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241ミッション1の2 遊郭の切り店で銭がない左近は、何を払うのか(左近のターン)

 夜になり熱田神宮の門前町熱田湊は彩りを増している。


 明るい間は、熱田神宮の参拝者をもてなす門前町。全国から御利益にすがって男達が集まると言うことは、色町も盛んになると言うことだ。


 ここ熱田湊の客は、尾張周辺の侍、領民はもとより、熱田神宮の参拝者、漁師の類いまで、金を掴むとここへやってくる。


 前世で若い頃より近隣でも武勇で評判の嶋左近は、金を払って女遊びというものをしたことがない。ほとんどの場合、戦で活躍さえすれば、家中の女達が色めきだつ。活躍が重なると、家中の上役が目をつけて、家名はあるが跡継ぎのいない家の娘婿にどうかと勧められる。


「そこの男前のお兄さんよっていきなよ?」


 金蔵の足取りを追って切り店の表を横切った左近とおたふくの仮面を被った後鬼に女郎が声をかけてきた。


「すまぬがちょっと尋ねたいのだが、美濃国から入ってきた女達の居る店は知らぬか?」


「ああ、妓楼菊水泉ね。あそこの女将は美濃の若い田舎者ばかり集めて安い金で女を働かせる。まったく、菊水泉のせいで、商売あがったりっだよ」


「すまぬが、その菊水泉はどこに?」


 切り店の女郎はヒョイッと手を出した。


 左近は思わず、女郎の伸ばした手に手を重ね握手して白い歯を見せて笑った。


 女郎は呆れて、


「確かにあんたはイイ男だけど、どこの女郎が手を出して握手を求めるのさ。普通、女郎が手を出せば、お金を乗せるもんだろうさ」


 女郎は再び左近に手を出した。


「うむ、わかった」


 左近は、右の袖に金目の物はないかと探して見た。探したところで袖から銭が出てくるはずはなく、袖から出てきたのは昨日、律と一緒に稲葉一鉄の前に召し出された時に、膳の最後に上がった饅頭まんじゅうだ。


 左近は、ヒョイと、袖から、饅頭を取り出して、女郎の手のひらに乗せ。


「この饅頭はな、あんを酒元種で包んだ物でな、舌にのせるとほんのり酒の匂いがする。味はあっさりとして美味いぞ」


 左近は、目をまん丸に子供のような目をして、饅頭を食べてみよと進めた。


 小銭がもらえる物と踏んでいた女郎は、肩透かしを食らわせられたが、左近の屈託のない笑顔を見せられると仕方なく、饅頭を口にした。


「あら、この饅頭とっても美味しいじゃない」


「であろう、なんでも美濃国大垣で人気の饅頭だそうだ。稲葉一鉄殿が、なんでもワシに食わせようと曽根に取り寄せたそうだ」


「美濃大垣、曽根ね・・・・・・、あっ、そうだ! 内にも菊水泉から移ってきた娘が居たわ、あまり自分のことをしゃべる娘じゃないけど、ちょっと、会ってみたらどうかしら?」


 と、女郎はまた手をだした。


 左近は、今度は左の袖をゴソゴソと、何かが手に当たった。左近は、それを取り出して、女郎の手に乗せた。手紙の書き付けだ。名は律とある。


 女郎は呆れた顔をして、書き付けを見て、


「律、若い女の名だね」


 女郎は、書き付けを開いて、


「なになに、”私の愛しい旦那様へ。旦那様がお仕事でどこへお行きになってもこの律はここ稲葉の曽根で待っております。ただ、どこにいってもこの律の事を気にかけてくださいましね。なにか、困った事があれば稲葉の律宛てに人間を遣わしてくだされば父には内緒で、この律が協力いたします。それが、侍の妻の心がけ。どうか、旦那様、早くお戻りになりまた律をかわいがって下さりませ”・・・・・・あんたの女ののろけじゃないか、なんで、女郎のあたしが金の代わりにのろけ話を貰わなきゃならないのさ。まったく、呆れるよ」


