284 荘園大原の地頭 岸川一族との争い(カケルのターン)
楽造の縄を解いて、お春の家の囲炉裏端を囲むカケルたち。カケルが口を開いて、
「俺は、この村にはみんなが一つになって一生懸命働く夢がないと思うんだ」
すると、楽造が、
「オラたちにもささやかながら家族が平和に暮らしてゆく夢ならあった。それを奪ったのは、侍であり、公家であり、朝廷だ!」
「うん、楽造さんの言う通りだよ、俺たち侍が悪いんだ」
楽造は、カケルの膝にすり寄って、
「だったらさ、左近の旦那、あんたなら信用できるから、ここ大原の荘園を守る用心棒になってくれよ」
楽造の言葉に、菅沼大膳が、目を見開いて、
「おお、それなら、ワシの子分も畑仕事より力も存分に発揮できよう名案じゃ」
お虎が、冷めた目を菅沼大膳に見せて、
「馬鹿者、菅沼大膳。それでは、逆に大原の荘園に巣食う賊ではないか、そもそも、我らは、朝廷から荘園の復興を任されてやってきたのだ。それが、事もあろうに荘園を朝廷から奪って賊の頭になってどうする。馬鹿も休み休み言え!」
お虎の冷厳に菅沼大膳はシュンとなる。
柳生美里が、カケルに尋ねるように、
「ならば、左近様、他にどのような手立てが考えられますか?」
「そうだなあ……」
カケルは、腕を組み目を閉じて、まるで瞑想でもするように、思考の海へ漕ぎだした。
「問題点は……」
1大原は戦続きで、働き手がない。→菅沼大膳さんの子分でカバーする。
2野盗や、近隣の野武士などの襲撃をどうするか?→村人一丸となって守ろう。
3朝廷への税金はどうするか? →待ってもらうよう相談するとするか。
カケルは、そこまで、考えた時、ウトウトと眠ってしまった。
「……おい左近、寝ておるのではないか、おい、左近、陽が暮れてしまったぞ!」
菅沼大膳が、カケルの肩を揺り起こした。
「はっ! 寝てしまってた」
ぐぅ~~~~!
カケルの腹が鳴った。
「お腹空いた~」
カケルがつぶやくと、お春と月代が連れ立って、それでは、私たちは夕食の支度でも始めましょうか」
と立ち上がり、釜戸の薪を取りに表へ出た。
月代が、戸を開いた時、ブワッっと、何者かが口を塞いで地面に押し倒した。
「⁉」
美里が、物音に気が付いて、表へ出た。
すると、何者かが再び美里の口を塞いで取り押さえようとするが、美里は剣豪 柳生宗厳の娘だ。何者かの手をさっと掴んで、あべこべに投げ飛ばした。
「左近殿! 我らは何者かに取り囲まれてございます」
「なに!」
カケル、菅沼大膳、お虎が、表へ出ると、お春の家を取り囲むように、かがり火が取り囲んだ。
騎馬に乗った鎧武者が進み出て、
「おい、賊! おとなしくこの荘園から出ていかんと、命はないものと思え!」
鎧武者の声を聞いた楽造が、表へ飛び出してひれ伏した。
楽造がひれ伏す中、カケルは怒りを抑えながら鎧武者に向かって言った。
「お前たちは何者だ!この荘園を襲うつもりか?」
鎧武者は馬から降り、威圧的な態度で答えた。
「ワシは岸川太郎広家、大原の荘園を取り戻すためにやってきた。おい賊、おとなしく大原を去れ!」
カケルは岸川の言葉に言い返そうとしたがその時、菅沼大膳がカケルの腕を抑えて割って入った。
「待て、待ってくれ。我らはただこの土地を守るために知恵を絞っているだけだ。朝廷の近衛前久様からは荘園の復興を託されておる。それをなんと賊呼ばわりするか!」
岸川は菅沼大膳の言葉に一瞬驚いた表情を浮かべるが、すぐに態度を取り繕い、厳しい目つきで応じた。
「近衛様の命令も我々には関係ない。この土地は我々が先祖代々地頭として朝廷からから大原の管理を任されておるのだ!」
すると、お春と月代が急いで戸口に戻ってきて、
「左近様、あなたたちを襲ったのは、私たちと同じく朝廷から派遣された者たちなのです。彼らは大原の荘園の管理を取り戻すためにやってきたのです」
カケルと菅沼大膳は驚きを隠せない表情を見せた。
「なんだと?朝廷から派遣された者がオレたちを襲うなんて…」
岸川は冷たい笑みを浮かべながら言った。
「この荘園はお前たち賊のせいで荒れ果てた」
カケルは怒りと悲しみを抱えながら考え込んだ。
「では、どうすればいいんだ?オレたちはただこの村を守り、平和に暮らすためここにきたのに」
美里が静かに声を上げた。
「左近さまもしかしたら……」
美里の声が途切れてしまったが、菅沼大膳がその言葉を受け継いだ。
「美里殿、言いかけたことを私が補足しよう。左近、もしかしたら交渉の余地があるのではないか?この荘園を巡る争いは、ただ力ずくで解決するしかないのではなく、話し合いの場を持つことで新たな道が開けるかもしれん」
岸川は不敵な笑みを浮かべながら言い返した。
「交渉?そんなものは無駄だ。我々は検討はするのみだ。結果は変わらん」
しかし、お虎が物静かに言葉を続けた。
