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211前鬼・後鬼のもてなしと、役河王の理(佐近のターン)

 夜のとばりが下りたころ、役河王の使役する鬼、前鬼・後鬼のもてなしをうけた左近は、散々、野山を駆けまわったこともあろう、後鬼の作ったもてなしの温かく旨い飯に満たされたこともあるだろう。気がつくと、左近は横になっていた。


 シュッ、シュッ、シュッ!


 気がつくと左近は隣の部屋で横になっていた。


「なんだこの刀を研ぐような音は……ん⁈」


 左近は手足を四方に濡れ手拭で身動きを取れないように縛られている。


「ようやく研ぎ上がったようだ」


 前鬼の声が聞こえ、影が左近の眠る部屋へ近づいてきた。


「これであの子を一思いに殺せるね」


 後鬼が前鬼の言葉に応える。


 サッ!


 左近の眠る部屋の障子が引きあけられた。


 万事休す! 


 左近が、そんな思いに駆られると、部屋に、出刃包丁を右手に、左手に、生きたにわとりの首を掴んだ前鬼が立っていた。


 前鬼は、今にも左近を頭からバリバリと食らいつきそうな鬼面を向け、


「起きたか」


 と、問うた。


 左近は、縛られた肢体を動かそうと抵抗を見せる。


「俺をどうするつもりだ!」


 前鬼は、ふふっと、笑って、


「お前の肢体を切り刻んで食らうのだ」


 と、高らかに笑いながら答えた。


「ちくしょう!」


 手足を濡れ手拭で縛られ、抵抗できなくされている現状では、いくら武勇で鳴らす嶋左近であっても成すすべがない。


「さあ、お前をどこから切り刻んでやろうかな」


「前鬼! 悪い冗談はおやめなさいな」


 後から、後鬼が、薬草を一杯に磨り潰したプンと薬効がキツイすり鉢を抱えて入って来た。


「なんだ後鬼、今からが面白い所じゃないか」


「前鬼、私達はただでさえ人が恐れおののく鬼面じゃないか、それがどうして、あなたのように顔を地で行く悪い冗談を云ったらみんな怯えてしまうよ」


「ワシは、子供をこうして怖がらせるのが唯一の遊びなのだ」


「前鬼、小角おづの河王がおうのように、赤子の時から育てた人間ならともかく、大人になって、突然現れた鬼にそう凄まれたら、誰だって取って食われると思いますよ」


 と、いうと後鬼は、左近の側に座り、傍らに薬草の入ったすり鉢をおいて、縛られた左近をふんどし一丁に剥いた。


 後鬼はやさしく、左近の肩口の傷をさすって、


「あんたは、若いのに結構な戦人いくさにんだね」


 左近は素直に答える。


「その傷は、伊勢長島一向一揆討伐の折に着いた傷だ。私の体に着いた傷の一つ一つに、戦を共に戦ったおとことの思い出が残っておる」


「そうかい……」


 後鬼は、すり鉢の薬草を油紙にべったりと塗って、左近の傷口に張り付けた。


「ぐぬおおおおっ!」


 左近が、腹の底から辺りに響き渡るような悲鳴をあげた。


 後鬼に薬草を塗りつけられた傷口が燃えるように熱い。まるで、炎を押し当てられ傷口をそのまま焼くような痛みだ。


「この薬はなんでも治す妙薬なんだが、副作用があってね、患部に直接当てると、ほとんどの者は気を失うほどの激しい痛みに襲われるのだね」


 前鬼も、後鬼に頷き共感して、


「うむ、左近。お主のように唸り声だけで、気を失わぬ者こそ珍しい。なかなかに大した男だ」


 そういうと、前鬼は、手に持った鶏の首をシュっと切った。鶏の首から鮮血が滴り落ちた。


「少々、野蛮だがのこれがなにより効くのだ」


 そういうと、前鬼は、左近の鼻をつまんで口で息をするように仕向け、その口に、今、殺した鶏の鮮血を含ませた。


「ぶはっ!」


 突然、無理やりに左近の口に入って来た鶏の鉄の味に、思わず吐き出した。


 前鬼は、冷静に「おい!」と、後鬼に左近の頭をしっかり横に吐き出せないように押さえるように促すと、再び、鶏の鮮血を含ませた。




「おい、おい、渡辺勘兵衛とやら起きよ!」


 前鬼と後鬼の手荒いもてなしを受けた左近は、あの後、気を失ったように眠った。どれくらい眠ったであろう。左近の体感であれば、三時間ほどか……。


「おい、渡辺勘兵衛とやら起きるのだ。いくらなんでも、三日三晩眠っておってはやせ細って栄養不足で飢えて死んでしまうぞ!」


 役河王の声だ。


(なに? 三日三晩だと⁉)


