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261窮地! 佐近、奥山休賀斉、疾風、武田忍びに囲まれる。(佐近のターン)

 サササササ!

 岡崎街道の近くの林に逃げ込んだ佐近と奥山休賀斉、徳川忍び衆服部半蔵配下 疾風を取り囲むように影が迫ってくる。


 シュトン! 


 シュトン‼


 シュトトトン!


 佐近たちを目がけて三本菱刃の苦無が木に突き刺さっている。


 疾風は、苦無を引き抜いて、奥山休賀斉にみせた。


ものにございます」


「この三本菱刃は、まず間違いないだろう」


「奥山殿、三ツ者とは?」


 佐近は聞き返した。


 武田忍び衆三ツ者は、間見、見方、目付の三職に携わる者。


 ・間見は、うかがい見ること。

 ・見方は、考え方。

 ・目付は、監察すること。

 いわば、密偵のような者だ。


 主人の近くにあって耳となる同じ武田忍びの透波衆とは、役割がまったく違う。


 同じ武田忍び衆であっても、鳶加藤こと加藤段蔵を頭とする透波衆は、武田信玄及び、山県昌景・内藤昌秀・馬場信春・高坂昌信よりの戦の対局を決める情報を集める忍びなのに対し、三ツ者は武田勝頼、その側近の跡部勝資・長坂釣閑斉に近い。その役割は、敵の領内に潜伏して、破壊行動、いわば、敵の経済力、人心の不安を煽る汚れ仕事が主だ。


 透波衆が正攻法の忍びなら、三ツ者は破壊工作・人攫い・暗殺の汚れ仕事も請け負う。


 三ツ者の頭は、秋山十郎兵衛という。


 秋山十郎兵衛は、北信濃の諏訪氏の支配下にあり、武田信玄の諏訪氏討伐により滅んだが、信玄の側室に諏訪御料人すわごりょうにんが入り、その子、勝頼を産んだことによって、その軍団に配属された。いわば、三ツ者は武田勝頼直属の忍衆だ。


 秋山十郎兵衛という男は、勝頼とほぼ同年の三十歳そこそこの若い頭梁だ。旧主の武田信玄の目と耳となっていた透波衆には敵意こそあって、協力して武田家をもり立てようとする気持ちがない。あくまで、諏訪の血を引く諏訪太郎勝頼の私兵のような存在なのだ。


 シュトットトトトン!


 かなりの数に囲まれている。


「こないだは、織田の甲賀衆に狙われたが、この度は、武田の三ツ者に狙われるとは、渡辺勘兵衛殿は相当忍びとの相性が悪いと見えるな。カッカッカ~」


 と、死地にあっても奥山休賀斉は、余裕でのんきな言葉を投げかける。


「まったく、私は運が悪いようですな」


 と、渡辺勘兵衛こと嶋左近は他人事のように答える。


「敵の数は十三、離れたところから鉄砲が一挺いっちょう計十四名にございます」


「敵は、一人頭四人か、渡辺殿、疾風、それくらいの数ならなんとかなるか?」


 疾風は、難しい顔をして、


「忍び同士の戦いですと、私は余りお役に立てそうにありません。私は、鉄砲をなんとか致します。後の十三人は、奥山殿と渡辺殿にお任せいたします。お先に」


 と、疾風は、硝煙の匂いを追って去って行った。


「まったく、忍びはチャッカリしておるわ、渡辺殿、ワシらは一人頭六人が相手じゃ、なんとかなるか?」


 佐近は、腰の刀の鯉口を切って、


「私は、やっとうよりも槍が専門でしてね自信がありませぬ。私は、忍びの頭、秋山十郎兵衛を狙いますので、奥山休賀斉殿には、後の十二人を相手をよろしくお願いします」


 と、佐近は林影に走った。


「う~む、厄介な仕事をおしつけられたわい。よし!」


 奥山休賀斉は、木立から飛び出した。


 雨あられのような苦無が打ち込まれる。


 カツン!


 カツン!


 カツン!


 奥山休賀斉は、飛んでくる苦無をもろともしないで、刀の切っ先ではじき返しながら苦無の主に向かって駆けだした。


「まずは、一つ!」


 奥山休賀斉は、木陰の紫の忍び装束の忍びを斬った。


 すると、その仲間の二人が、奥山休賀斉の両脇から襲ってきた。


 奥山休賀斉は、ムチのように刀をしなやかに奮って、襲ってきた二人を斬り倒した。


「これで、三つ! 先は長いのう」



 ズドーン!


 鉄砲の号砲が火を噴いた。


 疾風は早駆けで、木の上で獲物を狙う鉄砲忍びを見つけた。


 ザバーン!


 疾風は、常人離れした跳躍力で木の枝に飛び乗って、鉄砲忍びに組み付いた。


 ぐにゅ!


 疾風が、鉄砲忍びの襟首を掴むと、なんとも柔らかい膨らみがあった。


「お前、女か」


 そう問われた鉄砲忍びは、


「女で何が悪い、これでも私は中忍だ。下忍のお主のような者には馬鹿にされたくはないわ!」


 と、啖呵を切った。


 女忍びは、疾風の手を振りほどいて、鉄砲を捨て去り、さっと、次の枝へと飛び移った。


「さらばだ下忍!」


 と、疾風に捨てセリフを吐いて去って行った。



 シュトトトン!


 シュトトトン!


 佐近は、苦無を躱しながらその囲みの先へ走った。


 そこには、苦無の飛び来る囲みの先に、三ツ者の頭がいると踏んだからだ。


「やはりいた!」


 目の前の木陰に、紫の忍び装束に身を包んでは居るが、素顔を晒した男を見つけた。


「お主が頭か」


 佐近は訊ねた。


「そうだ、俺が頭の秋山十郎兵衛だ」


 秋山十郎兵衛は、若くはあるが、総髪は真っ白で、目の縁を黒く隈取って、なんとも異様な男だ。


「私は渡辺勘兵衛、お主には恨みも憎しみもないが、襲ってきたからには成敗せねばなるまい」


「ふっ、知ってるよ。渡辺勘兵衛。いや、武田の赤備え先鋒隊”風”の将、本物の嶋左近とでも呼んだ方がよかったかな」









皆さん、こんばんは星川です。


本日は、日中、小説家になろう様のシステムメンテナンスのため、ストック最新話を執筆出来ませんでしたので、併せて認めております後書きも、今週はおやすみさせていただきます。



では、ブックマーク、ポイント高評価、感想、いいね よろしくお願いいたします。



それでは、また、来週に。

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