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208囚われの寧々、一宿一飯の恩義があるのだ。救わずに旅立つわけには行くまい(カケルのターン)

 尾張以来の小者の娘で腰元のおみよを、怪僧 憧鑑どうかんの画策によって傷物にされた寧々は、鴨居の薙刀を掴んで、憧鑑のいる秀吉の子 石松丸を産んだミナミ殿の部屋へ乗り込んだ。


 切っ先を憧鑑に向けた寧々は、憧鑑の返事いかんによってはその場で手討ちにするつもりだ。


 だが、憧鑑がおみよを手籠めにしたのは、寧々を誘い出す憧鑑の罠であった。


 憧鑑は、打ち込んできた寧々を、秀吉の子供を産んだミナミ殿への嫉妬に狂った乱心であると叫び、石松丸を守るためにあべこべに家中に喧伝けんでんし、秀吉の留守を預かる寧々を捕らえてしまったのだ。




「父上、大変でございます。寧々様が憧鑑に捕らえられてしまいました」


 騒動を聞きつけた山県昌景の娘お虎が、身分を偽り 亡き武田信玄の遺言を守り、近江国瀬田へ武田の旗を立てる旅に出ている山県昌景こと、廻船問屋の隠居政吉に縋り付いた。


「お虎、寧々様が憧鑑に捕らえられるとはどういうことだ?」


 お虎と昌景の親子は、寧々に一宿一飯の恩義がある、身分を明かせば対立する織田と武田の武将、織田家の重臣羽柴家の家中が乱れて身動きが満足に取れないとなれば、武田にとっては都合がよい。だが、昌景はそんな卑怯な男ではない。戦場で織田家の武将羽柴秀吉と対峙すれば、ありとあらゆる英知を思案して打ち滅ぼす工夫を重ねるが、今は、政吉だ。


 問題になっている寧々も、身分不定かな山県親子を言うなりに、受け入れ、親切に宿を貸し、飯を食わせ、若い女のお虎に自分の身の上話を聞かせ、心近しくなった。


 そんな、寧々を、情に厚い山県親娘が放って旅の草鞋わらじを履き、後ろ足で寧々に、泥を被せて旅立つなどできはしない。


 お虎からいきさつを聞いた昌景は、大きく頷いて、


「わかったお虎。今朝方我らは寧々様に断りを入れて、瀬田へ旅立つ予定であったが、事態がこうなっては寧々様を見捨てて行くことは出来ぬ。なにがなんでも、羽柴家に跋扈する悪鼠を退治して寧々様を救い出すぞ!」


 そういうと、昌景は、隣の部屋でまだ高いびきを立てる、大男二人組を呼び出した。



 一方、寧々を捕らえた憧鑑は、秀吉の居ない家中においては、秀吉の子、石松丸を産んだミナミ殿とその従兄で後見の立場だ。家中筆頭実権を掌握すべく動き出した。


 まず、憧鑑は、長浜領内の寺社仏閣の主だった僧を呼び出して、己の足元にひざまずかせた。学校のないこの戦国時代、寺の僧は、宗教の信仰心以外にも、地域に根差した学校と病院を合わせたような役割を担っていた。


 教育と、病の治癒を握るということは、信仰にも結び付きやすい。憧鑑は、領主秀吉の命で、長浜城下に、巨大な新興宗教団体を組織しようとしたのだ。




「なんだって!」


 鳶加藤の知らせで、余りにも早い憧鑑はの動きに気づいた、これには昌景も面を喰らった。


「憧鑑の動きは、あまりにも鮮やかすぎます。あの男、欲に眩んだ詐欺まがいの怪僧だと思うには、ちとは手筈が鮮やかすぎまする」


 鳶加藤こと武田忍の棟梁 加藤段蔵も、憧鑑の只者ならざる手管に首を捻る。


「うむ、憧鑑なる男は、一体何者なのであろうか……」


 と、山県昌景も首を捻る。


 ブッ!


