230五連星!(カケルのターン)
憧鑑は、宮田光次、神子田正治、尾藤知宣、戸田勝隆を、対する、カケルは、武田家以来の友人、山県お虎、菅沼大膳、それに、蒲生賦秀、横山喜内、赤座隼人を味方につけた。
憧鑑派の目的は、羽柴家古参の蜂須賀正勝、竹中半兵衛らの信用を失墜させ、代わりに、息のかかった羽柴四天王を押し上げること、そうしておいて、羽柴秀吉を傀儡として、実権を握ることにある。
対して、カケルの目的は、簡単だ、一宿一飯の恩義、あらぬ罪で憧鑑に捕らわれた寧々を救出することにある
。
寧々を取り戻し、怪僧憧鑑さえ取り除けば、信仰と金の力を背景にする憧鑑派は瓦解するだろう。
寧々の部屋で、額を付き合わせるカケルたちはない知恵を絞っている。
「左近っち、どうやって、憧鑑を取り除く? やっぱりこれか?」
刀に手をかけた蒲生賦秀の家来の武闘派の横山喜内が微笑む。
「いや~、それはまずいんじゃない」
カケルが応える。
寧々を心配するお虎が、
「あんなに夫一筋の寧々様をあらぬ理由で、囚われの身にする憧鑑は許せんできうることなら私も成敗してやりたい。
すると、菅沼大膳が珍しく、穏健に、
「しかしだ、あの憧鑑は、羽柴家の跡継ぎを生んだミナミ殿を擁するのだ、どんな理由をもって斬るというのだ」
蒲生賦秀の家臣の横山喜内が、
「そんなものは簡単だ。斬ってから考えればいい」
なおも、菅沼大膳が穏健に、
「斬ってから考えるっって、そんなことをすれば羽柴の家で内部対立が生まれ、武田との戦どころではなくなるのではないか?」
「それでもいい。羽柴秀吉殿がいなくても、俺らの総長タッケーがいる。戦は俺たちにまかせろ!」
(これは困った)
カケルは、憧鑑派二対抗するために、蒲生賦秀を引き入れたが、この大将と、その家臣達は血気盛んでかなり血の気が多い。このままだと、憧鑑を斬ってしまって、後の処理はなるようになると放り投げてしまいかねない。
秀吉の奥方の寧々と、ミナミ殿の主導権争いが、羽柴家を二分する派閥争いになってしまっている。なんとか知恵を絞って、憧鑑のみを懲らしめるよい策はないものか、憧鑑こそが、羽柴家の癌だ。
「よし、わかった。俺に任せて」
それまで黙って聞いていた蒲生賦秀が口を開いた。
「賦秀さん、どうすんのさ?」
カケルが尋ねた。
「簡単さ、(すっと、腰の刀をつかんで)こいつで懲らしめる」
(横山喜内や赤座隼人と同じ結論である)
「暴力はだめだよ」
すると、蒲生賦秀は、刀の鞘ごと、腰から引き抜いて、
「刀の鞘で叩きのめす!」
と、いたずらっ子が屈託のない笑顔で笑った。
「ちょっと、頭を貸せ、計画はこうだ・・・・・・」
憧鑑は、羽柴四天王を使い、秀吉の居ない家中の実権をますます固めてゆく、次の秀吉帰還の暁には、その側近として、戦にも従軍する勢いだ。
憧鑑は、いつものように長浜市中を、白装束の一党を従え、大店を巡っては金をせしめている。これまでのように憧鑑の行動に目を光らせていた寧々はいない。もはや長浜は、憧鑑の思い通りだ。
「怪僧憧鑑ちょっと待て!」
かけ声とともに、旅の琵琶法師による笛と太鼓と琵琶の軽快な音楽が始まった。
サササッと、二本差しの五色の五人組が現れた。
赤い頭巾を被ったリーダーが、
「おうおうおう、お前が長浜市中を騒がせてる怪僧憧鑑だな、俺は、世直し戦隊五連星だ」
音楽はつづき、
近くを流れる川から、青頭巾が飛び出して、
「河童連星!」
まるで地面から這い上がったように、土手を駆け上がってきた黄色頭巾。
「土竜連星!
林の中から風のように、緑頭巾走ってきた。
「燕連星!」
カチン、カチン、女白拍子の姿形だが、一際大柄な六尺を優にこえる大柄な白頭巾。
そして、最後に、赤頭巾の男が、太陽に向かって拳を突き上げて、
「日輪連星!」
五連星が集まって、それぞれの化印の象徴的なポーズを決めて、
「俺たち、五人あわせて五連星!」
今は戦国である。現代の日曜日のように戦隊ヒーローの番組はない。この登場は、蒲生賦秀の発案で、お虎を除いた五人で、市中を騒がせる憧鑑を袋だたきにしてやろうという計画に、現代の高校生だったカケルが面白がって色をつけたのだ。
(それに、これなら多少罪悪感も和らぐ)
「お前達は、ワシが羽柴秀吉様の御嫡男石松丸君をお産みになたミナミ殿の従兄妹の憧鑑だと知っての狼藉か!」
すると、赤頭巾が、
「知ってるよ。知ってるからここに正義の使者がやってきたのさ」
「なんじゃと、正義の使者だと!」
「そうだ、怪僧憧鑑! この長浜市中やお前に苦しめられてる人々の悲鳴が俺たちを呼んだんだ」
「ええい、何を訳のわからぬ事をゴチャゴチャと、皆の者、こいつらを懲らしめろ!」
憧鑑のかけ声で、五十人にも及ぶ白装束の一団が五連星を取り囲んだ。
「あ~あ、やっぱりこうなっちゃった」
赤頭巾が、つぶやいた。
大柄の黄色頭巾が、小声で
「蒲生賦秀さん、絶対に懲らしめるだけで、一人も殺しちゃダメですからね。横山さんも、赤座さんも、お願いしますよ」
すると、女白拍子役の大男が、
「左近よワシは、乙女の役だから控えめに戦うぞよいな☆」
と、白拍子の菅沼大膳ふくめ五連星は、憧鑑たち白装束の一団に立ち向かい駆けだした。
皆さん、こんばんは星川です。
いや~、一週間早いですね。暦はもう七月、もう、下半期ですよ!
「ひゃ~、何にもやってない。どうしよどうしよ。あたふたあたふた……」
と、どうしようもない作者は置いといて、本題へ。
先月、アルファポリス様で参加していた「歴史・時代小説大賞」が締め切りました。
拙作「池田戦記ー池田恒興・青年編ー信長が最も愛した漢」を完結させました。
およそ計算通りの一冊分12万字ぐらいです。
ここで、感想を聞くのもなんですが、いかがでしたか?
若いときには、池田恒興なる人物には一切魅力を感じませんでしたが、おっさんになると、恒興という人間が見えてくるんですよね。
若い間は、戦の功績で活躍する武将に目が行きがち。でも、侍の働きはそこだけでは無い。裏方に回って活躍する吏僚もいれば、最前線の穴を埋める、丹羽長秀のような遊軍もいる。
では、恒興はどうか、彼は、きっと天才織田信長という人物の心のよりどころだったように思うのです。
池田恒興=人柄の人
だから、信長の後継者の織田信忠の傅役に盾と矛して河尻秀隆と共につけられていますしね。
構想的には「池田戦記」は恒興を振り出しに、輝政・利隆・光政までつづく池田家四大の家族の話です。
紙の本で、最後まで描かして欲しいな。
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それでは、また、来週に。