 女郎は、ビッシと書き付けを左近に突き返した。


「さっさ、金がないならさっさと帰っておくれ、まったくしけた客だよ」


「おっ、そこに居るのは渡辺勘兵衛様では御座いませんか?」


 と、後ろから若い男の声がした。


 左近は、振り返って、若い男の顔を見たが見覚えがない。しかし、どこかであったことのあるような面影がある。


 若い男は、若い侍で歳の頃は、元服したての十五、六といったところか。


「お主、ワシの名前を知っているようだが、どこぞでお世話になり申したかな?」


「いや、私が渡辺勘兵衛様に会うのはこれが初めてにございます」


「やはりのう。では、なぜ、お主は私を知って居るのだ?」


「ああ、申し遅れました。私は、伊勢長島一向一揆の戦いで、見事に大殿を守って殿軍しんがり引き受けて戦死した林通政はやしみちまさ嫡男ちゃくなん新次郎しんじろうにございます」


 左近は、新次郎の手を取って、


「おお、林通政殿の嫡男の新次郎殿か、先の戦では、お父上は武門の意地を見せお見事な働きであった」


「はい、その節は、父とともに、渡辺勘兵衛様のご活躍があって、父は見事殿軍の務めを果たせたと帰還した父の側近から聞き及んでおります。その節は渡辺殿誠にかたじけのう御座いました。父に成り代わりましてこの新次郎が御礼申し上げます。父の活躍もあり、林通政家は、私が元服して引き継ぎ増した」


「うむ、それはよかった」


「私は父のように吏僚りりょうは性に合いません。私は、渡辺様のように戦働き、槍働きで活躍しとうございます。どうですこの機会に、私と一緒に酒でも召して、渡辺様の戦物語を聞かせてもらえませぬか?」


「おお、それは助かる。ワシは、今、銭を持たずに出てきたものだから、困って居った。今すぐ行きたいところがある。新次郎殿、戦物語は聞かせるゆへ、そこへ案内していただいてもよう御座ろうか?」


「どちらの店にお連れすればいいのでしょうか?」


「妓楼菊水泉にござる」


「菊水泉ですか、ちょうど私もあそこがなじみの店でしてね、何でも座主の庄五郎から新しい娘が入ったと連絡がありましてね覗きに行こうと思っておりましたところです」



 つづく





皆さん、こんばんは星川です。

連載はまだ先ではございますが、現在、とうとうやってくるぞ長篠の戦い編の大筋を元に登場人物を一覧をエクセルで作っております。

武田家、織田・徳川連合軍、織田徳別働隊、山県昌景隊、北条家などが絡んでくる予定でございます。ま、まだ小箱書いてないから省略するかもしんないんですけどね。


で、その人物一覧で現実の役者さんをイメージキャストで配役。今回は、腰を据えてしっかり書こうとおもってまんねん。思ってはいるけど、出来るとは限らない。精一杯頑張るけどさ。


で、で、で、自分で知らなかったんだけど、拙作の嶋左近と山県昌景さん、お虎さん、菅沼大膳さんの配役を今回はご紹介。


・嶋左近  鈴木亮平

・山県昌景 小日向文世

・山県お虎 藤田怜

・菅沼大膳 辻陽太


佐近の鈴木亮平さん、山県のおじさん小日向文世さんは皆さんご存じですよね。

今回、もしかして知らないのは、お虎山の藤田怜さん。

藤田怜さんってのは、「S・A・G・A佐賀!」のはなわさんプロデュースの元・男装ユニット風男塾で活躍された現在はタレントさん。昔、みんなを応援する応援歌をたくさん歌ってる時期の風男塾好きで聞いてたんだけどその流れの時期の最後のメンバー。(風男塾は現在も活躍中)

藤田怜は美人さんなんだけど、口が大きく特徴的でおもろ! って思ってイメージ配役しました。


・辻陽太さんは、新日本プロレスのヒールレスラー。デカくてワイルド、まさに

蜂の巣大膳にぴったりだと。


このイメージキャスト以外にも、登場人物にはすべてイメージキャストがいますから、また、機会があれば紹介します。


本日はここまで


では、ブックマーク、ポイント高評価、感想、いいね よろしくお願いいたします。


それでは、また、来週に。

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