 左近は飛び起きた。ふんどし一丁の左近の肢体のいたるところにあった戦傷は、嘘のようにきれいさっぱり塞がっていた。いや、傷口が塞がるところではない。普通、刀傷は、傷口を塞ぐように肉が盛り上がって塞がるものだが、左近のそれは何もないのだ。元々、そこが傷口であったかさえ分からない生まれた姿に戻っているのだ。


「渡辺勘兵衛とやら驚いたであろう。これが、仙術の秘薬というものだ」


「役河王よ。お前は、この秘薬で、死の淵に居る者をたちどころに治して見せているのか」


「うむ」


 役河王は静かに頷いた。


 しかし、左近は、河王の行為を肯定はせず首を振って、


「この秘薬で、金を積んだ者を優先的に生かしておっては、この世の森羅万象しんらばんしょうことわりが崩れる。人には、生き時があり、死に時がある。その時を金の力で左右しては、この世は悪党ばかりがのさばり歩く地獄と化すのではないか」


 役河王は呆れたような顔をして、


「ワシにはわからん。ワシは、目の前に運ばれて来た者を右から左に診て、生かせる命を生かせておるにすぎぬ。それ以上でも、それ以下でもない。生きる者は生き、死ぬ者は死ぬだけさ」


(この突き抜けた仙人のような現実離れした思考が、自然の理で領国を治める稲葉様の領国経営を揺るがしておるのか……)



 つづく



どうも、皆さんこんばんは、星川です。

実は、先週2/13のPVが新記録更新しました。

なんと、864PV!

それまでの夏休み期間中の記録2021年8月29日の745PVを大きく上回りました〜(/ ・ω・)/


感謝! 感謝!! 感謝!!!

で、ございます。ありがとうございます。かたじけのうございますm(_ _)m


ひたむきにコツコツつづけていると、応援して下さる方が現れるんだなあ。と、目頭を熱くしております。ありがとうm(_ _)m


カケルと左近も逆境、逆境、逆境に立ち向かう中で、仲間が現れた心持ちです。



さて、喜びと感謝は、一旦置いておいて、毎度の作者語りをば始めます。


今年の一月から、公募用の原稿をAmazonの電子書籍出版化に向けて、やり方を勉強してたのですが、作者、基本猿のような知能指数なので、バンザイしました(/ ・ω・)/


しかし、お蔵入りはせず、やはり、電子書籍化したい。筆で稼ぎたい。そこで、、、閃きました。

電子書籍出版代行をココナラや、スキマで頼めばいいんじゃね?

小説は、料理店などを出店することに比べれば、投資としては小さいのではないか!

と、考えがまとまりました。


そこで、来月一日に依頼して、4月1日に間に合えばと計画致しております。

(実は、自分で出版する手間の間に、新作に取り掛かりたくなりまして、餅は餅屋に任せようと)


公募用なので、12万字で文庫本一冊の分量になります。本の詳しい内容は、まだ明かせませんが、転生転移なしのガチの歴史小説(フィックションの要素含む)です。


また、話が進行しましたら、こちらでお話します。現状は4月出版目標です。


作者、体力と気力ないので、夏までズレ込む可能性もあります。その時はゴメンなさいm(_ _)m


私は、才能には恵まれませんが、挫けず、絶対に諦めず、不撓不屈の精神で遅れても達成しますよ。それだけが取り柄です。



長く書きました。いつもながら皆様、ブックマークする、ポイント、感想よろしくお願いします。

皆さんが、ポチッとして下さる積み重ねがやがて山となり作者を推しあげていただけるのです。


それに、今回のように、皆さんの応援で、去年の自分を超えたら、まるで、スーパーサイヤ人に変身した気分になります!

(スカウターで、私の戦闘力見て下さい。スカウター爆発します! 間違っても、チッゴミか ではないはず)


それでは、皆さん、また、来週もよろしくお願いしますm(_ _)m

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