 緊張した空気を一遍にひっくり返すように、カケルが尻から火を噴いた。


 カケルの隣にいた菅沼大膳は鼻をつまんで、今にも毒ガスで蝕まれるように這いつくばって縁側の障子を引きあけて、


「おい、左近! 一体お主は何を食うからそんなに臭い屁がでるのじゃ。真横に居たわしは、危うくお主の屁に炙り殺されるところじゃわい」


 カケルは、頭を掻いて、


「何を食ったって、大膳さんも昨日同じもの食ったじゃないか、寧々様の計らいで、旅に生気を養えるように力の着く猪の肉の焼肉を御馳走になったじゃないか」


「左近の馬鹿者! あのな猪の肉は臭みが強いから普通はワシらみたいに、鍋の縁に味噌を塗りたくって、牡丹鍋にして食らうのじゃ、それがこともあろうに焼肉とかもうして、猪肉を炙って喰らうなど前代未聞じゃ」


「肉に山葵を塗って食べたら、ほっぺが落ちるほどおいしかったでしょう。大膳さんも、山県のオジサンもお虎さんも、美味い旨いって食べたじゃないか。俺から、臭い屁が出るって言うんなら、大膳さんも、山県のオジサンも、お虎さんだって今日は臭い屁がでるってもんさ」


 すると、お虎が、顔を真っ赤に蒸気させながら、腰の刀の柄で、カケルの鳩尾みぞおちを突いた。


「うっ……!」


うるさい左近。我らは大事な話をしておるのじゃ今は黙っておれ!」


 カケルは、前のめりに崩れ落ちた。


 お虎は、膝を再び昌景に向けて、


「父上、我らはどう動きますので?」


 昌景は髭をさすって、思案するようにしばし考えた……。腕を組み難題のようだ。


 するとカケルが、ゾンビのように身を伸ばして、


「まだ長浜には石田三成さんがいるんじゃねぇ?」


「そうじゃな、あのカミソリのような鋭利な眼をした石田三成とか申す小僧しかおるまいか。よし、左近よ、スグに石田三成を見つけてここへ連れて来い。あの者ならば羽柴秀吉殿に話も着けられよう。あの怪僧 憧鑑に先に手を打たれる前に、先に、こちらの味方に引き入れるのだ。いつまでも倒れてないで行け!」


 ブッ!


 カケルは屁で返事をしてしまった。


 ドスン!


 お虎の刀の柄が再びカケルの鳩尾を突いたのはもはや詳しく申すまでもあるまい。




 つづく








どうも、こんばんは星川です。

最近は、Amazonで未発表の異世界転移なしの歴史物を電子書籍で出版しようと色々研究しております。


アマゾンさんって、まず、作者に入金する口座登録からするんですよ。おカネを払う話が最初。

そして、表紙とか、本文とかの登録となる運びになります。。。と、ここで止まってるんですけどね。星川さん、頭悪くて、ちんぷんかんぷんです。


そうしてこうして、電子書籍化が停滞してると、新作のアイデアなんかが閃くものです。

私、星川は武骨な歴史物しか書かないとお思いでしょうが、他にも、「秘密結社KJラボ☆」(秘密のある作家の父親と、少年の成長物語)「オフザボールJリーグ」(熱血サッカー監督物語)、「田中君進化論」(作者渾身のギャグ小説)他、カクヨムさんで「旋律のウエディングベル(ゲームにはまりこんだ婚期を向かえた女の話)などあります。


で、作者の得意ジャンルに今期を向かえた女の話がありまして、作者はキャリアと結婚ならば、爺ですから、どんな相手でも良いところは必ずあるから、結婚をとり子供を作りなさいよと口うるさく描いちゃうのですが、


閃いたのは、キャリアと結婚を題材にした愛の話をオサレに書いてみたくなりました。

で、今、研究してるんですけれど。。。


「歴史おたくの心身転生シンギュラリティ」は、このまま小説家になろうで連載を続けますが、随時、他の作品は、アマゾンキンドルで販売ないし、無料掲載に移行したいと思っております。

(歴史物って、案外、資料代や、現地調査とか経費がかかるのでお小遣いほちいのねん♡)

まあ、新作以外は、アマゾンに移っても無料で読めるはずなので、問題ないはずです。



それでは、皆様、ブックマーク、ポイント、感想。歴史マニアなお友達への布教よろしくお願いします。

現在、こちらの作品は、小説家になろうだけの週刊連載になっております。ひきつづき、応援よろしくお願いいたします。

それでは、また来週。ちゃお♡

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