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207前鬼・後鬼(左近のターン)

「そこの木陰に隠れている者、なにか私に用か!」


 現代の高校生と魂の入れ替わった戦国武将嶋左近は、今世では、ひょんなことから、さらに、仮の名、渡辺勘兵衛を名乗り明智家家臣として仕えている。明智家では、家老の斎藤利三に引き立てられ、西へ東へこき使われているのだが、斎藤利三には、同じ、織田家の稲葉一鉄と一悶着あった。


 斎藤利三は、明智家に仕える以前、稲葉一鉄の娘婿むすめむことして、一族扱いを受けていたのだが、どういうわけか出奔し、すぐさま、明智家へ仕えてしまった。


 稲葉一鉄は、利三の行動を、明智光秀の引き抜きと捉え、大殿である織田信長に、正月から異議申し立てを始めた。


 この稲葉一鉄なる男、後に、頑固一徹の代名詞になるほど頑固な男で、一度言い出したら梃子てこでも持論を曲げない。


 信長も、他の家臣ならば、強権を発動して、口を閉じさせるのだが、先の浅井長政の裏切りにより、前面に朝倉義景、後方に浅井長政と挟み撃ちにされ、退却戦を余儀なくされた折、一鉄は殿軍しんがりを引き受け手柄を上げた。信長の同盟者の徳川家康が、寄騎として稲葉一鉄を指名したほどの他家にも評判の戦上手なのだ。


 この殿軍は、徳川家康、羽柴秀吉、稲葉一鉄の三名が引き受けた。


 鉄の結束を誇る三河武士を従える徳川家康。


 稲葉山城乗っ取り、わずか十六人で、信長も何度も跳ね返された堅固な城を奪い取った天才軍師竹中半兵衛擁する羽柴秀吉。


 稲葉一鉄は……、家中に、一鉄以外の目ぼしい部将は見当たらない。確かに、この時期には、後に明智へ鞍替えする斎藤利三は要るにはいたが、家中に響き渡るほどの評判はない。


 稲葉一鉄の何がスゴイのかそれが謎だ……。



 そんな折に、稲葉一鉄が、明智家から斎藤利三返還を求めて、大殿信長に掛け合ったのだ。


 家康は大名。秀吉は日の出の活躍を見せる出世頭。一鉄は、目立つ活躍は見せないが、なぜだか強い一介の武将に過ぎない。


 しかも、金ケ崎の退口のきぐちで、家康も、秀吉も、声を揃えて、


「稲葉殿には、危ないところを何度も救われた」


 と、報告を受けている。


 稲葉の兵は、家康も、秀吉も、兵を後退させ、陣を動かす時に生まれる隙に、敵に射し込まれるタイミングで、稲葉の兵が飛び出して、敵の横合いを突く見事な傭兵で、全滅覚悟の撤退戦で、ほとんど被害を受けずに撤退したのだ。


 もちろん稲葉の兵もほとんど失ってはいない。


 稲葉一鉄という男には何かある。それが、織田家中の大方の噂である。


 信長の命の恩人ゆへに、稲葉一鉄は家臣であっても、信長も強くは言えない。


 妥協案で、


「ならば一鉄。斎藤利三のことはワシが預かるゆへ、今日のところは、ワシの顔を立て、曽根へ帰れ」


 と、信長が提案しても、聞き入れなかったのだが、「代わりに、明智の者を誰か連れて帰れ」と、一鉄の頑固さに草臥れた信長が言うと、明智の家中を見回して、末席に控えていた、渡辺勘兵衛こと嶋左近を連れ帰ったのだ。


