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280京の都の北部に広がる荒廃した荘園で起こる事件、カケルは自分の理想を貫けるだろうか(カケルのターン)

 御所のある京の都の北、大原、貴船、鞍馬、嵯峨に朝廷の荘園が広がっている。

 かっては豊かな稲穂が実肥沃な田園が広がっていたが、大仁の乱以降の都の戦乱によって、至る所は戦火に焼かれ荒れ田を見になっている。


 そこへ、嶋左近こと現代の高校生 時生カケルと、山県昌景の娘でカケルの配下となった山県お虎、元は奥三河で山家三方衆と呼ばれる国人領主で田峯城城主菅沼定忠の嫡男で、これまたカケルの配下になった十人の野盗の親分でもある菅沼大膳、カケルたちと共に、筒井順慶から同盟相手の病症にあった武田信玄に派遣された北庵法印の娘 月代、先ごろ知り合った柳生宗厳の娘 美里の五人は、荒廃の色を濃い朝廷の荘園の風景に立ちすくんだ。


「これは難題だ」


「キャー! 助けて‼」


 若い娘の悲鳴が聞こえた。


 カケルが声の方角をみると、若い村娘が、刀を持った野盗に手籠めにしようと追いかけられている。


 お虎がカケルに尋ねた。


「左近、これは見逃すわけにはいかないな」


「だね、嫌がる娘さんを無理やりに襲うなんてありえない」


「わかった、では私が助けにいこう」


 と、お虎がカケルの判断を仰いでいる間に、剣の立つ柳生美里が野盗に向かってすでに駆け出していた。


 美里は、若い娘を背中で匿うと、刀を抜いて野盗に立ち向かった。


 野盗は、美里の体を上から下へ嘗め回すように見定めて、


「ほほう、こいつは気性は強いがなかなかの上玉だ。これで今夜の楽しみが二つに増えたわい」


 と、いやらしい顔つきで美里に襲い掛かった。


 剣聖と呼ばれた上泉伊勢守から伝授を受けた柳生宗厳の娘である。美里は、幼少より女だてらに剣を握り稽古をかかさない。


 美里は、野盗の振り下ろした刀をはじき返すと、そのまま懐へ飛び込み腹へ峰に返した一線を放った。


「うぐぬぬぬ……」


 野盗は、もんどりうってその場に崩れ落ちた。


 美里の剣技を観察していたお虎が、


「ほう、あの女なかなかできるのう」


 と、感心して呟いた。


「お虎さん、そらそうさ、だって柳生だよ。柳生っつたら剣豪の家なんだから当然さ」


 と、カケルは現代の歴史の知識で答えた。


「ふん!」


 お虎は、美里を褒めたカケルが面白くないのか、顔をそむけた。


「いけない、あんなに強い一撃をお腹に受けたらあの野盗さんの命が危ない助けなくちゃ」


 今度は医者の月代が動いた。


 月代は気を失った野盗の強かに打たれた腹を見ると、手を当てて触診を始めた。


「うん、少し強くたたかれただけで骨には異常はないみたい。これならば死ぬことはない。安心だわ」


 今度は、月代のやり方を見ていた菅沼大膳が、カケルに、


「月代殿はたいしたものですな、やはり、医術の腕は北庵法印殿の娘だけあって、あんな一瞬で命の判断ができる。これは頼もしい左近殿の嫁候補じゃ」


 すると、お虎が、


「ふん、そんなものは、実際に寄り添ってみなければわかるまい。身近に侍るようになれば、その者の本性が隠せなくなるものじゃ。あの美里にしても月代にしても、一人の時間になればだらしがないかもしれないわ」


 すると、菅沼大膳が「かっか!」と笑って、カケルに肩を寄せて耳打ちした。


「左近殿、モテる男はなかなかにつろうございますな。女はめんどくさいから、左近殿にその気があれば主人と家来固い絆で結ばれた衆道になってもよろしいござるぞいつでもいってくだされ」


 と、菅沼大膳は男同士の衆道を当たり前に笑いながら進めた。


(だれがよりにもよって、髭だらけのガチムチマッチョのおっさんになんか手をだすか、それだったら、本命の気立ての良い月代にしても、気は強くても情の深いお虎さんにしても、切れたら一瞬で刀の錆にされちゃうかもだけど美里さんたちの方が、よっぽどいいわ!)


