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215惡の華、悪党たちの悪だくみ(左近のターン)

 養老山と曽根の村をつなぐ養老街道を岐阜へと向かう鮎鮨街道あゆすしかいどうへ出る。


 国都、井ノ口の町に、稲葉一鉄の姉、深芳野みよしの出入りの呉服商、駿河屋の離れ屋屋敷がある。

 駿河屋は、織田信長が斎藤氏から美濃国を奪い岐阜と改名した時から、織田家へ食い込んだ新興の商人だ。元は、その名の通り駿河(現在の静岡県)を領した今川氏出入りの商人であったが、先代が倒れ若くして後を継いだ今代の婿養子、巳之吉みのきち


「桶狭間を見ろ! 街道一の弓取りと呼ばれた今川義元様があっさりと蹴散らされた。新しい時代を作るのは織田信長だ!」


 駿河屋巳之吉は、そう言うと家財財産全般と妻子を連れて美濃へ移り住んだ。


 巳之吉の商人としての嗅覚は正しかったのだが、織田家には尾張国以来の出入り商人が多くいる。そこへ入り込むことはできなかった。


 そこで、信長が美濃へ進行して占領すると、新しい国府とした岐阜井ノ口に店を開いた。そこからは、尾張出身の織田家の譜代家臣に取り入るばかりではなく、美濃派閥の西美濃三人衆、稲葉一鉄いなば いってつ安藤守就あんどう もりなり氏家卜全うじいえ ぼくぜん、に取り入った。


 とくに、朴訥ぼくとつとした言葉少なな稲葉一鉄は、自ら織田家譜代の家臣たちに取り次ぐぐのは上手ではない、そこを駿河屋巳之吉が、間に入って商い事全般はもとより、織田家譜代の林家はやしけ佐久間家さくまけ柴田家しばたけ丹羽家にわけとの仲を取り持つ役目を担ったのだ。



「駿河屋さん、女は用意できましたか?」


 井ノ口のはずれの駿河屋の離れでは、月明かりもきれいな明るい夜に、障子をぴたりと占めて、煌々とろうそくをともして、なにやら密談である。


 ここにいるのは主人の駿河屋巳之吉、それと、養老山で死の間際の村人を、祈祷の奇跡により救済する役河王のもとで帳簿係を務める金之助だ。  


 巳之吉はろうそくの明かりに明暗の影を浮かべて、


「次の女は上玉だ。高い値を付けてくだされよ」


「はい、こちらは、女さえ手に入ればこっちのものです。役河王は、まったく金への執着心がなく商売に口をはさみませんが、頭が仙人のようで、浮世離れしております。そろそろ、私も駿河屋さんの力を借りて、女を集めて女郎屋じょろうやでもと思っております。さあさ、ご一献」


 と、金之助は巳之吉に酒を進めた。


 巳之吉は、クッと酒をあおって、


「最近では、あの曽根のぼんやりの頑固者が思うところがあったのか、姉の色気ばばあのところにやってきた。まだ、お主と私の関係は気が付いてはおらんと思うが、金之助、女郎屋を開くにしても慎重にいたせ、ぼんやりに見えて稲葉一鉄は兵を持たせればなかなかの切れ者だという。くれぐれも、しっぽを出さぬようにいたせ」


 金之助は、空になった巳之吉の盃になみなみと酒を注いで、


「それで、この度の上玉の女とは誰なんです?」


 巳之吉は、金之助に顔を聞きもかからんばかりに近づけて、


「知りたいか?」


「ええ、一体誰です?」


「役河王が評判をとった伊勢屋伊之助の娘、芙蓉ふようだ」


「なんと、曽根一番の美貌と評判の伊勢屋の娘、芙蓉でございますか?」



「そうよ、あのばばあが、この度持ち込んだ京でつくらした彩やかな反物に現を抜かして、一人づつ女中を連れ去っておるのに、あのばばあは、それよりも美しい反物のことに頭が一杯で、私がはらわたを食らっておるのを気付かない。まったく、馬鹿な女だ」


「しかし、深芳野様は、守護様土岐頼芸様や、斎藤道三様のご寵愛を一身に浴びた美貌なのでございましょう

 ?」


「美貌の面影はたしかにある。しかし、化粧けわいの仮面を一肌脱げば、いたるところ皺くちゃの婆でしかない。それでも、あのばばあは、むかし、蝶よ花よともてはやされた自分の姿が忘れられず、夢の中に生きておる化け物よ。まったく、哀れよな」


 巳之吉の言葉をうけた金之助が、ポンと手をうって、


「名案が思いつきました。役河王の神通力をもって、深芳野様の美貌を取り戻したら、私の女郎屋で働かしたら上客が付くのではないですか?」


「馬鹿を申せ、たとえ、役河王の神通力をもって深芳野を若返らせたとしても、あの女には、天下一の頑固者! うすらバカの稲葉一鉄がついておる。私たちの思うようにはことは進むまいよ。私たちは、静かに稲葉の家のはらわたをついばんで、一鉄の娘婿、斎藤利三をそうしたように、他家から稲葉の家の宝で欲しいものがあれば、私たちが協力して、金と引き換えに差し出せばよいのだ。あの薄ら馬鹿の姉弟は一生気付くまいて、うははははは~」




「芙蓉様はおられるか?」


 その日、養老山の役河王の両親、前鬼・後鬼に送り出された明智家家臣で、現在は、斎藤利三の明智家への鞍替えで、信長の調停を受け、しばらく稲葉家あずかりとなった渡辺官兵衛こと嶋左近は、華渓寺かけいじの住職、南化玄興なんかげんこうの弟子で、深芳野の元で花嫁修業をする幼馴染の芙蓉を訪ねる宗傑そうけつに伴われて深芳野の屋敷を訪れた。


「なんだって! 芙蓉が使いへ出た切り三日も戻らないだって‼」


「はい、最近になって屋敷では、女手ばかり三人も人身御供になり行方知れずになっています」


「三人もですか」


「はい、深芳野様の領内だけでも村の男、娘たちを含めれば、十人は下りません。いったいどうして、この領内ばかりさらわれるのかわかりません」


 年輩の下女の叫びだ。


 宗傑は、左近をかえりみて、


「渡辺様、これは?」


「うむ、これは、何かある」



 つづく


皆さん、こんばんは星川です。


以前、話した非公開の作品の表紙絵が完成いたしました(/ ・ω・)/


絵師さんには、戦国歴史物ですから、矢玉飛び来る戦場を鎧武者が駆け抜けるシーンを描いてもらいました。


それだけだと、人気作家の先生には太刀打ちできないので、無理言ってもうひと工夫をお願いしました。


次の段階はタイトルなどの文字入れです。これも、ココナラで発注する予定です。



原稿は、一太郎で校正すると、ワードでは拾えなかった箇所が、1400箇所もありました。

誤脱チェック、字下げ抜け、助詞の重なり、表現のゆらぎ、私の頭と目では負えない箇所ばかりで、めちゃ助かりました。


これで、ワードで3回、一太郎で一度、後もう1回校正したら完成としようと思います。


文字入れの発注はまだですが、目標とすれば、5月の作者の誕生日を計画いたしております。


進展あればまたこちらで報告いたします。



例のごとく、ブックマーク、ポイント、感想、なんかこないだ見かけた いいね などよろしくお願いします。


皆さんの応援が作者にとってなによりの励みになります。


どうか、ポチッとよろしくです。マジでおねげぇ〜しますm(_ _)m


それでは、皆様、また来週に。



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