222蒲生賦秀リベンジャーズ(カケルのターン)
「横ちん、赤座っち~、日野に帰る前に、ちょっと、京の都に上って、甘い桜餅でも食べにいこうか」
信長から娘の冬姫の婿に迎えられた期待の麒麟児、蒲生賦秀は今年十八歳になる。
すでに、初陣を済ませた賦秀は、小柄な体格にしては向こうっ気が強く、いざ戦となれば、家臣を置いて我先に敵に一番槍を付ける。
同じ年齢の家臣、横山喜内、赤座隼人は、この向こうっ気の強い若殿を気に入っている。
白馬にまたがる賦秀は、戦となれば先頭で槍を振るう荒武者であるのだが、平時の賦秀は、気の抜けた天真爛漫な漢だ。
「タッケー、あのなあ、お前は蒲生家の若殿なんだから、もっと威厳をもって俺たちに接しないと下の者に示しがつかないだろうよ」
頭の側面を剃り、龍の入れ墨をした大柄の横山喜内が賦秀をたしなめる。
「横ちんにまた怒られちったよ、赤座っちはどうおもう?」
「俺は、どっちでもいい。俺は、ただタッケーの背中を守るのみだ」
鋭い虎の目をした長髪の赤座隼人は、横山喜内の心配を気に掛ける素振りもない。
「横ちん、赤座っち、俺にはお前たちのようなダチが背中を守ってくれているから安心だ」
と、賦秀は仲間への信頼を打ち明けると、目指す先の木陰に横山喜内よりガタイの大きい大男二人を見つけた。
「あれ、横ちんよりデカくないか? しかも二人もいる」
賦秀が木陰に見つけたのは、戦国武将島左近と魂の入れ替わった現代の高校生、時生カケルと、武田信玄と徳川家康の三方ヶ原の戦いの折にカケルの仲間になった菅沼大膳だ。
「タッケー、ちょっと待ってろ」
向こうっ気の強い賦秀をおいて、馬上の横山喜内と赤座隼人が、駒をカケルたちに近づけた。
馬を下りた横山喜内が、カケルと菅沼大膳を睨みつけながら近づいてきた。
「おい、おめぇ~ら、織田家じゃ見かけねぇ野郎だな。どこの家の者だ」
三方ヶ原の戦いの頃ならば、イカツイ横山喜内のような輩に因縁をつけられたらキョドっていたはずのカケルも、山県昌景の元で戦で働き、旅を共にしてゆく中で、肝っ玉が太くなった。
「俺か? 俺は……駿河の海鮮問屋駿河屋政吉の荷物持ちの島左近とこっちが菅沼大膳だ」
と、切り返した。
「はぁ、駿河屋政吉? ここは徳川領でもないのにどうして駿河の海鮮問屋が近江にいるんだよ」
と、横山喜内が嚙みついた。
正論である。駿河とは、現在の静岡県のことで、戦国時代は、新幹線もなければ車もない。移動は、身分の高い者でなければ馬ではなく、ほとんどが徒歩による。よほどの目的がなければ、駿河から数日もかけて現在の滋賀県までは歩いてはこないだろう。
横山喜内の正論には、さすがのカケルも返事に困った。織田家と敵対する武田家の山県昌景とともに、武田信玄の遺言を守って、瀬田(近江国)に武田の旗を立てるために長旅をしてると言おうものならスグに取り押さえられるだろう。
「う~んとね、駿河の海鮮問屋のご隠居について諸国を見分、漫遊してんのよ」
「はぁ、駿河の海鮮問屋のご隠居と諸国見分? 漫遊? お前ら、忍者でもないのにそんなことして歩いてんのか」
「そう。ねえ、大膳さん」
「そうだ、ワシたちは、駿河の海鮮問屋のご隠居政吉のただの荷物持ちだ。まったく怪しい者ではない」
「そうか、お前たちは、駿河の海鮮問屋の荷物持ちか……」
すると、いきなり槍の柄につけた石附が、菅沼大膳の顎にヒットした。
