248 嶋家の面々(一)、家中の皆さんが総出であらわれて、蘭奢待の金の工面の相談が出来ないの巻き(カケルのターン)
「お虎さ~ん、大膳さ~ん、困ったことになったよ~!」
と、嶋左近と魂の入れ替わった現代の高校生時生カケルが、嶋左近清興の屋敷に騎馬に乗り舞い戻ってきた。
庭の畑でのんびりと片肌脱いで菅沼大膳が、鍬を振るっている。
「おお、佐近殿帰ったか、大和は良いのう。山深い奥三河とは違って、日当たりが良いゆへ、みずみずしいキュウリがよく育って居るぞ。お主も食べんか」
と、キュウリの泥を手で払って齧りついた。
井戸端からお虎が旅の間は見ることがなかった娘支度の赤い小袖に手拭いして、小脇のザルに水にさらした大根、ナス、人参、きゅうりを持って庭にやってくる。
「困った事になったって、佐近どうしたの」
お虎ものんびりしたものだ。武田領内の信濃から織田領内岐阜、近江と気の抜けない旅をした二人は、ここ大和の筒井領内に与えられた嶋左近の屋敷で安住の地で一息ついたかのようだ。
確かに、山県昌景に同行した旅は危険の連続であった。岐阜では、河尻秀隆・秀長親子の検問、前田全以の変態、竹中半兵衛の教育、甲賀衆鵜飼孫六・孫七の兄弟の度重なる襲撃、近江羽柴秀吉家でのお家騒動と色々と困難の連続であった。
度重なる困難をくぐり抜け、師である山県昌景の瀬田に武田の御旗を立てる目標も達成し、晴れて昌景の手元を巣立ち、佐近、菅沼大膳、山県お虎の三人は、本物の嶋左近の主、筒井順慶の元へ帰参を果たした。
これでようやく嶋左近が戦国武将として独り立ちしたのだ。
「まったく、一大事だというのにのんびりしてるね二人とも」
額の汗を泥のついた腕で払った菅沼大膳が応えた。
「どうせ、お主がまた筒井の殿様からでも何か問題事を安請け合いしてきたのであろう」
お虎が、小脇に抱えた野菜を縁側において、
「佐近は、うつけですから、菅沼殿の申される通りでございましょう」
と、カケルに濡れ手拭いでかいがいしく額の汗を拭いてやった。
「なんなん、二人とも、余裕のよっちゃんやん! あれちゃうのん? 俺が問題を持ち込んだら、馬鹿者! とか、目を剥いて怒鳴ったりするもんちゃうのん」
すると、お虎が、カケルの耳に口を寄せ口元を隠して小声で、
「もちろん怒っておるぞ佐近。しかしな、ここはお主の家で今までの旅とは勝手が違うのだ」
「どういうこと?」
「今にわかる。噂をすればほら……」
縁側を伝って、五十歳を少し超えたくらいの鬢のあたりから白髪が交じった目を釣り上げた女丈夫が薙刀に鉢巻きをしてやってきた。
カケルを見つけるなり、ポロリと薙刀を放り投げて、幽霊でも見るように佐近に近づいた。
「勝猛、帰ったのですね」
と、抱きついた。
カケルは、キョトンとして、
「勝猛? 誰のこと、このおばさん誰??」
背丈の違うカケルを抱きつきながら見上げて、今にも涙をこぼしそうに、
「勝猛、この母同然のこの叔母の顔を忘れたのではないでしょうな!」
「叔母さん?」
カケルは首を捻る。
そこをすかさずお虎が小声で耳打ちする。
「佐近の殿様の母同然の叔母上、お良様じゃ。数年ぶりの義親子の再会じゃ心ゆくまで再会を祝うのじゃ」
カケルは、ハタと機転を利かせて、お良を抱きしめて、
「おお、お良の叔母上、ご無沙汰しております。息災であられましたか?」
「勝猛が、留守の間、この嶋家を古くから支えてくれてる者たちも皆帰りを首を長くして待って居りました。ほれ、皆の者、勝猛が戻りました。庭へ顔を出すのです。
お良の呼び掛けに、嶋家の屋敷から総勢二十名の男女が顔を出した。
その中でも、カケルは中心の男三人に目が行った。
お良と同年代の年輩の一番良肩衣袴を着た眉の薄い細身の青い顔した男が口火を切ってカケルに挨拶をした。
「勝猛様、おかえりなさいませ。甲斐ではあの赤備えの山県昌景騎下にあってあの一致団結三河武士の徳川を相手に見事な武功をお立てになられたのでございますな。この家宰の三代澤忠右衛門は嬉しゅうございますぞ」
と、心からの涙があふれて手拭いで抑えた。
「うん、三代澤忠右衛門さんありがとう」
次に、四十がらみの中肉中背だが、よく身体を鍛え上げた凜々しい眉をした男が進み出た。
「勝猛殿、無事のご帰還ごくろうさまにござる。勝猛様の居られぬ間の嶋家の兵権を託されたこの都築義平、なんとか無事に嶋の家を守り抜きましたぞ」
「うん、都築義平さんありがとう」
次に、頭を丸めた僧体の義平に顔立ちは似ているのだが、腕が長いハの字下がり眉の男が頭を下げた。
「義平の弟で朝護孫子寺蜜虎元大僧正の元で学びました蜜猿にございます。現在は、嶋家の交渉ごとを引き受けております。新参者ですが以後お見知りおきを」
「うん、蜜猿さんよろしく」
この三人が、カケルの居ない間の嶋家をお良を中心にまとめたようだ。
と、カケルが三人を労うと、少し遅れて、六十がらみの人の良さそうな貫禄のある老年武士が、叔母のお良に並んで膝を折り頭を下げた。
「勝猛殿、よくお帰り下された。お良とこの叔父の東樋口仁十郎、勝猛殿の留守をしっかり守り通しましたぞ。さらに、武田での活躍この仁十郎、遠く三河のことながら心だけは勝猛殿の傍らへ馳せ参じて居りました。何より嬉しゅうござる」
カケルは、仁十郎の側へ行き手を取って、
「仁十郎叔父さんありがとう。恩に着ます。それより、突然ですが皆さんに急ぎの相談が……」
つづく
皆さん、こんばんは星川です。
これ土曜日に書いてるんです(17:00)、このあと中学校の同窓会があるんです。
そう頻繁にはないから、なにを着ていったらよいかわかりません。
とりあえず場所は地元のホテルですから、セミフォーマル。ジャケットのパンツ、一応、不慣れなネクタイもつけて参ります。
しかーし、長財布がジャケットの胸あたりでかさばる。電子マネーだけって訳にはいきませんよね。
とりあえず、財布はなしにして、現金を封筒に突っ込んで持っていきます。
(財布持ってない人になるなあ( ・∇・)
まさか、小さい財布が必要になるとは思わなかった。
皆さんは、財布のサイズは長財布ですか?
あっ、ハンケチも用意するのわすれた( ・∇・)
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それでは、また、来週に。