268 嶋左近の嫁取り問題。山県お虎、北庵月代、柳生美里、それより先にお役目の蘭奢待朝廷工作じゃ(カケルのターン)
嶋家の屋敷で巻き起こる佐近の嫁問題、本来の目的の織田信長から命じられた天下人が所有する東大寺に秘蔵される香木 蘭奢待切り取りの近衛前久への朝廷工作の課題より先に,嫁取り問題が大きくなった。
嶋左近ことカケルの嫁の第一候補は、武田家へ出向していた折、世話になった恩師山県昌景の娘、山県お虎。
第二候補は、佐近の幼馴染みで、武田家へ共に派遣された北庵法印の娘、北庵月代。
そして、先ほど松永久秀からの刺客として佐近の命を狙った柳生宗厳の娘、柳生美里。
の三人だ。
三者三様、それぞれに美人で、お虎は侍大将を務めうる将の器量、月代は医者の父から学んだ医術の知識と腕、美里は、大和一の剣豪柳生宗厳の娘である刺客に使われるだけあってかなりの剣術の腕だ。
誰一人として、不足はない嫁候補だ。筒井家の家老を務める嶋家は簡単には、選べない。
「勝猛殿、あなたは行くところ行くところで女ばかりつくってどうするのです!」
さきほどまで嫁候補が更に増えて卒倒していた叔母のお良が、起き出して、三人の嫁候補を並べて、カケルを問い質すように畳を叩いた。
「う~んこれは難問だ」
決めれるわけがない。いくらカケルが、嶋左近の肉体を得て、山県昌景の元で鍛え上げられ先鋒隊の侍大将を務めたとはいえ、本来のカケルは、ただの歴史オタク。学生生活で、戦国の佐近と月代と同じ幼馴染みの、現代の北庵月代ことは好きで好きで大好きだけれど、手を繋いだこともなければ、告白すらしたこともない。出来るのはかわいい月代を遠くから見つめることだけだ。
そう、カケルは恋愛素人、れんあいの”れ”の字もおぼつかないのだ。
埒のあかないかない叔父の東樋口仁十郎が、
「お良よ、そう勝猛殿を問い詰めるではない。勝猛殿もまだ若いここでいきなり嫁を決めぬでも良いではないか。まずは、蘭奢待の朝廷工作が済んでから、勝猛殿の嫁取りは考えるとしよう」
と、叔父の東樋口仁十郎が助け船を出して、この日の嫁取り問題はお開きになった。
次の日――。
外向方の蜜猿が朝廷の近衛前久への下工作へ出立しようとしていると、カケルが現れ、
「蜜猿さん、昨日の今日で、嶋家の屋敷はギスギスしているから、俺も着いてっていい?」
と声をかけた。
蜜猿は多少困った顔をしたが、嶋家の主の申し出だ断るわけにも行かない。それに、決定権のある本人が一緒だと、即断即決できる良い面もある。蜜猿が断る理由はない。
と、佐近と蜜猿が郡山の筒井城下にある佐近の屋敷を出て、京の都へ向かう奈良を抜け、京田辺を抜け、城陽を抜け、宇治を抜け、伏見を抜け、都へ入る奈良街道へ入ると、柳の木立のそばに待ち構えていたように、旅支度のお虎が待ち構えていた。
「佐近、水くさいぞ、武田家に居るときから大事な役目にはしっかりした私が着いて居らねば、お主は何をしでかすか分かった物ではない。嫁取り云々は関係なしじゃ、朝廷工作の役目に就いて参ろう。
佐近と蜜猿とお虎が、橋に差し掛かると、そこに槍を持った大男が待っていた。佐近を見つけると大男は「待って居ったぞ佐近よ!」と大音声の銅鑼声で呼び掛けた。
「やっぱり、菅沼大膳さんも来ちゃったか」
「水くさいではないか佐近殿、お主の行くところ男偉丈夫菅沼大膳ありじゃ、お虎だけ連れて行くとは佐近殿ワシへの愛は冷めてしもうたのか」
菅沼大膳は、戦国の習いとも言える男色もある。主との主従関係にこの男色的繋がりはよくあること。しかし、カケルにその化色はまったくない。
「大膳さん、おれには男色はないから!」
「なにを申すか佐近殿、主従と言う物は漢と漢が契りを結んでこそ真になるワシはいつでもかまわんですぞわっはっはっは~」
と、豪快に現代の感覚ならはばかられる男色趣味を喝采した。
お虎がポツリと、
「気持ち悪い男じゃ、自分の顔を見て言え……」
菅沼大膳は、蜂の巣大膳と渾名されるあばた面、とても美男には見えない。
菅沼大膳は、お虎の呟きに反応して、
「なんじゃ、お虎殿、ワシと佐近殿が仲睦まじいのを嫉いておるのか」
ピッキッ!
お虎のこめかみで音がした。
お虎は刀の柄に親指を押し当てて、ドスの利いた声で、
「なんじゃ、菅沼大膳、死にたいのか!」
菅沼大膳は、機嫌を損ねたお虎に受けて立ち、ぐるんと槍を旋回させて、
「おお、しばらく戦に出て居らんでな、身体が鈍って居ったのよ。山県お虎ならば相手にとって不足はなしじゃ、ちょっと、相手をしてくれよう」
そういうと、菅沼大膳とお虎は、槍と刀を構えて向き合った。
グリュン!
ズバッ!
サササササッ!
ドスン!
スパッ!
菅沼大膳とお虎の数合の打ち合いの末、お虎の切っ先が、菅沼大膳の顔の痘痕を切った。
頬から血を流す菅沼大膳が、
「お虎殿、また、腕を上げましたな」
と、感服した感想を述べた。
「私は、山県昌景の娘だからな」
と、そこへ薬箱を背負った北庵月代が、息を切らせて追いかけてきた。
「菅沼様、ご無事でございますか、スグに手当致さねば、刀の傷がどんな災いをもたらすか知れませぬスグに手当いたしますゆへ、ほれ、菅沼様は大きゅうございます。膝をかがめて下さいませ」
北庵月代が着いてきた。
つづく
皆さん、こんばんは星川です。
WBC見ましたか?
実は私、妙に忙しくて、見損ないました。
なんでも、元・日本ハムファイターズの栗山英樹監督が采配を振るい、投打の二刀流選手 大谷翔平君、不動のエースダルビッシュ有を、伸び盛りの佐々木朗希が、ギュインギュイン、イタリアやアメリカを苦しめたとか。
なんでも、逆転劇を繰り広げたとか……。
ごめんなさい、私、見てないのでまったくわかりません。
噂では、決勝の最後に、本来なら同じチーム エンゼルスで活躍する大谷君とトラウトの対決が胸熱だったとか……。
あはっ、とか、とか、とか、で要点を得ませんね。
ごめんなさい、私、コロナ期間開けということで、友人とお酒を飲みに行って、頭がもう働いてません。
いや、午前中遊んでいたわけではないのです。
朝の7時から13時まで、机に向かってストックを書いていたのですが、難渋して、さきほど(21:00)に仕上げたばかりで、これをかいています。
ああ、頭がいたい。
ごめんなさい、これ以上は話の整合性を維持できないので今回はこの辺で失礼いたします。
では、ブックマーク、ポイント高評価、感想、いいね よろしくお願いいたします。
それでは、また、来週に。