く足が、さらに、のそりのそりとなりそうだ。



本日もお楽しみいただけましたか?

それでは、とりあえずブックマーク、ポイント高評価、感想、いいね 気前よく弾んでやってください。



それでは、また、来週に。

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