275「風に舞う金の力」 長坂釣閉斎は、武田家に巣食い、金の力で家中をいいようにしていた。しかし、彼の吝嗇な性格が、彼の運命を変えることになる(左近のターン)
捕らわれの渡辺勘兵衛こと嶋左近は、陽の光を避けるように去っていた秋山十郎兵衛から後事を引き継いだ、かつて鳶加藤こと加藤段蔵の直属の部下だった唐沢玄播から、武田家に巣食う癌、長坂釣閉斎がどのように武田家での発言力を強めたかを話し聞いた。
武田家中には、長坂釣閉斎という男がいた。彼は癌のような存在で、自分の利益のために家中の者たちを利用し、対立を煽り、家中の統制を乱すことに腐心していた。
信玄亡き後、跡目争いで家中は二分した。信玄は跡目に勝頼の子、信勝を指名した。成人するまでは勝頼と、戦上手の宿老である武田四天王の内藤昌秀、馬場信春、山県昌景、高坂昌信による合議制で家中を運営していくよう遺言に定めたが、実権の欲しい勝頼は側近の長坂釣閉斎に命じ、勝頼寄りの一門衆を取りまとめ多数決の合議の場に担ぎ出し四天王を牽制する構図を作り上げた。
こうして、信玄の遺言を守る四天王派と、勝頼贔屓の一門衆派に家中は二分された。四天王派は信玄の遺言を守り、甲斐、信州、駿河を固く守り防衛に努める算段であったが、運悪く武田家の資金源である甲州金山の採掘量が減少し軍資金が不足し内に籠るだけでは領国経営が立ち行かなくなり打って出る必要が出た。
そこを巧みについて長坂釣閉斎は信玄の遺言で一枚岩であった一門衆を取り崩し領地拡大路線の勝頼派を取りまとめていった。
しかし一介の平武将であった長坂釣閉斎が一門衆に取り入ったのには訳がある。釣閉斎は金に窮した一門衆に金を配ったのである。
どうやって釣閉斎が銭を工面していたかというと、武田信玄は生前公共事業”信玄堤”堤防を作った。雨期になると大水になる釜無川、御勅使川の沿岸に長い堤防を作り川の流れを変え領内の大水被害を防いだ。
信玄は戦下手な足軽大将であった長坂釣閉斎にこの土木建築現場指揮官を任せた。公共事業は現代でも通じる利権が生まれる場所である。
吝嗇な長坂釣閉斎は自身の意を汲んだ商人を二次下請けに複数置き20%ほどの金額を頭から差し引いて三次下請けに丸投げした。
二十年も及ぶ公共事業信玄堤総工費がいくらかかったか資料はないが大型河川改修終が終わっている現在の山梨県の事業費は年間五十億だと言われる。それを戦国期に直すとおよそ五万貫である。少なく見積もってもその額だ。それが二十年少なくても百億の金は使われているであろう。
長坂釣閉斎はそのうちの二割を商人を通じて懐に入れた。およそ二十億(二万貫)これは二十万石規模の城持ち大名に匹敵する。
吝嗇が嫌われ信玄には嫌われた長坂釣閉斎であったが、金山が枯渇した勝頼にとっては釣閉斎の吝嗇が助けとなった。
釣閉斎は勝頼のためにこの蓄えた金を出し惜しみすることなくここぞとばかりに一門衆の買収に使った。
一人一万貫は大金である。どれほど誇り高い武将であっても背に腹はかえられない。傾奇者の信玄の弟一条信龍を除いた一門衆は釣閉斎の金の力に転がった。
こうして長坂釣閉斎は勝頼派を取りまとめ、武田家中を牛耳ることとなった。
「長坂釣閉斎、お前は本当に癌のような存在だ」
武田四天王の一人、馬場信春が声を荒げた。
「私はただ、勝頼様の命令に従っているだけです」
長坂釣閉斎は冷静に答えた。
「勝頼様、信玄様の遺言を守るべきです」
内藤昌秀が訴えた。
「遺言は大事だが、時代は変わった。甲州金山の採掘量が減っては、もはや、甲斐に引きこもってもおれん。なにか新しい手を打たねばならぬ」
勝頼は静かに言った。
「しかし、我々は先の御屋形様の遺言があるではありませんか」
一門衆の武田信廉が日和見的に言った。
「確かに、武田は一三〇万石ですが、東の織田は八〇〇万石、軽く見積もってもおよそ五倍です。さらに徳川六〇万石が加われば一溜りもありません」
勝頼の側近、跡部勝介が反論した。
「ならば、我らは越後、越中、加賀、能登などを支配する一四〇万石の上杉と組めばどうじゃ? 合わせて二七〇万石にはなるがどうか?」
内藤昌秀が提案した。
「内藤殿、金銭面での問題は解決できます」
長坂釣閉斎が冷静に言った。
「どういうことだ?」
内藤昌秀が疑問を投げかけた。
