210囚われの寧々。石田三成の秘密。その時、助けの使者が現われた(カケルのターン)
山県昌景から、怪僧憧鑑に囚われた寧々(ねね)救出の命を受けたカケルは、相棒の菅沼大膳をともなって、羽柴家に唯一残っている石田三成に協力を求めようと奉行所を訪れた。
奉行所と申しても、この頃の三成は、天下の台所をまとめる大物などではない。先年、織田信長の発案で、京都所司代を務める吏僚の村井貞勝の元で、政務全般の基礎を学び、その知識を急拡大を続ける織田家の重臣羽柴秀吉家にフィードバックすること。奉行の浅野長政は兵站の任で、秀吉に同行して出陣しているから、三成は言わば代行。出陣せず居残って秀吉の城下、長浜の街づくりにいそしんでいる。
「急用にござる。石田三成様にお会いしたい」
カケルと、菅沼大膳の大男二人が代官所の玄関口で騒いだ。
頭一つ高く図抜けた大男が騒ぐのだ。棒を持った下役人がぞろぞろ飛び出して来た。
「石田殿に今すぐ会いたい」
カケルは、下役人の頭を見つけて声をかけた。
「ダメだダメだ。どこの馬の骨とも分らぬものを、奉行代行の石田様に会わせる訳にはいかぬ」
「いいや、俺は、どこの骨かも知らない男だけど、今は、急を要する事態なんだ。寧々様が!」
カケルが、寧々の名を出したことで、下役人の頭の眉がピクリと動いた。
「寧々様がどうした?」
「俺は、今、石田様の計らいで、寧々様の元でお世話になっている者なんだけど、寧々様が、あの憧鑑に囚われちゃったんだ」
それを聞いた頭は、
「知っておる。すでに憧鑑様より報をうけた石田様がことの経緯を確かめに向かわれた」
「それは良かった。これで、一安心だ」
カケルが、ほっと、胸を撫でおろしていると、腕を組んで話を聞いていた菅沼大膳が、
「おい、左近。この話は、どこかおかしくはないか、憧鑑に寧々様が囚われたのを知っておるのは、現場に居合わせた我らが先。それがどうして、すぐさま動き出した我らより先に、憧鑑が報せをだして、こんなにも早く石田様が動けるのだ?」
「そりゃ、石田三成ッて云やあ、カミソリのような切れ者だって、歴史マニアならみんな知ってるよ」
「石田はそんなに有名なのか?」
「だよ」
「それでも、この動きの速さはおかしい。一度、戻って、山県殿に相談いたそう」
カケルと、菅沼大膳が、寧々の屋敷の角を曲がろうとすると、
「ちょっと待て」
覆面を被ったお虎が呼び止めて、顔を見せた。
「何事でございますか」
様子の危うさに、菅沼大膳が眼を見張ると、あれを見よと、寧々の屋敷の玄関口に顎を向けた。
「おい、怪しい旅の者! よくも寧々様にあやしい嗅ぎ薬を盛り乱心するようにたぶらかしたな、お前のような物はすぐさま手討ちにしてくれる!」
と、捕り物に連行される政吉こと山県昌景の姿があった。
「山県のおじさん!」
カケルが、腰の刀を引きつけて飛び出そうとしたのを、お虎が制して、
「左近、今行っては、父上を助けられるものも助けられなくなる。今は、我慢じゃ」
菅沼大膳は、眉をハの字に顰めて、
「お虎様、これはいったいどういう経緯で? 我らも先ほど奉行所に石田様を訪ねてみれば、すでに出立したあと、こちらに戻って見れば、あべこべに山県殿まで囚われている。一体何がどうなっているのでございますか?」
「詳しくはまだわからぬが、此度の一件、どうやら憧鑑、一人が仕組んだことではないようなきがする……」
「まさか、石田が共謀していると?」
「かもしれぬ……」
「これは、困ったことになった。羽柴の家には、もはや、味方はおらぬのですな。我らは、一体どうすれば……」
山県昌景を連行した寧々の屋敷から、石田三成に続いて憧鑑が現われた。憧鑑は、三成に寺社勢力から集めた金を摘んだ荷車を運ばせて、
