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205役河王(左近のターン)

 芙蓉を見送った渡辺勘兵衛こと現代の高校生 時生カケルと魂が入れ替わった嶋左近は、宗傑に尋ねた。


「深芳野様に仕える芙蓉が申した。役河王えんのがおうとは何者なのです?」


「そうですね……」


 宗傑は口ごもった。言葉を選びながらつづけた。


「役河王ははこの時代に生まれ変わった役小角えんのおずのだと称しておりまする」


 役行者、小角おずのは、飛鳥時代の人物で、修験道の開祖でいわゆる山伏である。


 大和朝廷にたてついた葛木山かつらぎさんを根城に莫大な霊力を持つ神、一言主ひとことぬしを懲らしめるために前鬼ぜんき後鬼こうきを使役して活躍した伝説の呪術者である。


 自称ではあるが、伝説の呪術者の生まれ変わりであると称するからには、それなりに、霊験れいげんあらかたな人物なのであろう。


「……この曽根において、役の河王は、無料で病を治す神なのでございます」


「神?」


「はい、曽根の城下の者は、稲葉一鉄様を心から慕っておりますが、ここ、養老の民草は、稲葉様よりも、もちろん、我ら仏門に仕える者よりも役河王が神なのであります」


 ある時、手の施しようのない咳と熱に襲われた村人がいた。不幸にも、南化玄興が旅に出ていて、寺を開けているおりに、弟子の宗傑では手の施しようがなかった。


 しかたなく、家族は最後に家で看取ってやろうと荷車に乗せて連れ帰るおりに、役河王に出会い、養老の滝で汲んだ霊水を飲ませたところたちどころに病が治癒したそうだ。


 以来、評判が評判を呼び、養老山の近くに住まうものは、寺よりも、役河王を慕うようになった。今では、役河王は、養老山の一角に修行場と称して小屋を作り、そこで、銭を取り、病の者を奇跡の霊力で治しているという。


 しかし、その霊験にどれほどの力があるのか……。


 宗傑はそこまで言い終えると言葉を濁した。曽根の領主の稲葉一鉄の姉、深芳野が役河王に心酔していることもある。いくら、河王が怪しくともあからさまに否定するのははばかられるのだ。


「宗傑殿、村の娘たちが人身御供ひとみごくうになる事件もあることだし、一度、役河王を訪ねてみるのも一計ではあるまいか?」


 と、左近が、宗傑に尋ねた。


「それをしたいのは山々ですが、私が行けばおおっぴらな寺と修験道の喧嘩ともなりかねません。稲葉殿は、姉の深芳野様との関係もアリ、それは望まれますまい」


 左近は、深く、頷き、


「わかった。その調査、ワシが引き受けよう」



 養老山の山肌に役河王の根城はあった。根城というには大仰であった。それは、賊が立て籠もる砦のようでもある。砦のぐるりを柵で囲んで、門扉には篝火かがりびを炊き、左右に、槍をもった農民が立っている。