いきなり襲い掛かったのは、蒲生賦秀だ。はなれたところでカケルと横山喜内の話を耳を澄まして聞いていた賦秀が、天性の直感で体が動いたのだ。
賦秀の一撃を食らった菅沼大膳は一撃でのされた。
「マジか、蒲生賦秀さん。感性で動いてる!」
「なんで、初対面のお前が、俺の名前知ってんだよ」
賦秀が、ズバリとカケルの言葉尻の痛いところを突いた。
カケルは、現代の高校生で歴史ゲームおたく。蒲生賦秀の情報も、先に鳶加藤から聞いていた情報だ。賦秀の名前は、テレパシーでもなければ知りえない。知りえるとすればそれは忍だ。
カケルは、無い知恵絞って賦秀の問いに答えた。
「だって、蒲生賦秀さん織田家で有名じゃん。あの織田信長様に見込まれて娘、冬姫様を娶り、婿として将来を期待されているって、俺がこれから仕官する筒井家でも評判だよ」
「筒井家で仕官? どうして駿河の海鮮問屋の荷物持ちが、筒井で仕官するのだ?」
賦秀は、頭が切れる。カケルの思い付きの矛盾点をビシビシついてくる。
「俺、元々、大和の国の椿井出身なんだ。それが、当時、武田と同盟を結んでいた筒井家から派遣された北庵法印って医者の護衛として雇われて、甲斐の国まで行ったけど、突然、主人の北庵法印さんと一緒に追い出されちゃって、旅の途中で、はぐれちゃってったところを、駿河屋の旅のご隠居にくっついてきたわけさ」
「大和の北庵法印の名は知っておるぞ。名医だと聞く。ならばお前は医術の嗜みがあるのか?」
「ないないない。全然ないけど、俺は、怪しくないってことの証明に名を出したんだ。それに、現在ついてる海鮮問屋のご隠居政吉は、羽柴家に逗留しているから怪しくないの請け合い」
「あの大殿の太鼓持ちの羽柴か、あいつはお調子者だからな、警戒心が足りない。まあ、同じ織田家の重臣羽柴に身元があるならまあいいや。で、こんなところで俺を待ち伏せして何の用だ?」
「実は、助けてほしいことがあって……」
つづく
皆さん、こんばんは星川です。
いや~GW終わっちゃいましたね。なんと、その間に、私、星川亮司は新作を発表いたしました~88888888888(拍手の意)。
リンクはマナーとして貼れませんが、アルファポリス様の「歴史・時代小説大賞」に、アマゾンで電子書籍化するよって言ってた作品を参戦させました。
そちらでは、ペンネームを姓名判断で大大吉の評価の”林走涼司”で発表いたしております。素敵だわ、世界に一つだけの名前って、日本で、林走名字の人間は、他にいません! だって、日本に無い名字なんですもの。
そそ、作品名を上げておかなくっちゃ、「池田戦記ー池田恒興・青年編ー信長が最も愛した漢」です。こちらは、左近とは、構造的にもちかう十二万字からの逆算で構成する方法で作りました。
是非、見てちょ~!
探してちょ~!
林走で検索するとすぐ林走涼司 アルファポリスって出てくるはず!
ホンマに応援してください!
と、宣伝は、これくらいにして、こちらは左近。
蒲生氏郷リベンジャーズって、うぷぷ。完全に、大人気作品にのっかちゃって~。
こういう、ノリで作れるところが、転生のライトノベルのいいところだね。うぷぷぷぷ。
では、ブックマーク、ポイント、感想、いいね よろしくお願いいたします。
ほんとに、皆さんの応援で、作品も作者も生かされております。じわじわ、応援の輪が広がっているのがうれしいです。
ストック、減ってきたけど、また、書きためるぞ!
それでは、また、来週に。林走涼司検索してね♡