表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/399

213深芳野の秘密(左近のターン)

 美濃国曽根は揖斐川の流れを汲んで、やがて、長良川と合流し大河となり、伊勢湾に流れ込む。


 稲葉一鉄の姉、深芳野みよしのは、力のある者。始め、美濃の国主土岐頼芸ときよりあきの愛妾になり、メキメキと力を蓄えた陪臣ばいしん(家来の家来)であった下剋上の代名詞にもなる斎藤道三に見初められその側室となる。


 男に翻弄される人生だった深芳野は、道三の跡継ぎ義龍を産み、その地位は安泰だと思われたが、元は、土岐頼芸の愛妾である。義龍の種は、道三ではなく頼芸だったとの噂は絶えなかった。


 道三の跡継ぎだった義龍は、その疑惑に打ち勝つ心の強さがなく、父、道三をその刃にかけた。


 下剋上の主人公、斎藤道三が、息子に、下剋上され、その刃にかかるとは、なんたる皮肉であろう。血を分けた親子が、骨肉の戦いを繰り広げる世。それが、戦国時代なのだ。



 その日、稲葉一鉄は曽根城の側を流れる平野井川を船で登って、養老街道にぶち当たる傍らの姉、深芳野の屋敷を訪ねた。


「これ、一鉄殿、あなたが私に話があると申して、やってきてからかれこれ、半時ほど経ちます。私の淹れたあったかい茶もすっかり冷めてしまいましたよ」


 姉にそう言われて、茶の存在に気が付いたのか、居住まいを正した一鉄が、ようやくのどを潤した。


 それから、さらに、半時。


 一鉄は、開けっぴろげの庭を見つめて、時折、茶をすするのみで、深芳野に、一切語り掛けようとしない。

(まったく、この子は、じれったい。昔から、おとなしい子供でもあったけれど、大人になってまで、そのまま成長しちゃうなんてあきれちゃう。これで、織田家中でも一目置かれる武将だってんだから、人はわからないものね)


 一鉄は、落ち着いた性格で、いや、ぼんやりと言ったほうが適切かもしれない。戦場にあっても、静かに采配を振るう一鉄は、朴訥ぼくとつとしながらも、鋭さを兼ね備えた才覚で、戦場にあっては臨機応変に会心の働きを見せるのだが、一歩、戦場を離れると、このとおり。ぼんやりした男に成り下がってしまう。


 かと言って、何でもかんでも浮草のように、他人に流されるのではないかと思われる素養もあるが、一鉄は、自分がこうと決めたら何が何でも、思いが通じるまで梃子でも動かない。


 先日、娘婿の斎藤利三を同じ織田家の重臣である明智光秀に引き抜かれたと、すごい剣幕で、正月の晴れの舞台で信長に掛け合う人間性は、まさに、頑固一徹。


「一鉄殿、私に、なにか疑念でもあって参りましたのか?」


 深芳野は、一鉄に、カマをかけた。別段、自分の心に、やましいことがあるからではない。一鉄という人柄を考えれば、そうでもなければやってくるはずがないからだ。


「里の娘が……」


「ああ、そのことですか、私のところでも、三月前から、娘が二人、人身御供みとみごくうに会いました」


「やはり……」


 一鉄は、いつもこうだ。深芳野の前に立つと、口数の少ない性格が、一層少なくなって口ごもってしまう。


 なぜか、一鉄は、稲葉の姉弟でも末っ子で、深芳野とは、十二歳。一回りも年が違う。一鉄の母が物心つくやつかずの時に、亡くしたものだから、母の面影のある深芳野には、どうしても失った母を重ねてみてしまうのかもしれない。


 深芳野は、一鉄の姉であっても母ではない。国主の土岐家、その後を継いだ斎藤道三の元で、派手な生活をしていた深芳野は、曽根に引きこもる田舎者の一鉄とは性格的に合わない。