「石田様、この金があれば、戦でいくら戦費が掛かろうとも問題ございません。寺社勢力はこうして、私が、金目になる物を根こそぎ吸い上げますので、石田様の立身の軍資金にしてくださいませ」
「うむ、憧鑑。私は、血を見るのが昔から苦手でのう。頭を使った戦いなら出来るが、市松や、虎之介のように槍を持っては役には立たないから、憧鑑、お前の協力は助かる」
「なにを申されるのです石田様。いや、今は亡き浅井家の前当主、浅井久政様の御落胤をお守りするのが、この憧鑑の務め。いつの日か、浅井の血を持って、憎っくき織田家に一泡吹かせてやりましょうぞ」
と、こそこそと行ってしまった。
物陰から、隠れて、三成と憧鑑の話を聞いていたカケルと菅沼大膳、お虎の三人は、目を丸くした。
「知らんかった。衝撃の事実! 歴史マニアも知らん話やな」
教科書にはない歴史の裏側を盗み聞きしたカケルは喜びのあまり、喜色を浮かべている。
「おい左近、お主、喜んでおるのではないか」
と、お虎が、釘をさした。
「だって、石田三成が、浅井の御落胤だってことは、天下分け目の関ケ原の戦いで、豊臣を守ろうとした行動の辻褄がしっくり合うじゃないか」
「関ケ原……⁈」
お虎は、カケルの言葉に手を叩いて閃いた。
「そうか! 羽柴家には、もう一人、頼りになる人間が居った」
カケルは、アホな顔して、
「いったい誰なん、その、頼りになる人は?」
「関ケ原、古くは不破の関ともうして、左近、お主が世話になった竹中半兵衛様じゃ」
「竹中半兵衛さんがどうしたの?」
「父上が捕らえられた今、我らは、竹中半兵衛様に頼るのじゃ」
すると、カケルが、ヒョイっと街道筋を指差して、
「向こうから、馬に乗ってやって来るのが、竹中半兵衛さんじゃない? お~い、半兵衛さん。お久しぶりです!」
つづく
どうも、こんばんは星川です。
昨日、久しぶりにテレビでミュージックステーションを見ました。
出演者が様変わりしていますね。「鬼滅の刃」の歌はLISAさんの「紅蓮華」「炎」だと思っていたら、もう古い、現在は、Aimerさんの「残響散歌」だとか、名前読めませんし歌詞のタイトルも覚えられません。
他にも、Official髭男dismも昨日今日人気になったと思っていたら、Aimerさんたちにとっては懐メロなんだとか、もうついてけません。
あとね、あとね、ジャニーズさん、一人も知りません。無知すぎて、彼らを見た私は、YouTuberがついに歌番組に出るようになたのねなんて思っておりました。もう全然、わかりません。
その中でも一人だけわかる人物がいました。もちろんタモリさんではありませんよ。
レジェンドギターリスト布袋寅泰です。BOOWY、COMPLEXの布袋さんね。
もう、還暦近いのかな、完全にロートル感ありますけど、若者の中に挑戦する感じかっこいいです。
わたし、わかったんです。例え、結果が伴わなくても挑戦してる人間はカッコいいって。
大人になったら、家族のために一生懸命戦うのもカッコいい。
立ち向かい続けるのが漢なんだってわかりました。
布袋さんありがとう。私、また、公募用の新作はカッコいい男をテーマに描きますよ。
それでは、皆様、ブックマーク、ポイント、感想よろしくお願いします。
ささいなことなんですが、皆様のその応援がなければ、拙作のような作品は埋もれてしまうんです。こんな非力な作品でも、誰かの力になるかもしれないとカケルと左近を描いています。
あなたに届けたい。あなたの身近な朋友に届けたい。そんな一心で書いています。
どうか、皆様、星川を応援下され。よろしくお願いします。
それでは、みなさま、また来週。