242佐近、筒井家帰還(カケルのターン)
石山本願寺討伐の織田家の行軍を見送る嶋左近こと現代の高校生、時生カケル、山県お虎、菅沼大膳の三人は、大和国筒井家家老、森好之と出くわした。
カケル達はこれから筒井家へ厄介になる予定だが、好之からの主筒井順慶のいきなりの悩み相談だ。
順慶の悩みは、織田家の正月の席で、信長の披露した、浅井長政・久政、朝倉義景の髑髏を漆と金箔で貼り固め杯にして、各大名の顔色を窺い見るという悪趣味な物であった。
筒井順慶は、信長という人間に恐怖を覚え、明日は我が身と恐れおののいてしまったのだ。
「あれ~、ここの城は、歩いてるのがお坊さんばっかりや」
と、カケルがお虎に声をかけた。
「確かに、さっきから、すれ違う人間は、野菜を背負っている者も、薪を背負っている者も、町で露天を開いている者も頭を丸めて居るな」
菅沼大膳が、難しい顔して、
「きな臭いな、ここは……」
三者三様の感想を聞いた案内役の森好之は、大きく頭を振って、
「いやいや、ここは奈良の興福寺衆徒の集まる城であってな、かなり線香臭くはあるが、ほとんどの者は教義に沿って生きる慎ましい人間たちだ」
カケルが、
「でも宗教勢力って鉄砲を駆使して戦うって聞いたけど怖いんでしょう?」
「なにを言って居るのだ佐近よ。お主も知って居るだろうが、筒井は僧兵がほとんど、皆、槍の達人宝蔵院胤栄殿の手ほどきを受け、皆、殺さずの槍を握って、本願寺のように鉄砲とは無縁じゃ」
「へ~、筒井は、同じ宗教勢力でも、殺さずの槍で鉄砲を使わないんだね、なんだか安心した」
筒井の僧兵の槍は、普段は手槍の穂先を外して、頭に布をかぶせて団子を作り怪我人が出ないように稽古している。
いざ、戦となれば、団子を外して、穂先に鋭利な十文字をつけて、掻ッ切るのだが、好之は都合のよいところだけ、カケルに伝えて、秘密にしておいた。
筒井の城は、興福寺の衆徒の居城である。夕刻。森好之の案内で三人は大和国筒井城へ入った。
筒井城は、集団集落を囲む土塁の外堀と、シロ畠と呼ばれる一段高い畠地の城郭で構成されている。
シロ畠の東側一帯には、北市場、南側には須浜池の南側に南市場が目に入る。
日本有数の宗教勢力の興福寺を背景に筒井は成り立っている。
筒井は幸福寺門徒を中心に、荘園を支配し、門前町などで経済を回している。
「ワシは嫌じゃ、原田直政には会いたくない。あやつは信長の使い魔じゃ、あんなやつに関われば我等も地獄行きじゃ」
と、広間から逃げだすように若い僧体の青年が飛び出してカケルたちにすれ違った。
「しかし殿、比叡山の焼き討ちは叡山がかたくなに、織田家と対立した浅井長政を匿ったが原因。信長に恭順の姿勢を示す我等が同じひどい目に遭うことはございません」
と、順慶の叔父、福住順弘が後を追いかけてなだめる。
「殿! 森好之ただいま戻りました」
若い僧体の男とすれ違いざまに森好之が頭を下げた。
若い僧体の男は、今年、二十五歳になる筒井家当主筒井順慶である。
ピタリ!
行き過ぎようとした順慶の足が止まった。体の向きは出口を向いたまま、後ずさりしてきて、カケルに並びかけ、つま先から頭の先までじっくり見定めた。
「お主、嶋左近ではないか、武田、羽柴秀吉の元から戻ったのか?」
「山県のおじさんのと別れたら行く当ても無いんでね、おじさんが行けっていうからお世話になりに来ました」
それを聞いた順慶は、破顔して、カケルの手を握ってブンブン振り回し、肩を力強く叩いて、抱きしめた。
「佐近、お前が戻ったら、もう、松永久秀も織田信長も怖くない。勇気百人力だ」
筒井順慶が佐近にここまで信頼を寄せるのには理由がある。年若い領主の順慶は、目と鼻と崎、同じ大和国を二分する勢力の松永久秀に悩まされ続けている。
久秀は、天下人の権勢を背景にいつも順慶を抑圧する。はじめは、機内と四国東部を抑えて、管領細川家の被官として、足利将軍家にまで影響力を強めた三好家家老として、先頃は、三好家に追い出された足利将軍家を補佐して京都へ上洛した織田信長の権勢を背景に抑圧した。
虎の威を借る狐松永久秀は、常に、筒井を押さえ込んでいる。
鉄砲を使う松永久秀に防戦一方で、一端は、筒井城すら奪われた順慶であったが、武田へ向かう前の嶋左近の見事な采配により、筒井を奪還し跳ね返した。
そこからの佐近の手腕は見事な者で、武田信玄が重い腰を上げ上洛の徒に着いたと聞くや、信長を裏切って、反信長連合に与した松永久秀と入れ違いに、筒井を織田方に組み入初めて筒井の家が松永久秀より有利な立場になった。
当時は、微妙な判断であったが、現在の天下の趨勢を見ると、当時の佐近の見識と判断は見事なものであった。
見事な綱渡りで筒井の命脈を保った佐近は、順慶の家臣でありながらも、恩人のような物である。
さらに、出向先で天下に名高い武田の赤備え、山県昌景隊の先方として、三方原の戦いで、強兵と名高い三河武士を擁する徳川家康を散々に撃退した。そんな、偉丈夫な侍大将が帰ってきたのだ。
家中の中心の佐近の抜けている間は、佐近を含めた三家老、外交を森好之、軍事を松倉右近が担い、内政を順慶の一門衆が担いようやく佐近の抜けている屋台骨を支えていた。
これから天下取りのために織田信長の転戦ががつづく、まずは、本願寺を組み従える戦いを目前に筒井の柱石嶋左近が帰還したのが順慶はなにより嬉しかった。
♪新時代はこの未来だ 世界中ぜんぶ変えてしまえば~~~~♪
こんばんは星川です。
皆さん、「ワンピース フィルム レッド」ご覧になりましたか?
星川は、遅ればせながら見てきました。衝撃です!
お話は簡単で、夢の世界を作ろうとした歌姫の話。
繋がりを求めた歌姫が、暴走し、やがて世界を巻き込んだ親子喧嘩をする――。
「うっせ~わ!」で人気を博したAdoさんが、歌姫ウタの歌唱担当しています。
もうね、歌の力が圧倒的!
それもそのはず、作品ないで使われる作詞作曲陣が、現在、最高の面々。
・中田ヤスタカさん。
・FAKE TYPE
・Vaundy
・大森元貴(Mrs.GREEN APPLE)
・秦基博
・折坂悠太
現在、集められるだけの音楽の才能を集結してるんです。
ホンマに、楽曲聞けば感動よ!
星川さん、顔面をバチコーンッ! てどつかれたような衝撃でした。これが新時代か!
もうね、自分の頭の中が古くなってるのを痛感しました。
自分のもってる感覚はもう古い。頭のファイルを新規更新せなあかん。まったく新しくせなあかんと。理屈言ってたらあかんなと。
まだ、劇場で公開してます。是非一度、映画館でご覧ください。
では、ブックマーク、ポイント高評価、感想、いいね よろしくお願いいたします。
それでは、また、来週に。