 朴訥な一鉄は、深芳野にとって、じれったいのである。


「もう、なにもないのなら、私は下がらせてもらいますよ!」


「あいや……待たれよ」


 ここから、四半時一鉄は黙ってしまう。ようやく、決心を固めて、一鉄が、次の言葉を開いた。


「姉上は、今回のかどわかし事件には関わりないでしょうか……」


 あるわけない。


 深芳野は、一鉄から化粧領を三百石はもらっている。昔のような派手な生活は望めないが、慎ましく生きていけば、何不自由のない暮らしができている。


「……ならばよいのですが……」


 はっきりと、深芳野から、否定されても一鉄は心に引っかかるものがあるのか歯切れが悪かった。



 一鉄が帰った後に、岐阜の中心地、井ノ口の町から、土岐頼芸の愛妾時代から贔屓の呉服商人の駿河屋が訪ねてきた。


「深芳野様、そろそろ、返済の時期になりましたが……」


 深芳野は、国主であった土岐頼芸、斎藤道三の頃からの着道楽がやめられない。愛妾として満たされず生きる寂しさからはじまった着道楽であったが、慎ましい暮らしを迫られた現在いまでも、出入りの駿河屋が持ってくる彩やかな打掛を見れば欲しくなる。


 始めは、自制もしていたのだが、この頃では、掛けツケ払いが膨らんで、両手では計算できなくなってしまっている。


「それでは、深芳野様、今回も、手前が良いように、返済方法を検討させてもらいます」


 駿河屋は、いつも、こう言って、深芳野から了解をとると、勝手に算段して、借金を相殺して、注文した打掛だけ置いていく。これが、もう数か月つづいている。


 深芳野は、駿河屋がどうやって借金を帳消しにしているのかはわからないが、知らぬ間に勝手に帳消しにしてくれるので黙認しているのだ。



 つづく

どうも、こんにちは星川です。

皆さん、ウクライナ悲惨なことになっていますね。。。と、降ってみましたが、今回はその話はやめておきます。

別の話なんですが、こないだコロナワクチン三回目の接種に行ってきました。

ファイザー、ファイザー、ファイザーと、副反応も比較的穏やかな組み合わせでできました。


実は、週一のオタ転の連載飛ばしてませんが、作者、ちょっと体調が不安定で、毎週土曜の執筆が三週に渡ってお休みいたしました。

メンタルの病気がありましてね、無理をして病院送りになった経験があるので無理しない生活を心がけているんです。(以前は、母が元気で身元引受人になってくれましたが、兄は、母のようには親身になってはくれませんもので)まあ、愚痴はおいといて。

ここ三週、土日は一日中意欲が湧かず寝て過ごしているんです。私は、四ヶ月に一回血液検査を、日常は、スマートウォッチでバイタルチェック、体組成計で体重及び筋肉のバランスなどを管理し、運動、食事、睡眠をかなり気をつけております。

それでも、忙しい日などがつづくと、睡眠が乱れる。私は、睡眠導入剤で夜寝ることができる体調なんですが、無理すると寝れない日がある。こうなると、負のサイクルに陥って、今回の三週執筆できないような状態になってしまう。


まあ、自己管理が甘いだけなんですけどね。。。ですが、自分の体調の不安定は織り込み済みで、オタ転はストックしておりますので後九週ぐらいは、ダウンしてられる。。。あかんのよ、それじゃあかんのよ。


あたし、もう一度コンディション整え直して、ストック20話作るわ。


と、ヘロヘロなんですが、一方で電子書籍出版の準備は進めております。一太郎が届きまして、ワード原稿の誤変換を直しております。もう、完璧に誤脱チェックは済んだと思っておりましたが、見つかるものです。まだ、一太郎の機能の優秀さは実感ありませんが。


おっと、長く書きすぎた。


ヘロヘロの間に見たアニメで面白かったのを紹介します。「ようこそ実力至上主義の教室へ」ってのが案外面白かったです。実力次第で学校での生活がきまる学園の話。

・キャラクターを表面の性格と、真逆の陰の性格、両面で描いていること

・時代性を取り入れた実力至上主義の価値基準

・学園ものの定番女子のキャラ分けで取り巻かれるハーレム性


勉強になりました。


ユーチューブで見れました。皆さんも、お時間があればいかがでしょう?


それでは、例のごとく、ブックマーク、ポイント、感想などありましたらよろしくお願いします。

皆さんのそのクリック一つで、救われます。よろしくです。

では、また、来週!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