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200寧々の悋気と秀吉。来客は、僧籍の男(カケルのターン)

「殿がお戻りになられましたぞ!」


 正室の寧々と側室のミナミの家中での女の戦いが一層熱を帯びた所に、秀吉は長浜に戻った。


「あなたというお人は、外に出ればスグに女を作って次々に側室に入れてしまう。今度という今度は許しませぬ!」


 帰城し広間に表れた秀吉を見つけた寧々は、いきなり秀吉の耳を抓り上げた。


「寧々、ゆるしてちょ~よ~」


「いいえ、今度という今度は許しません。あのミナミという女はなんです。城へ来るなりあなたの子供だと申して、変な輩を引き入れて、我が物顔で、城下を荒らしております」


「なんだって、寧々。ミナミとか申す女がワシの子を連れて参ったとな」


「はぁ、あきれた。何度もあなたへ手紙で伝えたではないですか、竹生島の巫女ミナミでございますよ。お心当たりがございましょう」


「はて⁈ (秀吉は、指折り数えて)一、二、三、どの女のことだろうのう?」


「あなた、竹生島ではミナミ一人ならず三人も女を作ったのでございますか! この浮気者!!」


 寧々は、自分よりも背の低い秀吉を耳を捩じ上げるようにつまみ上げた。


「おい、小一郎、正勝、ワシを助けぬか!」


 小柄な秀吉よりほっそりと背の高い弟の小一郎こと羽柴秀長だ。秀長は人のよさそうな微笑みを浮かべて、


「兄上、それは姉上の言う通りだがね。兄上はワシらが止めるのも聞かづ行く先々で女をつくるでよぉ」


 秀長の言葉を肯定するように、ウンウン頷く熊のような髭面の大男の蜂須賀正勝が、


「そうだ、秀吉。ワシと秀長は、行く先々でお主が女と見れば、見境なしに声をかけるのをその都度止めておるから、それぐらいで済んでおるのだ。それに、お主は聞かぬではないか」


 寧々のこめかみの血管がどくんと脈打った。


「あなた、見境なしとはどういうことです! 今度という今度は許しません! 手討ちにしてくれます」


 そういうと寧々は、鴨居に飾った薙刀を掴んで秀吉に振り下ろした。


「やめてちょ~よ」


「許しません!」


 秀吉は、転がりながら掛衣桁かけいこう(小袖などをシワがつかないように部屋に立てかけておく立てハンガー)に掛かった艶やかな小袖を掴んで、襲ってくる寧々に突き出して、


「おお、寧々よ、岐阜の井ノ口の町でよ、寧々に似合うと思うて、小袖を買うてきたでよ機嫌を直してちょ~でぇよ~。ほれ、小一郎、はよう、もってこい」


 小一郎が、頭を掻いて、


「それは、できねぇ~よ兄者。だって、兄者がさっき、井ノ口で買った小袖は、他の側室に渡すよう言ったじゃねぇ~かよ。ほれ、さっき、言ってたミナミ殿に渡したよ」


 ピクピク!


 寧々のこめかみが弾けた。


「ミ・ナ・ミ! そこに名折れ、羽柴秀吉、あなたを殺して私も死んでやります!!」


「ゆるしてちょ~よ」


 と、そこへ、廊下口から声がかかった。三成だ。


「殿、岐阜の大殿から火急の使者がきております」


「おお、三成。それは大変だ。スグに行く。小一郎、寧々のことは任せた後の事頼んだぞ」


 と、秀吉は広間を途にした。



 秀吉が三成に連れられて、居間に入ると、頭を丸めた僧体の穏やかな若い侍が待っていた。


「おっ、これは、どなたかな?」


 若い侍は、クルリと胡坐をかいたまま向き直って、床に手をついた。


「お初にお目にかかります羽柴秀吉様。某は、大和筒井城城主、筒井順慶と申します」


「筒井順慶?」


「羽柴様は、お気づきにござりませなんだが、正月の岐阜の広間の末席に控えておりました。ほれ、松永久秀が織田に帰参した日……」


 三好義継と若江三人衆に匿われていた足利義昭の降参を受けて、信長包囲網の頭を落とされた松永久秀は、明智光秀を通じて、信長への降参を申し出た。


 実質的に三好家を個人の能力で取り仕切っていた松永久秀の器量を認めている信長は、手土産に献上した天下に名高い九十九茄子の茶器で許してしまった。


「それで、筒井殿は、ワシに何の用だ?」


 筒井順慶は、屈託のない子供のような笑みを浮かべて申し訳なさそうに、頭をなでて、


「私の後ろ盾になってほしいのです」


 筒井順慶と松永久秀は、大和国の覇権をめぐって二分する戦いを繰り返して来た。始まりは、三好家の力を背景に大和へ先鋒としての侵略を始めた松永久秀と、防戦一方の筒井順慶の構図から、信長と将軍足利義昭対立で、義昭についた久秀と、ならば、生きる道は信長につくことと、織田に臣従した筒井。形勢が筒井に優位に動いたところで、また、松永久秀が性懲りもなく降伏、臣従する。


 信長は、松永久秀の能力を買っているが、順慶の能力は買ってはいない。むしろ、興福寺勢力を背景とする寺社勢力に属する順慶は排除したいぐらいに考えているかもしれないのだ。


 このままでは、筒井家は、言葉巧みに信長に近づく松永久秀の奸計によって、排除されるやも知れない。


 そこで、順慶は主自ら、織田家の重臣で、明智光秀に与した松永久秀と、勢いを五分にする羽柴秀吉に近づいたのだ。


「そうか、筒井殿が来たから、かかぁの悋気から逃げられたから、ワシがなんとかしてやろう」


 ひょっこり自分都合で舞い込んだ筒井順慶の求めを秀吉は、あっさり引き受けた。



 順慶と秀吉の話がまとまると、


「殿、もう一人会いたいと申す者がございますがいかがいたしましょう」


 と、廊下から三成の声がした。


みなさま、こんばんは、星川です。


ついに、節目の二百話に到達いたしました。(拍手~!)

ありがとうございます。ありがとうございます。


私、星川、小説家になろうにたどり着くまでは、おじいちゃんの脚本家の先生に学んでいました。

ですが、道半ばで、私は、入院するほどに精神を病み、発表の場と機会を失ってしまいました。

師匠は、良心的な人で、精神を病んでからも、親身に接してくださいましたが、一週間で六万字を書くような体力は戻りませんでした。


そして、発表の場を失い、たどり着いたのが、ネット小説の世界です。なにより、好きなことを自分のペースで発表できる。こんな幸せなことはありません。


それに、皆さんに応援していただける環境は最高です。励みになります。

本作は、まだまだ、つづきます。体調によって、落ちてる話数もありますが、これからも応援よろしくおねがいいたします。


皆様、これからも、ズズずいと、よろしくおねがいつかまりまする。



それでは、また、来週~。

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