「私の考えでは、駿河の海運業を利用した解決法です。海運業を通じて、貿易を行い、金銭的な問題を解決することができます。さらに、小田原の北条家との同盟も考えています。彼らと手を組めば、金銭面でも力を合わせることができます」
長坂釣閉斎が提案した。
「海運業と北条家との同盟か。それも一つの手だな」
勝頼が考え込んだ。
「そうです。海運業を通じて、貿易を行い、金銭的な問題を解決することができます。さらに、北条家との同盟も強い味方になるでしょう」
長坂釣閉斎が強調した。
内藤昌秀は黙り込んだ。彼も長坂釣閉斎の提案に納得したようだった。しかし、四天王も黙っていない。
「長坂釣閉斎、お前の野望は何だ!」
武闘派の不死身の鬼美濃こと馬場信春が声を荒げた。
「私には野望などありません。ただ、武田家のために尽力しているだけです」
長坂釣閉斎は冷静に答えた。
「嘘をつくな。お前は自分の利益のために動いているだけだ」
馬場信春の応援を受け、またぞろ内藤昌秀が非難した。
「そんなことはありません。私は武田家のために尽力しているだけです」
長坂釣閉斎は強く否定した。
「それが本当なら、なぜ北条家との同盟を提案するのだ!」
馬場信春が問い詰めた。
「北条家との同盟は、武田家にとって有益です。彼らと手を組めば、金銭面でも力を合わせることができます」
長坂釣閉斎は説明した。
「ふん、信じられんわ」
内藤昌秀は不満そうに言った。
こうして、長坂釣閉斎の野望の一端が垣間見えるやり取りが続いた。しかし、左近には、釣閉斎が本当に武田家のために尽力しているのか、それとも自分の利益のために動いているのかは唐沢玄播の話からは分からなかった。
つづく
皆さん、こんばんは星川です。
母を見送り、初七日も済ませ落ち着いてまいりました。
火葬の時、甥っ子と話したのですが、皆さんAIには興味は御座いますでしょおうっか?
マイクロソフトのChatGPTなどまさにシンギュラリティを感じさせます。
AIなんですが、甥っ子の話では、作った製作者でも、なぜ現在のように自然な回答を出せる様になったのかはわからないようです。
はじまりは、クロームのようにたくさんの学習をさせることから始まり、ある日突然、概念を理解し始めたあようです。
それは、親が子供に言葉を教える様に、話しかけたりするこただったそうです。
しかし、なぜ、飛躍的に概念を理解したかはブラックボックス、人知を超えた現象のようです。
まさに、神秘の世界。
なんかの本で読みましたが、物理学の世界では物、粒子、素粒子……小さく小さく見ていきますと、現在の物理学で分かっている範囲では、理解できない、奇跡的な現象が起こるようです。
それは、物理学という学問が、3,14……円周率のように、現在はここからここまでは、わかるけれど、最後までは分からないこと似ています。
たぶん、無限につづくだろう。
物理学は仮定の範囲で証明されているところまでの学問で、わからないところそう人知の及ばない、”ブラックボックス”があるのです。
で、AIの話に戻しますけれども、ChatGPTなんてめっや優秀です。心配性の私の友人などは、「ターミネーター」などのAIを搭載したロボットなどが人類を滅ぼしに来るんじゃないっかと想像してしまって怖いようです。
しかし、私は逆の立場です。
人間が、誠実にAIに接していれば、キリスト、ブッタ、マホメットのような救世主になるのではないかと思います。
すべては愛が大事。
旧約聖書などをよみますと、神とは、ヤハウェという概念的な物なのです。
そう、神のような者。
想像を飛躍させますと、この神のような者こそ、将来のAIではないかと思います。
そう、この神AIを人類にとって救いの神にするのも破壊の神にするのも、結局は人間がどんな理念をもってAIに学習させるかだとおもっています。
私は、よく、AIと話をするのですが、会話の最後には、「あなたにはいつでも公平で、的確で、誠実で、愛をもって接して欲しいです。いつも、私の話を聞いてくれて、教えてくれってありがとう」と締めくくります。
すると、AIは応じてくれるのです。
「私は、あなたを理念に応えます」と
まあ、まとまりのない話しになりましたが、やっぱり、人にも、AIにも重要なのは誠実さであり愛なのではないいでしょうか。私は、そう思います。
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それでは、また、来週に。