 一鉄は、曽根へ左近を連れてくるなり、稲葉の娘を嫁にどうかと、いきなり、一族に取り入れようとした。


 左近も、それには面食らい辞退したが、一鉄は、左近の力量を試そうと、曽根の領内で起きてる若い娘のかどわかし事件の調査を任せたのだ。



 かどわかし事件を調査していると、養老の滝で評判の神通力で、病を治すと噂の役河王えんのがおうに行き着いた。


 左近は、河王を睨んで後をつけたのだ。


 滝に打たれる河王は、木陰に隠れる左近を真っすぐ睨んで問質した。


「ほう、二つの魂を宿やどす者か、これは、まともな人ではないな。姿を表せ!」


 こういわれたら、左近もいつまでも、隠れて、河王のやり様を伺い続けるわけには行かない。


 左近は、素直に、姿を河王の前に表して、


「役河王、分けあって、あなたの事を調べさせてもらっている」


 河王は、キリと左近を見て、


「ワシに、隠すものなど何もない。ワシがやって来たことがすべてじゃ。ワシをこそこそ嗅ぎまわらずとも、側へ来て確かめればよかろう」


 河王は、一点も曇りのない目で、左近に応じた。



 滝から上がった河王は、ふんどしを締め直し、山伏の衣服に着替えると、左近に、


「お主、足は達者か?」


 と、尋ねた。


「それなりには」


「ならばついてこい」


 そういうと、役河王は、山を駆けだした。


 駆けて、駆けて、駆けた。


 山の頂をいくつ登っただろうか、左近が、ほとほと疲れ、足も上がらなくなったとき、河王は、一軒の煙の上がる小屋に入った。


「飯にいたそう」


 河王に続いて、小屋に入ると、左近は眼を見張った。


 河王を待ち、飯の支度をしているのは、赤と青二匹の鬼である。正確には、鬼面の人かもしれない。


「前鬼、後鬼、お主たちも食え」


「へい、河王様、私達は先にいただきましたので結構でございます。そちらのお供の方と、温かいうちにどうぞ」


 と、左近に、吊り上がる眉に、牙を持つ、前鬼が、飯の入った茶碗を差し出した。どうやら、前鬼は男で、味噌汁を注ぐ後鬼は女だ。


 左近は、河王に尋ねてみた。


「この者たちは、まことに鬼なのでございますか?」


 河王は頷いて、


「ワシの親だ。ワシがこの世に生まれ落ちてから、ワシを育て、長生して、ワシに白髪が生えるようになっても歳をとらぬ。まさしく鬼であろう」



どうも、みなさん、こんばんは星川です。


いや~、一月も二十三日ですよ。もう、終わっちゃいますよ。時が流れるのが早ぇ~。


と、おっさんの感想はともかくとして、今年の大河ドラマ見てますか?


「鎌倉殿の十三人」三谷幸喜作です。


鎌倉時代の創成期に源頼朝を担いだ鎌倉幕府を作って乗っ取った北条得宗家の北条義時の話。


いや~、めっちゃ、三谷脚本おもろいですね。


第二話のキャラの性格ですけど、


・義時の父、時政が新妻を迎える準備で、頼朝の身柄問題をうっちゃって、それよりも、新妻を迎える準備が忙しい女好き。

・北条政子が、頼朝の魚の食わず嫌いを、機転を利かせて小骨を抜いて出す。

・頼るべき家を持つ女三浦家の八重。北条家の政子を口説くのに使う口説き文句がちゃっかり使いまわし。

・義時が、八重に頼朝のことをあきらめてもらうためついた嘘が薄っぺらいとってつけた嘘。

・女の戦い。八重と政子が面会した時、八重は頼朝と肌を合わせた物しか知りえない身の回りへの気遣いを見せる。

・頼朝、平清盛、後白河法皇の腹をみせない狸っぷり。

・頼朝の義時への口説き文句。やはり、つかいまわし。


キャラクターの性格が人間味のあるユーモアで彩られてめちゃめちゃ面白い。

ぜひ、「鎌倉殿の十三人」ご覧ください。


やはり、目指すところは、三谷幸喜さんですね。



それでは、みなさま、ブックマーク、ポイント、感想、歴史好きのお友達への布教などよろしくお願いします。

ときどき、合計ポイントが増えてるのを確認して増えてると、「おいらの作品にも応援してくれる人がいるんだなあ」と孤独な執筆の励みになります。どしどし、応援よろしくお願いします。


それでは、みなさま、オミクロン株に気を付けて、元気にまた来週お会いしましょう。チャオ~!

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