 と、カケルは心の中でつぶやいた。



「お助け下さりありがとうございます」


 襲われそうになっていた若い娘が、膝をついてカケルたちに礼を述べた。


 カケルは親身になって、


「お姉さん、大変な目にあったねどうしてこんなことになったの?」


「はい、実はここ大原の荘園も昔はとても平和な土地でした。私たち百姓はそれは帝の恩恵でそれは豊かな暮らしをさせていただいておりました。しかし、都の絶え間ない戦で、田畑は育てても育てても毎年のように焼かれ、それでも育った作物も、戦の兵糧代わりとして奪われるのでございます。そんなことがあるから、私を追いかけて来た野盗、あの者は楽造と申しましてもとは、私と同じ村の者幼馴染でございます。昔は、まじめで働き者でございましたが、どこまでも先の見えない生活の苦しさに絶望して、どうせ奪われるなら自分が奪ってしまえと野盗になってしまったのでございます」


「そうなんだね、深い事情があるんだね」


 するとお虎が口を挟んで、


「例え暮らしが厳しくとも、心を強く持ち、額に汗して生きるのが人の道であろう。あのように堕落した人間は世の中のためにならん。楽造とやらを峰打ちで生かしておくと世のためにならん。私がここで成敗してくれる!」


 と、お虎は刀のつばに手をかけた。


 すると、カケルが刀に手をかけたお虎の手を抑えて、静かに首を振った。


 お虎は、カケルに目をむいて、


「なぜだ、なぜ私を止めるのだ。左近、お主も、あの野盗がこの娘を襲おうとしていたところをはっきり見たであろう。それなのにお前はどういうつもりだ!」


 カケルは、首をふって、お虎をなだめるようにこう言った。


「お虎さん、誤解してるよ。確かに、楽造さんは悪いことをしようとした。たしかにあのまま俺たちが見過ごしていたらこの娘さんは大変なことになった。でもね、この娘さんの顔をよく見るんだ。楽造さんを恨むどころか、美里さんに受けた傷を心配しているよ。だって、こないだまで一緒に育った幼馴染じゃないか、心の深い部分で楽造さんのことを恨めないんだよきっと」


 すると、菅沼大膳が、口を挟む。


「うんうん、さすがワシが主と見込んだ真の漢だ。左近殿、惚れ直しましたぞ、どうじゃ今夜あたり、ワシと床を共にして主と家来の深い契りを結ぼうではないか!」


(菅沼大膳さんのこの手の話は、冗談だか本気だかよくわからない。これはこれで困るけど、今回の野盗さんの処分には同意してくれているようで心強い)


 お虎が、我慢していた言葉を吐き出すように言った。


「左近、いつも、私は申して居るが、お主は甘い! 人間を信じすぎておる。人はそんな誰でも良心を持って生きているとは限らんぞ。そんな考えではいつか誰かに裏切られ手痛い失敗をしでかすぞ!」


 カケルは、お虎に優しい顔を向けてなだめる様に言った。


「それでいいんだお虎さん。俺は、出来るだけ人を信じて生きたいんだ。そうすることで自分の周りからすこしずつ人が優しくなって、誰かが誰かのために優しいことをする。そうしていけばきっとこの乱世も平和になると思ってる。たぶん、山県のおじさんも同じ考えじゃないかな? 知らんけど」


 お虎は呆れて、


「まったく、お主、嶋左近清興という漢は、甘い漢よ。やっぱり、私が側にいてしっかりお前を見張っておらねばいつ誰かに寝首をかかれるか知れたものではない。わかった、同意は出来ぬが、お前は私の主と決めた漢だ。甘すぎる漢だがささえてやろう。まずはこの娘と楽造から村の問題点を聞こうではないか」



 つづく

皆さん、こんばんは星川です。


私、団地のフロアーの理事をしてまして、先日、月例会へ参加しました。


そこへ、いつもは見かけない方が出席している。


「なんだろ?」


と、思っていましたら、どうやら理事会に不満がある一住人の方のようです。

その方は、開口一番から不満をぶちまけ喧嘩腰。

ただの喧嘩腰ならば、話は簡単なのですが話の筋は通っている。

(これは、厄介だなぁ)

その人は、理事を15人相手に回しても一歩も妥協も譲歩もする気配がない。

なにがなんでも自分の主張を押しとおす覚悟のようです。


理事は、その人のぶち上げる二時間ほどの感情的な論説にほとほとつかれきってます。

(はやく済ませて帰りたい)

よくよく、話を聞くと、その方は別に理事会に文句やルールの改善点を要求したいわけではありませんでした。その方のホントの理由は、なにかトラブルがあって、ある役員さんに相談へ訪れたとき、役員さんの対応が気に入らなくて、許せない!

と、思って腹を立てたのが原因で、勝気な性格なのでしょう。それならばと、団地のルールの粗探しをして、提案の苦情の体をとった大演説へとつながったのです。


あれね、怒ってる人につきあうと、めっちゃ、体力、気力、時間が削られるね。

ほんまに疲れた。


想像だけど、ご家庭でも喧嘩が絶えないんだろうなとおもいます。

仕事で疲れて帰って、家で、喧嘩を吹っ掛けられたら、体も心も休まる暇がありません。

私は、結婚するなら穏やかな性格の女性を願いたいと思いました。

(望みはあれど、甲斐性なしには誰も相手にしてくれやしませんね)


では、ブックマーク、ポイント高評価、感想、いいね よろしくお願いいたします。



それでは、また、来週に。

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