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【改題】嶋左近とカケルの心身転生シンギュラリティ!  作者: 星川亮司
一章 疾風! 西上作戦開始!
28/399

28ピンチはチャンス! きっとその時、神の啓示か天の声が聞こえるさ(現代、左近のターン)チェック済み

 パソコンで自動プレーされている歴史シミュレーションゲーム関ヶ原の嶋左近に新たな変化があったのに気づいたのは、カケルを起こしに来た妹、清香だった。


「お兄ちゃん、嶋左近が城を脱出したって、最近のAIは勝手にイベントもすすめちゃうのね文明開化よね~」


 左近は、飛び起きた。


 この場合の左近は、現代の高校生、時生カケルと魂が入れ替わった戦国武将の嶋左近であるのだが。


「清香殿、左近が城を抜け出したとは如何なる話にござるか? もう少し、詳しく教えて下され」


 清香は、マウスを操りながら、


「え~っとね、どうやら嶋左近が、城兵を先導して、城の中で反乱を起こしたみたいよ。すごいわね、最近のゲームは」


 左近は、すぐさま清香からマウスを奪いとると、ゲームの嶋左近の動向を追いかけた――。



 ――田峯城。


 牢獄に横たわり寝る嶋左近と魂が入れ替わった現代の高校生、時生カケル。


 松灯りが牢獄の廊下を近づいてくる。


 眠るカケルの顔を松灯りが照らす。


「左近殿、左近殿、起きて下され」


 ううう、と(しば)むる眼をあけるカケル。


「獄卒のおじさん! 」


 獄卒は、切羽詰まったような後のない必死な眼差しで、慌ただしく走り回っていたのか、呼吸もたえだえに、「起きてくれろ」と、手を伸ばし、


「手はずどおり、ワシと同じ村の者には声をかけたで、左近殿が呼び掛けたらワシら一同うち揃って決起するだ。今、城中で仲間が他の者にも声をかけてるところだでよ」


 カケルは、獄卒の伸ばした手をしっかり掴んで、


「おじさん、名前をまだ聞いてなかったね? 」


「おらだか? 」


「大事な名前だから、教えて下さい」


「おらの名前は五作だで、でも、仲間はみな、おらがボンヤリだから田吾作と呼ぶだ。左近殿も田吾作でええだに」


 カケルは首をふって、


「いいや、おじさんの名前は五作さん、俺の命の恩人だ」


 五作は頭をポリポリ掻いて、


「命の恩人だなんてこっばずかしいだに、やめて下され左近殿。さあ、早く参りましょうだに」




 牢獄を獄卒、五作の手引きで抜け出したカケルは、まずは、城中の武器弾薬の倉へ忍び込み占拠した。


「この城には鉄砲があるんだね」


 と、カケルは五作へ尋ねた。


「そうだで、三○丁ほどあるだに、殿様が最新式の武器だと騙されて商人から買ったようだでよ。(鉄砲を掴んで構える)こんな敵にも当たらねぇもの戦場じゃ飾りにしかなんねぇ~だよ」


 と、五作は、カケルへ朱槍の大千鳥十文字槍を渡した。


「左近殿にはこれが一番似合うだでよ」


 と、好きっ歯になった前歯を、をニッと剥いて笑って見せた。


 カケルはこの鉄砲に何かヒントを得たようにあごに親指と人差し指をチョキの形にして、すこ~し、思案し、五作へ何やら耳打ちした。


「左近殿、ホントうだか! この鉄砲を使うのかや?」


 カケルは、驚きの隠せない五作に静かに頷いて答えた。


「次は、馬屋へ行って霧風を取り戻そう」




 ――空が白んで来た。霧の朝だ。


 田峯城の城中に、立ち込める霧影に浮かぶ巨馬に跨がる大男が、朝の静寂をつん裂くような大音声(だいおんじょう)で、


「おはようございます! 田峯城のみなさん、この城はすでにこの武田、山県正景の家臣、嶋左近が乗っ取りました。速やかに降伏してください! 」


 と、同時にカケルが五作へ合図を送ると、法螺に戦太鼓を打ち鳴らした。


「なにごと! 」 


 と、着の身着のまま飛び出す城兵たち。


 鎧、兜、槍に太刀。装備もよろしく整然と士気上がるカケルと五○人兵に、城兵はあわてふためき混乱した。


「何をしておる者共、こやつを捕らえぬか! やつの手勢は五○そこそこ、我らにはまだ七五○もおる数で揉み潰せ!」


 と、夜警の大将、菅沼定忠の嫡男、菅沼大膳が、物見櫓から下りて来て、狼狽する城兵を統率しはじめた。


 カケルのそばにいた五作が、


「蜂の巣大膳様じゃ~」


 今にも逃げ出しそうな声をあげた。


「蜂の巣大膳? 」


「そうじゃ、蜂の巣大膳様じゃ、顔に疱瘡(ほうそう)の痕があることからそう呼ばれているだ」


「強いのかい? 」


「強いなんて生易しいお方じゃねえだ。御城主様より大きな体躯で、徳川家では、御城主様を山家(やまが)の赤鬼、大膳様を青鬼と呼んでいるだ」


 カケルは、困った顔をした。この蜂の巣大膳をなんとかしないことには田峯城乗っ取り作戦は失敗する。カケルは、思案すれどなんにも浮かばない。ここは口からでまかせへのカッパ、


「蜂の巣大膳! この城は武田が囲みこのまま揉み潰す。素直に降伏すれば、それでよし! 逆らえばただじゃ捨ておかないぞ!! 」


「なにを申す嶋左近。お主がどのような口車にのせ城兵を籠絡したかは知らぬがワシは欺かれぬぞ、時期に、徳川、織田の援軍が来るはずじゃ、者共それまで持ちこたえろ! 」


 蜂の巣大膳の号令で城兵は戦意を取り戻した。


 万事休す、カケルは袋のネズミである。もはや、この状況を覆す手立ては思いつかない。


 "あきらめるなカケル殿!"


 カケルの心へ神の啓示か天の声が聞こえるような気がした。


 "カケル殿、ここは蜂の巣大膳を討ち取り、時間を稼ぎ、鳶加藤と山県殿を信じて時を待つのだ"


 なんだ? この声は??





 つづく














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