 門では帳簿をつける身なりの整った人間がいて、咳き込んだり、荷車で運ばれてくる人間から、症状を聞き取り、心付け(お金のこと)を受け取っている。


 左近は林に潜んで、河王の砦を暗くなるまでうかがい見た。


「急患でございます。急患でございます」


 辺りが暗くなり、砦の門扉を閉めようとした時、荷車に乗せられた男が数人の従者に連れられて運ばれて来た。患者の来ている者は絹で、暮らし向きの高い人物のようだ。


「美濃屋伊之助さまが、突如、お倒れになりました。河王様何卒宜しくお願い致します!」


 手代が、帳簿をつける男に、それなりの銭を掴ませた。


「うむ、奥へ運び込め! スグに河王様の祈祷の用意だ‼」



 左近は、屋根裏に忍び込み、河王の祈祷を盗み見た。


 祭壇に寝かせられた美濃屋伊之助は戸板のような広さの板に手足を四方で紐で括りつけられ身動きできなくされた。


 河王は、その前で、護摩を焚き、一心に祈祷する。


 河王が、炎へ護摩をつぎ込むと、ぶわっと火柱があがる。その向こうに浮かぶ河王の顔は悪鬼のようだ。


 何時間、闘ったであろう。もがき苦しむ美濃屋伊之助が、大人しくなった。


 すると、河王は祈祷を止め、傍らの徳利を掴み、一口含むと、伊之助の元へ歩み寄り、ブワッと吹き付けた。そうしておいて、徳利の水を、伊之助の口に呑ませた。


「よし、これで、峠は越えたようじゃ。後は、ワシに代わって、定期的に、養老の滝で汲んだ新鮮な水を飲ませてやれ」


 そういうと、河王は、祈祷場を後にした。


「河王様、ありがとうございます」


 美濃屋の番頭が深々と頭を下げた。そうして、河王に包み紙を差し出すと、河王は、


「番頭殿、それは、私には、無用の長物にございます。邪な心が芽生えると、神にささげる祈祷の神通力は無くなってしまうます。私は、何もいらない」


 そういって、河王が部屋を出ると、代わって、帳簿を持った男が現われ、番頭に、スッと書付を差し出した。


 番頭は、書付を受け取ると、


「こんなに!」


「ええ、河王様はああ申されますが、これほどの病の者を医者でも治せません。美濃屋伊之助殿の命が助かったのも、すべて、河王様の神通力によるものでございます。命さえつづけば、美濃屋様ならこのくらいの金は取り戻せるでしょう」


 番頭は、渋い顔をしたが、主人の命には代えられない。


「後日、持ってまいります」


 渋々、承知した。



 コトリ!


 左近は、天井の羽目板を閉じて、河王の消息を追った。



 祈祷を終えた河王は、養老の滝に打たれていた。

(取り巻きは、ああだが、この男は真に高潔な男であるようだな……)


 左近が、林の陰から、遠巻きに伺い見ていると、


「そこの木の陰に隠れている者。ワシに、何か用か?」


 と、河王に見つかった。



 つづく




どうも皆さんこんばんは、星川です。


まずは、明けましておめでとうございます。、」


いや~、皆さん、年末年始いかがお過ごしでしたか?


私、星川は、日頃のヘロヘロで生きていますから、しっかり休養を取りました。


日頃の、勉強不足も取り戻すために、元旦から、毎日、一本映画、ドラマ、アニメのどれかを見ております。現在、9日、までに見た物で面白かったものをご紹介しておきます。


お笑い芸人のキングコング西野さんが、制作して話題になってた「えんとつまちのプペル」見てみました。

「お笑い芸人にいかほどのものができんねん! どうせ、話題だけで会社が下駄はかしてるんやろう」と、斜交いから拝見しました。

「お、お、おもろいやんけ!」

ファイナルファンタジーの世界感に、ジブリの天空の城ラピュタを掛け合わせて、ディズニー映画の活劇要素を取り込み、芝居の部分はワンピース。

上手に組み合わせて、自分のものとされていました。

馬鹿にしないで、皆さんも、一度ご覧っください。

「よ~できてます。創作ってこういうことやねんな」と、わかります。


次に、アニメ、「王様ランキング」を見ました。

タイトルの引きは弱いですが、ある王国のハンディキャップを背負った弱虫王子がどのように境遇にあらがっていくのかの話。これ、面白いです。スマホで動画なんか見ていると、はさまれてくる漫画の広告で見かけるあのちびで弱虫の王子のあれです。「がんばれ王子!」と、応援しちゃうことうけあいです。


おっと、長くなりすぎた。話の途中ではありますが、そろそろ、バッテリーも切れますのでこの辺で。


皆様、ブックマーク、ポイント、感想など(作者がんばれ!)とかよろしくお願いします。高評価されたら、ニマニマしながら小躍りして喜びます。


それでは、皆さん、また、来週。

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