「岸川殿、もし私たちがこの荘園を守り抜く意思を示し、共に努力する覚悟を持つとしたら、朝廷にも私たちの価値を示すことができるのではありませんか?戦争や争いを避け、この土地の再建に全力を注ぐことで、岸川さまもともに利益を享受できるやも知れませぬぞ」
岸川は少し考え込んだ様子で、その後に言葉を発した。
「ワシは朝廷の臣下だ。朝廷の命令には逆らえん。しかし、お主たちの言葉にも一理あると感じる。もし本当にこの荘園を守り抜き、再建する覚悟があるのなら、その姿勢を示してみよ。ただし、条件がある。この荘園を守る者の強さを確かめたい、ワシと一騎討ちして勝利せよ」
カケルと菅沼大膳は少し驚いたが、美里が静かに頷いた。
「わかりました。我々はこの荘園を守り抜く覚悟を持っています。一騎討ちを受けます」
岸川は満足そうな笑みを浮かべ、馬首を返した。
つづく
皆さん、こんばんは星川です。
タレントのryuchellさんが、死去されたニュースをみました。なんでも、事務所で自殺を図った可能性もあるとか。
昨年「父親であることに誇りは感じるのに、夫であることに辛さを感じる」ことをカミングアウトし、ジェンダーレスの選択をされた。
そのことで、ネットを中心に、ryuchellさんの選択を多くの非難するアクションが巻き起こったとか。
ええやん、その人がどんなセクシャリティーでも、ryuchellさんは、彼なりに、家族を支えるスタンスでお子さんとも向き合っていた。仕事の忙しさを理由に家庭をないがしろにし、奥さん一人に子育てを押し付ける古い体質の男性よりよっぽど父親だと思う。
こういえば、ryuchellさんは、死んで親の務めを放棄したじゃないか!
と、非難する人はさらに、彼を叩くかもしれない。
正気でそんなに人を追い込詰める人があるのを、信じられない。
定期的に、イジメを苦に自殺をした学生さんの話も聞くが、人を過度に追い詰める性格の人は、他人を苦しめることに一種の快感を得ているのかもしれない。イジメる行為をすると、脳にドーパミンが出る狂気の性質なのだ。(尚、私は、医者でも研究者でもないので主観です)
そう、過度に人を追い込む性質の人は脳の病気であると考える。それこそ、ryuchellさんをネットの匿名性を隠れ蓑にし、彼を追い込んだ人たちは、皆、精神科の治療を受け、ドーパミンを抑制する薬でものんで、脳からその攻撃性を抑えなければ、また、第2のryuchellさんを見つけ攻撃するだろう。
逆に、思うのだが、ryuchellさんを過度に叩くひとたちの狂気に従って、ジェンダーレスを止めて、髭を伸ばし筋肉質の格闘家みたいにテストステロン過剰に変身すれば納得するのだろうか?
いや、そうとは思えない。ryuchellさんを追い詰める人は、ジェンダーへの考えの違いをきっかけに、成功者の彼を叩きのめし、血に這いつくばることに快感を覚えているのだろう。
まさに、狂気だ。
ええやん、いろんな考えの人がおっても、ryuchellさんの言葉使いとか、人への接し方とか、瞳を見れば、彼が知能は少し低め(これも主観)だけど、優しくて、思いやりのある人間なのはスグにわかるやん。
なんで、自分と考えが違うだけで、直接関係のない人物を、過度に叩けるのか。その過度の鞭打ちで、彼の人生は明るく前向きになるのだろうか?
答えは明らかに否だ。結果彼は、笑顔を失い死を選んだ。
お子さんの誕生日を祝った翌日だ。
こんな不幸な選択がありますか!
彼は、あり得ない選択をしなければならないほど、匿名の悪魔たちに追い込まれていたのです。
もう一度、その誹謗中傷を、その口から生み出すのを一旦踏みとどまろう。5秒でいい、ほんとに、他人へ誹謗中傷することが、相手のためや、自分のためになるのか?
例えばさ、自分の失敗や欠点て、自分で気づいて落ち込むやろ?
気心が知れた仲間にたまに冗談にされるのは、我慢して笑えるけど、毎日とかは嫌じゃない?
そうやねん、自分の欠点や失敗は、自分でわかるねん。失敗しても明るく振舞ってる人は、気づかないんじゃなくて、前へ進むために、自分をポジティブなふりして落ち込みをおさえてんねん。
完成度を目指すなら弱点の指摘はついてくるけど、叩くのとは違う。愛がなければいけない。
もっと言えば、的確に弱点を指摘したなら、その倍の相手の良いところを教えてあげるくらい愛がなければいけない。
弱点なんか誰でも探せるから、有難くはない。その倍のええところも合わせて教えてあげるぐらいじゃなければ、あなたの声は必要ない。むしろ、害悪だ。
な~んて、ryucheellさんの不幸をみて感じました。どうか、みなさん、他人の弱点や欠点ばかりではなく、良いところを探して伝えてあげましょう。
Pay it fofword な世の中にしていきませんか?
では、ブックマーク、ポイント高評価、感想、いいね よろしくお願いいたします。
それでは、また、来週に。